クロスボーン・バンガード

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クロスボーン・バンガードとは、『機動戦士ガンダムF91』及び『機動戦士クロスボーン・ガンダム』シリーズに登場する組織。

作品ごとに指導者と組織の理念が大きく異なる。

概要

元は民間会社ブッホ・コンツェルンが組織した私設部隊「バーナム」を母体とした軍事組織で、地球連邦政府や世間では宇宙海賊と呼ばれている。

なお、MS開発史設定などで「クロスボーン・バンガードの」と表記される部分がよくあるがこれは厳密には誤表記で、クロスボーン・バンガード自体は例えるならばアナハイム・エレクトロニクスエゥーゴのエゥーゴの方に該当し、AEに相当するMS開発を行っている企業の内容等を記す場合は「ブッホ・コンツェルン」、または直接開発に当たっている「ブッホ・エアロダイナミクス社」を表記するのが正しい。数多の文字設定資料で混同されているので注意する事。

モビルスーツの小型化をいち早く成功させ主戦力とし、宇宙世紀0123年に「コスモ・バビロニア」建国のため、サイド4(旧サイド5)・フロンティアサイドを襲撃。コスモ・バビロニア建国後は、クロスボーン・バンガードを国軍とした。その後、地球連邦軍の駐留軍を撃滅してコスモ・バビロニアを勝利に導いた(コスモ・バビロニア建国戦争)。

クロスボーン・バンガードの兵士は連邦軍に入隊して戦術を学ぶと同時に、連邦の腐敗政治を教え込まれる。そして帰還した兵士はブッホ・コンツェルンに帰属して本格的な戦闘技術と貴族主義を叩き込まれる。そのため地球連邦軍の兵士より熟練している。

しかしその後、ロナ家のベラ・ロナが貴族主義を反対する演説を行った影響で内部分裂を引き起こし、組織は空中分解して崩壊。その崩壊した組織を、今度は崩壊させた張本人であるベラ・ロナが復興させて宇宙海賊に仕立て上げた。新生クロスボーン・バンガードはベラの指揮の下、木星帝国と熾烈な戦いを繰り広げることになる。もっともベラの思惑とは裏腹にザビーネを始めとする貴族主義者たちも依然多いままで組織としては一枚岩ではなく、実際ザビーネの反乱に乗じて多くの構成員たちが寝返っている。

木星帝国との戦いが終わりキンケドゥとベラが去った後、表向きはオンモを社長とした輸送会社「ブラックロー運送」として運送業や廃棄物処理などをして活動し、裏でサナリィと通じつつ有事の際には宇宙海賊として行動するようになるなど、義賊的な側面が増した。また、貴族主義者たちがいなくなり大半が木星戦役を生き延びたメンバーで構成されているためか、アットホームな雰囲気を持つようになった。しかし『鋼鉄の7人』における一連の戦いによりクロスボーン・ガンダムらの戦闘用MSトビア・アロナクスを喪失した事でそうした活動からも手を引き、義賊としてのクロスボーン・バンガードも事実上消滅。ブラックロー運送はその後、純粋に(?)一企業として発展していった様子(『クロスボーン・ガンダム ゴースト』期には大企業化)である。

更に時代が下った『クロスボーン・ガンダム ゴースト』においては、ユピテル財団のテテニス・ドゥガチの意を汲み宇宙細菌「エンジェル・コール」を追う財団の私兵集団が、木星共和国議会の意志を離れている事を強調するため「木星の仇敵」の名乗りをあえて戴き、新たなクロスボーン・バンガードとして活動した。

所属人物

創設初期

シャルンホルスト・ロナ
ブッホ・コンツェルン創設者。本来の名は「シャルンホルスト・ブッホ」。ジャンク屋から身を起こし一大財閥へとのし上がり、ヨーロッパの貴族であるロナ家の家名を金で買い、ロナと名乗るようになった。
企業経営を通じて民主主義の限界を痛感し、優れた能力を持つ貴族による社会変革を計画。その一環としてアクシズに存在するであろうサイコフレームのデータ回収を目論む。
エンゲイスト・ロナ
シャルンホルストの実子。連邦議会議員を務めており、シャルンホルストに非公開議事の内容をリークしていた。
クァンタン・フェルモ
私設部隊「バーナム」の隊員。オーガスタ研究所所属の強化人間であり、ガンダムNT-1 アレックスを改修した「ガンダムAN-01 トリスタン」を乗機とする。
ヴァルター・フェルモ
私設部隊「バーナム」の隊員。上記のクァンタンの弟。バイアランの改修機である「バイアラン・イゾルデ」を乗機とする。

コスモ・バビロニア時代

マイッツァー・ロナ
ロナ家の当主であり、クロスボーン・バンガードはロナ家のためにある。創設初期にも「バーナム」へアクシズに潜入するよう指示を出していた。
カロッゾ・ロナ
クロスボーン・バンガードの総司令官。
ドレル・ロナ
ロナ家の一員。自ら戦場に立ち、ドレル大隊を率いる。
ザビーネ・シャル
ブラック・バンガードを率いる。後に二度離反する。
ベラ・ロナ / セシリー・フェアチャイルド
クロスボーン・バンガードと戦い、後に復興させて木星帝国と戦う。

新生クロスボーン・バンガード時代

シェリンドン・ロナ
ロナ家一員で、コスモ・クルス教団を率いる。
キンケドゥ・ナウ
ベラ・ロナ率いる新生クロスボーン・バンガードのエース。
トビア・アロナクス
民間人であったが、のちにキンケドゥらからクロスボーン・バンガードを受け継ぐ。
ウモン・サモン
老齢の熟練パイロット。後にメカニックに転向。
ヨナ
女性パイロット。祖母はウモンの知り合い。SRWでは『V』にて名前のみ登場。
オンモ
輸送艦リトルグレイの艦長。木製戦役の際は後方支援として物資補給を担当し、戦役後にクロスボーン・バンガードの司令官となる。「サナリィの元アイドル」らしい。
後にブラックロー運送の社長としても活動し、『ゴースト』の時代では会長職となっていた。

保有戦力

創設初期(バーナム)

ガンダムAN-01 トリスタン
バイアラン・イゾルデ
ジェガン
紫色に塗られており、通常のジェガンとは異なる頭部や外付けのセンサーアイ、射出可能なビームランスを装着したビームライフル等、既存の装備とは全く違うものを装備しており、武装のレイアウトは後の時代のクロスボーン・バンガードのMSを彷彿とさせる。
クレヴェナール
上記のAN-01用のアームドベース。AN-01本体は肩から下がベースに埋没した状態で合体する。

コスモバビロニア時代

デナン・ゾン
デナン・ゲー
エビル・S
ベルガ・ダラス
ベルガ・ギロス
ダギ・イルス
ビギナ・ギナ
ラフレシア
ザムス・ガル
ザムス・ギリ
バグ

新生クロスボーン・バンガード時代

クロスボーン・ガンダムX1
クロスボーン・ガンダムX1改
クロスボーン・ガンダムX1改・改
クロスボーン・ガンダムX2
後にザビーネの裏切りで木星帝国の機体となるが、コアファイターだけはトビアに奪還された。
クロスボーン・ガンダムX3
ゾンド・ゲー
バタラ
ペズ・バタラ
木星帝国の機体を鹵獲して使用。
フリント
クロスボーン・ガンダムの地球圏仕様機。
マザー・バンガード

登場作品

旧シリーズ

第2次スーパーロボット大戦
第2次スーパーロボット大戦G
第3次スーパーロボット大戦
カロッゾらがディバイン・クルセイダーズ所属で登場。組織としては出てこない。
第4次スーパーロボット大戦S
今作ではカロッゾ率いるDC精鋭部隊の名称として登場する。ザムス・ガルもイベントで少しだけ出番がある。

αシリーズ

スーパーロボット大戦αDC
大体は原作と同じ設定でジオン軍と連携しているが、ジオンやジュピトリアンと比べて影が薄い。
第2次スーパーロボット大戦α
初となる『クロスボーン』設定のクロスボーン・バンガードが登場する。また、ザムス・ガルとザムス・ギリが木星帝国所属として本格参戦した。

COMPACTシリーズ

スーパーロボット大戦COMPACT
マリーメイア軍と手を結ぶ。そのためトーラスサーペントが混ざっている。
スーパーロボット大戦COMPACT2第2部
スーパーロボット大戦COMPACT2第3部
スーパーロボット大戦IMPACT
登場ステージは少ないが、シールド防御が回数制の本作においてクロスボーン系MSのビームシールドは異常に頑丈に設定されており、後半では雑魚でも8~10回以上の全属性軽減能力を持つディストーションフィールド級の防御力が厄介。また、ギニアス・サハリンを取り込んでアプサラスも使用してくる。

VXT三部作

スーパーロボット大戦V
『第2次α』から約14年ぶりにクロスボーン設定として登場。ヤマトに協力する。
スーパーロボット大戦X
F91設定。戦争の世界においてネオ・ジオンに協力していた。また、本編の少し未来の時間ではクロスボーン設定となっている。
スーパーロボット大戦T
クロスボーン設定。本編の2年前にコスモ・バビロニア建国戦争が起き、1年前に木星戦役が起きている。

単独作品

スーパーロボット大戦Card Chronicle
『第2次α』から約10年、F91設定としては『IMPACT』から約11年ぶりの登場。ホウジョウ軍と手を結ぶ。

関連用語

エゥーゴティターンズネオ・ジオンマフティーリガ・ミリティア
先述の通り他の時代における類似概念となる組織。クロスボーン・バンガードはあくまでこれ等と比し列挙される概念であってAEやサナリィ等の開発企業と等列に記す物ではない。
ブッホ・ジャンク社
ブッホ・コンツェルンの前身となるスペースデブリ回収企業。『機動戦士ガンダムUC』でも主人公のバナージ・リンクスとその友人のタクヤ・イレイのアルバイト先として登場している。
ブッホ・エアロダイナミック社
主に建設機械を開発していた。やがて、モビルスーツ開発に着手し、小型モビルスーツの先駆けとなる。
ロナ家
シャルンホルスト・ブッホが、将来達成すべき理想の為にロナ家の家名を買い取った。元々はヨーロッパ地区でそれなりの家柄であった名門家であり、シャルンホルストとの直接的な血縁はない。早い話がシャルンホルストは見栄や世間体の為に貴族の名を金で買ったと言ってよい。
コスモ・クルス教団
コスモバビロニアを掌握するための宗教団体。ニュータイプ至上主義を広めている。
コスモ貴族主義
劇中やスパロボシリーズでは単に「貴族主義」「貴族社会」とよく語られる。フランス語におけるノブレス・オブリージュを元とした「高貴な人間にはそれを伴う義務がある」「人を導く貴族の勤め」を掲げ体現している。ウモンの舌を借りれば「世の中には『優れた才能や強さを持った人間である貴族』と『そうでない普通の人間』の2種類がいるので、貴族が普通の人たちを良い方向へ導いていく考え方」といったところである。
ただし史実の貴族とやや異なる点として、ここで謳われる「貴族」とは「家柄」や「由緒ある血筋」等にこだわらず「崇高な精神や優れた能力を持った者」を指しており、それらを持つ者がコスモバビロニアの社会において中枢を担う者であるとされている[1]
貴族から来るエリート意識こそあれどマイッツァーの発言では「貴族であろうと普通の人間であろうと人権は平等にある」「戦争において普通の人間が逃げることはよいが貴族が逃げる事は許されない」と断言されており、ティターンズのような人民弾圧等は考えておらず、むしろ人を導き、人を守る者たちであるという純粋に高潔な思想を持つべきとなされていた。
しかしながらマイッツァーは「優れた人種によって支配する[2]」と考える傍ら、ザビーネは「強い者が支配すべき」と考えていたり、後述のラフレシア・プロジェクトについても意見が割れるなど、個人個人で捉え方に差がある。更には家柄にこだわらないとしながら出奔したベラを後継者とすることに固執する傍らでそれを嘆く者がいたり、「堕落の象徴」と批難している地球連邦軍との癒着を力の根源にする、貴族の務めについて信奉者たちに具体的に訓示がなされていないといった多くの矛盾を抱えるなど、意志統一が出来ているとは到底言い難い状況であった。
そしてその現状を打破し、貴族主義者たちの意志を取りまとめ率いていけるだけの「人間的な意味での貴族」が不在であった事が最大の欠点であった。加えて象徴として祭り上げられたベラ自身が貴族主義を否定する言動を見せながらもその言動こそが貴族主義が目指した人間像に最も近く、指導者にも向いていたというのも皮肉な話である[3]
スパロボシリーズでは『第2次α』でウモンが上述の台詞を元にやや単純だが分かりやすく説明してくれている他、ベラ、ドレル、ザビーネそれぞれの持つ「貴族の意味」とそれに伴う貴族主義の複雑さが垣間見れる。
ラフレシア・プロジェクト
過剰人口を抑制するためのプロジェクト。カロッゾがその一員となってからは過剰人口を抑制するための大量虐殺兵器を開発した。その存在はカロッゾとその腹心であるジレなど、ほんの数人しか知らない。
実行者はカロッゾ及びジレだが、その発案者が誰なのかは具体的な描写が無いため判明していない。更に組織としてこのプロジェクトに対して意見が割れており、カロッゾは劇中で「任務遂行の為にエゴを強化した」「人類の10分の9を抹殺しろと命令されればこうもなろう」と語っているものの、ザビーネは「ラフレシアの事は私もマイッツァーも知らないこと」と述べている事から、カロッゾへ指示をした人が誰なのかは不明である[4]。一方漫画版ではマイッツァーがカロッゾに対し過剰人口に大して話をする描写がある事から、マイッツァーが首謀者である事が仄めかされている。
こういった事情からスパロボシリーズにおいても首謀者についてはあまり語られないが、αシリーズの世界においては漫画版の設定を解釈し、マイッツァーが首謀者であった事が判明している[5]

関連技術 

ショットランサー
鋭利が槍先に尖ったリニアガンの一種。威力は実体式シールドごと機体を貫通撃退させるほどの威力。ビーム兵器による誘爆の危険性も少ない。ビームで外壁が貫通する危険ある対スペースコロニー戦闘における武装であったが、当時の連邦軍は実体式シールドを標準装備していた機体も多く(特にシールドを標準装備していたジェガン)、この武装で多くの連邦軍モビルスーツが撃退された。連邦軍もビームシールド開発までは有効的な防御手段は得られなかったことや、その武装の威力用途にも着目して「RGM-122 ジャベリン」にも装備されたことからも衝撃は大きい模様。

脚注

  1. 上述の通りそもそも創設者であるシャルンホルスト本人が元々貴族ではなかったうえ、ロナ家の名前も見栄と世間体の為に金で買った名前である事から、起用する者の家柄や生い立ちについて固執していないのも当然の事と言える。
  2. ただし小説版では「有能な者は我慢して使う」という前提を置きつつも肌の色や信仰する宗教を理由に人を嫌悪する節を見せるという矛盾を持つ。
  3. 一応ザビーネは後にベラの本質を「本人は気付いていない上に貴族主義も捨てたが、民の為に身を盾にして戦う姿勢こそが貴族的」と見抜いていた。
  4. 逆にカロッゾ自身が命令を歪曲して理解しているのか、将又マイッツァーがカロッゾに有事の際の責任を擦り付けて尻尾切りをしたのかは不明である。
  5. 中盤のシナリオでベラとドレルの戦闘前会話で判明する。詳しくはドレルの項目で。

資料リンク