ビームシールド
ビームシールドとは、『ガンダムシリーズ』に登場する兵器。
概要編集
バリアフィールドの一種。「盾」として使われる。戦場での効果はビーム兵器と実弾を両方を完全防御。必要ない時に起動せず、両腕を常時使える体勢になる。
発生基部は非常にコンパクトなため機体に内蔵される場合が多いが、V2アサルトガンダムのようにバリアビットと併用するもの、インフィニットジャスティスガンダムのようにウェポンラックと兼用するもの等、例外が有る。
宇宙世紀作品(『機動戦士ガンダムF91』以降)編集
宇宙世紀0110年頃に実用化された装備。発生器から中心部周囲にメガ粒子エネルギーを帯状に展開した「シールドビーム」を発生させる、平たく言えば幅広く展開するビームサーベルである。しかし、広い範囲に常時起動させるにはビームサーベルの比ではない高出力が必要になるため、モビルスーツ誕生から40年にしてようやく実現した。これはモビルスーツの小型化による出力のコストダウンの恩恵もある。
物理・ビーム両面において従来の実体盾を凌駕する防御力を持ち、自機の動きや攻撃に干渉する部分はコンピュータが自動で調整するため自爆の危険も無い。また、言わば板状ビームサーベルなので当然近接攻撃にも使用できる。ただしビーム特有の強い発光が有る為発見され易い、偵察用などの高精度センサーのノイズとなる可能性がある、等の問題により実用後も敢えて装備しない機種も存在する。しかしそれも例外といっていいほど少なく、その圧倒的な防御性能から戦闘用MSの装備から実体シールドをほぼ完全に駆逐している。
ビーム兵器に対しても高い防御力を誇り、U.C.0130年代位までMS搭載火器で貫通可能なのはヴェスバーの高速貫通重視ビーム位(艦載主砲の様なそもそも出力の桁が違う物では普通に貫通されてしまうため、過信は禁物だった)である。もちろん、実体盾と同様に実体弾に対しても有効に機能する上に、「防御したは良いが代わりに破壊されてしまう」というようなリスクも小さい(発生器さえ無事なら再度ビームを張れるため)。そのため、U.C.0130年代のクロスボーン・ガンダムシリーズは、近接格闘に重きを置いた設計となっている。
しかし、その後ビーム兵器の威力も向上したためか『機動戦士Vガンダム』のモビルスーツは、従前通り射撃主体の設計になっている。とはいえビームシールドを破れる様なビーム兵器がいくらか出てきた『V』の年代においても、「数機のシールドを合わせることで強力なビームを防ぐ」といった事が量産機クラスでも可能である(後の作品で、似た様な戦法をビルゴIIも行っている)。
開発当初は発生器自体にはビームは張られないため、運悪く発生器に攻撃が直撃するとそのまま撃墜されることもあった。『F91』劇中でもデナン・ゾンがガンダムF91のビームライフルのビームをビームシールドで防ごうとしたが、発生器に直撃して撃墜されている。大質量の物理攻撃は衝撃を殺しきれず物体自体を破壊し切れない事もあって、Vガンダムのパーツアタックやアインラッド等による体当たり攻撃やジャベリンのショットランサーなども有効。
ビームシールドの実用化によりモビルスーツの防御力は大幅な向上を見せたが、パイロットが逆にそれに頼りすぎてシールドの光が的になって撃墜されたり戦艦の砲撃を喰らってしまうなど、回避行動が疎かになりがちな事も指摘されている。
「ビームシールドを展開することで大気圏突入も可能」と理論で語られていたが、事実150年代においては量産MSであるトムリアットや追加装備した旧式艦艇が、前世紀に何度か見られたような非常事態への対応としてではなく予定された作戦行動・当然の機能としてバリュートなどの特別な装備なしでビームシールド展開による大気圏突入を行えるようになっている。
ビームシールドの実用化後は民間企業のシャトルがデブリ対策に使用する等、幅広く浸透している。また、艦の防御や大気圏突入時の保護をまとめて行えるという利点もあってか、『V』の年代では戦艦への搭載も一般的になり、基本的に艦首に装備する。
コズミック・イラ作品(『機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』)編集
ユーラシア連邦が開発した「光波防御帯」通称「アルテミスの傘」が原型。非常に大型の要塞防御用であったそれをモビルスーツ搭載サイズまでダウンサイジングした「アルミューレ・リュミエール」(装甲された光)と呼ばれる光波シールドが開発され、ハイペリオンガンダムに搭載された。
特徴は宇宙世紀のものとほぼ同じだが、光と波の作用から裏面のない単位相(モノフェーズ)特性を持つため、敵の攻撃を防ぎつつ内側からは攻撃できる。かなり大型でモビルスーツを広範囲にカバーするバリアに近い扱いである。また、連合製モビルアーマーが装備する陽電子リフレクターもこの技術から生まれたもの。その後ザフト側で宇宙世紀のものと同等サイズのビームシールド(ザフト正式のものは「ソリドゥス・フルゴール」の名がある)が開発され、ストライクフリーダムガンダムやデスティニーガンダムなど、大戦末期の一部機体に装備された。
なお、C.E.世界におけるビームシールドの弱点は「対ビーム処理の施された近接武器などに突破される」事などが挙げられる[1]。
西暦作品(『機動戦士ガンダム00』)編集
アリオスガンダムとアルケーガンダムに搭載(「GNビームシールド」と呼称)されている。GNフィールドに攻撃性を持たせたものだが、作中では防御装備として使用はされなかった。
アドバンスド・ジェネレーション作品(機動戦士ガンダムAGE)編集
ヴェイガンのバクト(SRW未登場)以降に実装されている電磁力を使用したシールド「電磁装甲(電磁シールドとも)」。ヴェイガンMSの装甲を貫くドッズライフルをも無効化する。
高出力で防御力特化のバクトは機体の広範囲に電磁装甲を展開できたが、後継機のドラド(SRW未登場)やダナジン等は腕部のみとなる。ザムドラーグやレガンナーといった高出力かつ巨大なMSは広範囲に展開できる模様。
他作品の類似の武装編集
一例として、『コードギアス 反逆のルルーシュ』に登場するナイトメアフレームの装備「ブレイズ・ルミナス」が挙げられる。
SRWでの扱い編集
上述の通り、原作では実体盾より防御力が高いとされているビームシールドだが、SRWにおいてはほとんどの作品で実体盾によるシールド防御と変わらない効果を持つ(各作品における詳細な効果は当該項目を参照)。
シールド防御の概念が初めて登場したFC版『第2次』において、盾防御が可能だったのはビームシールド装備機のガンダムF91とビギナ・ギナのみであり、この時点では実体盾と区別されていた。
シールド防御が一般化した『第4次』以降のほとんどの作品では、通常の実体盾と変わらない扱いを受けるようになった。シールド防御とは別名義の特殊能力として扱われていた『第2次G』でも、効果自体は同様であった。
近年ではシールド防御と効果が差別化されている作品もある。例えば『K』では、通常のシールド防御よりもダメージ軽減率が高い上位互換の性能となっている。
『OE』では、シールド防御と軽減率がほとんど変わらない割に発動にENを消費するため、上位互換とは言えなくなっている。また、実体ではない盾で防御するブレイズ・ルミナス、輻射障壁、Eシールド、GNフィールド、ストレインフィールドもビームシールドに近い効果を持つ。
グラフィック自体は初期の作品からあったが、発生演出はプレイステーション2で発売された『第2次スーパーロボット大戦α』からとなっており、防御だけでなくマザー・バンガードの「突撃」の際にも使用される。
余談編集
- 「展開した平面状のビームによる防御」という点では、一年戦争時のゲルググで早くも行われていた。本機の場合はビームナギナタの刃を両側に展開した状態で手首を回転させることで、ビーム刃を盾代わりに用いることができた。ただ、ビームナギナタ自体が扱いづらい兵装だったこともあってか、以後はディジェで同兵装が採用されて以降は宇宙世紀からほぼ淘汰されている。
- ビームシールドは、プラモデル等模型作品では比較的小型な発生機とシールドビームを表現するクリアパーツのみで表現する為、造形コストを抑えられる利点が有った。
- ビームシールドは便利な反面、オールレンジ攻撃と同様に機体デザイン・戦闘演出や装備の単調化を招いてしまった。
- そもそも、大きな実体盾は機体を隠す事によってアニメーターの作業量を省く目的も有ったのだが、必要な時にしかビームを発生させなかったり発生時でも透過しているビームシールドではその利点も薄まり、却ってアニメーターへの負担が増える結果になってしまう。
- また、ビームシールドというガジェットに関して、富野由悠季監督は『F91』制作の折に「これだと(光っているから)目立って敵に居場所がバレてしまうね」と苦笑したという逸話が有る。
- 実際に『F91』劇中では、命令伝達、士気向上を目的にした、つまり目立つことが目的のビームフラッグというビームでできた旗が登場している。
- それらの理由から、ガンダムシリーズにおいては『機動戦士Vガンダム』以降では『機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY』や『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』まで敬遠されて使われなかった事情が存在する。
脚注編集
- ↑ 劾が好んで使用するアンチビームコーティング仕様のアーマーシュナイダーや、ラミネート装甲で構成されたタクティカルアームズの刀身など。