世界観/UX
基本設定
舞台となる地球に、未来や異世界から多くの人間達が集まってくる……というのが基本だが、実際には全く別の理由が存在する。詳しくは後述。
この世界
ここではあくまでも、「ゲームを始めた時に舞台となっている時代のこの世界」について記述する。
地球
作中の年代はサコミズが地上にいた頃から約200年後という言及があるため、西暦2245年前後となる。(が、機動戦士ガンダム00等の設定も考えると矛盾がある) 物語開始以前に2度にわたる地球とプラントの戦争やアロウズとソレスタルビーイングとの戦い、ムーンWILLの侵攻等の出来事があった事が語られているが、細かい経緯が語られないため、時系列順がどうなっているのかは不明(「ガンダム」というMSの存在から『00』1stシーズン→『SEED』、CBとチームDが顔見知りである事から、『ダンクーガノヴァ』は『00』2ndシーズンと同時期と思われる)。
政治体制
機動戦士ガンダムSEED DESTINYと機動戦士ガンダム00、忍者戦士飛影の折衷。大統領直轄の機関としてNIAが存在。
軍事体制
人類の軍事組織としてはSEEDシリーズと00シリーズの勢力を併せた地球連邦軍、ザフト軍、オーブ軍、三大国家に加え、鉄のラインバレルのJUDA特務室・謎の組織加藤機関などが挙げられる。奇械島ではキバ軍とガラン軍、八稜郭が三つ巴の戦いを繰り広げていたが、外界に影響が出なかったため知られていない。
この他、独立した戦力として傭兵部隊「アンノウン・エクストライカーズ」が存在。活動の中で徐々に戦力を拡張して行き、テロリストの嫌疑が晴れると同時に地球連邦直轄の独立行動戦隊「アルティメット・クロスとして承認されている。
また、竜宮島のアルヴィスはフェストゥムへの対策を進めており、オーブやザフトもこれに呼応する形でモビルスーツの開発を励行。このため、本作のモビルスーツは対フェストゥム用兵器としての側面を持っている。
アメリカではブラックロッジが台頭し、アーカムシティに存在する覇道財閥が抵抗を続けているが、戦力差から劣勢を強いられている。
後にハザード・パシャの提言で人類軍が創設。ハザード自身はその議決の場で背任が発覚して逮捕されたが、議案自体は内容を大幅に変更する形で可決されている。
人類以外の組織は特に存在しないが、人外の敵は数多く存在している。
月
機動戦士ガンダムSEED DESTINYの世界観に従い、アルザッヘル基地やダイダロス基地が存在する。
また、獣装機攻ダンクーガノヴァのムーンWILLもかつてここに存在していた。内部にはショウの知る東京を模した空間があり、そこにヒトマキナの本拠が存在する。
コロニー
機動戦士ガンダムSEED DESTINYの世界観に従っているため、同作品に登場するコロニーは全て存在するものと思われる。
プラントは地球連邦に参加しておらず、独立国家扱いになっている。ストーリー中に出たコロニーはプラントのコロニー群、ユニウスセブン。
火星
ハザードの管轄する開拓基地が存在。ジョウ達「飛影」の地球組はこちらにいる。また、明言こそされていないがアグニスなど、ΔASTRAYの登場人物「マーシャン」達もここにいると思われる。
バイストン・ウェル(リーンの翼)
海と地上の狭間に存在する異世界。今作ではリーンの翼のものが採用されている。
シンジロウ・サコミズ率いるホウジョウ国が最大勢力であるが、そのやり方から反発を覚える者も多く、アマルガン・ルドルを筆頭に反乱軍が存在。
日本
スパロボとしては珍しく、スーパーロボットの研究所が一切存在しない(強いてあげるなら、JUDA)。 ハザードいわく、「ユニオンの同盟国だがアジア・ユーラシアの覇権を狙う人革連に対抗して、防衛には特に力を入れている」とのこと。
別世界
この世界とは異なる、別の世界。ここに住んでいた異邦人たちが「集え、始まりのもとに」という言葉を聞き、それに導かれるようにしてこの世界に飛ばされて来る、というのが世界観の基本。
「聖戦士ダンバイン」の世界
ドレイク軍との決戦は既に終了しており、ショウ・ザマ、チャム・ファウ、ショット・ウェポンが転移。また、マーベル・フローズン、バーン・バニングスも生存し、この世界にやって来ている。
移民船団
マクロスFのフロンティア船団およびギャラクシー船団がストーリーに登場。 冒頭のプロローグにおいて、こちら側の世界に偶然に転移してしまう。
中盤でギャラクシー船団もこちら側に転移して来る。
シェーマ星系
ザ・ブーム軍、エルシャンクに乗艦したラドリオ星人達が地球に転移して来る。この時エルシャンクの方は火星開拓基地にいたジョウ達と遭遇、3機のマシンを動かせたことから迎え入れ、ザ・ブーム軍と衝突を繰り返しながら地球圏へと辿り着いている。
なお、彼らは終盤になるまでここが自分達のいた宇宙ではないことに気付かなかった。
三璃紗(ミリシャ)
「三国志」とほぼ同様の構造を持つ異世界。超エネルギーや古代兵器など独自の事象も存在するが、特筆すべきは劉備ら住人達。全員がモビルスーツを模した姿をしているという異色の生命体であり、魂を持った機械の人間、とでも言うべき存在である。
「赤壁の戦い」での最終決戦の最中に「声」が響き、劉備、関羽、張飛、孔明、孫権、孫尚香、周瑜、陸遜、曹操、司馬懿が転移。さらに、この戦い以前に死亡したはずの呂布と貂蝉も出現している。
未来世界
この世界が辿る未来の姿。想像力の喪失によって人類が絶滅し、マキナ達が死を認識することでヒトマキナへと進化した世界である。
加藤久嵩、中島宗美、菅原マサキ、城崎絵美、城崎天児、石神邦生はこの世界の出身。このうち天児は度重なる戦いで肉体を失っており、ラインバレルの電脳に脳を移植している。
電脳戦機バーチャロンシリーズの世界、そしてどこかの世界
奇械島での粒子加速炉消失事故の際、増幅された意志と入れ替わりに引っ張られた意志が存在している。多くの者はそれがフェイ・イェンHDだと認識している。
しかし、実際に呼ばれたのは「どこかの世界」の電脳から呼ばれたボーカロイド・初音ミクであり、その彼女が歌でオリジナルフェイ・イェンことファイユーヴを導き、融合する形で実体化したのがHDである。
初音ミクが元々いた「どこかの世界」については全く謎のままだが、ボーカロイドというものが存在する世界にもっとも適合するのは、スパロボをプレイしている我々が住む「この世界」であろう。
敵勢力
本作の敵勢力は「侵略者」は実の所少なく、別の目的があるか、あるいは完全な誤解であったり、果ては何者かの陰謀に踊らされていたケースも存在。なお、少なくともスクラッグとショット・ウェポンは「声」に導かれてUXの世界に来ている。明らかに地球にとって不都合でしかない彼らをわざわざ呼び出したのは、ヒーローマンやナナジンといった可能性を生ませるためと思われる。フェストゥムやELSと言った存在が地球に到達したのも声によるものなのかは不明。ちなみに、今作はスパロボとしては珍しくオリジナルの敵組織が存在しない。連邦軍の延長である人類軍も途中からは友軍となっており、敵として出るのはせいぜいノーヴル博士傘下の部隊しかない。
- スクラッグ
- 異世界のメンバー同様「声」に導かれた異星生命体で、UXの戦いの火蓋を切った存在。上記の通り、実際にはヒーローマンを誕生させるための咬ませ犬に近い。なお、スクラッグの母星もまた地球のたどる可能性の一つであることが示唆されている。
- 加藤機関
- 久嵩が設立したテロ組織。想像力喪失による人類絶滅を防ぐため、自らが「死」となって人々を抑圧、その反発力としての想像力励起を促していた。
- なお、途中まで呂布隊がここに所属していた。
- フェストゥム
- この世界においてもっとも脅威とされているシリコン生命体群。当初こそ完全に敵対していたが、それは人間という存在を知らないがための擦れ違いであり、UXのメンバーは後に対話による共存を試みる。
- ELS
- 外宇宙の金属生命体。フェストゥムに酷似した性質を持っており、脳量子波に引き付けられる性質を持つ。
- バジュラ
- フロンティア船団を追撃する形で地球圏に転移して来た昆虫型の異種生命体。上記のELSやフェストゥム同様に人間を知らないが故の擦れ違いや、彼らの利用を企む者達の謀略で戦う羽目になる。どういう経緯か不明だが、彼らの母星もこちら側の世界に転移してきている。実は、スクラッグやラドリオ星同様バジュラ本星もまた地球だったらしく、マスターテリオンがヨグ・ソトースの門を呼び出すと同時に地球にも出現した。その後の本星の扱いは不明。
- ホウジョウ軍
- この世界のバイストン・ウェルに存在する国家・ホウジョウの擁する軍隊。国王シンジロウ・サコミズ自身が率いている。サコミズの宿願を果たすべく、オーラロードの開放を狙っている。本作においては、オーラバトラーを生み出したのは前の宇宙から転移してきたショット・ウェポン。
- ヒトマキナ
- 加藤機関本来の敵。人類絶滅後、互いに殺し合い「死」を認識したことで人となったマキナのことを指す。しかし、エレボスによれば生命の証たるオーラ力は持っておらず、実際はただのマキナの延長でしかないことが示唆されている(膨大な殺し合いの経験による「予測」を想像力と取り違えている可能性が高い)。今作では月の内部に潜んでいたが、そこはショウの知る東京であった。交戦機会が約1.5話分と恐ろしく短い。
- ザ・ブーム軍
- エルシャンクを追って地球圏に転移して来た異星人の軍隊。実はある事象のために呼ばれた存在である。
- ブラックロッジ
- 魔術師マスターテリオン率いるテロ組織。幹部格・アンチクロスは世界の支配を目的としているが、マスターテリオン自身には別の目的がある。
- 邪神ナイアルラトホテップ
- 全ての黒幕。マスターテリオンの後ろにいた存在であり、この世界の戦いを仕組んだ張本人。だが……。
世界観の真実
実際には、上記の「別世界」とは、そもそも並行世界のことではない。この世界が辿るであろう、未来の可能性なのである。それを踏まえた上で起きた事象を並べると、このようになる。
邪神ナイアルラトホテップは、「アザトースの庭」を解放すべく、世界そのものに在る仕掛けを施した。それは、目的の達成……即ち、邪神の封じられた宇宙そのものであるシャイニング・トラペゾヘドロンが二つ同時に現れるまで、同じ戦いを同じようにループさせる、というものであった。
その結果、この世界は、未来が幾重にも分岐する⇒分岐した未来の住人達が「声」を聴き、「始まり」であるこの世界、より正確にはその宇宙が滅んだあとの、次の宇宙の、「始まり」に当たる時代に転移する⇒集い、戦う⇒トラペゾヘドロンが揃わなければ、また分岐⇒再び結集……と、同じ物語を延々繰り返すようになってしまった。
これは、そこに生きた人物達の行動にも言える。
200年前、リチャードはノーヴルの主導した粒子加速炉の実験にテストパイロットとして参加していた。しかし、加速炉は増幅する「意志」の力を制御しきれず暴走、リチャードとノーヴルは未来世界へと飛ばされてしまった。その世界で再会した二人だが、人類は絶滅し、世界を救うことは出来なかった。そのためノーヴルは、レプトン・ベクトラーの同期によって疑似的にヨグ=ソトースの門を造り出し、リチャードを次の宇宙へと送り出した。この時にリチャードが連れていたのが、ノーヴルが新たに生み出した命・サヤであった。
これだと31話・32話で明かされた行動が矛盾して来るが、これについてはこう説明することが出来る。
つまり、本編の時代の200年前に暴走に巻き込まれたリチャードは未来へと飛ばされており、本編の時代には既に存在しない。本編でアーニーが出会ったリチャードは、ノーヴルによって前の宇宙からサヤと共に跳んで来た存在だった、ということである。
なお、作中ではほとんど触れられていないが、リチャードが「未来の過去」でノーヴルと再会するつもりだったこととライオットの発展形であるヴィジャーヤに未来の技術である同期臨界が実装されていることからすると、前の宇宙から飛んできたリチャードはストーリー開始以前に一度ノーヴルに会って「過去の未来」の情報を授けている可能性がある。ただし、作中ではノーヴルが一体どのようにして200年前と現在と人類絶滅後の3つの時代に存在しているか明かされないので、確実な推測とはいえない(少なくとも何らかの方法でユガを飛び越えているのは確実なので、あるいはオルフェス・ライラスのデータをもとに自ら作り上げた可能性もある)。
しかし、何度も何度も同じループを繰り返す内、そこに生きた者達の「意志」は可能性となって積み重なり、何億回目かのループにおいていくつかのイレギュラーを生み出した。その一つがヒーローマンである。また、このループにおいては、リチャードが未来へと飛ばされた際、入れ替わりに別の世界から一つの意志を呼び込んでいた。その意志たる電脳の歌姫・初音ミクは、さらに別の世界からバーチャロイド・ファイユーヴを呼び込み、融合する形で実体化。結果として現れたのがフェイ・イェンHDである。
これらイレギュラーの存在と、別のループで旧神となった九郎の干渉により、ナイアの組み立てたシナリオは崩壊、マスターテリオンごとユガの外側へ放逐されることとなった。
………と、ここまでは真実の一端である。
「スーパーロボット大戦UX」の真実
さらなる真相は、実はループを仕組んだナイア自身もまた、無限輪廻に組み込まれた一人に過ぎなかった、というものである。というのは、エンディングにおいて、三璃紗に伝わる「G記」を、この世界に残った司馬懿が書いたものである、という事実が明かされたことにある。このG記には、本編のラスボスであるカリ・ユガが「ジョカ」という名で記されている。そのカリ・ユガは、結局のところナイアの企みの後始末に現れているため、本編以前のいつかのループでも、UXはカリ・ユガと戦っている=ナイアの企みは本編以前のいつかにも行われ、頓挫しているということになるからである。そして、また遠い未来の果てにナイアがループを仕込み、ノーヴルがそれを砕くための仕込みを行う、という流れが再開する。
つまり、UXの世界はナイアの企みとそれによるループさえも一つの事象として無限に廻っているメビウスの輪である、ということである。言い換えれば、ナイアとその行動については「物語の世界そのものを変えようとしたが、本人が物語の登場人物であるため、その行動自体が物語の筋書に沿ったものであった」ということになる。
無論この中には、本編と同じ展開を迎えたループばかりではなく、たとえばUXが敗北したり、スクラッグがいなかったり、あるいはアーニーがアーカムシティで死に、ジンがUXにいる可能性も存在している。
今回の戦いでたまたまプレイヤーの目に触れた可能性が、前のループで人類が絶滅し、スクラッグなどが襲来し、それに立ち向かうのがアーニー、という世界なのだ。これらの事実あるいは推測から判断できることは、「ゲーム中の周回プレイが、ナイアすら巻き込んだ世界のループそのもの」というある種のメタ的なものとなっている。作中の孔明たちが知るG記に記されたジョカとは、要は過去の周回で葬られたカリ・ユガと言うことになる。
ここで注目すべきは、本来UXにいるはずのない人間達である。この世界はループしているとはいえ、またそこにいる面子が同じとはいえ、繰り広げられる物語が同じとは限らない(原作の通りに推移した展開もある、という話。少なくともどこかのループで九郎とアルが旧神となっているのは確定)。それら少しずつ違う物語を繰り返す中で可能性が積み重ねられていき、あるループにおいてそれは新しい運命を選択できるほどに高められることになった。
これによって生き残り、最後の戦いに参加したのが翔子であり、バーンであり、サコミズであり、呂布であり、ブレラなのである。無論、選択の結果命を落とした可能性もある。また、周回で維持される隠し要素のフラグは「過去のループで生存・参戦した可能性の魂の記憶」が呼び起こされた結果と言える。
そして、ループの結果これらの可能性が宇宙を圧迫しすぎたため、次のループへの突入が困難になった場合、それを一度リセットするためにカリ・ユガが現れるのである。ちなみにこの状態に陥った場合、ノーヴルはナイアの企みをカウンターする傍ら、膨れ上がった可能性を一つに収束させるべく暗躍することになる(本編で見られるのはまさにこの展開)。結局、それを知るノーヴルが何者なのかは依然謎のままだが(少なくとも神のような超越者ではなく、作中では何億回もの輪廻の中でトライ&エラーを繰り返す事で真理に近づいて行ったと推測されている)。
またこの事実から、周回プレイの際に登場するキャラクターたちは同一人物ではなく、並行同位体であるという事実が見える。さらに、周回プレイが世界観の一つであり且つ一つのデータ上のキャラでも並行同位体たりうるということは、別周回のデータと他プレイヤーのデータとに境界線がなくなる。この点から拡大解釈をするとプレイヤー一人一人が見ているキャラすら全て並行同位体であるとすら言える(通ったルート・隠しキャラが仲間になる順序・キャラや機体の強化具合、主人公機の名前、果ては戦闘マップにおける行動の順番やフォーメーション、戦術、指揮官/応援役、敵を倒す順番など、スパロボにおいてはあらゆる要素がプレイヤー次第なので)。極端な話、我々のいる現実世界も本作の参戦作品の一つということになる。この場合、フェイの中にいる「彼女」がその登場キャラになるのだろうか。
では、一番最初にクリアした人のG記に記されているジョカは誰のプレイのものかと言えば、言ってしまえばスタッフのものであり、この大々的なループを作った真の黒幕はゲームクリエイターということになる(身も蓋もない話だが確かにその通りである)。実際、本当の神であるナイアやカリ・ユガすら巻き込めるとしたら、その上をゆく「造物主」、UX世界の創造主しかいない。そしてこの認識に基づけば、我々ゲームプレイヤーもまた、創造主と同じ世界の視点を持っているがゆえにナイアやカリ・ユガを超える力があるともいえる。そして、現実世界(ボーカロイド)と物語世界(バーチャロイド)の双方の要素を持つフェイ・イェンHDがUX世界に召喚されたことが、ゲームプレイヤーがこの世界に干渉できるようになった扉が開いたのだと見ることができるのかも知れない。ゆえに第51話でナイアがフェイを究極のイレギュラーにして元凶と畏怖したのである。
ちなみに、孔明が中盤で「並列世界など存在しなかった」と言ってはいるが、これは「ショウ達や久嵩の出身世界など、並列世界だと思われていたのが実はそうではなかった」という意味であり、他のシリーズとは間違いなく並列世界の関係にある。
ここまで複雑な設定になった理由の一つは、世界観トリックの基本が『機神咆哮デモンベイン』の原作に当たる『斬魔大聖デモンベイン』の設定を使用していることである(このゲームでは、世界が何度も同じループを繰り返している)。
またこれに付随する形で見えて来るのが、プレイヤーが知らないだけで、実は考え得る全ての物語がループの中に再現されていた可能性があるという事実である。
前述したように、ゲーム内で展開される物語は「アーニーが中心」「スクラッグがいる」「可能性が限界を迎えカリ・ユガが現れる」という可能性が偶然にも我々の眼に触れた、というだけの話であるため、たとえば1周目と2周目の間に無数のループが存在し、その中で我々が思い描く……それこそ二次創作などで展開されるストーリーが本当に存在していた可能性は大いにある、むしろ確実にあり得るのである。さらに言えば、我々の関わることのできる物語はエンディングの時点までであるため、その後の彼らがどのような運命を辿ったのかは、それこそ我々一人一人に委ねられる(続編や原作ラストへ繋がるフリなど、その後を予想させる要素は多くあるが)。本作でフラグが潰れたラインバレルのストーリーなども、ラドリオ星と同様に現在が神話となるほど遠い未来に同じ展開が発生する可能性も存在する。これもまた可能性の分岐であり、それらはやがて集束し、一つとなる。そうして始まるのが次の周回なのである。
このように、本作の世界観は「周回プレイとそれに伴う各種要素の引き継ぎ」「プレイヤーごとのプレイスタイルの違い」というメタ的な視点を物語の登場人物の視点で解釈し、シナリオ設定の根幹に取り込んだ異色の構成となっている。また、中盤で言及される「死、あるいは敗北の歴史」とは、この視点で言えば敗北条件を満たして全滅した場合の記録とも言える。
余談で述べているようにZの世界観とよく似ているが、違うのは、あちらが最終的にループを断ち切ったのに対し、こちらはループを維持するために最終決戦が行われるという部分(Zの方はループの継ぎ目に泥沼の戦争があるため致し方ないが)。
このようにUXの世界観はシリーズ恒例の並行世界論に加え、「スパロボというゲームの構造」をそのまま流用した特殊なものとなっているため、キーキャラクター達の行動もある程度メタ的に言いかえることが出来る。それで言うと各陣営の行動は、
- ナイア⇒トラペゾヘドロンが揃うまでループ(クリアまで全滅プレイを繰り返し。本人の性格含めてかなりの邪道プレイ。しかもセーブ欄を使えるだけ使っている状態のため、カリ・ユガがプレイできない状態に)
- リチャード&加藤久嵩⇒前の宇宙の経験をもとに行動(一周クリアして二周目に突入。こちらはスタンダード。恐らく大抵のプレイヤーが辿る)
- 石神⇒ジュダの予測に従って行動(過去作の傾向をもとに一周目。慎重派。ジュダの指示らしさがあるが、幾つもの要因が重なったことで想像だにしない展開に)
- マスターテリオン⇒無限輪廻に囚われている(数え切れないほど周回。廃人プレイ。奇しくも中の人ネタ)
- カリ・ユガ⇒すべての可能性を無へ帰す(容量オーバーのため全リセットしてやり直し。自分がプレイするために余計なデータを消して、一周目からプレイ。ナイアがセーブ欄にデータを作りすぎたのが原因)
- ノーヴル⇒可能性を収束して次のユガへ導く(全要素を引き継いで二周目に突入。二周目に必要なことを一周目で全てやった)
と言えなくもないだろう。
余談
『UX』は、過去のスパロボにおけるオリジナル設定に似た要素が散見される。世界観でいえば、
- 『Z』→可能性の分裂→収束がループする世界
- 『MX』→目的が肥大化した可能性の始末をつけるため
- 『OG2nd』→前世の記憶を受け継ぐ存在が干渉している
- 『IMPACT』→人ならざるものが人になろうと足掻く
- 『D』→最終的に世界の破滅そのものを倒す戦い
- また、世界や可能性をつなぐヨグ=ソトースは『αシリーズ』に出てきたアカシックレコードと同等とされ、旧作のように外部から持ち込まれた技術を使い、世界の危機に対抗するためにあえて負荷を与えている存在がいる。
主人公機は
- 『J』の主人公機→素粒子を動力に使用
- 『R』のエクサランス→時空移動機能がある
- 『W』の主人公機→父親キャラの手で宇宙の終焉を飛び越えてきた
- 『K』のレヴリアス→ヒロインが乗る機体との合体機構が存在
- 『L』のラッシュバード→動力を二人で制御しなければならず、暴走すれば甚大な被害を及ぼす可能性がある。
- 『COMPACT3』の修羅神→パイロットになることはその機体に運命を縛られるも同然
また、
- 「アクセル・アルマーとラミア・ラヴレス」→主人公になり損ねたキャラがライバルとなる
- カズマ・アーディガンとアニエス・ベルジュ→章を跨いだ途端口調が変わった人、
- 不適格者の命を蝕む機体、
- 家族同然のライバルにつき従う人でないパートナー、
- 重要な伏線となっている古代の伝承、
- 思想・信条の違いにより敵対せざるを得ない勢力、
- 個人の野望を実現するために罪を自軍部隊に被せた上に、その人物が総司令官となって自軍部隊と敵対する勢力、
- 版権作品出身の黒幕に振り回されているラスボスもいる。
さらに、前世の記憶を受け継ぎながら失敗を糧として積み重ねた結果、
- 破滅をもたらす神を滅ぼす
- 人相当の生命体へ昇華する
- あらゆる力を一つにする
- 「平和による破滅」を阻止する
- 死の運命を覆す
- 存在の起源を知る
- 記憶を集積する
- 機械の支配者を倒す
- 時間を超えた先にある安住の地に移住する
- など人類抹殺以外のラスボスが掲げていた目的も達成していることにも注目したい(形はさすがに異なるが)。
- 人類抹殺も、直前のループでは人類は絶滅しているのが確定なので、達成されていると言える。どこぞのウルトラ仮面とは清々しいほどに真逆である。
- 上記の解釈で行くとUXの世界は「造物主」の作った世界をあらゆるプレイヤーが共有していることになる。あるプレイヤーの世界は当然他のプレイヤーの世界とは直接は無関係だが、当Wikiや攻略サイトなどを通して他の世界に「運命の声」を伝播させることは可能であり、こうした形でもあらゆる世界と繋がっていると言える。
- 本作の動力炉である粒子加速炉で使用されている粒子と言うのは、陽子や中性子など「量子」に分類される素粒子である。量子力学において、「シュレーディンガーの猫」と言う話で語られるように、量子の状態は観測されるまで確定しないという解釈が存在する。つまり、誰かが「ある事象が存在しないこと」を認識するまでは、その事象は存在しているかいないかは非常に曖昧な状態であり、どんなあり得ない可能性も万が一に存在しうるというものである。
これは、数多の可能性が交錯し観測次第で様々に形を変える本作の世界観にも当てはまっている(上述のループの話に置き換えると、誰かが「そのストーリーは存在しない」と確認しない限り、想像されうる全てのストーリーがUXの世界に有り得ることになる)。そのため、粒子加速炉は本作にふさわしい動力炉だと言える。なお、科学的に「絶対に存在しない」ことを証明することはまず不可能(例えば地球にないとしても宇宙のどこかにあるかも、と範囲を無限に拡大できるため)。ちなみに、量子力学では並行世界の話題もあったりする。