ガンダムシリーズにおける、搭乗型戦闘用ロボットの分類の一つ。基本的には以下の2種類に分類される。
宇宙世紀におけるモビルアーマー
宇宙世紀の世界においては、人型の汎用性を犠牲にして、機動力や火力等に優れた機体として開発されている。その構造は様々であり、手足のいずれかがある既存の生物や想像上の怪物を模した様な物であることもあれば戦闘機の様な形状を採る事もある。その大きさゆえにモビルスーツと比較して大型のジェネレーターを搭載出来る為、強大な出力をもち、攻撃力や機動力に優れた機体が数多く開発された。反面、「大き過ぎるために接近された場合の迎撃手段に乏しい」「高出力で燃費が悪いために補給の手間が掛かる」「開発・生産のコストが高く量産に向かない」「地上・水中・宇宙等の限定された単一環境でしか運用出来ない事が多い」等の欠点を抱えている。
自重が増すため、陸上よりも宇宙や水中で使用されるものが多い。また、そのコストから、量産を前提としないワンオフ機ないしは試作機である事がほとんどである。量産されたモビルアーマーには十数機が生産されたビグロがある。また、ジオン公国軍が切り札として持ち出したビグ・ザムには、陸上用量産化プランがあったようだ。木星帝国が開発したカングリジョの運用理念は連邦軍のボールとほぼ等しく、量産前提に設計されたモビルアーマーの代表と言える。それ以外には、ザンスカール帝国のドッゴーラがある程度の数で生産されたような模様もある。
モビルアーマーという分類はジオン公国軍が提唱したものであり、地球連邦軍には少なくとも『機動戦士Ζガンダム』の時代までモビルアーマーに分類される兵器は存在していない。従ってモビルスーツに巨大な武装コンテナユニットを付けたデンドロビウムはモビルスーツに分類される。なお、ボールシリーズについては資料や時代によって「モビルスーツ」「モビルアーマー」「モビルポッド」「戦闘ポッド」等とまちまちであり、未だ安定していない。
また、『機動戦士Ζガンダム』以降に登場する可変機の一部では、モビルアーマー形態を基本とする機体を「可変モビルアーマー」、非人型形態を「モビルアーマー形態」と呼ぶ[1]。
未来世紀におけるモビルアーマー
『機動武闘伝Gガンダム』の世界においては、詳細な設定はなく登場数も少ないが、モビルアーマーも登場している。可変機体ではなく、モビルアーマー単体としては、ネオジャパンのファントマ。可変機体としては、デビルガンダム (最終形態)が脚部を収容した状態がモビルアーマー形態と呼ばれている。なお、ガンダムヘブンズソードやウォルターガンダムなど可変型のモビルファイターも登場しているが、それらの総称は特に定まっていない。
アフターコロニーにおけるモビルアーマー
『新機動戦記ガンダムW』の世界においては、兵器カテゴリーとしてのモビルアーマーという概念は存在せず、また、人型を外した形態の機動兵器自体が、ほぼ皆無である(キャンサーのような脚部のない機体でもモビルスーツとして扱われる)。ウイングガンダムのバード形態のように、従来であればモビルアーマー形態と呼ばれうるものであっても個別の名称が用いられている。
唯一の例外はガンダムエピオンであり、本機の飛行形態のみがモビルアーマーと呼称される[2]。つまり、「AC世界のモビルアーマー」とは、「ガンダムエピオンの飛行形態を指す固有名詞」であり、従って、この言葉の生みの親はトレーズ・クシュリナーダという事になる。『新機動戦記ガンダムW Frozen Teardrop』においては、エレガントさを感じさせる名称ではない事からかドクターJに「ネーミングセンスが無粋」と評されている。
アフターウォーにおけるモビルアーマー
『機動新世紀ガンダムX』の世界においては、詳細な設定はなく、登場数も少ないが、モビルアーマーが登場している。旧宇宙革命軍製のグランディーネやパトゥーリアは大型で非人型、高い火力など基本的な特徴は宇宙世紀作品と同一、その一方で新地球連邦軍には航空機相当の量産型MAとしてガディールが存在する。また非正規の個人ハンドメイドMAとしてエスペランサが存在する。
コズミック・イラにおけるモビルアーマー
コズミック・イラの世界では定義が異なり、宇宙戦闘機の延長である「汎用重戦闘機」のことを指す。すなわち、宇宙世紀では戦闘機に分類されるものがモビルアーマーとして分類されており、劇中ではメビウス、メビウス・ゼロなどが登場している(但しそれとは別に「戦闘機」という分類も存在する)。そのため、大型の人型機動兵器であるデストロイガンダム、四足型のバクゥ等はモビルスーツに分類されている。
一方で『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』では非人型かつ戦闘機とは別物のモビルアーマーとしてザムザザーやゲルズゲー等が登場しており、定義が曖昧になっている。
モビルアーマーの概念は地球連合軍のみに存在し、ザフトではこれに当たる機体は開発されていない。また、宇宙世紀と同様に可変機が登場するが、可変モビルアーマーと呼ばれる機体は存在しないようである。
コズミック・イラにおけるモビルアーマーのもう一つの特徴として、全てが量産を前提として開発されている事が挙げられる。実際に全ての機体が複数生産・配備されている。
西暦におけるモビルアーマー
『機動戦士ガンダム00』の世界である西暦では、モビルスーツ以前の世代の兵器や、宇宙世紀と同様に非人型大型兵器のことを指す。この時代の特徴として、前者は戦車や戦闘機といった通常兵器類もモビルアーマー分類されており、後者は通常サイズのモビルスーツをコアとし、それに合体するタイプのモビルアーマーが多い。スパロボではアグリッサ、アルヴァトーレなどが登場している。
この世界ではモビルスーツが兵器の中心となっており、モビルアーマーの種類は少なく、あまり量産もされていない。特に旧世代型モビルアーマーは人類革新連盟製が殆どで戦車や戦闘機、宇宙用作業ポット、水中用沿岸警備用と幅広い兵器が全て一括でモビルアーマーと呼ばれている。
ポスト・ディザスターにおけるモビルアーマー
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の世界であるポスト・ディザスター(P.D.)では完全自律制御による無人兵器を指し、300年前の「厄祭戦」において人類の1/4を死に至らしめ、文明を崩壊させた存在として扱われている。作中開始時点では、英雄アグニカ・カイエルらによって撃滅されたという話になっていたが、実際は休眠状態に陥ったまま放置されている機体も存在し、作中でもハシュマルとその子機プルーマが登場した。
人間の無差別殺戮が主眼だが、従来のモビルスーツでは全く太刀打ちない程の強力かつ完成された兵器であり、これに対抗するべくガンダム・フレームが開発された。
スーパーロボット大戦における特徴
多くはLサイズでHP・装甲共に高く、スーパーロボットに近い性能。モビルスーツと乗り換え系統を共有しており、こちらに乗せた方が使いやすいパイロットもいる。ただし捕獲システムのある『GC(XO)』などを除くと入手できる機会は少ない。
またモビルアーマーの原作設定に多く見られる「宇宙用」「水中用」というような局所戦闘での優位についても、ゲームバランス上の按配が重視されて、スーパーロボットや主人公機を始めとした元々対応力の高いユニットで十分な戦力が賄えたり、乗り換えるより強化パーツ等で補強する方がローコストでツブシが利く場合が多い。むしろ設定を忠実に反映されると、「特定ステージ以外では使いにくい」という敬遠要素に繋がってしまいやすいのが実情と言える。
基本的には敵として登場し、その高いHPや装甲に火力に加えほとんどのモビルアーマーが持つバリア系統の特殊能力とMAP兵器によって、中ボス的ポジションとして自軍を苦しめる。サイズ差が重要な『GC』では、捕獲すれば対戦艦など大型ユニット戦で実力を発揮する。
追加装備モジュールを持つMSは同作品の主役機である場合が多い為入手できる機会が多いが、参戦作品の都合上、『Z』以降作品では戦艦との合体攻撃として登場する場合が多い。
『SEED』の汎用重戦闘機は、性能は他のスパロボの戦闘機とは大差がない。なお、『DESTINY』の設定を含む場合ほぼ味方として登場しない。