AV-98イングラム

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AV-98イングラム(AV-98 INGRAM)

『パトレイバー』のシリーズを通して主役を務めるレイバー。従来の警察用レイバーでは激化するレイバー犯罪に対抗しきれないと判断した篠原重工八王子工場の打ち出したAV(Advanced Vehicle:次世代車両)計画により開発された次世代型警察用レイバー。

それまでのレイバーに比べより人間に近い動作、シルエットを実現しており、人間の手を精巧に模したマニピュレーターは豊富な手持ちオプションの使用を可能とし、モーショントレース機能を使用すればロープを蝶結びしたり、あや取りをする事すら出来るようになる。
運用時には現場まで輸送用のレイバーキャリアで運ばれ、運用中は指揮車からの指示を元に動くのが基本となっている(が太田は指揮を無視して動く事がしばしばある)。

特筆すべきは搭乗者の泉野明や太田功をして「趣味の世界」「趣味的」などと言わしむ外見であり、作業機械の範疇を逸したいわゆる「正義のヒーロー」的な印象を与えるスマートなデザインをしているが、これは一般人や犯罪者に対する「見る者に与える心理的影響」までも考慮して設計された結果である。スタイル重視の結果、居住性は極めて悪くなっている。
更に、一見貧弱な印象も与えうる細身のシルエットだが、繊維強化金属とFRP装甲の装甲と各部に搭載された超電導モーターにより、軽量な本体重量による軽快な運動性と、敵レイバーとの格闘戦にも耐える堅牢性とパワーを両立している。ただし、マニピュレーターは前述したような精密な動きを可能とする分繊細で壊れやすく、かつ高価な部品の一つでもあるため基本的に「パンチ」はご法度とされている。
基本的に警察官が所持する装備をレイバーサイズにした武装を装備している。また警察官の任務では殺傷が禁じられているため、威力の高い射撃武器は使用を控えられることが多い。

操縦者がいつでもイングラムの首元から顔を出し、現場を自ら目視・観察できるようになっている。だがコクピットの気密性がかなり低いという欠点を孕んでおり、TVアニメ第3話ではうっかり2号機が海に落ち太田が溺れかけている。

媒体により細部のデザインが微妙に異なる。代表的なのは頭部アンテナ(形状や配色)、バックパックのファンダクト形状(長方形と円形)、肩部パトライトなど。

搭乗者

基本的に人間の出来る動作はほぼ全て再現可能だが、搭乗者の蓄積させたモーションデータにより成長や特性ががらりと変わってくる。

イングラム1号機
シリーズの主人公である泉野明が搭乗する。機体の損傷を嫌うのもあって、主にイングラムの器用さを活かした戦い方が目立つ。アニメ版では野明が昔飼っていたペットの名前を取って「アルフォンス」と呼ばれ非常に大事にされている。
イングラム2号機
太田功が搭乗する。1号機とは対称的にパワーを活かした、射撃や格闘などで相手を力任せに捻じ伏せる戦い方が目立つ。そのため野明の1号機に比べ圧倒的に損傷が多い。
アーリーデイズでは後半に右肩を赤くした通称レッドショルダーと呼ばれる形態となった。それ以外のメディアでは頭部の形状が1号機と異なるが、漫画版では太田が頭部をしばしば破壊して帰ってくる為に純正パーツが足りなくなり、急遽試作型の頭部に換装されたと説明されたが、テレビ版では最初から形状が異なっており、機体を識別する為(もしくは、様々なデータを収集する為)に頭部の形状を変更したと思われる。
劇場版2作目では頭部を旋回した際アンテナを壁にぶつけてへし折るシーン(つまり戦闘ダメージではなく自損)があり、太田の性格を象徴している。
イングラム3号機
基本的には予備機として保管され、データ収集用などに使われるが、有事には1号機のデータを使って動かされる事が多い。
しかしTV版では劇中で電子戦向けの強化が成され、ECM機能やECCM機能等を搭載した頭部に換装された。頭部の形状は2種類あり、テレビ版ではメインとサブのセンサーを統合した一つ目のカメラと巨大化したアンテナが特徴であった。この頭部はプレイステーション版ゲームの第1話で破壊され、新しい頭部に換装された。新型の頭部は1号機の意匠を受け継いだデザインだが、ECM用のセンサーが各部に取り付けられており、使用時には頭部からセンサーが突き出てくる形状から「メデューサ」と呼ばれる。
ファントム戦時の遊馬、後期OVAの対グリフォン戦での香貫花、PS版での主人公(プレイヤー)操作機、更に劇場版2では第一小隊隊長の南雲しのぶが搭乗するなど、使用したパイロットが一番多い機体である。
なお、電子戦機能を強化した結果、機体単価が1号機や2号機より高額になり、おいそれとは使えない機体になってしまう(専任パイロットがPS版主人公の赴任まで居なかった事もあるが)。また、パイロットが頻繁に入れ替わったのでECMの活用以外の戦闘スタイルが定まらなかったが、PS版ではプロレス技をメインに使用している。

登場作品と役柄

コックピットに気密性がないことによって(原作での戦闘はほぼ陸上戦のみだったためあまり問題にならなかった)宇宙戦に対応できないことがユーザーに懸念されていたが、難なく宇宙マップに戦闘ユニットとして参戦した。

単独作品

スーパーロボット大戦OperationExtend
初登場作品。1号機と2号機が登場。基本的に陸戦兵器なのだが案の定、途中から宇宙戦仕様にも改修される(特に気密性)。宇宙構造物の表面など足場があれば問題なく活動できるようになっているが空間戦闘には対応しておらず、足場のない宇宙空間のみのステージでは出撃不可となる。
基本的な攻撃力は低いが、1号機・2号機共に特殊能力「パトランプ」による気力ダウン効果があり、1号機はさらに様々な特殊効果武器を持ちサポートに秀でた性能となっている。一方で2号機は武器に「対空」「対大型」が入っているため、相手次第では他ユニットに引けを取らない戦いができる(パイロットの「警察官」技能で攻撃力に補正が入っているのも大きい)。

装備・機能

電磁警棒(スタンスティック)
左腕部に装備したシールドの裏に収納された電磁式警棒。普通の警棒のように打撃武器として使ったり、突き立ててスパークさせる事で敵レイバーの電装系にダメージを与えるなど、用途は幅広い。なお漫画版の前半では先端を尖らせただけの特殊警棒を使用していた。
SRWでは「スタンスティック」の名称で登場。名前通りの「スタン」と「ガードアーム」の特殊効果を持つ。
SRWOEでは格闘戦が得意な野明の1号機と、射撃戦が得意な太田の2号機とでは挙動が異なり、2号機は一閃するだけだが、1号機は一閃した後にトドメの突きをお見舞いする。
37mmリボルバーカノン
イングラムの右脚側面に収納されているレイバーサイズのリボルバー式ハンドガン。装弾数6発。
使用弾は基本的に貫通による被害を防ぎ、且つそれなりに強力な犯罪者のレイバーに対しても十分なストッピングパワーを確保する為にホローポイント弾が採用されている。他にも用途に応じてウイルス弾や磁気ネット弾なども使用可能。漫画版ではブロッケンに対抗した徹甲弾も開発された。ちなみに予備弾薬は左脚の側面に収納されているがクイックローダーが無い為、人間が手で装弾する。
ちなみにアーリーデイズでは20mmとされていたが、何時の間にやらドサクサ紛れに37mmに名称変更された。
SRWOEにおいては、こちらも1号機と2号機では挙動が異なり、1号機は単発の発砲だが、2号機では計4発を乱射しその全てを命中させる凄腕を披露している。特性も、1号機が「エスケープ」、2号機が「対大型」と違う。
90mmライアットガン
特車二課の装備する中では最大火力を誇るレイバー用ショットガン。
整備員のシバシゲオが予備の材料を掻き集めて4ヶ月と16日を掛けて作り上げたり、最初から特車二課の10号ロッカーに保管されてたりと導入は媒体によって異なる。あまりに威力が高い為、余程の事が無い限りは使用が自粛されているが、有事の際には主に2号機が使用している。
弾種は通常のショットシェルの他に爆裂弾やライフルスラッグ弾などがある模様。整備員のブチヤマ曰く「ライアットガンでもライフルスラッグ弾を使えば装甲車や軍用レイバー程度なら結構イケる」らしい。
SRWではOEにて2号機の武装として登場。「対空」「押出」の特殊効果付き。
ワイヤー
イングラムの股間部に装備されているウィンチワイヤー。細いながらもイングラムの自重すら支える頑丈さを誇る。野明はTV・漫画版共にこれの扱いに長けている。
OEにて1号機の武装として登場。攻撃力は低いが「捕縛」の特殊効果が非常に強力。105と低めながら気力制限があるものの、命中補正が非常に高いうえに当たれば反撃をキャンセルし、移動後に使用可能な上射程も長めで、さらに1ターンの間ステータスを低下させる効果付き。さらに「曲射」特性もあるので障害物を挟んでの使用もでき、ボス級の敵や回避の高い相手と戦う際に重宝する(ただし分身は無効化できない)。しかし、ヒートロッドの前例があるとはいえ、スパロボでは戦艦や惑星サイズの敵すらもたやすく縛り上げるこのワイヤーの全長と強度はどうなっているのだろうか。
シールド
左腕部に装備された「警視庁」のロゴマークが目を引くシールド。
OEではシールド防御の特殊能力で表現され、一撃が致命傷になりやすいイングラムの生命線となっている。
リアクティブアーマー
劇場版2で使用された。モスグリーンカラーのジャケットを思わせる外観。元々は自衛隊の99式ヘルダイバー用に開発されたものを流用した追加装甲である。
多脚型レイバー「イクストル」の20mmバルカンの斉射からパイロットを護った。
ECM、ECCM
電子戦装備の改修を受けた3号機の追加装備。電子戦での機能使用時には3号機の頭部が展開され、その奇怪さ故に「メデューサ」等と呼ばれることもある。
TV版の対ファントム戦や後期OVA版の対グリフォン戦、劇場版2の対イクストル、ゲームエディションの対ガネーシャ戦等で使用された。

合体攻撃

一斉攻撃
OEで実装されたイングラム1号機と2号機と零式による同時攻撃。まずは2号機のライアットガンと零式のリボルバーカノンで牽制、そして1号機のスタンスティックで止めをさす。「スタン」の特殊効果付き。

特殊能力

1号機・2号機共通。

シールド防御
シールド防御を発動。
パトランプ
パトランプには軍の精鋭すら気力を削がれ、宇宙生物心を持たない機械、地球とは別の権力機構にあるにも効力を発揮する。おそらくは戦場でチカチカされると気を散らされてしまう、ということなのだろう。
グループ (GR)
イングラム1号機と2号機と零式グループ出撃が可能。

移動タイプ

サイズ

Sまたは2

機体BGM

「そのままの君でいて」
TVシリーズOP1。OEで採用。
「コンディション・グリーン ~緊急発進~」
TVシリーズOP2。合体攻撃と連携攻撃のBGMとして採用。

関連機体

零式
後継機。劇場版1作目では1号機と接戦になった。
グリフォン
ライバル機。その因縁は漫画版から始まってTVシリーズに輸入され、後期OVA版・漫画版最終巻まで続いた。
AV-98Tドーファン
イングラムの試作機を元にして作られた教習機。漫画版では一般向けにも販売されていた。SRW未登場。
AVS-98zイングラム・エコノミー
部品の精度や機能を簡略化してコストを下げる事で量産化を狙った機体。しかし、簡略化しすぎた為に様々な機能低下を引き起こし、晴海のレイバーショーでグリフォンに一蹴された。SRW未登場。
AVS-98Mk-IIイングラム・スタンダード
テレビ版と漫画版双方に登場。扱いは大きく異なっており、テレビ版ではエコノミーの反省点を踏まえて開発され、一時は第1小隊に配備が内定していたが諸々の事情で見送られた。SRW未登場。
漫画版ではAVS-98の名称で登場。新設予定だった第3小隊の発足が白紙になった為に第1小隊に配備された。
MPL97AV-T教習用レイバー
初期OVA(アーリーデイズ)における試作機で教習用に改修された。性能はイングラムとほぼ同じである。SRW未登場。
イングラマン
NEW OVAシリーズ15話『星から来た女』にて登場。
AV98星雲人と一体化した泉野明がバイザー型の変身アイテムを身につける事で変身した姿。
CLAT基地を襲撃するウツミー星人が送り出した怪獣「グリフォン星獣」と果敢に戦うものの、敗北。
傷ついたイングラマンは母星から来たゼロにより共に故郷へと帰るのであった…。
…ここまで読めば解るだろうがウルトラマン及びウルトラセブンのパロディである(余談だが野明の中の人はウルトラセブンの弟子が活躍する話にレギュラー出演し、怪獣に殺された少女(ウルトラセブンも行方不明に)を演じたことがある)。
ちなみにこの回はTVシリーズ44話に続く夢オチ回であり、全編にわたってウルトラマンのパロディに溢れているため、必見。

余談

  • ガンダムシリーズの「ジェガン」とはデザイナーが同じ人で、頭部が似ているとネタにされることが多く、プラモデルをイングラム風に改造した画像がネットによく投稿される。
    • SDガンダムの武者ガンダムの世界では「慈絵丸」というキャラクターがいるが、デザインは元となったジェガンと異なる部分が多く、肩の赤色灯やカラーリングからしてイングラムが元ネタと言っても過言でないものとなっている。
    • また、劇場版作品『SDガンダムの逆襲』(同時上映は劇場版パトレイバー第1作)には頭に十手を備え提灯を持つ「自衛丸」という岡引風のキャラクターが登場するのだが、こちらもジェガンよりイングラムの方が似ている。

商品情報

プラモデル

  • 1/35

  • その他

フィギュア

  • リボルテック(海洋堂)

  • その他