概要
サイコミュの基礎機能を持ったLSIクラスのコンピューターチップを、金属粒子レベルで組み込んだモビルスーツ用の特殊フレーム。フレーム材質としては宇宙世紀0093年当時のMSのフレームに使用されるものに比べ若干軽量であるが、強度的にはアップしている。従来のサイコミュシステムは親機となる装置が必要で、MAクラスのサイズが要求されたが、このフレームをコクピット周辺部に組み込むことにより、MS内に占めるサイコミュ装置のスペースが大幅に縮小された。
初出は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』。ネオ・ジオンが実用にこぎつけた技術ではあったが、アムロと互角の状況で戦いたいというシャア・アズナブルの意思により、意図的にアナハイム・エレクトロニクスを通じて地球連邦軍(ロンド・ベル)へと流出させることになる。また、徳間書店より刊行された小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 後編』では前述の理由の他に、「地球を汚染する自分をアムロに止めてほしかった」というシャアの真意が隠されていた事が分かっている。
劇中、フレームのサンプルを身に付けたチェーン・アギの感覚が鋭敏化したり、搭乗したリ・ガズィにα・アジールのメガ粒子砲が直撃した際にメガ粒子を弾いたり、彼女の死に際してサンプルが眩い光を発するなど様々な現象を引き起こした。これらの現象については製造した側としても未知であったが[1]、引き起こした現象の中で最たるものはνガンダムとサザビーに搭載されたサイコフレームが、多くの人々の意思を吸収したことで共振を引き起こし、地球に落下しかけたアクシズを宇宙に押し返した(アクシズ・ショックと呼称され、これを『サイコフィールド』と呼んでいる)ことである。
たった2機のMSのコックピット周辺フレームに使用されていた程度の金属がアクシズを押し返すほどの力を発揮したというこの事実は連邦軍に衝撃を与え、常人では扱いきれない未知の領域の大きさが危険視され公式には中止と謳われた。しかし規模大きい奇跡の力たるこの技術を巡って連邦ジオン限らず様々な組織から狙われてしまう側面も生み出した。
例えば『機動戦士ガンダムUC』においてサイコフレーム研究はアナハイム・エレクトロニクスの協力の下、極秘裏に進められた結果、UC計画において全身にサイコフレーム処理を施した実験機ユニコーンガンダム、シナンジュが開発される。ユニコーンガンダムは劇中において、Z同様のジェネレーター限界を超えた巨大ビーム・サーベルの発振、ZZ同様の推進機構を持たないパーツの遠隔操作、大型貨物船を単機で引っ張り上げてワイヤーに接続する、と言った力学的に不可能な現象を普通に引き起こしており、決戦時には他者の意識・記憶に干渉、オールドタイプの思念をユニコーンをアンテナとして送受信させることにより擬似ニュータイプ部隊を編成、バナージの元に呼び寄せている。
『UC』の数ヶ月後を描いた『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』(SRW未参戦)では依然サイコフレーム技術は連邦が独占管理しているようである。『UC』の1年後を描いた『機動戦士ガンダムNT』では、ユニコーンガンダムとバンシィがメガラニカで発動させた人知を超えた力をミネバは恐れ、連邦軍との間に今後のサイコフレームの使用を一切禁ずる「サイコフレーム封印協定」を締結した。とはいえ、関連技術は封印しても発想が残る限り再び生み出されてしまうことは宇宙世紀後年たる『F91』の存在を見ても明らかである。
サイコフレームの「フレーム自体に電子機器を埋め込む」というアイデアは後にマルチプル・コントラクション・アーマー(MCA)技術へと発展していく。劇中ではサイコフレームの存在には触れられていないが作品時系列的に『逆襲のシャア』『UC』の後の作品である『機動戦士ガンダムF91』では主役機であるガンダムF91はサイコフレームを搭載しているとされる。
なお勘違いされがちだが、サイコフレームはあくまでも「サイコミュの基礎機能を持ったMS用の構造部材」であり、サイコフレーム自体はサイコミュシステムではない。『UC』では非常に大きな存在として扱われたサイコフレームだが、それ自体は本来あくまでただの「効率の良いサイコミュ」でしかなく、サイコミュの基礎機能をMSのフレーム側に持たせる事で、サイコミュシステム全体を小型・軽量化する、という技術である。サイコミュシステム自体は、例としてνガンダムはコクピットシートの裏に搭載、ユニコーンガンダムの場合はNT-Dそのものがサイコミュシステムである。
そのためただ装着しただけで超常現象を起こすような都合の良いパーツでは無いという事は劇中表現からして確かであり、逆にサイコフレームが無くとも特定の人物のニュータイプ能力の高まりによって同様の現象が発生しうることは、アムロとベルトーチカの子供(小説ベルトーチカ・チルドレンでの設定)が起こした現象を見れば明らかである。
搭載された主なMS
連邦系
- νガンダム
- Hi-νガンダム
- 量産型νガンダム(フィン・ファンネル装備型)
- ユニコーンガンダム(フルアーマー・ユニコーンガンダム)
- バンシィ(バンシィ・ノルン)
- フェネクス
- ナラティブガンダム
- ガンダムF91
ジオン系
強化パーツ『サイコフレーム』
運動性向上系の強化パーツとしてたびたび登場(旧作品では限界反応もセットで登場)。同系列のパーツの中では上級クラスの性能を誇る。
- 第4次スーパーロボット大戦(S)
- 運動性+10、限界+25。
- 反応系パーツとしては限界のアップ値は最高。
- 新スーパーロボット大戦
- 上昇数値は『第4次』と同じだが、本作にファティマとALICEは登場しない為、反応系最上位のパーツとなっている。
- スーパーロボット大戦F(完結編)、スーパーロボット大戦α、COMPACT、COMPACT2
- 運動性+15(αは+10)、限界+30。
- スーパーロボット大戦64、スーパーロボット大戦α外伝
- 運動性+20、限界反応+30。
- 第2次α、第3次α、MX
- 運動性+25、クリティカル補正+10。
- スーパーロボット大戦Operation Extend
- 回避+50、命中+40。サイコ・フレームと中黒入りで表記されている。
- スーパーロボット大戦30
- 運動性・照準値+15、移動力+1。特殊能力と区別するためか、補助サイコ・フレームと表記されている。
- DLC第1弾では強化型の補助サイコ・フレームSが登場。運動性・照準値+20、移動力+2。
関連作品
- リアルロボット戦線
- 移動力+1、機動力+10、攻撃力&命中率+10%、装甲+300。強力だがMSしか装備できない。
特殊能力『サイコフレーム』
発動時に劇中チェーンが持っていたサイコフレームのサンプルが登場するためか、νガンダム専用の特殊能力としての登場になっていたが、『UC』単独で参戦した『BX』では搭載していた機体に追加された。
- Zシリーズ
- 強化パーツではなくνガンダムの特殊能力として採用。同シリーズでは標準仕様となっているが、同じく搭載されているはずのサザビーやヤクト・ドーガ、シナンジュ、クシャトリヤ、ユニコーンガンダム、バンシィ(バンシィ・ノルン)、シャンブロ、ネオ・ジオングには未実装。
- 気力130になると機体性能の全てが1割増しのスペックとなり、総合能力が向上している。グリプス紛争期にあたる時期のアナハイム社がこれの開発に成功したのは、黒歴史時代のモビルスーツの残骸を入手・解析した結果であった。イベントでも重要なポジションについており、『Z』では最後の最後で大きな役割を果たすことになり、『第3次Z時獄篇』でも続くことになる。ちなみに『時獄篇』において、このサイコフレーム技術やガンダム自体が禁断の領域に踏み込んでいる可能性があると思しきセリフがある。
- スーパーロボット大戦Operation Extend
- 強化パーツだけでなく特殊能力版も採用、Zシリーズ同様νガンダムの専用能力で、同じく搭載されているはずのサザビーには未実装。気力が一定値以上のとき、回避率とクリティカル率アップ、戦闘時に戦闘結果に関係なくSP上昇の効果。Lv制で、機体改造度に応じて効果アップ、同時に発動気力が低減していく。こちらもサイコ・フレームと中黒入りで表記。
- スーパーロボット大戦BX
- クシャトリヤ、シャンブロ、ローゼン・ズール、ネオ・ジオングの特殊能力として採用、ユニコーンガンダム、バンシィ並びにバンシィ・ノルン、シナンジュの特殊能力として「フル・サイコフレーム」が採用されている。
- ニュータイプL5以上で気力130になると機体性能の向上になっている。
- スーパーロボット大戦V
- Zシリーズ同様の仕様で、気力130以上で発動する、νガンダム専用の特殊能力。
- スーパーロボット大戦X、スーパーロボット大戦T
- νガンダム同様、Hi-νガンダムにも搭載されている。基本的な仕様は『V』と同じ。
- スーパーロボット大戦30
- 『X』、『T』同様の機体には搭載されているが、量産型νガンダムには搭載されていない。なお、本作のνガンダムのサイコフレームは『気力130以上で移動力+1』という効果が含まれているのに対して、Hi-νガンダムのものにはその効果が含まれていない。
関連項目
余談
- 『機動戦士ガンダム ANAHEIM RECORD』を連載している近藤和久氏は同作品の3巻内でアクシズ・ショックを「アムロの緊急時の脳波をνガンダムのサイコフレームが増幅、更に共鳴した事で際限無く増幅しアクシズの軌道を変える程の磁場の歪みを形成して起こした物」と描いている。但し近藤氏は「νガンダムからユニコーンガンダムに移行するために勝手な理屈を作ってみた次第」と書いており、直後には「けど、本当はよくわからんよ」と〆ている。
- 近年ではサイコフレームそのものに特別な力が備わっていると記述される事が増えており、『電撃ホビーマガジン』2012年2月号ではサイコフレームは発動状態になると物理法則を飛び越えて異常に固くなるなどオリハルコン的金属です。と答えていたり[2]、2019年5月14日のガンダムNTのインタビュー[3]にてサイコフレームは近くで死んだ人の魂を吸収する性質を持つと福井晴敏氏がそれぞれ設定を公開している。ユニコーンガンダムがバナージでの意思ではないところで勝手に動いたのはバナージの父がサイコフレームに宿っており、バナージが無意識に父さん!と叫ぶのもそのせいだとされる。福井氏いわく(サイコフレーム搭載機は)極端な話あの世からの補正がかかるとのこと。
- 逆に言えばそういった記述がされる前(『UC』執筆以前の作品)は、サイコフレームではなくニュータイプの力だという解釈もできた。例えばサイコフレーム搭載機とされるガンダムF91は劇中でνガンダムのような特別な力は発動しておらず、『機動戦士ガンダムF90』では作中の登場人物がアクシズ・ショックを「ガンダムの力」だと表現している。
- 2010年夏のサンライズフェスティバル、富野由悠季と福井晴敏によるトークショーにおいて「サイコフレームって、あれじゃないですか。言ってみればイデオンと同じ原理みたいな感じでしょ」と指摘し、富野監督は認めている。富野監督自身は2009年に公開された『リング・オブ・ガンダム』関連のインタビューにおいても既に、「サイコミュ的な波動という物と、イデが持つエネルギーは本質的には同じ物」と端的に語った事がある。
資料リンク
脚注
- ↑ 実際に『機動戦士ガンダムUC』の作中で、アナハイムの技術者であるアーロン・テルジェフは「なぜ発光しているように見えるか造った我々でも分からない」と発言していた。しかし後に彼はバナージ・リンクスが操縦するデストロイ・モード発動時のユニコーンガンダムのデータを検証することによって、サイコフレームの発光のメカニズムについては解明した。
- ↑ 漫画やRPGなどのファンタジー系作品では神秘的な力を持った金属として度々登場しているが、ここで例えに出しているオリハルコンについては詳しい記述は無い。
- ↑ ガンダムNTパッケージ版発売記念福井晴敏氏(脚本)×吉沢俊一氏(監督)スペシャルインタビュー『https://www.famitsu.com/news/201905/13175546.html』