AV-98イングラム

2022年10月1日 (土) 06:39時点における (トーク | 投稿記録)による版 (→‎概要)

AV-98イングラムは『機動警察パトレイバー』『機動警察パトレイバー the Movie』の主役メカ

AV-98 イングラム
登場作品
デザイン 出渕裕
初登場SRW スーパーロボット大戦Operation Extend
SRWでの分類 機体
テンプレートを表示
スペック
分類 警察用レイバー
型式番号 AV-98
全高 8.02 m
本体重量 6.00 t
全備重量 6.62 t
動力 超伝導モーター
電力供給型内蔵バッテリー
装甲材質 繊維強化金属
FRP装甲
開発 篠原重工八王子工場
所属 警視庁警備部特科車両二課
主なパイロット 泉野明
太田功
テンプレートを表示

概要

従来の警察レイバーでは、激化するレイバー犯罪に対抗しきれないと判断した篠原重工八王子工場の打ち出したAV(Advanced Vehicle:次世代車両)計画により開発された次世代型警察用レイバー。

それまでのレイバーに比べより人間に近い動作、シルエットを実現しており、人間の手を精巧に模したマニピュレーターは豊富な手持ちオプションの使用を可能とし、モーショントレース機能を使用すればロープを蝶結びしたり、あや取りをする事すら出来るようになる。

運用時には現場まで輸送用のレイバーキャリアで運ばれ、運用中は指揮車からの指示を元に動くのが基本となっている(が太田は指揮を無視して動く事がしばしばある)。

特筆すべきは搭乗者の泉野明太田功をして「趣味の世界」「趣味的」などと言わしむ外見であり、作業機械の範疇を逸したいわゆる「正義のヒーロー」的な印象を与えるスマートなデザインをしているが、これは一般人や犯罪者に対する「見る者に与える心理的影響」までも考慮して設計された結果である。スタイル重視の結果、居住性は極めて悪くなっている。

更に、一見貧弱な印象も与えうる細身のシルエットだが、繊維強化金属とFRP(繊維強化プラスチック)による装甲と各部に搭載された超電導モーターにより、軽量な本体重量による軽快な運動性と、敵レイバーとの格闘戦にも耐える堅牢性とパワーを両立している。ただし、マニピュレーターは前述したような精密な動きを可能とする分繊細で壊れやすく、かつ高価な部品の一つでもあるため原則として「パンチ」はご法度とされている。

基本的に警察官が所持する装備をレイバーサイズにした武装を装備している。また警察官の任務では殺傷が禁じられているため、威力の高い射撃武器は使用を控えられることが多い。

操縦者がいつでもイングラムの首元から顔を出し、現場を自ら目視・観察できるようになっている。だが、そのせいでコクピットの気密性がかなり低いという欠点を孕んでおり、TVアニメ第3話ではうっかり2号機が海に落ち太田が溺れ、心臓マッサージを行うシーンがある。

媒体により細部のデザインが微妙に異なる。代表的なのは頭部アンテナ(形状や配色)、バックパックのファンダクト形状(長方形と円形)、肩部パトライトなど。

搭乗者

基本的に人間の出来る動作はほぼ全て再現可能だが、搭乗者の蓄積させたモーションデータにより成長や特性ががらりと変わってくる。

イングラム1号機
シリーズの主人公である泉野明が搭乗する。野明は漫画版で描写されているように太田ほど射撃が得意ではなく、また機体の損傷を嫌うのもあって、突進してくる相手の足を払って後ろをとってスタンスティックを打ち込み相手の動きを止めるなど、主にイングラムの器用さを活かした戦い方が目立つ。漫画版では、遊馬から蓄積したデータを見せられた熊耳の指示に従って野明が操作したところ、1号機は向かってきた2号機を「一本背負い」してみせ、野明と太田に衝撃を与えた。アニメ版では野明が昔飼っていたペットの名前を取って「アルフォンス」と呼ばれ非常に大事にされている。
イングラム2号機
太田功が搭乗する。太田は射撃が得意(ただし動いている目標に当てるほどの驚異的な腕前があるわけではない)ため発砲シーンが目立つが、それ以上にパワーを活かして相手を力任せに捻じ伏せる戦い方が多い。結果的に野明の1号機に比べ圧倒的に損傷が多い。
『アーリーデイズ』では第1話から上半身を損傷するなどし、後半では右肩を赤くした通称「レッドショルダー」と呼ばれる形態となった。漫画版と劇場版以降のアニメーション作品では、頭部の形状が1号機の顔面にゴーグル状の別パーツをかぶせたようなデザイン[1]になっている。漫画版では当初は『アーリーデイズ』と同様に1号機と同じだったが、次の回で遊馬が「太田が頭部をしばしば破壊して帰ってくる為に純正パーツが足りなくなり、急遽試作型の頭部に換装された」と説明している。テレビ版では最初から形状が異なっている。その話題になると他の話が割り込んできて説明されないという演出がされているため、機体を識別する為(もしくは、様々なデータを収集する為)に頭部の形状を変更したのか、それとも漫画版と同じ設定なのかは不明。
『アーリーデイズ』第7話ではトンネル内で屈伸した体勢から屹立しようとして頭部をトンネルの天井にぶつけ潰してしまう一幕や、劇場版2作目では頭部を旋回した際アンテナを壁にぶつけてへし折るシーンが有り(何れも戦闘ダメージではなく自損)、太田の性格を象徴している。
イングラム3号機
漫画版では存在はするものの配備はされておらず、まともに登場するのはTV版以降である。基本的には予備機として保管され、データ収集用などに使われるが、有事には1号機のデータを使って動かされる事が多い。
TV版で劇中で電子戦対策が必要になったため、急きょECM機能やECCM機能等を搭載した頭部に換装された状態で投入。1号機と同様の頭部をベースに、メインとサブのセンサーを統合した一つ目のカメラと巨大化したアンテナが特徴であった。この頭部はプレイステーション版ゲームの第1話で大破。新しい頭部に換装され、後の劇場版2もその頭部で登場する。新型の頭部は1号機の意匠を受け継いだデザインだが、ECM用のセンサーが各部に取り付けられており、使用時には頭部からセンサーが突き出てくる形状から「メデューサ」と呼ばれる。
対ファントム戦時の遊馬、後期OVAの対グリフォン戦での香貫花、PS版での主人公(プレイヤー)操作機、更に劇場版2では第一小隊隊長の南雲しのぶが搭乗するなど、使用したパイロットが一番多い機体である。
なお、電子戦機能を強化した結果、機体単価が1号機や2号機より高額になり、おいそれとは使えない機体になってしまう(専任パイロットがPS版主人公の赴任まで居なかった事もあるが)。また、パイロットが頻繁に入れ替わったのでECMの活用以外の戦闘スタイルが定まらなかったが、PS版ではプロレス技をメインに使用している。

登場作品と操縦者

コックピットに気密性が無いことによって(原作での戦闘はほぼ陸上戦のみだったためあまり問題にならなかった)宇宙戦に対応できないことがユーザーに懸念されていたが、難なく宇宙マップに戦闘ユニットとして参戦した。

単独作品

スーパーロボット大戦Operation Extend
初登場作品。1号機と2号機が登場。基本的に陸戦兵器なのだが案の定、途中から宇宙戦仕様にも改修される(特に気密性)。ただし、宇宙構造物の表面など足場があれば問題なく活動できるようになっているが空間戦闘には対応しておらず、足場の無い宇宙空間のみのステージでは出撃不可となる。
基本的な攻撃力は低いが、1号機・2号機共に特殊能力「パトランプ」による気力ダウン効果があり、1号機はさらに様々な特殊効果武器を持ちサポートに秀でた性能となっている。一方で2号機は武器に「対空」「対大型」が入っているため、相手次第では他ユニットに引けを取らない戦いができる(パイロットの「警察官」技能で攻撃力に補正が入っているのも大きい)。
スーパーロボット大戦X-Ω
2018年11月のイベント「二課とソリスの長い一日」にて期間限定参戦。劇場版名義で、野明の1号機が登場した。SSR・SRのアタッカーで、SSRは大器型、SRはログイン配布となる。

装備・機能

武装・必殺武器

武装

電磁警棒(スタンスティック)
左腕部に装備したシールドの裏に収納された電磁式警棒。普通の警棒のように打撃武器として使ったり、突き立ててスパークさせる事で敵レイバーの電装系にダメージを与えるなど、用途は幅広い。なお、漫画版の前半では先端を尖らせただけの特殊警棒を使用していた。
SRWでは「スタンスティック」の名称で登場。名前通りの「スタン」と「ガードアーム」の特殊効果を持つ。
『OE』では格闘戦が得意な野明の1号機と、射撃戦が得意な太田の2号機とでは挙動が異なり、2号機は一閃するだけだが、1号機は一閃した後にトドメの突きをお見舞いする。
『X-Ω』では通常攻撃として使用。
37mmリボルバーカノン
イングラムの右脚側面に収納されているレイバーサイズのリボルバー式ハンドガン。装弾数6発。
使用弾は基本的に貫通による被害を防ぎ、且つそれなりに強力な犯罪者のレイバーに対しても十分なストッピングパワーを確保する為にホローポイント弾が採用されている。他にも用途に応じてウイルス弾や磁気ネット弾なども使用可能。漫画版ではブロッケンに対抗した徹甲弾も開発された。ちなみに予備弾薬は左脚の側面に収納されているがクイックローダーが無い為、人間が手で装弾する。
ちなみにアーリーデイズでは20mmとされていたが、何時の間にやらドサクサ紛れに37mmに名称変更された(OVA「ミニパト」によれば、レイバーとのサイズ差を考慮すると75mmになるらしい)。
『OE』では1号機と2号機では挙動が異なる。1号機は単発の発砲だが、2号機では計6発を乱射し(アニメーションでは3発発砲)、内4発を命中させている。特性も、1号機が「エスケープ」、2号機が「対大型」と違う。
90mmライアットガン
特車二課の装備する中では最大火力を誇るレイバー用ショットガン。
整備員のシバシゲオが予備の材料を掻き集めて4ヶ月と16日を掛けて作り上げたり、最初から特車二課の10号ロッカーに保管されてたりと導入は媒体によって異なる。あまりに威力が高い為、余程の事が無い限りは使用が自粛されているが、有事の際には主に2号機が使用している。
弾種は通常のショットシェルの他に爆裂弾やライフルスラッグ弾などがある模様。整備員のブチヤマ曰く「ライアットガンでもライフルスラッグ弾を使えば装甲車や軍用レイバー程度なら結構イケる」らしい。
『OE』では2号機の武装として登場。「対空」「押出」の特殊効果付き。
ワイヤー
イングラムの股間部に装備されているウィンチワイヤー。細いながらもイングラムの自重すら支える頑丈さを誇る。野明はTV・漫画版共にこれの扱いに長けている。
『OE』では劇場版1の零式戦の再現として1号機が装備。ただしワイヤーを手首に巻き取るタイミングが原作と異なり投げた後になっている。攻撃力は低いものの、特殊効果「捕縛」が反撃キャンセルと1ターンステータス低下とデバフ技として優秀な性能。分身こそ無効化できないが、高い命中補正と「曲射」付きの性能にレイバー共有の特殊能力「パトランプ」も相まってボス級の敵や回避の高い相手と戦う際にデバフ要因として非常に重宝する。
『X-Ω』では「ワイヤー捕縛」名義で必殺スキルとして採用。

特殊装備

シールド
左腕部に装備された「警視庁」のロゴマークが目を引くシールド。
『OE』ではシールド防御の特殊能力で表現され、一撃が致命傷になりやすいイングラムの生命線となっている。
リアクティブアーマー
劇場版2で使用された。モスグリーンカラーのジャケットを思わせる外観。元々は自衛隊の99式ヘルダイバー用に開発されたものを流用した追加装甲である。
多脚型レイバー「イクストル」の20mmバルカンの斉射からパイロットを護った。
ECM、ECCM
電子戦装備の改修を受けた3号機の追加装備。電子戦での機能使用時には3号機の頭部が展開され、その奇怪さ故に「メデューサ」等と呼ばれることもある。
TV版の対ファントム戦や後期OVA版の対グリフォン戦、劇場版2の対イクストル、ゲームエディションの対ガネーシャ戦等で使用された。

合体攻撃

一斉攻撃
『OE』で実装されたイングラム1号機と2号機と零式による同時攻撃。まずは2号機のライアットガンと零式のリボルバーカノンで牽制、そして1号機のスタンスティックで止めをさす。「スタン」の特殊効果付き。

特殊能力

1号機・2号機共通。

シールド防御
シールド防御を発動。
パトランプ
戦闘時一定確率で敵の気力を大幅低下させる。
その効果は軍の精鋭すらどころか、宇宙生物心を持たない機械地球とは別の権力機構にあるにも効力を発揮する
おそらくは戦場でチカチカされると気を散らされてしまう、ということなのだろう。
グループ (GR)
イングラム1号機と2号機と零式グループ出撃が可能。

移動タイプ

サイズ

Sまたは2

機体BGM

「そのままの君でいて」
TVシリーズOP1。『OE』で採用。
「コンディション・グリーン ~緊急発進~」
TVシリーズOP2。『OE』で合体攻撃と連携攻撃のBGMとして採用。

関連機体

零式
後継機。劇場版1作目では1号機と接戦になった。
グリフォン
ライバル機。その因縁は漫画版から始まってTVシリーズに輸入され、後期OVA版漫画版最終巻まで続いた。
AV-98Tドーファン
イングラムの試作機を元にして作られた教習機。漫画版では一般向けにも販売されていた。SRW未登場。
AVS-98イングラム・エコノミー
部品の精度や機能を簡略化してコストを下げる事で量産化を狙った機体。しかし、簡略化しすぎた為に様々な機能低下を引き起こし、晴海のレイバーショーでグリフォンに一蹴された。SRW未登場。
AVS-98Mk-IIイングラム・スタンダード
テレビ版と漫画版双方に登場。扱いは大きく異なっており、テレビ版ではエコノミーの反省点を踏まえて開発され、一時は第1小隊に配備が内定していたが諸々の事情で見送られた。SRW未登場。
漫画版ではAVS-98の名称で登場。新設予定だった第3小隊の発足が白紙になった為に第1小隊に配備された。
MPL97AV-T教習用レイバー
初期OVA(アーリーデイズ)における試作機で教習用に改修された。性能はイングラムとほぼ同じである。SRW未登場。
ヴァリアント
劇場版2に登場したイングラムの後継機で、上記のスタンダードの発展機。

余談

  • 実は、本機のテレビ版仕様のプラモデルがグッドデザイン賞を受賞している。
    • ただし、このキットを含む1/60キットの間接カバーは、材質がゴムである故に溶解が生じたり、何よりまともに可動させることができないという代物であった。
      • なお、実写版公開に伴い、これらの1/60キットが再販された際には、関節カバーの材質を「極薄の軟質プラスチック」にすることで上記の難点はすべて解消されている。
    • その「カッコよさ」が一般からも評価されるほどの実績を挙げたイングラムであるが、デザインを手がけた出渕は「かっこいいロボットが、白黒の2色で桜の代紋で、パトライトをつけているおかしさを狙ったんだが……」と発言している。なお太字部分は漫画を担当したゆうきまさみによれば、彼が「パトレイバーの主役ロボはこうじゃなきゃいけない」と常々出渕に主張していたものを取り入れている。
  • ガンダムシリーズの「ジェガン」とはメカニックデザイナー(出渕裕)が同じ故に、頭部が似ているとネタにされることが多く、プラモデルをイングラム風に改造した画像がネットによく投稿される。ゆうきも自身のtwitterで「イングラムのデザインモチーフは何ですか」という質問に対し「ジェガンです(嘘)」と冗談を書いている。
    • SDガンダムの武者ガンダムの世界では「慈絵丸」というキャラクターがいるが、デザインは元となったジェガンと異なる部分が多く、肩の赤色灯やカラーリングからしてイングラムが元ネタと言っても過言でないものとなっている。
    • また、劇場版作品『SDガンダムの逆襲』(同時上映は劇場版パトレイバー第1作)には頭に十手を備え提灯を持つ「自衛丸」という岡っ引き風のキャラクターが登場するのだが、こちらもジェガンよりイングラムの方が似ている。
      • それどころか同作にはゴーグル付きの「自衛丸二号」まで登場する。
    • ムック本「機動警察パトレイバー・劇場版―ゆうきまさみの新しい世界」に掲載された4コマでもやはりこのネタが登場している。
      • なお、この4コマのオチは本機のデザインを手がけた出渕氏が「バルキリーに似ていると言え!」というものである。確かに、VF-1Sとイングラム1号機は、顔つきといいジェガン以上に似ているかもしれない…。
  • 2013年から開始された『機動警察パトレイバー』の実写化プロジェクトである『THE NEXT GENERATION -パトレイバー-』のために全高(8.02m)等のディテールを忠実に再現した1/1スケールの実物大AV-98イングラムが製作された。
    • ちなみに、2014年から日本各地において(本物の)警視庁や地元警察の協力の元、実物大AV-98イングラムのデッキアップイベントが複数回行われており、多くの人々の反響を呼んでいる。

脚注

  1. 劇場版以降は両肩パーツも1号機より角ばっている。

商品情報

プラモデル

  • 1/35

  • その他

フィギュア

  • リボルテック(海洋堂)

  • その他