渚カヲル
渚カヲル(Kaworu Nagisa)
旧世紀版
原作第24話「最後のシ者」で登場した、ゼーレから送り込まれてきた5人目のEVAパイロット「フィフスチルドレン」。レイと同じく、誕生日(セカンドインパクトの日)を除いた一切の経歴は抹消されている。チルドレンの中では唯一の年長者である(学年でいえば中学三年生になる)。
シンジに興味を抱いており、彼に対してはっきり「好きってことさ」と意思表示を見せる。最初は戸惑っていたシンジも、次第に心を開きかけていた。
エヴァとのシンクロ率を自由に調整できる不思議な少年だったが、その正体は最後の使徒である第17使徒タブリス。人間の肉体に第1使徒アダムの魂を宿らせたのが彼である。故にアダムのクローンである弐号機や、EVA量産機(ダミープラグ)を意のままに操る事が出来る。
また、彼は「生と死は等価値なんだよ、僕にとってはね」と発言しているが、それはアダムの魂が不滅で死後転生する事を仄めかしているもの。つまり、文字通り彼にとって生と死は等価だと言える。この設定を生かしたのが第3次αであり、同作でのカヲルにはMX世界の記憶を持っているともとれる描写がある。また、新劇場版のカヲルも旧世紀版の記憶を維持しているという見方がある。
肉体そのものは人間のものである事以外は経歴同様謎が多く、レイと同じく元となった人物からの複製なのか、一から造られた人造の体なのかすら明らかになっていない。新劇場版では月に複数の個体が一つ一つ棺に納めてあるかのようにも見える。
原作での登場は実質第弐拾四話、ただ1話のみでありながら(最終話、旧劇場版にも僅かに登場している)そのキャラクター性の強さから、視聴者には強い印象を植え付けた特異なキャラクターでもあった。
ただし流石に1話のみの出演であったためキャラクターとしての掘り下げは不十分であり、声優の石田彰もTV版の時点では「キャラクターを掴み損ねていた」と発言している(これは制作スタッフも同様であった事が近年語られている)。出番が充分に与えられた漫画版においては、初登場時に子猫を「どうせすぐ死ぬから」として無造作に扼殺したり、レイの最期を見て「ヒトがヒトを好きになる」感情に興味を抱いてシンジに迫るなど、ヒトならざる者としてのキャラクター描写がかなり丁寧になされている。
ちなみに「カヲル」は「オワリ」を50音順に一文字ずつずらしたものである。また名字の渚もバラけさすと「シ」「者」となり、使徒である事実を仄めかしている。実際彼の登場回は『最後のシ者』というサブタイトル。
(使徒としての)名前の由来であるタブリスは「自由意志」を司る天使。
新劇場版
月面に置いてある複数の棺から目覚める。この時点で既に碇シンジの事を知る様子を見せた。
月面にて宇宙服の着用せずとも活動が可能。『破』のラストシーンにおいて「Mark.06」(EVA6号機)のパイロットとして登場し、サードインパクトを引き起こしかけたEVA初号機に槍を突き立て、サードインパクトを未然に防いだ。
スパロボシリーズにおいて
原作での役回りやキャラクターの設定上、常にストーリーの核心に絡んでいる。しかしながら生存フラグは全く用意されず、常に原作同様の結末を迎えてしまう。自軍として使用できるのはスポット参戦時のみで、現状曲がりなりにも生存するのはLのみ。
第3次αでは、歌好きという設定をネタにした事がある。
原作ではEVA弐号機にしか搭乗していないが、SRWではEVA3号機、EVA零号機改に搭乗することもある。
不滅の設定を利用してか、スパロボの世界観そのものを飛び越えるような遠まわしなクロスオーバーをかけられていることもある。
登場作品と役柄
旧シリーズ
- スーパーロボット大戦F完結編
- 初登場作品。バッドルートに入ると登場、EVA3号機に乗ってくる。初号機に握られ、首が落ちるデモも用意されている。バッドルート以外での彼の動向・顛末は一切描かれていない。
αシリーズ
- スーパーロボット大戦α
- 今回は弐号機を引き連れて敵ユニットとして登場。が、弐号機は空を飛べないため、EVA初号機にミノフスキークラフト(ミノフスキードライブ)を付けると殆ど苦労せず倒す事も可能。ちなみにエヴァパイロット扱いで、敵では唯一特殊パラメータのシンクロ率が設定されている。
また、マクロスの「愛・おぼえていますか」の歌詞が入ったプレートを持ち、シンジに渡すというクロスオーバーがされた。ちなみに登場時の彼の鼻歌は前述の「愛・おぼえていますか」である。 - 第3次スーパーロボット大戦α
- 地球ルート23話で突如として登場。以後、何度か熱気バサラと接触する。MX世界の行方を仄めかす等、MX(あるいはMXに似た平行世界)の渚カヲルと同一人物である可能性が高い。
劇場版エヴァ再現シナリオではEVA零号機改をレイから借りてスポット参戦し、シンジとの「再会」を果たす。後にバサラとミンメイの「GONG」の制作に協力するが、最終話では霊体として登場している。第3次αのカヲルは死亡していない為、もしかするとこちらはαの世界のカヲルかもしれない。
彼が味方として使える唯一の作品。また、同作においてはカヲルも無限力の使徒であり、「調停者」の一人であるという事も明かされている。版権作品の中では破格の扱いをされているのが特徴。これはカヲル本人の台詞回しやキャラクター性、超然とした神秘性を反映、発展させてのことかもしれない。
単独作品
- スーパーロボット大戦MX
- 概ね原作通り。本作では自軍が分散した状態で対峙する事になるが、自軍に天のゼオライマーがいる為、さほど苦戦はせず、必殺技のオンパレードで瞬殺される運命にある。その後は発動された補完計画にてシンジを導き、決戦後には「二人目」のレイを連れて何処かへ消えた。後の動向を見るに「第3次α」へ飛んだ可能性が高い。
携帯機シリーズ
- スーパーロボット大戦L
- 新劇場版設定で登場。様々な平行世界のシンジを見てきたようなセリフを放ち、後にゼーレに本作の世界では計画の続行が不可能であることを告げに現れる。プレイヤーへのインフォーマー的役割であり、シンジ達の前には姿を現さなかった。
パイロットステータスの傾向
能力値
使徒だけあってさすがに高い。特筆すべきは攻撃力の高さで、第3次αにおいては味方のエースクラスを余裕で上回り、格闘に至ってはゼンガーより高いという怪物(死に能力だが……)。
精神コマンド
特殊技能(特殊スキル)
- 援護防御、支援攻撃、精神耐性
- 第3次αのラインナップ。精神耐性を持つ貴重なパイロットだが、隊長能力が事実上フルブロックの上、登場ステージには特殊効果武器持ちがいないので、二重の意味で死に技能である……。
小隊長能力(隊長効果)
- 第3次α
- すべての特殊効果武器無効
パイロットBGM
- 「DECISIVE BATTLE」
人間関係
他作品との人間関係
スーパー系
- ビッグ・ファイア
- αでは彼の正体について知っていた。BF団が彼を生き神として崇めるなら、カヲルはゼーレにとって神へと到る道への切り札であった。
- 美嶋玲香
- どこか似た存在。MXではお互いの存在を認識し合っており、彼女と難解な会話を繰り広げてくれる。共に世界の終局の局面において、重要な役目を担う事になる。
- 兜甲児
- αでは彼を「光と闇を自らの意志でその微妙な均衡を保つ力を持った者」とし、彼の心の強さを認めた。
- 流竜馬、神隼人、車弁慶
- αでは彼らに真ゲッターロボ、そしてゲッター線の真の力を示唆し、自分のような存在はゲッター線のような無限力に惹かれるという事を明かしている。
- 神名綾人
- MXでは彼が辿るべき運命を知っており、彼に彼自身の歌声が世界を満たす事を促している。第3次αでのカヲルの台詞から、彼が何らかの形で調律を行った事を見届けた事もわかる。
- 秋津マサト
- MXでは彼の決意を理解し、彼にもまたガフの扉を閉じる事を促す。
- 出雲銀河、草薙北斗
- MXでは最後のデータウェポンの存在を示唆し、彼らにそれを見つける事を促した。
- 鳥飼守
- MXではアスカを撃破し、更にネルフに侵攻せんとした彼を阻止した。
ガンダムシリーズ
- カトル・ラバーバ・ウィナー
- αでは彼と顔を合わせる場面もあり、展開によっては彼に「愛・おぼえていますか」のプレートを預ける。第3次αでも少しだけ彼とのやり取りがある。
- アスラン・ザラ
- 第3次αにて共演。劇中では接点は一切無いが、中の人が同じと言うことで中断メッセージでカヲルのあの名台詞を発言し、ファンの度肝を抜いた。
マクロスシリーズ
- リン・ミンメイ
- 直接は関わらないが、αでは「愛・おぼえていますか」のプレートは彼からシンジに渡され、その後にミンメイの手に渡った。後の第3次αでも、「GONG」の制作に協力した。
- 熱気バサラ
- 第3次αでは彼の「役割」を知っており、同時に彼に大きな興味と期待を抱き、幾度も彼と接触。補完計画終結後には彼を訪ねてシティ7を訪れ、「GONG」の制作にも協力した。
バンプレストオリジナル
- スーパーロボット大戦αの主人公
- 彼(彼女)に、サイコドライバーの真の力を示唆し、同時にガンエデンやケイサル・エフェスの存在を仄めかしている。ちなみにαシリーズの正史における主人公は、クスハである。
- ヒューゴ・メディオ、アクア・ケントルム
- AI1の真の意味を知るカヲルは、彼らにそれがどのような結果を齎すかを示唆するような発言をする。
- イルイ・ガンエデン、ルアフ・ガンエデン
- αでは彼らの存在を仄めかすような言動も見られ、ガンエデンについても知っているような素振りを見せた。
- ケイサル・エフェス
- 最初のサイコドライバー「アウグストゥス」…つまり彼の存在を知っており、αの時点でそれを仄めかしていた。第3次αをプレイした後に改めてαをプレイしてみると非常に興味深く、カヲルが言っていた「歌」という文化の極みが怨霊の王に対する決定打となる。
名台詞
旧世紀版
- 「歌はいいねぇ。歌は心を潤してくれる。リリンの生み出した文化の極みだよ…」
- 「ありがとう、君に逢えてうれしかったよ」
- 彼の最後の言葉。
新劇場版
- 「はじめまして、お父さん」
- 新劇場版『序』において、月面にてゲンドウと冬月に姿を見られた時、発した言葉。
- 「さぁ、約束の時だ、碇シンジ君。今度こそ君だけは、幸せにしてみせるよ」
- 新劇場版『破』にてサードインパクトを防いだ時の台詞。
スパロボシリーズの名台詞
αシリーズ
- 「僕は…使者さ。古のまつろわぬ黒き月の民により、はるか時空を超えてこの世に送り込まれた使者…」
「そう、因果律のゆがみによって構成されたこの偽りの世界への最後のシ者さ…」 - αにて綾波レイと初めて会った際の会話。この時点でケイサル・エフェスの存在を仄めかしている。
- 「…かつて僕がいた世界は、機械仕掛けの神の歌声によって一度死に、生まれ変わった…」
「その世界に住まう者達が望んだ『約束の地』としてね」
「だが、その地もかの者が定めた死と新生の輪廻からは逃れられなかった…」
「その結果、誕生したのが今君達が住まう世界なのさ」 - 第3次αにてバサラに語った台詞。言葉から真聖ラーゼフォンや調律を連想させ、MX世界の未来でアポカリュプシスが起こり結局消滅したとも受け取れる台詞である。
ただ、MXでは調律は防がれている為、『MXから分岐した平行世界の一つ』が滅んだという解釈もできるが、公式の見解は無い。だが、関連性は確実にある為、どちらかである可能性は非常に高い。 - 「いい曲だ。後はこれに魂が乗ればいい」
- 「出航! 銀河殴り込み艦隊!」のIMにて。バサラと共に「GONG」の作曲をしていた。
- 「その必要はないよ。彼にはいつでも会えるからね」
- 直後、バサラから「(シンジに)会って行かなくていいのか?」と訊かれて。恐らく、あらゆる意味で文字通りなのだろう。ちなみに「MX」のカヲルの出番はこれが最後で、最終決戦では「α」のカヲルが顔を出す。
単独作品
- 「世界の中心に在る者……時と世界の流れを見続ける者……」
「今までの試練は全て、それが誰なのかを決めるためのものなんだよ、シンジ君」 - 「シト新生」にてシンジに対して。使徒と「調律」に関わる戦いは、かつて失われた「時の観測者」の後釜争いという側面を帯びていたらしい。結局のところ、最終的にこの座には原作通り真聖綾人が収まることになる。
- (幾千幾万の時を乗り越えても、リリンは死の宿命から逃れられない……)
(だけど、それでいい。滅びの宿命は新生の喜びでもある)
(世界が滅びても、人が自分の中にある希望を見失わなければそれでいい)
(そうすればいつか人は、無限力に支配された輪廻から逸脱することが出来るはずだから……) - 「シト新生」におけるモノローグ。αシリーズのキーワードである「無限力」を初めて引用している。「無限力に支配された輪廻」は、まさに第3次αでαナンバーズが直面した「アポカリュプシス」であり、関係性をうかがわせる。
- 「生と死は等価値なんだ……僕にとってはね。自らの死……それが唯一の絶対的自由なんだよ」
「遺言だよ。さぁ、僕を消してくれ。そうしなければ、君らが消えることになる」
「滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は一つしか選ばれないんだ」
「そして、君は死すべき存在ではない……」
「君達には未来が必要だ」
「ありがとう。君に会えて嬉しかったよ」 - シンジで撃破するとこの台詞が出る。使徒と人の戦いは、生命の実と知恵の実、それぞれを食した人類同士の戦い。そして、彼ら使徒は選ばれなかったのだ……。
携帯機シリーズ
- 「次に期待するしかないんじゃないかな。少なくとも、この世界には別の結末が訪れるんだ」
(そう、「彼ら」の働き次第では今度こそ彼が幸せになれる結末がね……) - 補完計画頓挫を受けての言葉。「彼ら」とはシンジが所属しているLOTUSのことであり、実際使徒がこれ以降現れないので、本作のシンジ達は……。
余談
PS2(PSP)ソフト『新世紀エヴァンゲリオン2』では、シンジとトウジの説得によって人類の味方になっている。その場合、学校に通う姿もあれば虚数空間から「EVA4号機」を召喚しパイロットとなっている。また、原作では食事をする描写はなかったが一応食事は出来る(レイのように菜食主義な面があるのかは不明)。この事により、彼にはS2機関があるのか無いのかは謎。
パチンコなどでも「EVA4号機」パイロットとなっている事が多い。「EVA乙号機」のパイロットとなっているゲームもある。