使徒(Angel)とは、『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する種族。
概要編集
一様にネルフの第3新東京市の地下を目指して侵攻する謎の存在。
SF作品の怪獣的なフォルムを持つ物から、微生物、光源体、そして人間体と様々な形態を取るものがいる。その全てがA.T.フィールドと呼ばれるバリアに身を包んでおり、現用の兵器では膨大なエネルギーを一点に収束し放つ陽電子砲やN2地雷のような威力でなければ、手傷を負わせる事ができない。唯一対抗できる存在が人造人間「エヴァンゲリオン」である。その正体については謎が多く、全てが明らかになったのは番組終了後暫く経ってからである。
使徒には二種類あり、第1使徒アダムを始祖とする「アダム系使徒」と、第2使徒リリスを始祖とする「リリス系使徒」である。
アダム系の使徒はアダムの得た生命の実の力を継承し、単独で完結した準完全生物となっている。使徒が毎回1体ずつでしか現れないのはそのため(リリス系使徒たるリリンの肉体を持つ第17使徒タブリスは例外)。リリス系の使徒は人間、すなわち第18使徒リリンを指す。リリスの得た知恵の実の力を受け継いでおり、生物として不完全である代わりにA.T.フィールドを内面に展開し、個を確立している。
使徒の正体編集
使徒の正体は南極の地下にある「第一始祖民族」が生み出した「白き月」より生まれた、別個体としての「人間」。元々は白き月から生まれた彼らが地上に栄えるはずであったが、何らかの理由で活動を休止。代わりに地上には「黒き月」より生まれた原始生命の末裔たる使徒、すなわち現人類が栄えた。白き月の民は永遠の命を、黒き月の民(=人間)は永遠の命と引き換えに食した「知恵の実」の力により、知恵・心を持つ存在である。
時は流れ西暦1999年、葛城博士(葛城ミサトの父)率いる調査団による南極調査の過程で、白き月と、そこに眠っていた第1使徒「アダム」を目覚めさせてしまった。このままでは他の使徒まで目覚めさせる事になると考えた一行は、アダムを卵の状態に戻そうと試みるが、その過程で暴走、副産物のエネルギーの余波により南極大陸は消滅した。これが「セカンドインパクト」である。
それから15年後となる西暦2015年、使徒は目覚めて、第3新東京市を襲撃する。これは第3新東京市の地下に幽閉されている「アダム」と融合する事によって「サードインパクト」を引き起こし、黒き月の民である人類を滅亡させるためであった。実際、アダムはセカンドインパクトの発生後に胎児の状態にまで退行し、それは加持によってネルフ本部へ届けられていた。しかし、渚カヲル曰く「ジオフロントに幽閉されていたのはアダムではなく、黒き月の民の始祖「リリス」であった。
すなわち、使徒とEVAの戦いとは「『白き月』より生まれた使徒と呼ばれる人類と『黒き月』より生まれた現人類との種族間の闘争」であった。この事実を知る者は『死海文書』と呼ばれる預言書の存在を知る者のみである。彼等は使徒が単独で襲ってくる事と、そのスケジュールも把握しており(この辺りの詳細は未だ不明)、最終的にはゼーレが自ら送り込んだ最後の使徒「渚カヲル」の消滅によって使徒の殲滅に成功し、スケジュールは完遂された。
なお、ゲーム『エヴァンゲリオン2』によると、本来生命の実も黒き月が所持していたのだが、宇宙を漂流中に何故かそれを両方持たない(あるいは別目的で作られた)白き月に奪われ、取り返そうと追いかけた結果、揃って地球に辿り着いたのだという。同じ存在が作り出した生命繁殖システムが遠くの同じ星で殺し合うという不毛極まりないことを始めたのはこのため。
使徒一覧編集
新世紀エヴァンゲリオン編集
サンダルフォン、サハクィエル、イロウル、レリエル、アラエルはSRW未登場。
- 第1使徒アダム
- 人類が確認した最初の使徒。その後卵の状態に戻され、特殊ベークライトで固めて封印されていた。ビデオ版第弐拾四話の追加シーンにて碇ゲンドウの左手に寄生している姿が確認できる。
- TV版では寄生の過程は描かれていないが、漫画版では何と「ゲンドウが胎児状のアダムを食べる」場面が描かれている。
- 第2使徒リリス
- 第2の使徒。人類の祖先でもある。魂は綾波レイに移植され、体はネルフ本部の地下に、ロンギヌスの槍で封印されていた。
- 第3使徒サキエル
- 第壱話で登場。最初にネルフに侵攻した使徒。EVA初号機により殲滅。
- 第4使徒シャムシェル
- 2番目に侵攻してきた使徒。EVA初号機により殲滅。コアのみを破壊して殲滅した為、原型を留めた状態で回収される。
- 第5使徒ラミエル
- 正八面体の姿をした長距離狙撃型使徒。日本中の電力を集めたEVA初号機のポジトロン・スナイパー・ライフルによる長距離射撃(ヤシマ作戦)により殲滅。鳴き声(?)が非常に印象的。
- 第6使徒ガギエル
- 魚類のように海を泳ぐ。EVA弐号機により対艦砲の攻撃で殲滅。
- 第7使徒イスラフェル
- 分離型使徒。EVA初号機とEVA弐号機の同時攻撃により殲滅。
- 第8使徒サンダルフォン
- 浅間山のマグマ層に卵の状態で眠っていた使徒。覚醒する前にネルフによる捕獲作戦が敢行されたが、回収中に覚醒した為、EVA弐号機により殲滅された。
- 第9使徒マトリエル
- 蜘蛛型使徒。停電中の第3新東京市へと進行するが、手動で起動したEVAのライフル一斉射により殲滅。
- 第10使徒サハクィエル
- 自らの身体を質量爆弾とし第3新東京市に投下を行ったが、EVA3機により殲滅。
- 第11使徒イロウル
- 細菌、あるいはコンピュータウィルスのような使徒。基本は不定形だが、劇中ではコンピュータ回路の様な形態に変化した。
- MAGIシステムをハッキングしてネルフ本部を自爆させようとしたが、赤木リツコが製作した自立自壊プログラムを送り込まれて消滅。EVA以外によって殲滅された唯一の使徒。
- 第12使徒レリエル
- 球体型使徒。実際は球体の影の中に広がる虚数空間が本体で、言うならば球体自体が立体的な影。第3東京の一部とEVA初号機を取り込むが、碇シンジの命の危険に反応し暴走した初号機により内部から殲滅。
- 第13使徒バルディエル
- 粘菌型使徒。EVA3号機を乗っ取ったが、ダミープラグによって起動したEVA初号機により殲滅。
- 第14使徒ゼルエル
- 紙状の腕を持った使徒。高い攻撃力を有し、EVA弐号機とEVA零号機を撃破するが、覚醒したEVA初号機により捕食された。
- 第15使徒アラエル
- 巨大な光の鳥のような使徒。成層圏からEVA弐号機のパイロットの心を探るが、EVA零号機のロンギヌスの槍によって殲滅。
- 第16使徒アルミサエル
- 紐のような形状の使徒。EVA零号機と融合しパイロットの心を探るが、零号機の自爆で殲滅。
- 第17使徒タブリス
- 人型使徒。「渚カヲル」と呼ばれる人間として弐号機を奪いリリスの目前にまで侵攻するが、EVA初号機により握り潰され殲滅された。
- 第18使徒リリン
- リリスから生まれた原始生命の進化の先に位置する現人類。つまり、EVAに乗る碇シンジ達(さらに言えば地球上の生命全般)も実質的には使徒である。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版編集
全部で12体存在する。ただし、「第11の使徒」は作中に未登場であり、詳細も不明なままとなっている。
新劇場版の使徒は撃破された際に体の大部分が血のような赤色の液体に変わり(原作劇中では「形象崩壊」と称する)、周囲に撒き散らされることになる。
中でも体躯が巨大な「第8の使徒」の構成物が津波のように街を襲う様子は、「大震災以後に対応する物語のアップデート」として印象的であった。
- 第1の使徒
- 旧世紀版の第1使徒アダムに相当。複数存在するかのような描写がされており、「アダムス」とも呼ばれている。新劇場版ではカヲルが当初この位置にいた。
- 第2の使徒
- 新劇場版『序』『Q』にて登場。旧世紀版の第2使徒リリスに相当。
- 第3の使徒
- 新劇場版『破』にて新登場。永久凍土から発掘され、ベタニアベースで解剖・調査された後に封印されていたが、その後復活しEVA仮設5号機によって殲滅された。デザインは鬼頭莫広氏。
- 第4の使徒
- 新劇場版『序』にて登場。旧世紀版の第3使徒サキエルに相当。
- 第5の使徒
- 新劇場版『序』にて登場。旧世紀版の第4使徒シャムシェルに相当。
- 第6の使徒
- 新劇場版『序』にて登場。旧世紀版の第5使徒ラミエルに相当。旧世紀版とは異なり、驚異的な変形を見せる。
- 第7の使徒
- 新劇場版『破』にて新登場。役割的に言えば、旧世紀版における第6使徒ガギエルに相当する。
- 第8の使徒
- 新劇場版『破』にて登場。旧世紀版の第10使徒サハクィエルに相当。
- 第9の使徒
- 新劇場版『破』にて登場。旧世紀版の第13使徒バルディエルに相当。
- 第10の使徒
- 新劇場版『破』にて登場。旧世紀版の第14使徒ゼルエルに相当。
- 第12の使徒
- 新劇場版『Q』にて新登場。EVANGELION Mark.06の内部に潜んでいた使徒。内部に大量の「レイ」が存在する。リリスから槍を引き抜いたEVA第13号機に捕食され、殲滅された。
- 第13の使徒
- 新劇場版にてゲンドウの狙いで第1の使徒から堕とされたカヲルのことを指す。
登場作品編集
原作準拠とも言える事だが、人類補完計画の詳細が謎のまま、使徒の存在そのものもプレイヤー部隊メンバーにとって「謎の怪獣」という域を出ない作品が少なくない。
TV版に登場した全使徒が網羅された作品は現在のところなく、怪獣らしく再生して複数回戦う作品もしばしばある。 原作設定の関係上、雑魚敵が基本的に存在せず多勢に無勢のまま倒されてしまうことも多い。
またゲームの都合上やむを得ないがA.T.フィールドが絶対的性能のバリアではなく、ゲーム中盤にはEVA以上の火力を有する自軍ユニットの存在が珍しくないので、EVAで正面から戦う事はほぼ推奨されない。イベント上の都合が無ければ、EVAにトドメを刺される使徒の方が珍しいかもしれない。
旧シリーズ編集
- スーパーロボット大戦F(F完結編)
- 初登場作品。本作のみ登場順がバラバラ[1]。発売当初は使徒の詳細設定は不明だったため、単なる怪獣扱いであった。
- バッドルートでは、以前倒した使徒(ガギエル除く)が復活する。数値はさほど変わっていないが、味方が攻撃力過多なユニットだらけなので蹴散らされる運命。
αシリーズ編集
- スーパーロボット大戦α
- 本作から原作再現が重視され始めたこともあり、未登場使徒を除けば原作に沿った順番で登場する。
- こちらもほぼ怪獣扱いだが、死海文書が方々に流出しているようで、EVAと使徒について意味深な発言をする者が多い。『第3次α』に繋がる裏設定はこの時点で確定していた可能性はある。
- サハクィエルの代わりにマスドライバーで打ち出された物体を3機で受け止めるイベントや、アラエルおよびアルミサエルの役割を、アンティノラに乗ったユーゼス・ゴッツォが同時に果たしている。
- なお、使徒が宇宙怪獣と似ている姿に関して「宇宙怪獣と似た姿になる事で災厄を逃れた」という仮説がある。
- スーパーロボット大戦α for Dreamcast
- 追加ルートにより、碇ゲンドウが断片的に使徒の正体を語った。
- 第3次スーパーロボット大戦α 終焉の銀河へ
- 『MX』と同じであるが、原作設定がαシリーズに組み込まれている。第一始祖民族の思念体が「アポカリュプシス」を引き起こしたというオリジナル展開となった。
- 敵としてはラミエル、アルミサエル、ゼルエルが出現。いずれも原作中では特に強敵として表現されていた使徒だが、中ボスクラスの凡庸な能力しかない。A.T.フィールドは本作から(強)としてEVA各機より強めの仕様になったのだが大して苦戦はしない。
Zシリーズ編集
- 第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇
- 新劇場版設定。基本的には『L』と同じだが、ルートによっては第9の使徒が登場し、第10の使徒の登場も示唆されている。
- なお、第8の使徒の顔グラフィックが没データとして残っている。
- 『L』と同じくA.T.フィールドが「バリア貫通」では貫通できない仕様となり、無効化ダメージもエヴァ以上に高いためゲーム的には少し強化された形。
- 第3次スーパーロボット大戦Z天獄篇
- 新劇場版設定。第3話「新世界への扉」で第10の使徒が登場。さらに『時獄篇』で倒された使徒も復活して登場する。
- 結局、使徒の正体・目的等については明らかにならなかったが、カヲルやトワノ・ミカゲの発言からして、おそらく使徒もまた歪んだ真化を遂げた者達であると思われる。
携帯機シリーズ編集
- スーパーロボット大戦L
- 新劇場版設定。プレイヤーが戦闘できるのは第4~第7の使徒のみで、第3・第8の使徒はイベントによって倒される。
- さらに、第9・第10の使徒は「あまりにも世界が歪み過ぎた」との理由で現れず、人類補完計画が頓挫した後は使徒についての詳細についてほぼ語られることが無い。
- ゲーム的にはA.T.フィールドが「A.T.フィールド無効化」でないと無効化できない仕様となったため少し強くなった。
Scramble Commanderシリーズ編集
- スーパーロボット大戦Scramble Commander
- 第4使徒シャムシェルまでは倒しているが、第14使徒ゼルエルはまだという状態から始まる。
VXT三部作編集
- スーパーロボット大戦V
- 新劇場版設定で第2並びに第4から第10の使徒まで登場。アウラの民やDr.ヘルからは「世界の理を破壊する者」と呼称されている。
- 第4の使徒を倒した直後に第5の使徒が現れ、以後のシナリオでも第6と第7の使徒を、第9と第10の使徒を、それぞれ2体同時に相手にすることになる。第10以降の使徒は出現するのかしないのか分からなくなったとされている。
- 『第3次Z時獄篇』で採用されなかった第8の使徒の顔グラフィックがイベント時に一瞬だけ登場する。
- シークレットシナリオでは倒された使徒が復活して6体同時に登場する。
単独作品編集
- スーパーロボット大戦MX
- 初めてSRWで使徒の詳細が語られた。
- オリジナル展開として、MUやバーベム財団も「裏死海文書」を同時に解析し、同時に計画を実行し、その結果スケジュールに食い違いが起きる。
- 何と、第8使徒から第12使徒が現れず、第13使徒・第14使徒が現れた事で「欠番」の使徒が出てしまった[2]。特にビバーチェは原作での第12使徒・第15使徒の役割を兼ねており、同時に計画を実行したことで使徒の役割が奪われて欠番になったと捉えることができる。
- なお敵として登場する使徒は大半がイベントで処理され、プレイヤーの操作で戦う機会は全くといっていいほど無い。これはビバーチェも同様。
- イロウルは登場する予定があり、データウェポンとクロスオーバーさせる構想があったが、「シナリオ的には面白いものの、演出的にはちっとも面白くない」とのことで実現しなかった[3]。
- スーパーロボット大戦DD
- 新劇場版で参戦。メインストーリーでは第2世界に登場するが、EVAがNERVに戻っている時にしか出現せず、その登場の仕方に疑問を抱かれている。
- イベントでは精神コマンド「強靭」の効果で「一度目のオーバーダメージを無効化しHP1の状態で生き残る」能力を持つ上に、「HP1%以下の時A.T.フィールドによる被ダメージ軽減値増加」で必殺技や「直撃」を使わないと撃墜出来ない難敵の一つに数えられている。
関連項目編集
備考編集
- 「使徒」とは主としてキリスト教およびイスラム教で用いられる専門用語である。日本ではイスラム教に馴染みが薄いため、「使徒」といえば一般にキリスト教のそれを指す。
- キリスト教における「使徒(Apostle)」とは、狭義にはイエス・キリストがその教えを世に伝える為に地上に残した12人の弟子達(所謂「十二使徒」)を、広義には宣教師全般を意味する。無論、軽々しく使える言葉ではなく、特に重要な役割を果たした人物に対して用いることが多いようである。
- 上述した『新世紀エヴァンゲリオン』における「使徒(Angel)」の影響から、この言葉が「天使」として捉えられることも多くなっているが、本来は天使を指して用いる言葉ではないので要注意。
余談編集
- 番組企画書では「巨大生物兵器」と紹介されており、全部で27体登場するとされていた。
- 富士見文庫から出版された『新世紀エヴァンゲリオンRPG 決戦!第3新東京市』においては、「数えられぬ使徒(ロスト・ナンバーズ)」と総称される上記のリストに該当しない以下のオリジナル使徒が登場している。
- アドヴァキエル
- 水母型使徒。触手を生かした肉弾攻撃の他、高圧エネルギー弾を発射する。
- ゼフォン
- 人型使徒。強力な陽子エネルギー砲を有する。
- アタリブ
- 人型使徒。自身の周囲に冷気フィールドを展開する能力を持つ。
- アズラエル
- 異形型使徒。重力を操って攻撃を行う。
- 特殊な状況下での戦闘が多く、全ての使徒がSRWに出たことは無い。使徒そのものは登場していないが、シナリオがスパロボ的アレンジで再現されたことはある。
- 2018年放送のロボットアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION』における『エヴァ』コラボ回(第参拾壱話「発進!! シンカリオン 500 TYPE EVA」)では、複数の使徒を合体させたデザインの巨大怪物体「キングシトエル」が登場している。各使徒にちなんだ攻撃を放ったり、A.T.フィールドを展開する事が可能。
- なお、各使徒のデザインは新劇場版準拠となっている。各部位を構成している使徒を具体的に言うと、顔面は第4の使徒(サキエル)、胴体部は第5の使徒(シャムシェル)、腕部は第10の使徒(ゼルエル)、尻尾は第3の使徒、背面翼(?)を第8の使徒(サハクィエル)、水晶部は第6の使徒(ラミエル)となる。
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