エグゼクター
エグゼクター(Executor)
時空破壊を経験した先人が遺した、世界の「破壊」を司るシステム。「XAN-斬-」をそのマスターコアとしている。「エグゼクター(Executor)」とは「執行者」の意味であり、システムの執行者であるXAN自身を指してこの語を用いることもある。
背景
Zの世界は、いわば「環状の時の流れ」とでも呼ぶべき状態にあり、巨大な力を持つもの同士の間で起こる激しい戦乱による文明の崩壊、そして戦乱の最終局面で発生する大変動による世界の消滅という営みが、一億と二千年の間に無限ループのように繰り返され続けている。この「最終局面で発生する大変動」の端緒となるのは大極による次元力の行使であり、それによって神の軍団とも呼ぶべき「ザ・ビッグ」の軍団が降臨、更にブレイク・ザ・ワールド級の時空破壊が起こることで、それまでの文明に一度終止符が打たれることになる。
このプロセスはいわば、文明をリセットすべくざっくりと大鉈を振るうようなものであり、この段階でも既に文明の大半は崩壊に至っている(と思われる)ものの、これはまだ世界破壊の第一段階に過ぎない。詳細は不明であるが、次なる「再生」のプロセスに移行するためには、残された大地を更に徹底的に破壊し尽くし、文明の全てを一旦無に帰す必要があるようであり、この第二段階の破壊、いわば地球を完全なさら地に戻すために先史時代の人々が遺したシステムがエグゼクターである。
この点について、ゴードンの著したメトロポリスには次のように記されている。この記述からは、地球はエグゼクターの機能が発揮されて「破壊」された後、「再生」のプロセスへ移行するという関係を読み取ることが出来る。
大いなる力の嵐によって誕生した新たな世界は混沌に支配される事となった。
残された人々はこのような災厄が再び起きた時のために力を用意した。
破壊の後の再生…滅びた世界を救う執行者…
夜は終わり、朝が来る。日出づる国より陽はまた昇る…
このシステムが時空の環における繰り返しの中、いつ頃に確立したものかは不明であるが、少なくとも一万二千年前に起こった前回の「大変動」の際、分岐した世界の一つでは発動したと考えられている。その際にはエグゼクターの主力の一体であるターンタイプのモビルスーツ・∀ガンダムの月光蝶発動により、文明は完全に埋葬され、残された人々は「宇宙にその住居を移した者(ムーンレィス)」「機械文明を否定し、生活の水準を大昔に戻した者(北アメリア大陸の人々)」「過酷な大地で生き抜くことを選んだ者(シビリアン、イノセント)」などに分かれ、それぞれに「再生」のプロセスを見守ることとなった。この世界はブレイク・ザ・ワールドの際に現在の多元世界に統合され、現在に至っている。
尚、エグゼクターシステムが完成する以前、再生への道程となる第二段階の破壊をいかなる力が担っていたかについての詳細は明らかにされていない。或いは、エグゼクターによる第二段階の破壊とは、再生への道のりをより確実なものとするための担保とでもいうべきもので、再生のために必ずしも必要ではないという可能性もある。
エグゼクターの戦力
前述の通りエグゼクターが司るのは、第一段階の破壊である「時空破壊」が発生した後の第二段階についてであるため、時空破壊の影響が収まったことを感知して動き出す仕組みになっていると思われる(この点について万丈は、大戦の発生と終結、そして次元境界線の安定を感知して作動すると推測している)。
エグゼクターの戦力は多元世界を構成する各世界の機動兵器であり、黒歴史の遺産の貯蔵庫とも言えるマウンテンサイクルには無数の機動兵器が無人のまま蓄えられている。中でも、月光蝶の力を有するターンタイプのモビルスーツ、そしてオーバーフリーズの能力を持つオーバーデビルとその眷族たるオーバーマンは別格の能力を有し、エグゼクターの主力となっている(これらはエグゼクターシステムにおいて活用される戦力であると同時に、最終戦争における対堕天翅用決戦兵器でもあった)。そして、それら全てについて管理・指令を行うマスターコアの役割を与えられたオーバーマンが、平行世界におけるキングゲイナーと同質の存在「XAN-斬-」である。
本来XANはキングゲイナーの過去の姿として設定された存在だが、本作においては上述のように、並行世界におけるもう1つのキングゲイナーとしての位置づけとなっている。
機動兵器
- XAN-斬-
- 中枢たるマスターコアにして最強の戦力たるアーリーオーバーマン。ZSPDに登場するのはこの機体の並行存在。
- キングゲイナー
- 前のループで使命を果たしたXAN-斬-が、時を経てこの姿に変貌した。
- オーバーデビル
- 対堕天翅決戦兵器の一つ。
- ∀ガンダム、ターンX
- 文明をリセットする際に月光蝶の力を使う。
- 各世界の機動兵器
- 時代ごとに違うと思われるが、主にデストロイガンダム、サイコガンダムなどの大型モビルアーマーを始めとする、大火力殲滅戦型の兵器。対人・対機動兵器戦を想定した構成ではないためだと思われる。
エグゼクターの最期
Zの冒頭にて、時空振動弾の使用によるブレイク・ザ・ワールドを引き金として再び多元世界が構築され、世界は一万二千年前と同様の戦乱状態に陥った。しかし「D.O.M.E.」から黒歴史の顛末を知らされたZEUTHは、一万二千年前(更には一億と二千年にわたって繰り返された結末)と同じ過ちを犯すことなく多元世界の修復を行い、世界を安定させることに成功した。以上がスーパーロボット大戦Zにおける戦乱の顛末である。
しかし、多元世界の修復により次元境界線が安定したことでエグゼクターシステムが起動し、無数の機動兵器群が建造物などに対して破壊行動を行う事態となった(エグゼクターシステムの影響下にあった∀ガンダム、そしてキングゲイナーも一時暴走しかけたが、パイロットの搭乗により静止、事無きを得ている)。この一連の破壊活動の阻止のため、ZEUTHの面々は再び結集する。
一方、彼らとは別行動をとって調査(メトロポリスをかつて所持していたグエンとの接触)を行っていた万丈及びロジャーにより、上述したエグゼクターの詳細が明らかとなる。またその本拠地は日出づる国「日本」にあるとの推測が得られ、ZEUTHは日本においてマウンテンサイクルの存在する釧路へと進路を取る。その地ではかつて生命の樹で消滅したと思われたギム・ギンガナムとターンXが∀ガンダムに代わる破壊の新たな尖兵として立ち塞がるも、別次元から舞い戻ったアクエリオン及びニルヴァーシュの力も得て彼を打倒。その後、一度は姿を見せたXANを追い、日本アルプスへと赴く。
日本アルプスでXANと対峙したZEUTHの面々は、彼に対しエグゼクターシステムによる世界の破壊を否定。しかし、XANは元々人間を心から愛する「清く正しい心を持った」オーバーマンであり、彼自身も世界の破壊を望んではいなかった(破壊という行為に対しそもそも否定的であったか、或いは世界が正常に修復された現状において破壊は無意味と判断したかのいずれかと思われる)ようで、システムに縛られた自身を止めるだけの力を持つ者を探していた(そのため、彼は人のいる場所を避け、施設のみを狙うよう機動兵器を動かしていたようであった)。ゲイナーはその想いを汲んで彼と対峙、ZEUTHの面々と共にXANを活動停止に至らせる。
それと同時にエグゼクターシステムの影響下で活動していた機動兵器は一斉に爆散し、XANも自身をシステムの束縛から解き放ったZEUTHの面々に礼を告げ、何処かへと姿を消した。これによりエグゼクターシステムはその役割を終え、完全に消失することとなったのである。