- 前:スーパーロボット大戦64(64)
- 後:第2次スーパーロボット大戦(PS)
『スーパーロボット大戦外伝 魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL』に続いてバンプレストがプレイステーションで発売した魔装機神シリーズの第2弾。とはいうものの、前作との共通点は「魔装機」という存在が登場するファンタジー世界での物語であるという程度で、一応前作の世界観との接点はあるものの全く別物と考えた方がよい。
ゲームとしての出来は決して悪くなかったが、いくつかの点で非常に後ろ暗い要素を持つため、しばしばSRWにおける黒歴史とまで評される不遇な作品。詳しくは後述の作品背景・評価の項を参照。ちなみに公式の20年史では、アニメ版魔装機神と共にスルーされている。
システムと難易度
基本的なシステムは通常のSRWシリーズと同様だが、「マップのグリッドが全スパロボで唯一、六角形である」「前作・魔装機神と同様に向きにより補正がかかる」「乗換えやメカの改造が無く、パイロットの成長(レベル上昇時にパイロットに成長ポイントを振る形式)とメカのパワーupは一体的である」点が特徴的。攻撃射程は前方向に扇状に広がるため背後からの攻撃には反撃不可能。また、ウィンキー時代のスパロボ準拠なので、援護はなく、代わりに2回行動が可能である。
ルート分岐や隠し要素はなく、また最終的には4人で戦うことになるのでメンバー選択の余地は殆ど無い。また、詰みを回避するためか難易度はかなり平易に設定されている。このため楽しみ方のバリエーションに乏しく、熟練者なら一日で遊びつくすことも可能。反面、システムが非常にシンプルなので、スパロボ初心者にはプレイし易い作品とも言える。
戦闘画面は一言で言うと、旧シリーズの動かない戦闘アニメがポリゴンで再現される……一応背後や側面から攻撃すると、相手の向きが反映された戦闘アニメになるものの、剣での近接攻撃を仕掛けるときに出てきた剣を機体が握っていない(手がパーのまま、剣が手の前に表示される)など、旧シリーズの後期の4次~LOEにかけての戦闘アニメと比べると劣化が激しい。
ストーリー
ラ・ギアスとは異なるファンタジー世界「ア・ゼルス」。この世界にある日突然落下してきた「神の腕」は高度な技術の結晶であり、この地にラ・ギアス同様の魔装機の技術をもたらした。当時ア・ゼルスは「ダウスの穴」より飛来する魔物の群れにより滅亡の危機に瀕していたが、魔装機を開発した人々は、その力で魔物をダウスの穴の向こう側に押し込めることに成功、人々は安寧を取り戻した。以来ダウスの魔物に対抗すべく魔装機の技術は高度化を続けたが、巨大な力でもある魔装機は国家間に緊張をもたらす火種ともなり、軍事力の拡大に伴い神聖バルツフィーム王国とラガーシュ王国の二大国間の緊張は日増しに高まっていった。そんな折、神聖バルツフィーム王国のケイゴは魔装機操者たる「魔装騎士」に列せられるための最終試験に臨むこととなったが・・・。
登場人物
魔装機神操者
ケイゴ、アルマは西方騎士隊所属、イェンはナトゥーレ王国所属、トトはバルツフィーム王国の技師長アルフレードの孫。
尚、声についてはSRXチーム関係者の声優が担当している率が高く、ケイゴの声優はリュウセイの三木眞一郎氏、アルマはヴィレッタの田中敦子氏、トトはマイの折笠愛氏である(単なる偶然と思われるが、理由は不明)。ちなみにイェンの声優は子安武人氏。
- ケイゴ・クルツ・フェルディナン
- 主人公。
- アルマ・クルツ・カーリナ
- ヒロイン。本名は「アルマ・グラム・カーリナ」。
- イェン・ヤング
- トト・クアル・ユロ
西方騎士隊
神聖バルツフィーム王国の精鋭部隊。前述のアルマが隊長、ベウマーが副隊長。シェスはオペレーターのため戦闘には参加しないが、セーブ時に出て来るなど、出番は非常に多い。また、ヘレーナ、ドロービ、ブラッキーはどう見てもタイムボカンの3人にしか見えない。
神聖バルツフィーム王国
本作でも随一の国力を誇る大国で、本家魔装機神で言うところのラングラン的な存在。尚、バージェス王の姓と前述したアルマの姓の一致からも分かるように、彼女は実はやんごとなきご出自である。リーグ・グラム・ガルムはア・ゼルスで伝説化した英雄で、ストーリーの随所で彼の存在が語られている。
- ロセリニ・ゼラ・フランチェス
- アルフレード・ラスム・ユロ
- バージェス・グラム・カーリナ
- バルツフィーム王妃
- ゼルドナ・クルツ・グレスト
- リーグ・グラム・ガルム
ラガーシュ王国
バルツフィームと双璧を為す大国。本家で言うところのシュテドニアス連合。国王の統制力が弱く、タカ派のアデノイドが支配権を握って後、バルツフィームと戦争状態に突入する。その背後では謎の男・ソッドが暗躍している。ミラはその姓からわかるとおり、アルマの関係者。彼女とアルマの対決はOPアニメにも挿入されており、2人の確執と和解は見所の一つである。
- アデノイド・セラーズ
- ヤドラ・ゲオルゲ
- マギーア・マグス
- キャリ・ノヴァク
- ルジェロ・ゼラン・カルロ
- ミラ・グラム・カーリナ
- ソッド・ジュスト
- ディソン・バンクオー
- ダンカン・ラウンズバーグ6世
- マルコム・ラウンズバーグ7世
ナトゥーレ王国
バルツフィーム、ラガーシュに次ぐ地位を持つ第3国で、本家のバゴニア。但しバゴニアのラングランとの関係とは違い、バルツフィームに友好的。
登場メカ
魔装機神
- 魔装機神サイバスター
- 風の魔装機神。
- 魔装機神ガッデス
- 水の魔装機神。
- 魔装機神グランヴェール
- 炎の魔装機神。
- 魔装機神ザムジード
- 大地の魔装機神。
- 魔装機神イズラフェール
- 本作のラスボス機。神の腕を組み込んだ闇の魔装機神。
バルツフィーム王国所属機
ラガーシュ王国所属機
- 魔装機ザーリラ
- 魔装機エル・ザーリラ(一般機/ミラ機)
- 魔装兵メルバス
- 魔装機エル・メルバス(一般機/ヤドラ機)
- 魔装兵ウェバール
- 魔装機エル・ウェバール(一般機/ミラ機)
- 魔装兵ドガリニ
- 魔装機エル・ドガリニ(一般機/ミラ機)
- 魔装機サタナギーア
- 試作魔重機アグ・ノイ
- 魔重機アグ・ノイア
- 魔重機アグ・ノイア改
- 魔重機アグ・ラーダ(キャリ用/マギーア用)
- 超魔重機アグ・ゲブラ
ナトゥーレ王国所属機
- 魔装機クィンアクス
ダウスの魔物
その他
一般兵
作品背景
元々『魔装機神』の製作・設定に主として携わったのはウィンキーソフトの阪田雅彦氏(氏は第~次シリーズのシナリオも担当されていた大御所)であったが、『スーパーロボット大戦F』及び『スーパーロボット大戦F完結編』の発売後にバンプレストとウィンキーソフトの提携が解消されたことに伴って氏がバンプレ側と接点を持つことがなくなり、バンプレ側がラ・ギアスの世界観に基づいた作品を前面に押し出していくことが不可能となった(実際には、F完結編開発の最中、既に氏は健康問題を理由として離脱を表明。脚本担当が途中から変更になる事態になっていた)。これに対応するため、魔装機神の設定を全面的に改編し、新たな「魔装機神」として生み出されたのが本作であり、前作と設定が全く異なるのはこのような理由による。
尚、上記の状態から今日に至るまでマサキやサイバスターがバンプレスト作品に登場できていたのは、キャラクターとメカの版権はバンプレ側が、ラ・ギアスの世界観の版権はウィンキーソフトが、分割所持する取り決めが行われたからだと言われている。実際には上述の提携解消のいきさつも含めて版権関係には不明瞭な部分が多く、真相については諸説あるが、バンプレストとウィンキーソフトがそれぞれ発表している作品のラインナップを見る限り、版権の分割所有についての信憑性は高いと考えられていた(ウィンキーソフトはラ・ギアスの世界観をベースとした『聖霊機ライブレード』を発売し、また阪田氏も提携解消後にweb小説『ラングラン戦記』を独自に発表している)。 しかし、プロデューサーの寺田氏がこれを否定しているため、その可能性は極めて低い。
評価
システムの項でも述べたように、本作は非常にシンプルな作りで、この点はゲーム内容の希薄さという側面を持つものの、短時間で遊べるという点でむしろ評価すべきとの声もある。また、本家魔装機神では行われなかった声優によるフルボイス化も実現し、要所要所では会話イベント中にDVEも挿入されている。
ストーリーそのものの完成度は、作品単体で見れば高い方と言える。「外伝」として作られた本家魔装機神と違ってこれ一作で伏線も起承転結もすべて解消されるメリハリもある展開など、LOE以上と評価できる部分も多々ある。(作品単体での完結性については、魔装機神シリーズだけでなくOGシリーズを含めてもトップレベルでまとめられている)。
キャラクターに関しては個性で本家の面々には負けるものの、とくに薄いというわけではない。特にラガーシュ王国の面々に関してはルートによっては空気なシュテドニアス連合の面々よりはるかにしっかり描かれている。オープニングアニメも質は非常に高く(このアニメを基準にして戦闘アニメを見ると相当がっかりすることになる)、主題歌『Stay with me』も名曲である。
にもかかわらず、本作に対しての評価は総じて低い。その理由は主に以下の点による。
- 購入者の多くは前作との関連性を求めていたため、そもそも「オリジナル作品として評価する」という視点がない。前作とは名前だけ似た別物という時点で詐欺である。
- 作品背景の項で前述したように、企画の出自がそもそも後ろ暗い。
- 本作の起動時、同時期にテレビアニメで展開していた『魔装機神サイバスター』のOPアニメが挿入される(上述した本ゲームのOPアニメとは別に流れる)。サイバスターのメディアミックス的展開を見越しての措置と思われるが、このアニメ版サイバスターの方はそれ単体で見ても微妙な出来で評判が悪かった。本作とアニメ版は内容が無関係にも関わらずセットという印象を与えてしまった点は否めない。両方を併せて「メディアミックス失敗作」とする位置づけが浸透してしまった。
- 戦闘アニメの質が非常に低い(一応スキップで飛ばすことはできる)。
難易度の問題や貧相な戦闘アニメなどにも問題はあるが、上述したように、それ以上に副次的な部分でのマイナスポイントが大きすぎ、必要以上に評価が下がっている感はある。
この結果、前作からの脱皮を目指して製作されたにも関わらず、現在に至るまで存続しているのは結局前作のキャラクター達であり、本作はこれまで長きにわたって無かったことのように扱われていた。誠に不幸な作品である。
近年の展開
上述のような経緯により本作は長らく黒歴史化し、ファンの間でも話題に昇ることはほとんどなくなっていた。しかし2008年、『スーパーロボット大戦Z』に登場したオリジナルロボット「シュロウガ」の必殺武器であるレイ・バスターの戦闘アニメにおいて、この作品の設定を想起させる映像(「右腕」を失い落下するサイバスターらしき機体・2体のサイバスターらしき機体が戦っており片方は真バージョンのサイバスターに似ている)が採用されたことで一躍注目を浴びる。
そして2010年、およそ約14年の時を経て本家「魔装機神」のニンテンドーDSでのリメイクが発表され、阪田氏のシナリオ構成への復帰も発表された。版権に絡んだあたりの真相は特に触れられなかったものの、バンプレスト側では本家魔装機神のリメイクを長年の課題として捉えていたこと、また阪田氏が本家魔装機神に再度携わることに対する喜びのコメントなどが発表されており、ラ・ギアス関連の懸案は概ねポジティブに解決したものと推測される内容であった。魔装機神の亜流とも言うべき本作への影響は未知数ではあるが、前述のスーパーロボット大戦Zでの思わせぶりな演出と併せ、黒歴史化していた本作にも再び光が当てられるのではないか、と注目されている。
商品情報
プレイステーション
- 発売日:1999年11月25日
- 価格:6,800円
攻略本
サントラ