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SDキャラクター全盛期を支えたデザイナーの一人である佐藤元によれば、低頭身キャラクターのデザイン技法を洗練させたのはアニメ誌「月刊OUT」の投稿者のコミュニティだとしている。『宇宙戦艦ヤマト』のヒットで中高生の若いアニメファンが、上述した少女漫画的な技法のお遊びとして「崩しキャラを使ったパロディイラスト」を月刊OUTに多数投稿しており、当時の若い世代のアニメファンや、アニメ製作者の間でそういうセンスが浸透されていった。1980年代に入ると、影響を受けた作り手側がそのようなセンスを商業作品に落とし込むようになり、アニメ『[[超力ロボガラット]]』や食玩シールの『ビックリマン』シリーズ、タカラのミニカー玩具『チョロQ』など、キャラクターデザイン(メカデザイン)の低頭身・簡略化を手抜き感なく高い完成度で実現した商業コンテンツが世に出てくるようになった。そして、1980年代後半には当時のOUTの読者世代がプロとして企画側になり、彼らによって爆発的にSDキャラクターが量産された、というわけである。
 
SDキャラクター全盛期を支えたデザイナーの一人である佐藤元によれば、低頭身キャラクターのデザイン技法を洗練させたのはアニメ誌「月刊OUT」の投稿者のコミュニティだとしている。『宇宙戦艦ヤマト』のヒットで中高生の若いアニメファンが、上述した少女漫画的な技法のお遊びとして「崩しキャラを使ったパロディイラスト」を月刊OUTに多数投稿しており、当時の若い世代のアニメファンや、アニメ製作者の間でそういうセンスが浸透されていった。1980年代に入ると、影響を受けた作り手側がそのようなセンスを商業作品に落とし込むようになり、アニメ『[[超力ロボガラット]]』や食玩シールの『ビックリマン』シリーズ、タカラのミニカー玩具『チョロQ』など、キャラクターデザイン(メカデザイン)の低頭身・簡略化を手抜き感なく高い完成度で実現した商業コンテンツが世に出てくるようになった。そして、1980年代後半には当時のOUTの読者世代がプロとして企画側になり、彼らによって爆発的にSDキャラクターが量産された、というわけである。
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これらの中で、『SDガンダム』の直接的な先祖とされる商品が『チョロQ』である。これはプルバック式のゼンマイによって走行するコミカルな形状のミニカーなのだが、タカラはこのゼンマイ機構をロボットアニメ『[[太陽の牙ダグラム]]』の主人公ロボに組み込んだ玩具も売りだしていた(名前はズバリ『'''チョロQダグラム'''』)。この際、『チョロQ』のデザインにあわせてダグラムも低等身で丸っこくデフォルメされた。これがそれなりのヒットを記録し、バンダイも自社がスポンサーをしている[[ガンダムシリーズ]][[モビルスーツ]]に低頭身デフォルメを施した玩具を企画。ほぼ同時期(1984年~1985年)に三つのデフォルメ玩具シリーズが登場した。それがチョロQ玩具『ロボチェンマン』、変形プラモ『カワルドスーツ』、そしてカプセルトイの『SDガンダム』であった。『SDガンダム』はもっとも後発であったが一番の人気を得て、『ロボチェンマン』と『カワルドスーツ』は『SDガンダム』ブランドに統合する形で発展的解消を遂げる。これが後の『SDガンダム BB戦士』というプラモデルシリーズにつながることになる。
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これらの中で、『SDガンダム』の直接的な先祖とされる商品が『チョロQ』である。これはプルバック式のゼンマイによって走行するコミカルな形状のミニカーなのだが、タカラはこのゼンマイ機構をロボットアニメ『[[太陽の牙ダグラム]]』の主人公ロボに組み込んだ玩具を1983年から売りだしていた(名前はズバリ『'''チョロQダグラム'''』)。この際、『チョロQ』のデザインにあわせてダグラムも低等身で丸っこくデフォルメされた。これそれなりのヒットを記録し、『[[装甲騎兵ボトムズ]]』『[[機甲界ガリアン]]』『[[巨神ゴーグ]]』などのタカラ版権のロボットが次々とチョロQ化されることになる。
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この流れを見たバンダイも、自社がスポンサーをしているロボットに低頭身デフォルメを施した玩具を次々と企画。1984年~1985年にはチョロQ類似品『ロボチェンマン』、変形プラモ『カワルドスーツ』、ミニプラキット『ディフォルメ・エルガイム』『ディフォルメ・ガンダム』など様々なものが発売された。そして最終的に消しゴム人形『SDガンダム』が登場し、大人気を得たことで、他のデフォルメもののシリーズは「SD」のブランドに統合される形で発展的解消を遂げた。このライン統合が後にSDガンダムのプラキットシリーズ化(BB戦士、元祖SDガンダム)につながることになる。
    
===「スーパーデフォルメ」の誕生===
 
===「スーパーデフォルメ」の誕生===
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「消しゴム人形」とはプラスチック消しゴムの材料である塩化ビニル樹脂で作られた人形のことで、1970年代の「スーパーカー消しゴム」のブームで一気に広まった。原材料コストが安いうえに簡単に加工ができることから安価なミニチュアの素材として好まれ、1980年代には『キン肉マン』の「キン消し」や、『[[機動戦士ガンダム]]』の「ガン消し」など、様々なアニメや漫画のキャラクターが消しゴム人形として多数作られ、大人気となった。タカラ・バンダイなどの玩具メーカーだけでなく、食玩市場から菓子メーカーもカプセルトイ市場に参戦し、まさに百花繚乱の状態となる。
 
「消しゴム人形」とはプラスチック消しゴムの材料である塩化ビニル樹脂で作られた人形のことで、1970年代の「スーパーカー消しゴム」のブームで一気に広まった。原材料コストが安いうえに簡単に加工ができることから安価なミニチュアの素材として好まれ、1980年代には『キン肉マン』の「キン消し」や、『[[機動戦士ガンダム]]』の「ガン消し」など、様々なアニメや漫画のキャラクターが消しゴム人形として多数作られ、大人気となった。タカラ・バンダイなどの玩具メーカーだけでなく、食玩市場から菓子メーカーもカプセルトイ市場に参戦し、まさに百花繚乱の状態となる。
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これらの消しゴム人形は安価であることこそが重要で、それゆえにコストをかけてまで凝った造形を行うわけにいかなかった。そこでバンダイは逆手をとって、[[ガンダムシリーズ]]の[[モビルスーツ]]を二頭身にまで極端に簡略化した消しゴム人形を売り出した。このシリーズ商品につけられた名前は『スーパーデフォルメガンダムワールド』であり、その略称として『SDガンダム』が使われていた。これが「'''スーパーデフォルメ'''」そして「'''SD'''」という名前の初出である。
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これらの消しゴム人形は安価であることこそが重要で、それゆえにコストをかけてまで凝った造形を行うわけにいかなかった。そこでバンダイは逆手をとって、[[ガンダムシリーズ]]の[[モビルスーツ]]を二頭身にまで極端に簡略化した消しゴム人形を売り出した。このシリーズ商品につけられた名前は『スーパーディフォルメガンダムワールド』であり、その略称として『SDガンダム』が使われていた。これが「'''スーパーデフォルメ'''」そして「'''SD'''」という名前の初出である。<br />(誕生当初は「スーパーデ'''ィ'''フォルメ」だったが、いつの頃か「スーパーデフォルメ」に変わり、商標もこちらの名前でよられている)
    
SDガンダムが画期的だったのは、「ガンダムをモデルにした'''独自のキャラクター'''」という一種のセルフパロディ商品として売り出されたことである。子供達が手にするのは「造形が安っぽいガンダムの人形」ではなく、擬人化されてしゃべりもするギャグ風のキャラクターの人形なのである。安っぽい造形はむしろこのコミカルさを生み出すスパイスとなり、それまでマイナス要素だと思われた部分がそっくりそのままプラス要素となったのである。
 
SDガンダムが画期的だったのは、「ガンダムをモデルにした'''独自のキャラクター'''」という一種のセルフパロディ商品として売り出されたことである。子供達が手にするのは「造形が安っぽいガンダムの人形」ではなく、擬人化されてしゃべりもするギャグ風のキャラクターの人形なのである。安っぽい造形はむしろこのコミカルさを生み出すスパイスとなり、それまでマイナス要素だと思われた部分がそっくりそのままプラス要素となったのである。
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なお、『チョロQダグラム』、『ロボチェンマン』、『カワルドスーツ』などの先行商品にも擬人化の傾向はあったのだが、SDガンダムは「'''瞳'''」を施すことでそこを過激なまでに徹底したことが、先行商品との決定的な差別化になったとされる。また、先行商品は原作のかっこいいロボットらしさを残すことも踏まえて三頭身のデフォルメだったのに対して、二頭身にまでデフォルメしたことも強いインパクトになっていた。SDガンダムの企画側(レイアップ)も先行商品との差別化は強く意識しており、スーパーデフォルメの「'''スーパー'''」はこれら先行商品よりも過激なデフォルメである意味を込めてつけられたタイトルでもある。
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なお、『ロボチェンマン』『カワルドスーツ』『ディフォルメ・ガンダム』などの先行商品にも擬人化の傾向はあったのだが、SDガンダムはそこを過激なまでに徹底したことが、先行商品との決定的な差別化になったとされる。ガンダムの顔に「'''瞳'''」を施して感情表現を可能にしたことと、ギャグイラストが入ったシールを製品に付属させてストーリー性を表現したことは、擬人化のコンセプトを先行商品よりも圧倒的に強く押し出した。また、先行商品は原作のかっこいいロボットらしさを残すことも踏まえて三頭身のデフォルメだったのに対して、二頭身にまでデフォルメしたことも強いインパクトになっていた。SDガンダムの企画側も先行商品との差別化は強く意識しており、スーパーデフォルメの「'''スーパー'''」はこれら先行商品よりも過激なデフォルメである意味を込めてつけられたタイトルでもある。
    
SDガンダムはカプセルトイのみにとどまらず様々な玩具として売り出され、その人気からゲームやアニメともなり、現在に続く『[[SDガンダムシリーズ]]』が生まれ、「武者」「騎士」など様々な作品・キャラクターを生み出しバンダイの黄金期を支えた。このヒットを受け、ガンダムシリーズ以外でも版権キャラクターをSD化して「独自のコミカルなキャラクター」とする玩具を売り出す手法が様々な企業で展開された。1990年代前半はこのようなSDモノが乱立していた。
 
SDガンダムはカプセルトイのみにとどまらず様々な玩具として売り出され、その人気からゲームやアニメともなり、現在に続く『[[SDガンダムシリーズ]]』が生まれ、「武者」「騎士」など様々な作品・キャラクターを生み出しバンダイの黄金期を支えた。このヒットを受け、ガンダムシリーズ以外でも版権キャラクターをSD化して「独自のコミカルなキャラクター」とする玩具を売り出す手法が様々な企業で展開された。1990年代前半はこのようなSDモノが乱立していた。
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