神名綾人
神名綾人(Ayato Kamina)
『ラーゼフォン』の主人公。
恵まれた家庭環境の中で育ったとは言い難い為、やや内向的な性格をしているものの、親しい間柄の人間には屈託なく笑顔を見せ、比較的ノリも良く面倒見の良い一面も覗かせる。反面、歳相応に感情の起伏が激しくトラブルも起こしがちだが、基本的に素直な性分の為、長く引き摺る事は無い(後述する六道家での生活で人格形成が成されて行った事も大きいが)。絵画が趣味で、とある少女をモチーフにした絵に並々ならぬ拘りを持つ。
絶対障壁に覆われた「TOKYO JUPITER」の中で平穏な高校生活を送っていたが、ある日、突如として勃発した「オーバーロード作戦」の煽りを喰らい、車両事故に巻き込まれる。そこから避難する最中に神秘的な少女・美嶋玲香と出会い、彼女に導かれるまま東京の地下神殿に辿り着き、成り行きでラーゼフォンを起動させる事となる。
ラーゼフォンの奏者となった彼はTOKYO JUPITERを脱出、以後は対「MU」戦略機関「TERRA」の庇護の下、MUとの戦いに身を投じてゆく。その一方、生活の拠を六道家に置く事となった彼は、紫東遙・恵姉妹との生活を経て、家族の絆の暖かさを知る事となる。しかし彼は次第に自身の出自に疑問を持つようになり、またTERRAの一部の人間からも『青い血』を持つ「ムーリアン」である嫌疑を常に持たれていた。彼は疑問を解き明かすべく、如月久遠の導きでTOKYO JUPITERへの帰還を果たし、そこで自らがムーリアンであるとの確信に至る。
TOKYO JUPITERからの再脱出後は、朝比奈浩子との悲劇や自身への脱走者としての扱いなどの艱難を乗り越え成長、また、徐々にではあるがTOKYO JUPITER形成以前の自身の記憶を取り戻していった。しかし彼が役目を果たす為に残された時間はもはや僅かで、最後には記憶の中から甦った遙との想い出と彼女の想いを受け入れ、「イシュトリ」と一体化。人の姿を捨てた超常存在である「ヨロテオトル」へと至り、世界を「調律」に導いた。
不安定化した平行世界を再構築し、崩壊を食い止める「調律」という行為が近年のスパロボの世界観にマッチしているためか、参戦時にはいずれも非常に重要な役割を担わされている。しかしその結果、彼の辿る運命は「人を越えた存在となって世界の外へ旅立ってしまう」というものになりがちで、シンプルに人間のままの姿で救われるという結末を迎えられない苦労人でもある。
一方、PS2ゲーム『蒼穹幻想曲』ではルート次第で、鳥飼・朝比奈・久遠らを生存させつつ人間のまま物語に決着を付ける事が出来る。ついでに、ラーゼフォンの心である美嶋玲香も人間として手を取り合うという展開にもなる(おかげでフラグがえらいことになっているが)。逆に、MU側に降ってMUの世界を新生させることも可能。
TVと同じ調律ルートで終わった場合、自身の人間としての複製とかつて一番仲が良かった人間との生活を、観客のように見つめつつ呟くというなんとも切ないエンディングとなる。代わりに、既に死んでいる人も復活するので種類が豊富。
ちなみに、何もせずに寝まくっていると、TERRAが壊滅した上に次の誕生日を迎える=奏者の資格を失って終了、というとんでもないifエンドに突入する。
登場作品と役柄
15年間もTOKYO JUPITERの中にいた為、外界で起こっていた大戦や事件、その過程で誕生した技術や兵器の存在を知らず。脱出後はあまりにも様変わりした世界に驚愕している。
- スーパーロボット大戦MX
- 初参戦作品で、担当声優の下野紘氏もスパロボ初参加。原作のほとんど全ての流れが網羅され、似た世界観の『新世紀エヴァンゲリオン』や、同じく「ムー」に関わる『勇者ライディーン』とのクロスオーバーがある。最終的にはMXに登場するあらゆる無限エネルギーを一つに纏め上げ、調律を行おうとする。なお、最終話で使用できない味方ユニットはラーゼフォンとEVA零号機のみである。ただし代わりに、最強スポット参戦ユニットの一角である真聖ラーゼフォンを引っさげてスポット参戦してくれる。最終決戦後は世界を不協和音から守るべく、時と時の狭間に留まり「観測者」として生きる事を伝え、遙やマグネイト・テンの面々に別れを告げるが…。
- スーパーロボット大戦Scramble Commander the 2nd
- 原作が忠実に再現されている点はMXとほぼ同じ。さらに今回は主人公であるケイジとの絡みも多く、MXに勝るとも劣らない重要度である。「鳥の人」(オリジン・ユニット)に因るゼロポイント・ブレイクによって、分岐が生じた無限の平行世界を逆に収束する事が、今作のラーゼフォンとの調律の役割となる。ラーゼフォンシステムはオリジン・ユニットの対存在と言え、そのオリジン・ユニットを操るユキムラとは最終話にて凄まじい戦いを演じる事になる。ユキムラによってゼロポイント・ブレイクが引き起こされた事で全ての平行世界が滅び、綾人自身もユキムラによって殺されそうになるが、遙やバレンティナ、そしてケイジの犠牲によって救われる。調律による全ての世界の修復後は、失われた二人の時間を取り戻すため、遙と共に新たなif世界へと旅立った模様。
パイロットステータス設定の傾向
能力値
スーパー系キャラとしては回避率が高めで、格闘&射撃値も殆ど差が無く、バランス良く設定されている。反面、防御値はMSパイロット並みに心許なく、シールド防御技能が有るとは言え、被弾時には予想以上のダメージを被る事も。
ちなみに、「遙か久遠の彼方」の真聖綾人も全く同じ能力で、性格も「普通」のまま。
精神コマンド
特殊技能(特殊スキル)
パイロットBGM
人間関係
本作は人間関係の設定が非常に複雑で、放映当初は多数の視聴者が混乱に陥った。その中でも綾人はそれら全ての人間関係の中枢に位置する人物なので、原作を視聴する際には、予備知識として彼周辺の人間関係を把握した上で鑑賞する事をお勧めしたい。
尚、映画版『多元変奏曲』では、あまりに複雑化した人間関係を一部なかった事にするという英断で、かなり分かり易い形に再編成されている。
- 紫東遙
- 中学時代の綾人の同級生にして恋人。TOKYO JUPITERの出現により年の離れた存在となってしまったが、最初はその事を話さずに綾人に近づく。
- 美嶋玲香
- 綾人をラーゼフォンへと導いたりするなど、全てを見透かしたような行動をする。実際は綾人のイシュトリ(彼が記憶の底で求め続けた存在)であり、恋人関係にあった遥の中学時代の姿をしている。尚、本作は基本的に綾人視点の物語であるため画面には映っているが、綾人以外の人物には見えていない。
- 如月久遠
- 遺伝子上の綾人の母親。とはいえ、生まれてからずっと眠っていたために17歳の奏者の資格を持った年齢である。ちなみに彼女のイシュトリは綾人の姿をしている。
- 紫東恵
- 遙の妹にして綾人の同居人。綾人の現在の実年齢に近いため、作品序盤~中盤にかけては絡みが多く、かなりいい雰囲気にまで進んだが、結局は遙の当て馬に過ぎなかった。ちなみに映画版『多元変奏曲』ではほとんど絡みがなくなってしまう。
- 如月樹
- 久遠の兄で遙の元恋人という加持のようなポジション…というのは表面上の設定。実はTOKYO JUPITER内外の時間経過相違の関係で年齢が逆転してしまった、綾人の弟である。かつて17歳だった頃は、彼にも奏者としての資格があったらしい。一方映画版では上記の設定がほぼすべて消失、「久遠の世話役で遙の元恋人という加持のようなポジション」というだけのキャラになった。
- 神名麻弥
- TOKYO JUPITER内での彼の母親だが、遺伝上の実母は久遠であり、彼女はその双子の妹である。尚、映画版では綾人の実母という設定に変更されている。
- 亘理士郎
- TERRAの長官。旧姓は神名で、遺伝子上の綾人の父親である。ニライカナイのネリヤ神殿に逆神隠しによって現れた久遠と麻耶を発見したのが若き日の彼と六道翔吾で、本来は彼女達二人が奏者となるはずであった。しかし久遠はバーベム財団の手に渡り時が来るまで眠らされ続け、一方麻耶は保護者の六道の下を離れ、東京で彼と共に暮らす。その後彼が東京から離れた後にTOKYO JUPITERが形成され、現在に至る。尚、映画版には彼は登場せず、彼とは別の父親のエピソードが挿入されている。
- 朝比奈浩子
- ほぼ完全にムーリアンの精神制御下におかれたTOKYO JUPITERを共に脱出、行くあてのない逃避行を続けた。しかし朝比奈のMUフェイズ(ムーリアン化)は着実に進み、それに気付けなかった綾人は本作最大の悲劇に直面する。『蒼穹幻想曲』では彼女を救う事が出来る。
- 鳥飼守
- TOKYO JUPITER内では綾人と友人関係にあったが、実はMUの幹部にして綾人の監視役。浩子のことを本気で好いていたが、その彼女を殺した綾人を逆恨みし、綾人を殺す事に執着するようになる。しかしヨロテオトルに至った綾人に挑むも返り討ちにあい、あえない最期を遂げる。『蒼穹幻想曲』では浩子が死なない場合、綾人と和解して味方となってくれる。
- 功刀仁
- 出会った当初、綾人は彼に強く反発していたが、徐々に打ち解けていき最終的には和解して「今度一緒に飯でも食おうか」と綾人と約束を交わすも、その直後にニライ・カナイは九鬼正義の駆るラルゴの襲撃に遭い、九鬼と刺し違える形で死亡してしまい綾人との約束を果たすことは無かった。
- 九鬼正義
- 『蒼穹幻想曲』ではバーベム編で対峙するのだが、その際の彼のハイテンションぶりにはドン引きしていた。
他作品の人間関係
スーパー系
- ひびき洸
- MXでもSC2でも世界を終局から救う為に、共に「歌」を歌う。彼とシンジは、綾人と共に世界の趨勢を握る運命を辿る。
- 秋津マサト
- MXではシンジと同じく境遇が近い事もあってか仲良くなる。
- 碇シンジ
- MXでは色々と境遇が近いこともあってか仲良くなる。終盤では彼と共に世界の行く末が委ねられることに。
- 鈴原トウジ
- MXではダミープラグ操縦に切り替わったEVA初号機の攻撃から、彼を庇った。
- 渚カヲル
- MXでは綾人の辿るべき運命や役割を示唆している。第3次αでの彼の言葉から、綾人が世界を調律した瞬間にも立ち会った事がある事がわかる。
- 綾波レイ
- MXでは真聖ラーゼフォンとなった自身と久遠、そしてリリスとなった彼女と共に「翼の生えた3体の神々」の競演を果たし、世界の終局そのものと言っても過言でない光景を演出する。最終的には彼女と久遠を別の世界へと送った。
- キール・ローレンツ
- MXでは彼らゼーレは真聖ラーゼフォンとなった綾人と久遠をも利用して「多元世界補完計画」を発動させようとする。
- ボス
- MXのギルギルガン討伐作戦で、彼の愛機ボスボロットが超合金Zでもガンダリウム合金でもない「普通の鉄」で出来ており、尚且つ戦力として稼動している事に驚愕。同時に、厭味なく素直に感心していた。
リアル系
- ショウ・ザマ
- SC2では浩子の死の直後、バーベム財団に連れ去られそうになった所を彼に救出された。
- シーラ・ラパーナ
- SC2の最終話にて、ユキムラによって放たれた破滅の波導の第一射からAフォースを守ろうとした際、彼女からオーラ力を与えられるが…。
バンプレストオリジナル
- エルデ・ミッテ
- MXにて自身の欲望の為に世界を破滅させんとする彼女を「世界の音を乱す者」と断じ、境界空間に彼女を討つ為に姿を現す。綾人の出現に、エルデは無様に怯え、恐怖し、取り乱す。
- ケイジ・タチバナ
- SC2における2大キーパーソン。最終的には彼ら2人に世界の行く末が委ねられることになる。実生活でも周囲の人間関係が似ているためか、気が合う様子。
- バレンティナ・レアニカ
- ユキムラに殺される寸前の綾人を救う為に遙と共にアゾエーブに特攻し、その命を散らす。
- シュウイチロウ・ユキムラ
- SC2ではヨロテオトルへと至り、真聖ラーゼフォンとなった自身を、彼の最後の標的として狙われる。彼の駆るアゾエーブは、綾人が仲間達を守る為に力を割いていた事もあり真聖ラーゼフォンの力をも遥かに凌駕しており、トドメを刺される寸前に遙とバレンティナに救われるも、二人はその命を散らすことに…。
名台詞
- 「一緒に生きよう…一緒に彼女を守って欲しい…」
- 遙を守る為、一度は拒絶したイシュトリとの融合を決意し、ヒトの如く不安に怯えていた玲香を抱き締めながら囁いた台詞。
- 「…昔の事は思い出せないけど、今の事なら分かる…」
「僕が好きなのは、今の君なんだ」 - リーリャ・リトヴァクの甲板上にて、12年の歳月を越えた遙からの告白を受け止め、同時に自らの偽らざる心境を告げ、「恋人」としての口づけを交わす。
- 「僕の生きる道は僕が決める!運命だからとかじゃない…あなた達に言われたからでもない…!」
「人を捨ててでも、守りたいものがあるから…!」
「あの子を守りたいから…それが、僕が僕で在り続ける事だから…!」 - 己自身の欲望の為、イシュトリとの一刻も早い同化を促してくるバーベムの言葉を毅然と跳ね除け、守るべきものの為に自らの意思で、ヨロテオトルを得る事を宣言する。
スパロボシリーズの名台詞
- 「ラ………イディーン!?」
「似てる…!?こいつと…!」 - MXにおいて、ライディーンを見た際のセリフでおまけにDVE。ファン待望のオマージュ元と共演が実現した瞬間である。後々までクロスオーバーが続いていく。
- 「行こう、マサト。みんなが呼んでるよ」
- MX中盤で罪悪感に苛まれ、マグネイト・テンの面々から距離を置くマサトの心情に理解を示し、自分も含め似たような境遇で戦っている少年達が居る事を語った上で、改めて彼を「仲間」として受け入れる。この場面の綾人は、自然体で「先輩」として接する姿が印象的。
- 「それと…レが4回ですか?」
- ミサトとのやり取りで発した台詞。「お出かけですか」「ホウキが必要」という掛け合いに対して発した衝撃の台詞。アスカや恵はサッパリ意図が解らなかった模様だが、ミサトと同年代である綾人はこのネタを知っていたようだ。
- 「あの時のように、君と俺で…!君と俺で、『そいつ』を止めるんだ!!」
- EVA初号機の暴走によって、バルディエルに乗っ取られたEVA参号機が破壊されようとした直前、シンジにかけたセリフ。世界を動かす『補完』と『調律』の資格者達の会話である事を併せ読むと実に興味深い。
- 「だって君には居場所が…帰るべき場所があるから…」
- 鉄甲龍との決着をつけ、己のアイデンティティを確立して戻ってきたマサトへ、マグネイト・テンこそが彼の居場所である事を告げる。
- 「…さよなら…僕の…………」
「僕達の……後を継ぐべき人達……」 - MXでの最終決戦終結後、「時の観測者」としての使命を選択し、マグネイト・テンの仲間達へ別れを告げる。
余談
声優の下野紘氏はこの役でアニメデビューしたが、当時は演技力がまだ未熟だったため(ラーゼフォンの収録の一週間前に初めてマイクレッスンを受けたという)出渕監督から「最初は叫び声しかできなかった」などと言われ、劇場版製作前に「時間が経って下手になっていたら(下野氏を)降ろす」つもりだったらしい。