サイクロプス

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サイクロプス(Cyclops)とは、『機動戦士ガンダムSEED』に登場する兵器。

概要

地球連合軍の大型マイクロ波発生装置で、作中では自爆装置として用いられる。

一定範囲内の対象物を過熱させ最終的に大規模な爆発を発生させる大量破壊兵器である。簡単に意訳するなら「巨大な電子レンジ」で、範囲内の生物は体内の水分が蒸発し内部から爆発するように破裂してしまう。

装置は上向きにパラポラアンテナが数十基並んでいる。このパラボラアンテナをギリシア神話に登場する「一つ目」の巨人にちなんで「サイクロプス」と命名された。また、この装置は基本的にNジャマーの影響によって効果範囲が著しく制限される特徴があるため、使用する際には対象物質が極端に接近しないと効果がない[1]。つまり、戦略兵器として使う場合には装置に敵を引き付けなければ戦略的な効果がなく、連合軍は囮となるものをサイクロプス付近に設置する事で、その効果を最大限にまで高めている。

本来の用途は月面の資源採掘施設に設置されたレアメタル内の水分や氷塊などを溶解するための装置なのだが、『ガンダムSEED』本編開始前のグリマルディ戦役において地球連合軍のエンデュミオン・クレーターにある資源採掘基地が攻撃を受けた際に溶解設備であったサイクロプスを意図的に暴走させ、自爆装置の代用として初使用。連合軍の第三機動艦隊とザフトの侵攻部隊の双方に甚大な被害を及ぼし、戦略兵器としての有用性が確認され、軍用兵器として転用される事になった。ちなみに、この戦線は情報操作により連合が勝利したことになっているが、戦局的には連合軍が敗退している[2]

そして、『ガンダムSEED』中盤において地球連合軍最高司令部が存在するアラスカ基地ザフトの大侵攻が行われた際に使用された。こちらは前述の月面とは違い、自爆用途で使用したためアラスカ基地最深部には大規模なアレイを設置しており、Nジャマーにより電波阻害が発生しているにも関わらず、基地を中心に半径10キロという広範囲に破壊をもたらした。なお、長時間使用を続けると最終的にはメルトダウンを引き起こし、大規模な爆発が発生する。アラスカでの使用例では基地最深部に設置されているにも関わらず地表一帯を吹き飛ばすほどの大爆発が起こり、基地周辺は焼野原に、中心部は巨大なクレーターと化してしまった。

ちなみにサイクロプス設置に至ったのは、ブルーコスモス盟主のムルタ・アズラエルラウ・ル・クルーゼとの裏取引[3]。でザフトの「オペレーション・スピットブレイク」の攻撃目標がアラスカ本部であることを知り、地球連合軍上層部に伝えた。実際にサイクロプス設置を命じたのはアズラエルに「問題はこちらで修正する」と伝えた地球連合軍統合作戦室所属大佐ウィリアム・サザーランド(SRW未参戦)であると思われる。起爆はサザーランドともう一人の連合軍将官の手によって行われた。

地球連合軍はクルーゼとの取引により事前にザフト大侵攻の情報を知り、切り捨てるのを前提とした囮部隊(クルーゼ曰く「生贄はユーラシアの部隊とアークエンジェル」)をアラスカ基地グランドホロー最深部に設置、基地内の大部分の将兵を地下の潜水艦ドックから避難させた上で、サイクロプスを発動させている[4]。その結果、基地に侵攻したザフトは投入したモビルスーツの八割を喪失するという前代未聞の大損害を被り、元々地球連合軍最高司令部強襲の為にアフリカ戦線の縮小や各方面の兵員を無理に参加させていたため、地球上の戦線は一気に連合優勢に推移する事となる。また捨て駒にされてしまった連合兵達の殆ども、事実を知らぬまま、命を落とす事になった[5]

大惨事に終わった大量破壊兵器サイクロプスの起動であるが、その情報を知ったキラ・ヤマトが連合・ザフト両軍に撤退を呼びかけたことにより、一部ではあるものの無事に生還できた者もいた事が唯一の救いであった。また、キラのおかげで無事に生還できたマリュー・ラミアスムウ・ラ・フラガアークエンジェル隊のメンバー達は自分達を囮にした地球連合軍を抜けることを決意し、以降は彼と共に独自行動を取っている。

登場作品

αシリーズ

第3次スーパーロボット大戦α
原作通りにアラスカ基地で発動。αナンバーズを逃がすために、岡防衛長官が死亡している。

携帯機シリーズ

スーパーロボット大戦J
本作でもアラスカ基地で発動。特務分艦隊の巻き添えを図る。
スーパーロボット大戦W
本作でもアラスカ基地で発動。事前にキラレナードが情報をリークした。

単独作品

スーパーロボット大戦Card Chronicle
本作でもアラスカ基地で発動。ちなみに、本作において大量破壊兵器サイクロプスの存在を自軍部隊であるアークエンジェル隊に知らせる役回りは、ティエリアが担っている。
スーパーロボット大戦X-Ω
第2章終盤にアラスカ基地で発動。本作ではキラはプラントに行かなかったため、情報のリークを黒の騎士団が行う。また、ザフトの他にエゥーゴティターンズが戦列に加わっており、ティターンズ兵は自爆を承知の上で自軍部隊を襲撃するなど、原作以上に狂気に満ちた戦いとなっている。

関連用語

地球連合軍
機動戦士ガンダムSEED』において地球連合加盟国で構成された軍隊。
サイクロプス起動によって、アラスカ基地を守備していた地球連合軍の多くの将兵がザフトもろとも犠牲になった。
ヤキン・ドゥーエ戦役
C.E.70年に起きた『機動戦士ガンダムSEED』の舞台となった戦争。
初めはザフトが優勢でアラスカ基地侵攻の際にはその戦力の多くを投入していたのだが、サイクロプス起動により壊滅状態になってしまう。以降、戦局は地球連合軍優勢に変わっていくことになる。

脚注

  1. もっとも、Nジャマーによる制限はむしろサイクロプス使用時の効果範囲を容易に抑制する事を可能にしており、更には核兵器と比較して放射能等の重大な環境汚染が発生しないという特徴もあって、本設備は自爆システムとしての利用価値が生み出されてしまった
  2. しかし、実際にはこの戦闘でザフトは戦線維持に必要な戦力を失い、月面戦線を放棄。ローレンツ・クレーターに建設した月面基地からも撤退し、最大の目標であった地球連合軍の月面プトレマイオス基地の制圧は果たせなかった。その後も月は地球連合軍の管理下に置かれたため、実質的には痛み分けに近い。
  3. 小説版によると、この取引の内容はクルーゼはアズラエルに「真のオペレーション・スピットブレイクの作戦詳細」を教え、その代わりにクルーゼはアズラエルから「アラスカ基地の地下エリア・グランドホロー内部の詳細な見取り図」を受け取っていたとの事、作中で連合の主力部隊不在とはいえ、単体で強固な防御網を誇るグランドホロー内部にクルーゼがあっさりと潜入できたのはこのため。
  4. 一部の将兵もサイクロプス使用について知っていたらしく、ナタル・バジルールも将兵たちの会話で知った。
  5. 事件後の地球連合軍部の公式発表は「ザフトが新型大量破壊兵器を使用した」ためと隠蔽されており、基地の将兵がほぼ全滅した件に関してもプロパガンダとして利用している。ただし、ユーラシア連邦と東アジア共和国はアラスカ作戦に不快感を表明しており、地球連合軍内部にも溝が生まれている。次回作ではユーラシア連邦の疲弊はかなりのものだったらしく、大西洋連邦の言いなりに近い状況に陥っている