概要
人物
ジオン公国公王デギン・ソド・ザビの末子。ザビ家の御曹司であり、士官学校首席という能力、また美男子ということもあってジオン国民の間で人気が高い。
来歴
一年戦争ではジオン軍地球方面軍司令官として北米に進駐しているが、その権限は北米方面軍に限られていた。
TV版第6話で、ホワイトベースとガンダムを追って降下してきたシャアを歓待する。しかし、戦時下で大規模なパーティを催し、ニューヤーク市長の娘・イセリナ・エッシェンバッハと恋仲になるなど、危機感のなさが表面化していた[1]。その後、ホワイトベース隊との戦闘で、戦果を焦るあまりに、シャア・アズナブルの策謀にかかってホワイトベースにガウの背後を向けることになり、戦死を遂げる(TV版第10話)。その死は長兄ギレンによって政治的に利用された。
兄弟の中で最も仲が良かったとはいえ、次兄ドズル・ザビからその才能を惜しまれ、指揮官ながらもドップに搭乗して前線に出る勇猛さなど決して無能ではないのだが、シャアに「坊やだからさ…」と看破されたとおり、育ちの良さ故によるお人好し振りや優しさと詰めの甘さが、ガルマの命取りであったといえなくもない。
キャラクターの総評
前述の通り、自ら前線に出る勇猛さを持ち、国葬などの描写を見るにギレンの煽動を抜きにしても国民や軍人などから一定の支持があったと見え、イセリナという存在があったとは言え制圧地域と良好な関係を築くことに成功するなど政治的手腕も悪くはないように見えるなど、ぼっちゃん描写に隠れているものの中々に優秀なのではないかと思わせられる。
また、末子という事もあって兄弟仲の悪いザビ家において唯一どの人物とも決定的な軋轢が無い人物でもあり、そう言った意味でも特別な人物である。ガルマを謀殺したシャアでさえもガルマを友人として見ていた事は本当であったという意見も多く、能力・人脈共に生きてさえいれば確実に有能な人物になっていたと目する視聴者の声も少なくない。
ガルマの死は、復讐を始めてしまったシャアの退路を断ち、ギレンの謀略による国葬で戦争を加速させる等、一年戦争のその後の流れを決定付けた。さらに、ガルマは『機動戦士ガンダム』という作品のみならず宇宙世紀そのものの流れを決定付けた人物であるとも言える。
登場作品と役柄
原作において印象に残るキャラだが、肝心の出典作品の参戦頻度も災いし、SRWにおいては参戦する事が極端に少ない。
旧シリーズ
- 第2次スーパーロボット大戦G
- DC所属。前線基地のダカールをシャアと共に防衛している他、ホンコン・シティで戦闘獣やメカザウルスを引きつれ援軍に現れる。その時の乗機はザクIII。
- 第3次スーパーロボット大戦
- DC所属。序盤でガルマ専用ザクに乗って戦う。ガウではなくケンプファーだが、原作同様の特攻イベントがある。
- なお、ガウは『第4次』からの登場なので、ガルマは乗れず。ちなみに第1話の増援の際、既にシャアが撃墜されていると後述の台詞を言う。
αシリーズ
- スーパーロボット大戦α
- 原作通りの経緯で一年戦争で戦死しており、ザビ家四兄弟で唯一登場しない。
- ジオン軍と交戦する際、クワトロがララァと彼の名を述懐しているので、αシリーズにおいては、シャアにとってガルマは復讐を別にすれば「良い友人だった」という解釈と思われる。
単独作品
- スーパーロボット大戦GC(XO)
- イセリナとのやり取りが再現された。出番はとにかく短く、「ガルマ出撃す」の次のステージが「ガルマ死す」。さらに音声の新規収録もされていない。
- 今回も特攻イベントがあり、原作通りガウで行う。また、クロスオーバーとして、ギニアス・サハリンのアプサラス計画のバックアップもしていた。
- スーパーロボット大戦Operation Extend
- 本作ではザンジバルに搭乗。ニューヤークでの戦闘が省略されているので、ユーザーには既に『GC』(『XO』)同様謀殺されたと思われたが、今回はシャアが「地球が外からの侵略に晒されている中復讐している場合ではない」と空気を読んだため、その後も健在。第3話ではシャアと共同してとある連邦の軍事設施を襲撃する。
- 艦長キャラだが二連撃持ち、こちらの母艦にとっては非常に危険な相手(戦艦全武装が対艦属性付きの為)。
- キシリアのように新生ジオンを設立することはないが(そもそもドズルは戦死している)、ジオンと終戦した後も健在のままである。あるステージのシナリオデモでは、クワトロ(シャア)との会話が用意された。
関連作品
- ヒーロー戦記
- 序盤にシャアと共に現れる。中盤では戦争が始まる事で意気込んでおり、その戦争で戦死したことが終盤シャアの口から語られる。本作ではシャアが謀殺した訳では無い模様。
人間関係
- デギン・ソド・ザビ
- 父親。末子のガルマを最も可愛がっていた。それ故にガルマの死の報を聞いたときは、持っていた杖を使者の前で取り落とし、言葉を失うほどの衝撃を受けた。
- デギンはガルマの葬儀は密やかに執り行うことを希望していたのだが、ギレンの意向によりその願いは叶う事はなかった。この件を契機にギレンとデギンの対立は深まっていくことになる。
- また、安彦良和氏の漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、「軍人より学者の方が適している」と心を痛めているシーンもある。
- ギレン・ザビ
- 長兄。ガルマの死を政治の道具として利用した。
- キシリア・ザビ
- 姉。ガルマの上官でもある。兄妹の中ではガルマが一番好き…というより、ガルマ以外あまり好きじゃない。
- ドズル・ザビ
- 最も親しい次兄。「いずれは自分をも率いることが出来る将軍になる」とガルマに対して期待をかけていただけにその死の衝撃は大きく、ガルマを守り切れなかったシャアの処刑を主張している(なお、デギンの裁量によりシャアは左遷に止まった)。
- その後もガルマの仇討ちの為、ホワイトベース隊にランバ・ラルなどをぶつける。
- シャア・アズナブル
- 士官学校時代の同期。岡崎優氏の漫画版では指まで絡め合わす程の仲であり、ガルマは死の直前まで彼を親友だと思っていた。
- また、シャア自身にとってもかけがえの無い友であったが、彼は復讐の方を選択した…が、ただ空しさに支配されただけであった。
- イセリナ・エッシェンバッハ
- 恋人。ガルマが功を焦ったのは、彼女との結婚をザビ・エッシェンバッハ両家に認めてもらうためだった。
- SRWでは再現されてないが、TV版ではガルマが戦死した次の回のエピソードにて、イセリナは彼の弔い合戦に参加し、命を落としてしまう。彼女の死は、敵パイロットであるアムロに衝撃を与えている。
他作品との人間関係
名台詞
- 「よう、なんだい? 赤い彗星」
- 第5話にて友人であるシャアとの通信回線越しの会話より。記念すべきガルマ初登場時の台詞。
- 階級や家の違いを越えてシャアとはフランクな間柄である事が察せられる台詞である。
- 「シャアの言う通りかもしれん。今までの地球連邦軍の戦艦とはまったく桁が違うようだ」
- 同じく第5話にてジオン公国軍を撃破してきた地球連邦軍の最新型戦艦ホワイトベースを実際に目の当たりにしての感想。
- 敵戦力を軽視しないあたり、ガルマがけっして凡庸な人物ではない事をうかがわせる。
- 「笑うなよ。兵が見ている」
- 第6話にて。ホワイトベース隊を討つことによる功績を立てるチャンスをくれたシャアとの会話から。
- この時、ガルマは右手の中指で自身の髪の毛をからませながら上記の台詞を喋っている。それ故に視聴者の印象に残りやすく、ガルマを代表する名台詞の一つになっている。
- なお、ガルマはシャアのことを親友だと思っていたのだが、一方のシャアは心中にてガルマを謀殺する機会を狙っていたのであった。
- 「シャア! 謀ったな、シャア!」
- 第10話にて。シャアの策謀によって窮地に追い詰められてしまい、シャアからの通信でその窮地が彼の仕業である事を知って叫んだ言葉。
- 「私とてザビ家の男だ。無駄死にはしない!」
- もはや戦死からは逃れられないと悟ったガルマは、取り乱さずに敵艦ホワイトベースへ最後の攻撃を掛けることを決意する。そして…。
- 「ジオン公国に栄光あれぇぇぇぇぇ!!」
- ガウをホワイトベースに向けて特攻させた時の最期の台詞。
- ちなみに、先の作品に登場したとあるキャラクターが自身の死に際に、ガルマの最期の台詞と同様の趣旨の発言をしている。
- 「二ヶ月ほどの内に一度ジオンに帰ります。ですが、父上。その前に必ず一つ大戦果を上げてご覧にいれますよ」
「『親の七光りで将校だ元帥だ』などと国民に笑われたくはありませんからね。では、お目にかかる日を楽しみにしております」 - 第12話にて。父親であるデギンが視聴していたガルマの遺言と言うべきビデオメッセージ。
- 上記のメッセージからは、血縁によって高い地位を得た事にけっして甘んじず、それに相応しい実績を挙げようと努力するガルマの真摯さがうかがえる。
- もっとも、その生真面目さが結果的に彼自身を死に追いやってしまったのは、皮肉としか言えない…。
- 「シャア、わたくしは良い友を持った……」
- 『冒険王』で連載された岡崎優氏の漫画版での台詞。シャアとお互いの指を絡めて友情を確かめ合っているが、どう見てもゲイ的な印象を受けてしまう。
スパロボシリーズの名台詞
搭乗機体
- ガルマ専用ザク
- 専用機であるが、本編では一度も搭乗していない。出典はMSVから。頭部にバルカン砲を装備。
- ガルマ専用ドップ
- 本編での搭乗機で、茶色のカラーリングがされている。
- ガウ
- 本編で特攻を行なった機体。ジオン特有の空力無視設計に漏れず、大量のエンジンで無理やり飛ばしている。
スパロボでの搭乗機体
余談
- キャラクターデザインを行った安彦良和氏にとって思い入れのあるキャラクターである。
- 美形キャラクターであり、シャア・アズナブルと共に(特に女性ファンからの)人気があった。実際に第10話にてガルマが戦死した際には葬儀を執り行ったファンもいたという(同様のエピソードは『六神合体ゴッドマーズ』のマーグにも存在)。
- ジオン兵からの人気も非常に高く、漫画『機動戦士ガンダム オレら連邦愚連隊』では、赤の他人がガルマに成り済ます形で間接的に利用されている。
- OVA版『機動戦士ガンダムUC』第4巻では、森功至氏が声を担当するダイナーの老主人が、客であるオードリーとの会話でシャア・アズナブルについて言及する場面があり、一種のメタ的なファンサービスとなっている。
- ちなみに森氏が配役されたのは、ある程度意識してのものだったらしい事が雑誌インタビューで語られている。
- 漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム スカルハート』において、一説では「E計画」を極秘に進行させたのもガルマだと言われている(ただし、作中ではその事に触れられそうになった元ジオン軍の老人が「オフィシャルではございませんぞ」と発言している)。
- 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』ではザビ家の兄弟の年齢が容姿に合わせて軒並み10歳程上乗せされているが、ガルマのみ元々老け顔では無かった事もあって3歳上乗せされるだけで済んでいる。
- ちなみにこれによって一つ上のキシリアとですら12歳差と言うかなり年の離れた姉弟になっており、長男のギレンに到っては22歳差と最早ガルマがギレンの子であってもおかしくない程の年齢差となっている。
脚注
- ↑ ただし、これらの行動には地元の有力者を懐柔する政治目的もあったと思われる。