ザーツバルム

ザーツバルムは『アルドノア・ゼロ』の登場人物。

ザーツバルム
外国語表記 Saazbaum[1]
登場作品 アルドノア・ゼロ
声優 大川透
デザイン 志村貴子(原案)
松本昌子(アニメ版)
初登場SRW スーパーロボット大戦DD
SRWでの分類 パイロット
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プロフィール
種族 火星人
性別
年齢 43歳
所属 ヴァース帝国
爵位 伯爵
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概要編集

火星の国家「ヴァース帝国」の37家門の火星騎士の一人。身分は伯爵。

同じ37家門のクルーテオと親しく、地球との戦争も辞さない強硬派の火星騎士達のリーダー的存在。親善大使として地球を訪れた皇女のアセイラム・ヴァース・アリューシアの暗殺事件が起こると、演説で他の騎士を焚き付け、衛星軌道上に浮かぶ揚陸城を地球各地へ降下させ、戦端を開かせる。

火星の食糧事情などが厳しいことを実感しているが、同時にそれが火星の環境の険しさだけではなく皇族による重工業偏重政策にも原因があることも見抜いている。貧困に飢える帝国民の不満の矛先を変えるために自国民に選民思想と反地球感情を植え付けられた祖国に関しては冷淡な感情を持ち合わせており、その果てに発生した15年前の地球との惑星間戦争では種子島に降下したが、地球連合軍との戦闘中にヘブンズ・フォールの発生に居合わせ、婚約者オルレインを失った過去を持つ。その経緯からレイレガリア・ヴァース・レイヴァースを始めとするヴァース皇帝家に対しても忠誠心はなく、怒りや恨みの方が強い。故に裏ではアセイラム暗殺事件の黒幕として動いていた。

ヴァースの思想統制により自身も地球人に対する憎悪感情を持つが、それはヴァースの民が貧困する中で地球人を「豊かな環境の中で、漠然と生き続ける者達」という一種の羨望や嫉妬に繋がる感情が根源であり、ヴァース皇族や他の火星騎士の様な「自らの優秀性を信奉するあまりに、地球人を劣等人種として毛嫌いする」といった様な人種差別的な感情は有していない。同時に自分の地球人への憎悪は「植え付けられたもの」という自覚も有している。彼自身の戦争目的は、「かつて戦争を煽動し、ヘブンス・フォールで自身の婚約者を含むヴァース臣民への少なくない犠牲の責を負わず、火星の支配者であり続ける皇族への復讐」と「地球の豊かさと経済力により火星の民を貧困から救う」という二つである。

15年前にスレイン・トロイヤードの父親に助けられたことがあり、スレインに関してその危急を救うなど、トロイヤード親子には恩義と感謝の念を抱いている。

登場作品と役柄編集

単独作品編集

スーパーロボット大戦DD
初登場作品。序章ワールド5より登場。
3章Part1ではディオスクリアと共にボスユニットとして参戦。原作通りの展開となる。

人間関係編集

ヴァース帝国編集

レイレガリア・ヴァース・レイヴァース
ヴァース帝国の皇帝。
アセイラム・ヴァース・アリューシア
彼女の命を狙う。
スレイン・トロイヤード
命の恩人であるトロイヤード博士の息子であるため、恩義を果たす義務があるとして彼を気に掛けている。
クルーテオ
友人。
トリルラン
部下。
ゼブリン、ラフィア、オルガ
37家門の火星騎士達。旧友。
オルレイン
婚約者だった火星騎士の女性。
トロイヤード博士
スレインの父親。かつて地球でヘブンズ・フォールに巻き込まれて重傷を負った際に助けてくれた「命の恩人」であり、恩義を抱く。

地球連合編集

界塚伊奈帆
第1クールの終盤で敵対することとなる。

名台詞編集

「我らがアセイラム姫の切なる平和への祈りは!悪辣なる地球人共の暴虐によって、無惨にも踏みにじられた!」
「我らヴァース帝国の臣は!この旧人類の非道に対して!断固正義の鉄槌を下さねばならない!」
「誇り高き火星の騎士達よ!いざ時は来た!歴代の悲願たる地球降下の大任!義を持って、今こそ果たすべし!」
第1話。アセイラム暗殺事件後に衛星軌道上の軌道騎士達へ向けた演説。
「つまり貴公は、ネズミを殺し損なうのみならず、その行方まで見失ったと?」
「ネズミの居場所が確かならかまわぬ。その街もろとも消し飛ばしてしまえばいい」
トリルラン「は?」
「隕石爆撃を行う」
第3話。トリルランから暗殺実行犯の仲間を一人取り逃がしたとの報告を受け、クルーテオの揚陸城が近いのにも関わらず、隕石爆撃を強行する[2]
「おかしい。爆撃のことは伝えてある。巻き込まれるはずはない」
第5話。クルーテオから新芦原市への爆撃でトリルランが死んだと教えられ、その死に疑念を抱き…。
レイレガリア「貴公の言った通りだな、ザーツバルム伯爵」
「地球人は信用なりません。至る所にスパイが紛れ込んでおり、隙あらばヴァース転覆をと企んでおります」
「大切な姫を失い、心を痛めている陛下を空言で惑わそうなど言語道断」
「皇帝陛下。卑しき種族に、どうか正義の鉄槌を」
同話より。皇帝に面会するスレインだったが、既にザーツバルムは先んじて手を打っていた。
「スレイン・トロイヤード。我が大義に仇をなすか。」
「フッ…皮肉だな、トロイヤード博士」
同話より。スレインの行動が恩義のある彼の父を裏切ることになると皮肉る。
「待たれよ、クルーテオ卿」
クルーテオ「誇り高き我ら軌道騎士を愚弄するなど…この地球で灰にしてくれよう」
「…クッ」
ザーツバルムがクルーテオを制止する際の発言…なのだが、作中では何度もこの発言で諫めている事から「待たれよ卿」という綽名を視聴者からつけられる羽目に。また、「それくらいにしてはいかがか?」等、この発言以外でも制止する場面がある。
第8話最後の制止の際には、幾度となるザーツバルムの制止にも関わらず、クルーテオがスレイン殺害の意志を明確にしたため、即座に通信を切断し、ディオスクリアでクルーテオの揚陸城を襲撃している。
当初はスレインの真意を探ろうとするなど、自身の反逆に関する情報漏洩を警戒していると思われたが、このタイミングでの襲撃[3]とスレイン救出から彼を助けようとしていた事が明らかになる。
「我はそなたの父君に恩義がある。故にそれに報いる義務がある」
「15年前、開戦の折、我は先兵として地球に降下した。そこで『ヘブンズ・フォール』に見舞われ、瀕死の重傷を負った。月は割れ、地殻変動が起き、救助の当てもない天変地異の最中で、我はそなたの父君トロイヤード博士に拾われ、命を救われたのだ」
第9話より。スレインをクルーテオ城から救い、自身の揚陸城に保護。スレインが目覚めた際に、なぜスレインを助けたのかを語る。
「クルーテオ伯爵は反逆者ではない。むしろ姫殿下に忠誠を誓う真の騎士。そして我こそがアセイラム姫殿下暗殺を企てた反逆者である」
同話より。そして、スレインに自身がアセイラム暗殺の首謀者であると打ち明ける。当然スレインは「命の恩人[4]が真の反逆者」という事態に絶句するしかなかった。
「クロレラとオキアミを糧に生きるヴァースの民からは想像もつかぬ贅沢」
「水と生命が恵まれ、無数の生命が犇めく地球にのみ許された文化だ。祖国ヴァースはアルドノアによって科学文明だけは発達したものの、文化は何も育っておらぬ。この豊かな資源に恵まれた星を手にせぬ理由はない」
同話より。加工食品のチキンソテーを見て。ヴァース帝国の工業力と技術力の高さとは裏腹にその食糧事情が垣間見える場面。
「アルドノアを中心とした封建制度の中で虐げられた民、その貧しく卑しい国が長き歴史ある星を蔑む。なんと愚かしい事か」
「地球を羨み、地球を妬み、地球を憎むことで民衆を治めていたヴァースが、地球を侵略する事でしか大義を保てぬほど病むのも同義、それはそなたの傷が良く知っているだろう」
「王族が戦を選んだのだヴァースを治めるために、そしてその戦によって『ヘブンズ・フォール』が起き、我が婚約者『オルレイン』は命を落としたッ!!」
「この戦は我が復讐、この戦は我が天命。逆らうなら容赦はせぬ。例え恩人であろうと…」
同話より。スレインとの会話で明かしたザーツバルムが地球との戦争を引き起こした理由。火星の民を貧困から救うという明確な大義を有しながらも、同時にかつて戦争を煽動し、婚約者を失った経緯から皇族に対する深い憎悪も窺える。また、ヴァースの選民主義思想に関して酷く冷淡な感情や、過去にトロイヤード博士に命を救われたからか、他の火星人とは違い、地球人という理由だけで相手を見下さないという一面も確認できる。
「我らは尽力した。皇帝陛下から賜った力を使い、民を統べ、ヴァースの荒れた地を開拓し、領地を広げ富を築こうとした。しかし、何をしようと我らには限界があった」
スレイン「限界?」
「水と空気だ。アルドノアを生んだ古代文明人の時代にはまだ水と空気が豊富であった。しかし、今のヴァースは真空に近い薄い大気と、地下に残った僅かな水のみ。むしろ薄い大気のせいで常に砂嵐に見舞われる。これではどんなに土地があっても得られる実りは僅か。民が増えれば増えるほど生産が消費に追い付かずに困窮していく。あの惑星に住むのは最初から無理があったのだ」
「しかし、二代目皇帝ギルゼリア陛下はアルドノアの力を信奉し、工業力の発展ばかりに力を注がれた。アルドノアを支配する王族の権力を絶対のものとし、民衆の苦しみには耳を傾けられなかった。そして民の募る不満の矛先を地球へと向けられた。ヴァースに対して主権を主張し、独立を阻み、遠く離れた星から統治しようとした地球こそが我らの敵であり、苦難の源であるとヴァースの民を煽動されたのだ」
「恐ろしいことにその妄言は、皆に支持された。自らこそが優秀な民族であり、豊かさを握っている劣等民族こそが悪であると、我らは地球侵攻を企て、ハイパーゲートを経由して月に戦力を結集した。愚かにもそれを正義と信じて。そして先方として飛行能力に長けた我がディオスクリアと、オルレインのデューカリオンが種子島に降下した…」
第10話より。ヴァース帝国の設立後の貧困と、地球への敵意に関して。火星の生存資源と乏しさと、ヴァース皇族のアルドノアを重視した重工業偏重主義により苦しめられる民衆と、国内不満を抑えるべく選民思想煽動と反地球を煽った結果が、過剰な選民思想と地球人を劣等人種だと妄信する現在のヴァース帝国へと繋がっていったことを語る。
地球側の国連統治が武装蜂起と独立化を招いた問題のある行為だったのは事実だが、その後の政策はヴァース皇族が主導した結果であるため、現状で火星が貧しいのは皇族側の失策である。しかし、自身の国内統治と失策の論点をズラすために、反地球感情を煽りまくった結果、もはや地球への敵意を統制できない状況にまで陥って『ヘブンズ・フォール』という大被害まで引き起こしたのは、明らかににヴァース皇族側に責任があるだろう。
「あやつには過ぎた機体だ」
同話より。スレインにクルーテオ城から回収したクルーテオ専用カタフラフト「タルシス」を見せた際に。ザーツバルムからのクルーテオの評価は決して高くなかった事を窺わせる。
「父君への義理は果たした。我が軍に付くもよし、地球に逃げるもよし、好きにせよ」
同話より。スレインの手錠をハンドガンで撃ちぬいた際に。
「揚陸城降下開始ッ! 目標、ロシア・ノヴォスタリスク地球連合本部!」
第10話の最後。アセイラムが地球連合軍本部ノヴォスタリスク地下基地に所在している事を特定し、地球連合本部に揚陸城で降下を開始する。
第一期の最終決戦となるノヴォスタリクス攻防戦が始まる。
「デューカリオン…かの機体よりアルドノアを移植するも、オルレインが他界して機能せず、それをアセイラム姫殿下が再起動したというところか、…忌まわしき船よ」
第11話より。成層圏付近でデューカリオンを被弾させた際に。かつての婚約者の愛機を敵対者である地球連合軍が再利用し、憎むべき皇族であるアセイラムが再稼働させたことに忌々しさを感じている模様。
「そうか? 我は地球人というだけで憎いがな…ヴァース軌道騎士37家門よりザーツバルム参上いたしました。…お覚悟をアセイラム姫殿下」
第12話より。アセイラムが伊奈帆へ「ヴァースが憎いですよね」との問いかけと、伊奈帆の「憎いとは思わない」との回答に割り込んだ際に。皇族が自国民に地球への憎悪感情を植え付けられた件を皮肉っていると思われる。
アセイラムはザーツバルムが反逆者であることに非常に驚いているため、表向きのザーツバルムは忠義者と見られていた模様。
「抜刀」
「飛べ、我が眷属よ」
同話より。ビームサーベル展開時とロケットパンチ射出時の台詞。それぞれブラドフェミーアンの個性だと思われていた台詞だったが、どうやら火星騎士の共通用語だったようだ。
「分かるまい…貴様らにはぁぁッ! 植え付けられた地球人への羨望と憎しみが、何時までも我らの魂を濁らせ続ける。人としての生き方を奪う」
「豊かな地で漫然と生きる者に我らの想いは分かりはすまい。憎しみを植え付けられた恨み…それに気づいた時の虚しさ…愛する者を護れなかった無念…分かりはすまいぃッ!」
「のあああぁぁぁぁッ!!」
同話より。火器を捨てたスレイプニールと対峙し、戦闘で劣勢に陥りながらも戦い続ける最中に。祖国ヴァースから受けた仕打ちと豊かな世界で生き続ける地球人への羨望、自身の無力と無念を喚き散らしながら伊奈帆へと突撃する。しかし、感情的な行動を読まれたのか、伊奈帆のスレイプニールから完璧なカウンターを食らってしまい、更に一方的に打ちのめされて衝撃に耐えきれず、コクピット内で吐血する。
「我は憎む全てを倒し、憎しみの連鎖を…断つ」
同話より。決定的な劣勢になりながらもザーツバルムは抵抗を諦めず、この言葉を聞いたタルシスに乗っていたスレインはザーツバルムを援護するべく突撃するが、同時にアセイラムが揚陸城のアルドノアを停止させたため、同時に行動不能となったタルシスは減速できずにスレイプニールとディオスクリアに突っ込んでしまい…。
「我を助けたな…スレイン」
「…よくやった…」
同話より。そのままアルドノアの保管室に突っ込んでしまい、大破したスレイプニールの伊奈帆に寄り添っていたアセイラムをスレインの前で銃撃した際に。
当然ながら激高し、狂乱したスレインからは拳銃を乱射されたが、数発の弾丸を受けても致命傷に至ることなく排莢不良を起こしてしまう。吐血した後に静かに自身の手で「眉間を撃ち抜け」と言わんばかりに、額を指し示すが…。

搭乗機体編集

ディオスクリア
自身の専用機。
ディオスクリアII
ディオスクリアの改修機。

余談 編集

  • ヴァース帝国のカタフラクトは火星の地名から名前を取っているが、彼の愛機ディオスクリアと婚約者の愛機デューカリオンはギリシア神話から名前を取っている。

脚注編集

  1. CHARACTER、アルドノア・ゼロ、2022年1月16日閲覧。
  2. アセイラム暗殺事件はヴァース帝国強硬派が地球連合に戦争を仕掛ける大義名分であるため、それが火星側の自作自演と露見すれば、ヴァースの大義が根底から覆ってしまうので、焦るのは無理もない。
  3. この時点ではクルーテオはスレインが地球人であるため、ヴァースを裏切る行動を取っているとしか思っておらず、スレインから自身が反逆者であると露見を防ぐ行動としてはタイミングが不可解。そもそもクルーテオはスレインが子供であることもあって、行動や思考を軽視しており、尋問もそこそこに殺害を命じている。ザーツバルムが露見を恐れるなら傍観するだけで済む話となり、幾度となくスレイン殺害を制止する必要はない。
  4. 実際は意識を失った後にクルーテオはスレインが反逆者ではなく、アセイラムを救うために単独で動いていた事に気付き、部下に手厚く介抱するように命じ、アセイラムの意志を継いで地球連合政府への休戦の申し込みを行おうとしていたが、気絶していたスレインにそれを知る術は無かった。