ELS(Extraterrestrial Livingmetal Shapeshifter)
『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』に登場する金属の地球外生命体。名称の由来は地球外変異性金属体の英訳『Extraterrestrial Livingmetal Shapeshifter』の頭文字から。ガンダムシリーズの映像作品において、初めて明確に登場した「異星人」に相当する存在(厳密に言うと「人」ではないため、劇中では「異星体」と呼称されている)である。
コミュニケーションは脳量子波によって行われる。そのため刹那やデカルトといったイノベイター、アレルヤやマリーといった超兵など、脳量子波を感じ取れる人物がELSに対して反応を示していた。ELSの方も脳量子波が強い存在に惹かれており、脳量子波を発する存在に優先的に接触を図る。
特徴の一つとして生物・無生物を問わず、接触した物質と融合する能力や物質が有する能力を模倣する能力を持ち、相手がMSや戦艦であれば、粒子ビームやGNフィールドなどの武装ですら模倣している(ちなみに、ELSが擬態したMSや戦艦等が放つビームの色は紫色になっているが、これは視聴者に分かりやすいようにという描写的な演出でもある)。また、一定以下の体積(概ね成人男性程度)にまで粉砕されると活動が止まり、融合なども行わなくなる。しかし、その状態でも活動しているELSと接触すると、呼応して活動を再開してしまうため、ビーム等で蒸発させなければ体積を削る事すら出来ない。基本的にELSに取り込まれた者は死亡してしまうが、脳量子波の因子を持ち、侵食時にELSからの膨大な情報を受け流すことができた場合は、人体の生命活動への影響は無い。ただし、ELSを切り離すことは不可能である。
実際には、ELSに敵対する意思は全くなかった。母星は主星の白色矮星化とそれによって発生した惑星状星雲に飲み込まれて滅亡寸前であったため、彼らは自身の形成した巨大コロニー(超大型ELS)に乗り込んで母星を離れ、宇宙を放浪中に偶然遭遇した者達へ助けを求めていただけの要救助者だった。MSや地球人の姿を模していたことも、ELSなりの対話やSOSの意思表明に過ぎず、地球人と融合するという行為も、異分子と一つになることで相互理解を成そうとする彼らなりのコミュニケーション方法だった。脳量子波を持つ者を襲って融合を試みたのも、肥大化したELSのネットワークの中で意識を共有するには脳量子波が不可欠であったためである。
ところが、母星が滅ぶという空前のパニック状態に陥っていたことが災いし、それらの行為が侵略行為であると誤認した地球側は抗戦を決意。ELSは独立した「個」の概念を知らなかった。さらに、幾らでも増大が可能なELSは、それを自身への「攻撃」だと認識できずそうすることが彼らのコミュニケーションであると誤解してしまった。もっとも、ELSはGN粒子による意志の伝播については知っていたが、このために地球側のGN粒子による攻撃を「対話の場作り」と認識してしまっていた。地球の人類とELSとの間に起こった戦いは、どちらが一方的に悪いと言う問題ではなく、「全く違ったコミュニケーション体系を持つ者同士の相互不理解が招いた悲劇」だったと言える。
最終的に、ELSは刹那によって「人間は『個』を持つ存在である」理解し、人間が「ELSは『多数であり一つ」の存在である」と理解したことで人類との共存が可能となった。ELS襲来事件から50年後の西暦2364年。ELSと共生関係にある人間や、人間とELSが共同で操作するMS「サキブレ」等も登場し、長い年月の末に地球人とELSは外宇宙へと飛び立つことになった。
ELSの分類
- ELS (小型)
- MSよりもサイズは小型。
- ELS (大型) / ELS (中型)
- ガデラーザや戦艦クラスの大きさを持つ。第3次Z天獄篇では「中型」表記。
- ELS (超大型) / ELS (大型)
- 直径約3000kmの巨大さ(月と同規模の大きさ)を誇る。第3次Z天獄篇では「大型」表記。
- ELS GN-X IV
- ELSの擬態したGN-X IV。「ELSジンクス」とも呼ばれる。オリジナルと細かい点で差異があるが、性能は同等であったため地球連邦軍を苦しめた。
- ELSアスカロン
- 飛行機に擬態したELSの一部がアリオスガンダム アスカロンを侵食して擬態。オリジナルに侵蝕したものとELSが再現した機体の2体が登場し、後者は飛行形態に擬態していた。レオ・ジークとデル・エルダの乗るティエレンチーツーが交戦し、2体が融合している隙を突いて撃破。
- ELSガデラーザ
- ガデラーザに擬態したELS。最終決戦の最終防衛ラインに出現した。映画には登場していないが設定上は登場していたという扱いで、漫画版や外伝作品にも登場している。
- ELSガガキャノン
- ガガキャノンに擬態。文字資料にのみ登場。
- ELSバイカル級
- バイカル級宇宙巡洋艦に擬態したELS。他の擬態に比べやたらと再現度が高い。地球連邦軍艦隊に大打撃を与えた。
- ELSダブルオー
- 漫画版に登場。ダブルオーライザー 粒子貯蔵タンク装備型に擬態したELS。
- 初期段階ではこの機体が登場する予定だったらしく、グラハムがELS GN-X IVに対して「ガンダムタイプ」と発言するのはこの名残らしい。
- 広義にはオリジナル・擬似問わず太陽炉を搭載したMSをガンダム扱いし、更にGN-X IVはガンダムの技術を多分に利用しているので間違った発言ではない。
登場作品
『Gジェネ』シリーズのような擬態能力(文字通りランダムで味方機に擬態する)は無いものの、侵食能力は条件付きの即死攻撃として再現され、回避と射程が低い味方ユニットにとっては危険な相手。
Zシリーズ
- 第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇
- 今回は登場しないが、第8話「戦うボーイ・ミーツ・ガール」のウィスパード覚醒デモにて、単語が確認できる。
- 第3次スーパーロボット大戦Z天獄篇
- 序盤の終わり頃から登場。ロージェノムや御使いからは「蠢く金属」と呼ばれている。バアルに母星を滅ぼされ、宇宙を放浪していた。そのため、最終決戦ステージで楽しみのテンプティによって送り込まれた宇宙怪獣が出現すると同時に明確な攻撃の意思を見せている。
- 武器の特殊効果「侵食」によって気力を10下げられ、戦闘終了時に80以下であれば撃墜扱いとなる(演出上は撤退だが、修理費はしっかり取られるので注意)。とにかく、リアル系は運動性を強化して当たらないようにする。スーパー系および母艦クラスは元々避けるよう機体ではないので前線には出ないほうが良い。
- 今回の最終決戦はユニット化した超大型ELSと戦う(ただし、最終目標は別の宇宙怪獣を撃破)事となり、和解後は対バアルや御使いの作戦に参加する。対話と同時に宇宙怪獣の移動重力源がブラックホール化して地球圏が飲み込まれるという絶体絶命の危機に瀕したのだが、対話終了後それをELS達が取り込んで吸収・無力化して惨事を防いで見せた(この際には原作のラスト同様に花の姿の集合体となっている)。
- 後述のように生態が類似しているバジュラとは早々に相互理解および共生することが出来ており、人類に加勢する際は連合軍を結成しているなどのクロスオーバーを見せている。
- ENが0になると撃墜扱いだったUXと違い、今作は上げる手段が限られている気力が撃墜条件となっているのでUX以上に厄介になっている。
- ただし、バサラが同行している場合は、開幕「歌」で気力を上げることによって相当楽な相手になる。
携帯機シリーズ
- スーパーロボット大戦UX
- 初登場作品。様々な形状・サイズの個体が敵として出現する。第24話「A wakening」にて初交戦。
- 攻撃時に敵のENを「最大ENの(融合Lv×10)%」減少させる特殊能力を持ち、この効果でENが0になったユニットは撃墜される。単体ではさほど脅威ではないが、原作同様とにかく大量に出現する(一部のマップでは無限増援)上にパイロットの命中と機体の照準値が高く、集中攻撃を受けるとリアル系ユニットでも危険。また、必殺武器やバリアでENを浪費するとその分落とされやすくなるため、ELSが出現するマップではEN管理に特に気をつける必要がある。射程は全体的に短めだが、高い移動力に任せて凄まじい勢いで群がってくるため、遠くにいても油断はできない。HPが高く回避能力の低い戦艦にとってはフェストゥムに並ぶ天敵とも言える。
- 弱点は、ENを持たず魔術で動くデモンベインには融合が通じないこと。高いHPに惹かれて集まってきたところを反撃で一網打尽にできる。また、スキルパーツがかなり入手困難ではあるものの、ELSジンクスを除けばどの個体も撃ち落とし可能な武装しか持たないため「銃の名手」のスキルを持つユニット相手には何もできない。銃の名手以外のメンバーも撃ち落とし出来るように、森次やグラハムを戦術指揮官にする方法もあり。
- スーパーロボット大戦BX
- 第29話「再会、そして別れ」のステージで初交戦する。そして、ヴェイガンとの決着が付いた後の第43話「Trailblazer」で対話が行われる。このステージは木星圏であるが、今作には『勇者王ガオガイガー』が参戦しているためザ・パワーの影響を受けており、何と登場するELS全てが初期気力200となっている。もっとも、上限値を振り切ったのではなくスタート値が200になっているため、250まで上がる。
- 実は、「ELSの母星には境界の力を繋ぎとめる守護点があった」というバンプレストオリジナルとのクロスオーバーがある。しかし、母星が滅びを迎えた事で守護点は解放されてしまい、境界の力が不安定化する一因となった。
単独作品
装備・機能
武装・必殺武器
- 融合
- 接触した物体に侵食し、金属化させてしまう能力。
- UX・BXでは「攻撃命中時に機体のENを減少させ、機体のENが0になれば撃墜扱いになる」という脅威の攻撃方法となっている。このため、回避の低いスーパー系や母艦にとっては天敵ともいえる。
- トドメ演出として「相手を融合した後後続の群れが巻き込んで通過」というデモがあるが、EN0での特殊撃墜限定。
- 侵食
- 第3次Z天獄篇では、こちらの名称。
- 専用の特殊効果「侵食」は「命中すると気力が10低下し、気力が80を下回ると被撃墜扱いで強制的に撤退」という仕様。
- R系特殊効果のため精神耐性は無効の上、バリア貫通も持つためバリアも効かない。なお、無効化手段はオールキャンセラー(=「SOLアーマー」装備)のみ。
関連人物
- 刹那・F・セイエイ
- 純粋種のイノベイター。ELSと対話しようと試みる者。
- 最終的には対話を果たしELSの母星へ旅立ち、50年後地球に帰還した時の刹那の肉体はELSと融合し、イノベイターもELSも、そしてハイブリッド・イノベイターすら超える新たな種へと進化していた。
- デカルト・シャーマン
- 純粋種のイノベイター。刹那と異なり、ELSに対してはあまり良い印象を抱いていなかった。最終的にELSに取り込まれて死亡する。
- スカイ・エクリプス
- リボンズと同型(塩基配列パターン0026タイプ)のイノベイド。GNドライヴ生産のために有人探査船エウロパに乗船し、任務達成後は機密保持のために死亡。
- エウロパの残骸とともに放置されていたスカイ・エクリプスの遺体をELSが侵食し、地球に降ったELSの破片が彼の姿をとる。TV版でしか『00』の物語を追っていない視聴者には、ELSによる擬態をリボンズのコピーと勘違いされた(もっとも、それを狙ったミスリードでもあるが)。
- ちなみに、スカイ・エクリプスに擬態したELSはその後飛行機に擬態し、レオのアスカロンと交戦して撃墜され、その残骸はルイスと沙慈の前に現れるが、刹那によって爆破され機能停止する。また、漫画版では、刹那の乗ったバイクに轢かれるシーンがある。
- アーミア・リー
- 地上に落下して自宅のドアに擬態したELSに侵食される。左半身が金属化して昏睡状態になる。その後は地球連邦軍の施設に収容されていたが、刹那とELSの対話が成功して覚醒。無事に回復し、ハイブリッド・イノベイターになった。エピローグの西暦2364年時には外宇宙航行艦「スメラギ」の艦長に就任。
- クラウス・グラード
- 元カタロン幹部の経歴を持つ連邦政府議員。ELSに侵食されて昏睡状態に陥っていたアーミアの様子を目撃している。
- なお、老年期になってイノベイターに覚醒した模様で、エピローグの西暦2364年時には外宇宙航行艦「スメラギ」の最高責任者となっている。
- レオ・ジーク(レナード・ファインズ)
- 外伝作品『機動戦士ガンダム00I 2314』の主人公。かつては人類革新連盟の超兵機関に所属していた不完全な超兵。
- ソレスタルビーイングの別働隊「フェレシュテ」でガンダムマイスターとして行動しELSと交戦。 最終決戦でELSに取り込まれかけるも、間一髪で刹那の対話が成功し生還する。融合時に義手になっていた左腕も再生した。
- エピローグの西暦2364年時にはサキブレのパイロットになる。とある惑星で未知の生命の発見という偉業を果たす。
- NO PILOT
- ELSに融合され乗っ取られた機体のパイロットのことで、無人操縦の状態を表現している。UXに登場するバンプレストオリジナルキャラクター(?)である。
他作品の関連人物
関連機体
- エウロパ
- 木星の近くを漂っていた有人探査船(船籍番号9374)。1stシーズン第17話冒頭部分に登場していた。劇場版では、機密保持のための自爆で朽ち果てていたオリジナルにELSが侵食・擬態したことで原形に近い形で修復され、地球にやって来たことから物語が始まる。
- 地球への落下コースを取るエウロパは、地球連邦軍の艦隊に攻撃された後にガデラーザによって破砕されるも破片の一部は地上へと落下して、それが侵食した機械が勝手に動きだす等の怪異事件が世界各地で起きている。
- 一方、宇宙に残った破片は融合して再度復元され、ソレスタルビーイングと交戦しラファエルガンダムが撃破した。なお、スカイ・エクリプスの遺体はこの中に存在していた。
- ガルムガンダムE
- ガルムガンダムがELSと融合した機体。レオ・ジークがこの機体を駆りイノベイターと彼らを敵視する旧人類の戦争に介入する姿が確認されている。
- サキブレ
- 宇宙探査用のワークローダー。頭部にELS用のコクピットが設置されている。
- ELSクアンタ
- ダブルオークアンタとELSがさらなる相互理解のために融合した機体。
- クアンタムバーストでパージした装甲も復元され、肩以外は左右対称となっている。背中の8枚の触手らしき部位はELS以外の異星体が融合したもので、戦闘になった場合は武器にもなる模様。
- この機体の『草花も兵器に宿る澄み渡る未来』を象徴する姿が、劇場版のラストを飾った。
他作品の関連機体
関連用語
- 脳量子波
- ELSがコミュニケーションに使用。大小を問わないならば、人間すべてが持っている。
- 超兵
- 先天的もしくは後天的処置によって強化された人間。彼らは脳量子波を植え付けられたとされるが、実際には元々持っている脳量子波が強化されたものである。
- イノベイター
- GN粒子によって肉体が変革した人類。強力な脳量子波を発し、脳量子波を用いてのコミュニケーションが可能。
- バジュラ、フェストゥム、コーラリアン、イマージュ
- 他作品における、ELSに似た特性を持つ種族。人類とはかけ離れた姿の異種族、種族全体で群体を構成している、人類とコミュニケーションが可能という共通点がある。
- このうち、バジュラ、フェストゥムとはUXで共演。終盤ではフェストゥムと共にバジュラ本星へ自軍部隊の援護に駆けつける一幕も。
- バジュラとは第3次天獄篇でも共演し、こちらでも似た者同士で相互理解し共存できていて、終盤では連合軍を結成して人類に加勢してくれる。