Xラウンダー
Xラウンダー(X Rounder)
『機動戦士ガンダムAGE』に登場する概念。人間の脳に存在する「X領域」と呼ばれる区画を解放し、鋭敏な感知能力や感覚の拡大、行動の先読みなど超常的な能力を発揮できるようになった人間を指して使われる。
能力そのものの初出は第2話「AGEの力」とかなり早く、ユリン・ルシェルが直感力という形で能力を垣間見せていた。「能力者同士の感応」「ビット兵器の使用」や「複数人の共同による能力の拡大化」等、宇宙世紀ガンダムシリーズでいうニュータイプとほぼ同じ能力と言える。
アセム編の時点では連邦・ヴェイガンともかなりの部分まで研究を進めており、それぞれ適性試験、擬似的に能力を発現させるサイコメットの量産化という形で成果を挙げている。
発現の方法についてははっきりとは判明していないが、素質を持った人間が能力者と接触・交流することで覚醒すると見られている。
しかし、この能力にはニュータイプとは決定的に異なる点がある。それは、ニュータイプが広義には「宇宙という新たな環境に適応した人類の進化の形」とされるのに対し、Xラウンダーは「原始へと退化を始めた人間」だということである。事実、ニュータイプが他者との交流など戦闘以外の使い道がクローズアップされる事も多いのに対し、Xラウンダー能力は戦闘以外の使い道が全く存在せず(直接的でなければ味方の判別や隠された爆弾の位置の特定等にも使用されているが、これも本質的には野生動物たちが自分の身を守るための本能の延長上に存在するものである)、能力者の中には最大限に能力を発揮した結果理性を喪失し暴走した事例が存在する。
ヴェイガンの指導者であるフェザール・イゼルカントはこの能力の発現を「人間が理性を持たない野獣へと還っていく過程」だと述べている[1]。それを裏付けるように、ニュータイプとのもう一つの違いとして、ニュータイプ能力は理性によってある程度の制御が利くのに対し、Xラウンダーは完全に本能に依拠している点が挙げられる。実際にOVA『MEMORY OF EDEN』では、ゼハート・ガレットが最終決戦前の連邦との戦いで敵のモビルスーツを次々と撃破しながらも次第に精神が壊れ始め、イゼルカント曰くの「真のXラウンダー」=理性なき野獣へと目覚めていく様子が克明に描写されている。
ただし、「軍内においてのXラウンダーは基本的に優れたパイロットである」という以上の扱いはされておらず、ニュータイプの様に人種差別的な曲解や争いの原因になるような事態にはなっていない。ヴェイガンにおいては貴重なパイロットとして厚遇されており、そのために高慢に振る舞うXラウンダーやそれに不満を持つ軍人たちも居るが、目に見える諍いはその位である。
一方で小説版では、イゼルカントの考えも間違っており、「真のXラウンダーは、本能から智慧への輝き」だと説明されている。小説版では「現在の人間は知識と智慧を履き違えている」と指摘する箇所があるので、この考えは人類の進化の形の一つと捉えることもできる。ただし、作中の描写を見る限り、智慧への輝きまでたどり着いたのはキオ・アスノだけだったようだ[2]。 //『ガンダムEXA VS』6巻より。
連邦軍のエースパイロットであるウルフ・エ二アクル(SRW未登場)は「戦場におけるXラウンダー=先読み能力は高いが、利点はそれだけであり、戦闘における状況判断・機体の操縦というプロセスが必要な事に変わりは無い」と看破しており、非XラウンダーながらヴェイガンのXラウンダーを撃破している。この教えを受け継いだアセムもゼハートを圧倒、デシルを撃破して見せた。
スパロボシリーズでの扱い
- スーパーロボット大戦BX
- 『AGE』の一部パイロットの専用特殊スキルとして実装。レベルの上昇に応じて命中率・回避率・『AGE』系MSのビット・ファンネルを使用したバリアの性能に補正がかかる。『BX』ではニュータイプやイノベイターと似た仕様の能力として扱われており、「人間の退化である」という原作の設定は拾われていない。
- また、「フリットの推進によって、各地の学校等ではXラウンダー適性検査が義務化されている」とのことで、バナージやアーミアは「この適性検査に適合しなかった」と話している場面もあり、ニュータイプやイノベイターとは別系統の能力であることが示されている。この場面では「Xラウンダー適性が無いならば、ニュータイプやイノベイターの資質も無いだろう」と語られており、その辺りの区別はほとんど浸透していないと思われる。
- なお、『BX』におけるフリットはXラウンダーを「宇宙に適合した人類(ニュータイプ)の別の形」と評しており、その発言は広く知られている模様。
能力所持者
地球連邦軍
- フリット・アスノ
- 全編に登場。地球側ではユリンに次ぐ二人目の能力者。フリット編にてその片鱗を見せ、アセム編にかけてその能力を活用し、連邦切ってのエースとして活躍。老い衰えたキオ編においても能力は健在である。
- キオ・アスノ
- キオ編以降から登場。フリットの孫。隔世遺伝なのか初登場時にその高い能力の片鱗を見せた。そして、最終話「長き旅の終わり」でXラウンダーの力を発動させて祖父フリットの心を救う切っ掛けを作った。
- 『AGE』作中においてXラウンダーの力を戦闘のためではなく、「人を救うために」使用した数少ない人物である。
- ジラード・フォーネル
- 三世代編の過去の回想シーンに登場。恋人のレイナ・スプリガン共々Xラウンダーだったが、Xラウンダー能力を用いた新システムの試験の際に事故で死亡する。
- また、この試験の失敗の責任も擦り付けられてしまい、この事がレイナの連邦に対する憎悪の根源となっている。
ヴェイガン
- デシル・ガレット
- フリット編・アセム編に登場。フリット編の時点ではヴェイガン側が認識していた唯一の能力者。そのため、弱冠7歳にしてVIP待遇を受けていた。しかし、元々幼いという点を差し引いても人格形成や素行に問題があり、フリットに大敗を喫した事が原因で精神を病む。
- アセム編の時点ではXラウンダーとしてもパイロットとしても能力が衰えており、結果として人格面においても少年時代の幼稚な残忍さはそのままに粘着質と陰湿さが加わりより悪化、私情から命令違反や無断出撃を幾度となく繰り返すなどヴェイガン内では既に厄介者扱いを受けていた。フリットへの復讐に固執するも叶う事は無く、最期は能力者ですらないアセムに引導を渡され、敗北を認められないまま戦死した。
- また、ユリンおよびウルフの死の原因を作った張本人でもあり、ある意味ではその後のフリットの行動に大きな影響を及ぼした人物である。
- ゼハート・ガレット
- アセム編から登場。デシルの弟。能力は兄以上に高いが、ヴェイガン側にその能力に付いていける機体が存在しないため、能力制限用の仮面を被っている。ただし、着脱の度に効果が無くなるため普段も装着したまま。後に、能力に付いて行ける機体(ガンダムレギルス)を受領した後は外している。
- マジシャンズ8
- アセム編に登場。全員がXラウンダーで構成されたヴェイガンの部隊。リーダーはドール・フロスト。ゼダスMに搭乗する。
- しかし、アセムやウルフの前に幾度となく敗北を繰り返し、最終的にはノートラム会戦のドールの戦死をもって全滅した。
- フェザール・イゼルカント
- アセム編から登場。ヴェイガンの指導者。Xラウンダーとしての感覚が非常に強く、地球圏にいるゼハートに火星からメッセージを送るだけでなく、キオに対し自らの理想とする世界のビジョンを見せる等相当使いこなしている模様。また、老齢ながらパイロットとしての技量にも優れている。
- フラム・ナラ
- キオ編以降から登場。ザナルドが派遣したゼハートの副官その2。また、前述のマジシャンズ8のリーダー・ドールの妹。パイロットとしては未熟ながらXラウンダー能力は高い。
- ディーン・アノン
- キオ編以降から登場。ヴェイガンのコロニーに住む少年。他のXラウンダーパイロットと共にジルスベインに乗る。
- ジラード・スプリガン
- 三世代編に登場。元連邦軍のエースパイロット。本名はレイナ・スプリガン。
- 過去の負傷が原因で発狂し能力が暴走した際には、その場に居たXラウンダー3人のビット兵器を全て奪うといった驚異的な力を発揮した。
- ゼラ・ギンス
- 三世代編に登場。イゼルカントの遺伝子から造られた強化クローン人間。
- 完全に戦闘だけを目的に強化されたため、人間的な情緒はほぼ持っていないが、ヴェイガンで最高のXラウンダー能力の持ち主である。
民間人
関連用語
- スーパーパイロット
- ウルフ・エニアクルによる造語。定義は「経験と腕前を持ってXラウンダーを凌駕するパイロット」。つまり、能力ではなく優れた腕を持つパイロットを指す。Xラウンダーが「本能の塊」ならば、こちらは「理性の塊」といったところ。
- 経験と腕前から場面ごとに自分の振るう技術を即座に判別し、冷静に対処するという神業を振るう者達である。極度の緊張が張り詰める戦場において、このもっとも難しいことをどこ吹く風と言わんばかりにやってのける。
- キオ編においてはアセムやオブライトといった能力を持たないベテランパイロットがXラウンダーのエースを撃破する活躍を見せ、ウルフの定義が正しかったことが証明されている。
- スパロボでは『BX』においてキャプテン・アッシュを名乗るアセムの専用スキルとして採用されている。効果は気力上昇に伴う命中・回避・特殊回避率の増加。Xラウンダー、超兵、イノベイターを超える本作最強のスキル。
- ミューセル
- ヴェイガンが開発した、Xラウンダー能力を持たない一般人にも疑似Xラウンダー能力を与えるヘルメット型の特殊装置。「サイコメット・ミューセル」とも呼ばれる。
- 使用時には脳細胞への負担が強まるというデメリットがある。
- ニュータイプ
- 宇宙世紀における似た概念だが、方向性は反対。
- ゼロシステム
- パイロットの能力とマシンの機能という違いはあれ、高度な先読みを行ったり、影響が強すぎると暴走してしまうといった点で共通している。
- ニュータイプ (X)
- 『機動新世紀ガンダムX』における似た概念。作中において最終的に否定される点も似ている。
- SEED
- コズミック・イラにおける似た概念。基本的に戦闘でのみ発揮される能力という点ではこちらの方がより近いとも言えるが、定義としては正反対な面もある。
- イノベイター
- 『機動戦士ガンダム00』における似た概念。こちらはGN粒子を媒体にしての広域のコミュニケーションが可能であり、相互理解のための力としての側面が強調されている。