クロスゲート・パラダイム・システムとは、『バンプレストオリジナル』のシステム。
概要
ユーゼス・ゴッツォが作り出した『限定因果律操作装置』。以下、CPSと略称する。
『時空間跳躍装置』とも呼ばれる一種のタイムマシンとも言うべき装置であり、因果律を計算してタイムパラドックスを排除した状態の並行世界を創造する(結果的にはタイムスリップと同様の結果をもたらす)機能を持つ。分かりやすく言えば、限定的ながら「存在しない事象をあったことにする」機能と「存在する事象をなかったことにする」機能がある。
これらが完全であれば、過去の出来事を自分の思うがままに改編した「平行世界」を創造することが可能であるが、上述の通りユーゼスが作り上げたものは「限定」的に因果律を操作できるに過ぎない。ユーゼスはこの装置の完成体を自身、或いは自身の操る機動兵器に組み込むことで、因果律の全てを統べる神になることを目論んだ。ちなみに因果律とは「全ての物事には原因があり、それゆえに結果がある」という原「因」と結「果」の関連性であり、世界を構成する絶対のルールの一つ。CPSを使えばこの関連性を利用し、「因」を操ることで「果」をも思い通りに出来る。ただし、「因」によって得られる「果」は多岐に渡るため、手の出し方を間違えるとパラドックスによって全てが崩壊してしまうという危険を孕んでいる。有名な例なら「親殺しのパラドックス」を考えればいいだろう。
下記の通り、装置の完成のためには「超常的なエネルギー」が必須で、スーパーヒーロー作戦では光の巨人「ウルトラ族」の力を、またαシリーズでは(恐らく)「無限力(及びその力を引きだすことのできる純粋なサイコドライバー)」、第2次OGではクロスゲートとガンエデンをその対象として追い求めている。行使できる能力が神の領域に等しいものであるため、それに必要なエネルギーもまた超常的な域に達したものが必要、ということであろうと思われる。
このような装置を独力で完成させたユーゼスの才覚は非凡極まりないと評価できよう(αでは完全独力ではないものの、記憶元のイングラムより深く理解しているような台詞あり)。ただし、完全とは言えずより完璧な機能に近づけるためにαでは因果律の計算機としてラプラスデモンコンピューターを求めている。
上記の通り、ある因果一つとっても予想だにしない様々な事象が複雑に絡み合っており、システムの力があっても迂闊に干渉しようものなら予想外の結果に転ぶ可能性が高く、因果律干渉でそれを排除しようとすれば膨大なエネルギーを必要とし、その干渉で発生した事態を…という悪循環に陥る事態すらありうる(システム単体での因果律計算能力にもよるが)。
また、因果律の仕組みを利用し、「因」の支配により「果」を操るという基本構造の都合上、観測されうる可能性の中に特定の「因」およびフラグ付けされた「果」が存在する場合、同じ条件が揃った時点で同じ結果を確定させる……端的に言うと時系列や次元に関係なくフラグを引き寄せて確定させるという致命的な欠陥がある。しかも我々がこのシステムを最初に観測した『SH作戦』の時点で「CPSを使用すると失敗して敗北する」というフラグが成立している上、OGでは技術的ブレイクスルーが裏目に出てこの欠陥が一気に露呈、各ボス敗北の原因を再現した結果全てのフラグを同時成立させてしまい、惨めな最期を遂げている。
この複雑な絡み合いを精密に計算、干渉すべき最短の事象を割り出す為には、無限大の出力があれば因果律すら無限に算出しうるラプラスデモンコンピューターは最適と言える。ただし後述するように、この装置によって実現することはまさしく「神の領域」であり、一個人の手に委ねるにはあまりに危険な装置であるという点もまた疑いないところであろう。
スーパーヒーロー作戦
本作においてユーゼスは、大気浄化弾の実験失敗、及び侵略者襲撃に巻き込まれて肉体の大部分を失ったことによりアイデンティティ崩壊の危機に瀕し、そこから立ち直る過程で何者にも侵されない絶対の自我を確立すべく、因果律の全てを統べる神となる野望を抱くことになった。
その結果、彼は事故に遭った新西暦155年から実に40年の歳月を費やし、脳内に埋め込むナノマシンとしてCPSを不完全ながら完成させる。この時点では過去や未来の予測される知識を限定的に得られる程度の実用性しかない。
そこに、別の次元、別の時間から介入して来たユーゼスによって作り出された男から助力があり、ジュデッカの機体フレーム(時間を越える機能があり、ズフィルードであるという)を受け取っている。これによりCPSの実用性は「ジュデッカの機能で過去移動する際に時空の修正力で最初から居なかったことにされるのを回避、ジュデッカの機能で歴史改変することで因果律が乱れたらCPS単体でゲートを検出して過去に移動可能」と使い道が広がった。
ユーゼスは自己再生・自己進化・自己増殖の3大理論を実現したアルティメットガンダムの基礎フレーム(ラオデキヤから渡されたもの。時間を越える機能があり、高性能で大型のCPSが組み込まれている)を開発し、ライゾウ・カッシュ博士に持ち込んだ。生体コアを得たアルティメットガンダムは光の巨人を倒すだけの力を持つというユーゼスの目算である。また自身の複製であるイングラム・プリスケンをネオ・ジャパンコロニーへと送り込む。
後は半年もすればアルティメットガンダムは完成、イングラムがアルティメットガンダムの生体コアになり、アルティメットガンダムはプログラムしておいた命令通り新西暦155年の時代へとタイムスリップして、新西暦155年近辺にのみその存在が確認されている光の巨人(ウルトラ族)の命の源「カラータイマー」を奪取、元の時代にタイムスリップしてCPSを完璧に稼働させるのに必要なカラータイマーを持ち帰るのを待てばよいはずであった。
しかしいくつか想定外の事態も生じる。途中イングラムが失踪(自我を持った副作用で記憶喪失になり、身元不明のままピースクラフトに引き取られていた)。またカッシュ博士は本来の性能に気付き、アルティメット細胞によって本来の性能を封印した。そのためユーゼスは半年後の完成に合わせて、新たな生体コア候補5人(ヒイロ、デュオ、トロワ、カトル、五飛)によるアルティメットガンダム奪取作戦を実行した。因果のなせる業かイングラムもピースクラフトでパイロットになり、アルティメットガンダム破壊作戦に就いている。結果的にアルティメットガンダムはデビルガンダムへと変貌、地球に逃げ去り、プログラム通りに生体コアになるべきパイロット達を巻き込んで新西暦155年の時代へとタイムスリップした。
その後、デビルガンダムは紆余曲折を経て再びイングラム達を巻き込んで新西暦195年の時代に戻ってきた後、またまたイングラム達を巻き込んで新西暦155年の時代に飛んでしまう。やむを得ずユーゼスは危険を冒して過去へ飛び、ETFやフーマを使役してカラータイマーの奪取に成功して力を複製する。
そして同じく過去へ飛んでデビルガンダムを自らの目的に使おうとしていた東方不敗から回収して、CPSをDG細胞による封印から解き放つ。目的を果たした彼は新西暦195年の世界において、カラータイマーの力を組み込んだデビルガンダムをネオジャパンのウルベに引き渡す。ウルベはユーゼスを出し抜こうとレイン・ミカムラを生体コアにするが、それによりデビルガンダム内のCPSが100%の力を出せるようになり、ユーゼスは因果律を直接操作できる空間「ユーゼスの世界」を作り出した。
デビルガンダムはDG細胞を以ってしても修復が叶わぬほどに破壊されるが、ユーゼスは因果律操作でこともなくデビルガンダムを復元し融合、「超神形態ゼスト」へと進化を遂げた。
因果律を完全に支配した状態のゼスト形態は生命の概念を超越した存在であり、如何なる攻撃によっても滅びることはない。しかし、ゼストの力の源たるカラータイマーの力が光の巨人たちの決死の一撃により中和されたことにより、CPSによる因果律支配機能も無力化される。「神」に成り損ねたゼストはSRXとR-GUNパワードの「天上天下一撃必殺砲」により消滅。この世界自体が、別の出自で別の経緯によりCPSを作り上げたユーゼスが様々な平行世界を繋いで作った虚構の世界だったことが明らかとなり、ユーゼスの死にともなって世界を結び付けていた因果律が崩壊。それぞれの世界へと解き放たれた。
なお完成のきっかけとなった、「ジュデッカのデータを齎したラオデキヤ」の正体については不明。有力な説としては「スーパーロボットスピリッツの黒幕である」という話がある。
何気にこの作品のCPSはラプラスデモンコンピューターなしで完全な駆動を遂げており(ラ・ギアスの錬金術が存在せずとも、宇宙刑事シリーズやウルトラマンシリーズに由来する凄まじい科学力があったおかげと思われる)、ウルトラ兄弟の邪魔がなければユーゼスは本当に本懐を達成していた。また、どこかの世界のユーゼスは全てを成功させていたという事実が明らかとなっている(SHO以前から死の因果を抱えていたとすれば、全てとは言えず、世界の創り直しには成功したが、因果を解決できないままSHOユーゼスやその影響で確立されるユーゼスなどに問題を先送りしたという感じかもしれないが)。
スーパーロボット大戦α
この世界のユーゼスも運命を変えるために世界を消滅させて新しい世界を創造する目的があったことが明らかになっている。
ユーゼスは漂流していたイングラムを拾ったことでSHO世界の知識を手に入れて装置を作り出した。そして似たような目的を持つケイサル・エフェスを打倒すべく策謀を重ねている。この際にユーゼスが着目したのは「クロスゲート」である。クロスゲートはサイコドライバーを介して「無限力」を引きだすことにより、自在に時空間・次元の跳躍を可能とする構造物である。また、因果律の計算に最適な素材として魔装機神サイバスターの「ラプラスデモンタイプコンピュータ」に目を付け、その奪取を目論む。しかし装置は完全に完成することはなく、未完成(「限定的に」因果律操作を行使できる状態)のまま自身の搭乗機である「ジュデッカ」に搭載したが、力及ばず倒されてしまった。
ただしこの世界のユーゼスはケイサル・エフェスを倒すことを優先して行動していたため、結果的には目標を達成した形になる。
完成したクロスゲート・パラダイム・システムは自在に因果律を操作したり、時空間を超えることができる。また、量子波動エンジンとの併用により、位相のずれを任意的に引き起こし、平行宇宙間で同一の存在を保持することも可能だとされている[1]。
第2次スーパーロボット大戦OG
この世界のユーゼスは、自身に存在するクロスゲートやガンエデンの「虚憶(前世の記憶)」に疑問を持ち、なぜ自分にそんなものがあるのか、自分とどういう関わりがあったのかを知ろうとしており、そのためにCPSの完成を目論んでいた。SHO、あるいはそれ以前から続く「因果の鎖」の呪縛から逃れる計画と同時進行でCPSの構築を進めており、そのための素体としてナシム・ガンエデンを、動力として南極のクロスゲートを狙っていた。ガンエデンにクロスゲートを搭載させる手段については当てがなかったが、エルデが暴走の果てに作り上げたAI1をズフィルード・クリスタルで復元することで確保。最終的に制御ユニットとして作り上げたイングを核にナシムを乗っ取って融合、それ自体がCPSの能力を備えるアダマトロンへと変貌した。
だが、ユーゼスが完成の手がかりとした虚憶は不完全な欠片の集まりに過ぎず、肝心な部分が悉く抜け落ちていた。そのため、因果律計算に有用な素材であるラプラスデモンコンピューターには興味を示さず(AI1も出典的には多元世界補完を担う域まで進化可能ではあるが)、イングラムの死を看過するなど致命的な失敗が目立ち、さらにイルイの干渉とリーの特攻でイングに脱出され、その結果、操作できる因果律はαの時よりもさらに限定されたものとなってしまった。
こんな状態では本懐を遂げることなどできるはずもなく、結局またもや敗れ去る結末となった。
これまでのCPSにはなかった「アカシャ変動因子」が組み込まれており、ゼストのCPSに比べて完成度はともかく技術的ブレイクスルーはある…というか、ユーゼスが「単独で」作り上げたCPSとしてはシリーズ中もっとも性能が高かった可能性がある。 上記にある通り、ユーゼス単体で装置を作り上げた場合は理論はともかく実践で使うには何かしらが足りず、ラオテギヤの提供やイングラムの中にある知識を持ってしてようやく作中での性能を発揮するに至っている。 しかし本作では肝心の提供者が誰もいなく、作成にあたって己の虚憶を頼りにあれこれと行動を起こしていたことからCPSもそれに沿って作成したと思われる。 ユーゼスの行動と虚憶の穴が多いことは事実であり、その状態からCPSの記憶だけ都合よくいい形で見れたとは考えにくい。 それでも本質的には同じとは言えないかもしれないがクロスゲートを顕現させ、ユニットとしても戦闘アニメでもゲートから因縁のある存在を生み出す工程まで行うことが出来ているあたり、やはり本作でもユーゼスの技術者としての才能は間違いなく天才クラスであったことが伺える。
次元力との関連性
この装置の行使による因果律改編とは、言いかえれば「複数の次元に存在する自己を自身に安定(自身の存在は消えないと前提)させた上で、自身の望む平行世界を思うがままに創造して取り出す(もしくは自分に不都合な事象を適当な並行世界に放り捨てる)」ということである。原理は異なるがもたらす結果は第3次Zで明かされた次元力による事象制御に近しいものがある(設定が固まっていなかった初代ZではCPSと同様のプロセスで並行世界に干渉し、事象を制御できる可能性が示唆されている)。仮に「時空崩壊」が発生し、あらゆる平行世界がパッチワークで繋がった(Zシリーズの「多元世界」や、SH作戦の「虚構世界」に近い現象が起きる)としても、この装置を使えば自分の思い描く世界を安定的に創造できると思われる。また、Zシリーズの最後の敵である至高神Zを駆るアドヴェントは宇宙が消滅した後に、至高神Zの力で新たな新世界を創造しようとしていたため、至高神Zはユーゼスが想定していた完璧なCPSと同等かそれ以上、あるいはそれに近しい力を持っていたと考えられる。
しかしながら前述の通り、この装置だけでは因果律を自在に操作するには不十分である。さらなる力を発揮するには、動力となる強力なエネルギー体が必要であり「スーパーヒーロー作戦」ではそのエネルギーとして光の巨人(ウルトラ族)の力の源「カラータイマー」を使用した。「スーパーロボット大戦α」ではそのエネルギー体は恐らく「思念集積体」、即ちαシリーズにおいて万象を司る「無限力」である。彼はその言動から恐らく正負の無限力の存在までを把握しており、その力を自在に引き出す鍵としてサイコドライバーを追い求めた(その一方、思念集積装置の別の可能性としてエンジェル・ハイロゥにも興味を示していた)。
しかしその一方、ユーゼスの血縁者であるシヴァー・ゴッツォが開発した「ディス・レヴ」は奇しくもこの条件に該当しており、負の無限力を掻き集めるこの装置はまさに最適な素材である。ディス・レヴは長い年月をかけてシヴァーが開発した対ルアフの切り札であるが、シヴァーがその存在を秘匿していたためか、彼は地球での素材探しに奔走し、結局それを手に入れることは叶わなかった。彼らがその力を合わせれば全因果律を支配する正真正銘の「神」と成りえたかもしれないが、今となっては過去の話である。
関連用語
- ↑ スーパーロボット大戦α ロボット図鑑「ジュデッカ」より