サイアム・ビスト

2015年6月17日 (水) 00:38時点におけるサーヒー2 (トーク | 投稿記録)による版

サイアム・ビスト (Syam Vist)

ビスト財団」の当主にして、創設者。常に冷凍冬眠を繰り返しており、頭部に脳波コントロールを行うヘアバンドを身に付けている。「ラプラスの箱」と呼ばれる地球連邦政府の実存を脅かす品物を所持しており、その品物を利用して政府をゆすってきた。

その経緯には、宇宙世紀元年に起きた「ラプラス事件」と呼ばれる爆破テロが関係する。

ラプラス事件

当時、貧困から報酬目当てでテロの実行に加わった若者サイアムは、仲間とともに作業艇で逃亡する最中、カウントダウン直前に官邸からの生放送で聞いた「他人の書いた筋書きに惑わされるな。“可能性”という自らの内なるの目をもって、これから始まる未来を見据えよ」というマーセナス首相の演説を思い出した。

やがて逃亡途中に、口封じのために艇内に仕掛けられていた時限爆弾が起爆し、作業艇は実行犯達を乗せたまま爆破されてしまう。サイアムはたまたま船外作業で外にいたために爆発に巻き込まれずにすんだものの、衝撃で吹き飛ばされ宇宙を漂い、その中で幻を見た。それは、当時存在するはずのないザクの部隊と、一年戦争におけるコロニー落としの地獄絵図であった。我に帰ったサイアムは、爆破されたラプラスの残骸の中に、自分と同じ速度で漂う、地球光を反射して輝く不思議な箱形の物体を発見。奇跡的に民間船に救助された後、サイアムは憲章石碑とともに地球に帰還する。

なお、ラプラス事件当時、彼には母と妹が存命していたが、自らが事件の実行犯の中で唯一の生存者になったため、彼女らに危険が及ぶことを怖れ、2度と再会しなかった。

生還後

地球へ帰り着いたサイアムは、公的には既に死亡したことになっている自分の立場を利用し、地下社会へと身を投じる。そこで頭角を表した後、事件後10年が経過した頃になって、サイアムは思い出したように連邦政府に接触した。テロ事件の現場から地球へ帰還したサイアムと、ラプラスの破片群の中から持ち帰った箱形の物体の存在は、連邦政府首脳部を大きく揺さぶった。サイアムがあの日ラプラスの残骸の中で手に入れた箱形の物体は、セレモニーで公開されるはずだった宇宙世紀憲章の石碑であった。事件後、石碑はレプリカが作られ公開されていたものの、サイアムが持ち帰ったオリジナルの石碑にはレプリカにはない章立てがひとつ多く彫られていた。それは簡単に言えば、現代でいうニュータイプを、連邦政府の運営に参画させる約束であった。

テロの実行犯達に生き残りがおり、あろうことか、その者は連邦政府の自作自演を証明できる石碑を持ち帰っていたという事実は、連邦政府首脳部を驚愕させた。石碑を奪取する計画、あるいはサイアムを暗殺する計画は無数に立案されたが、結局それらが実行に移されることはなかった。サイアムは石碑を盾に連邦政府をゆすりはしたものの、問題の大きさに比べれば大したことのない要求を繰り返すのみで、決して連邦政府の逆鱗に触れるような真似まではしなかった。どころか、サイアムは逆に政府関係者との癒着を深め、巧みに立ち回った末、サイアムは連邦政府との間に石碑の存在なくしても自身を無視できないような共生関係を作り上げていった。

そして、箱形の物体はいつしか「ラプラスの箱」と呼ばれ、連邦政府内で恐れられるようになっていった。サイアムと連邦政府の首脳部以外に誰もその正体を知らないままに、「ラプラスの箱が開かれるとき(それが世界に公開されるとき)連邦政府は滅びる」といった噂だけが都市伝説的に連邦政府関係者の間に浸透していったのだった。

最終的な目的は、彼の意図しない方向へと突き進むジオンの消滅と、対立する双方から歩み寄った者、「ニュータイプ」を見出すことである。この後の経緯や「箱」とジオニズム、連邦の関係は本Wikiのラプラスの箱の項に詳しいが、最終的には「箱」の鍵たるユニコーンガンダムのパイロットとなった曾孫バナージ・リンクスと彼に寄り添うジオンの忘れ形見ミネバ・ラオ・ザビと邂逅したサイアムは、「箱」の真実と地球に生まれた瞬間から進化をつづけてきた生物の可能性、自分が元年、テロの際に見た幻覚とその意味、100年近くの間胸にしていた思いを伝えた後、生命維持装置を停止させ、長すぎたその人生に幕を引いた。

アニメ版での担当声優は『機動戦士ガンダム』のナレーションを務めた永井一郎氏。この起用には「同作のナレーションはサイアムによるモノローグである」という意味が込められている。

登場作品

Zシリーズ 

第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇
度々会話で語られる程度。
第3次スーパーロボット大戦Z天獄篇
初登場作品。UCシナリオの決着となる第45話および第46話で登場し、原作とは異なる「箱」の真相と経緯についても克明に語ってくれる。今回では、原作と異なり死亡しない。

人間関係

バナージ・リンクス
曾孫。サイアムが見出した未来を切り開く人物。しかし、サイアムにとってはそれ以上の存在になってしまった。
カーディアス・ビスト
ビスト財団の一員で、孫に当たる。小説では「血縁者の中で自らの後継者を任せられる力量のある人物は、カーディアスしかいなかった」とのこと。
次男
名前は劇中では明らかにされていない。カーディアスとマーサの父親。小説で明かされた過去によると、彼の力量をサイアムは大して評価しておらず、そのことにコンプレックスを抱いていた。サイアムが財団の当主の座から退かないばかりか、時間があれば冷凍睡眠で寿命を永らえていることに疑念を抱き、やがて現状に不満を抱く財団内の勢力にそそのかされ、サイアムに反旗を翻すことを決意した。しかし、サイアムはラプラスの箱を守るため、当主を引退するわけにはいかず、最終的には交通事故死と言う形で息子を謀殺することになる。この出来事は彼をそそのかした勢力を震え上がらせ、カーディアスとマーサにも多大な影響を与え、サイアム自身も罪悪感から急速に老け込んでしまうことになる。
マーサ・ビスト・カーバイン
ビスト一族の一員にして、アナハイム・エレクトロニクス会長メラニー・ヒュー・カーバインの妻。カーディアスの妹なので彼女も孫に当たる。
上記の父親が謀殺された事件から彼女はサイアムとその後継者となったカーディアスを憎んでいる。
アルベルト・ビスト
ビスト一族にして、曾孫に当たる。彼にとってサイアムは殆どあったこともない遠い存在。
オードリー・バーンミネバ・ラオ・ザビ
ジオンの末裔。サイアムが見出した未来を切り開く人物。
フル・フロンタル
彼曰く「過去の亡霊」と評された。
ガエル・チャン
カーディアスの側近。カーディアス亡き後は冷凍冬眠により身動きできないサイアムの手足として動く。

他作品との人間関係

イオリア・シュヘンベルグ
亡き盟友の一人。彼と共謀し、「箱」の開示に備えた準備を整えていた。
エルガン・ローディック
亡き盟友の一人。ADWと呼ばれることになる世界から彼がやって来たことにより、並行世界の存在と人類の管理者の存在を確信することになった。
御使い
ラプラス事件の折に爆発に巻き込まれた際、爆風の中に「寂しげに微笑むテンシ」を見た。恐らくアドヴェントサクリファイであると思われる。