差分
→概要
== 概要 ==
== 概要 ==
[[ティターンズ]]の一員で、階級は大尉(劇場版『[[機動戦士Ζガンダム|Ζ]]』では大佐)。
[[木星]]帰りの[[ニュータイプ]]であり、あらゆる分野における[[天才]]的才能を持って組織のナンバー3にまで上り詰めていくのだが、やがて内に秘めた野心を露にして、「天才によって変革された世界」の為に動き出す事になる。
=== 人物 ===
=== 人物 ===
元は生粋の軍人ではなく、木星と[[地球]]の間を航行する超大型輸送艦[[ジュピトリス]]の艦長として資源採掘の職務に就いていた[[地球連邦政府]]の官僚だった。
[[ガンダムシリーズ]]全体の登場人物の中でも指折りの[[天才]]で、苛酷な木星の環境を生きてきた影響で[[ニュータイプ]]としても高い素養の持ち主となっている。モビルスーツのパイロットとしての技量も、[[カミーユ・ビダン]]や[[クワトロ・バジーナ]]、[[ハマーン・カーン]]といったエース達をも凌駕し、更にはオリジナルのモビルスーツを設計する技術と頭脳も合わせ持ち、察力やカリスマ性から戦略家や政治家としても優れ、おまけにハンサムなルックスから女性にも強いという、正に弱点の無い万能なキャラクターであると言える。しかし、そのあまりにも優れた才能故に、自惚れの強いナルシストでもあり、自分以外の他人…特に「凡人」に対しては見下す事を隠そうともしない傲慢さの持ち主。[[サラ・ザビアロフ]]を始めとする彼を慕う女性以外でその考えを理解・共感し従おうとする存在は皆無に等しく、それが思わぬ足枷となってしまう事さえある。しかも劇場版においては、シロッコに引かれていた[[レコア・ロンド]]にも「権力を手にしたら女はいらなくなる」と陰口を叩かれて、命を落とし魂だけとなった[[カツ・コバヤシ]]からも「誰にも心を開こうとしない」と評されてしまっている。
ティターンズに入った真の目的は、ティターンズそのものの実権を手にする事にあり、一握りの天才による人類の変革の為、地球圏を自らの理想通りの形で支配する事を目論んでいた。当然、ジャミトフを始めとするティターンズの者達も、自らの目的の為に利用する為の存在に過ぎないのだが、意外にもジャミトフの思想の真理については理解を示しており、[[マウアー・ファラオ]]との会話でも、ジャミトフがティターンズを設立したのは「戦争を起こして地球の経済を窮地に追い込み、地球上の人間を減らしていく」という目論見があったのを的確に見抜いていた。シロッコはこのジャミトフの手段を利用して地球から人類の間引きを行った後、地球の支配権を自らの手に収めようとしていたのである。
=== 劇中での活躍 ===
=== 劇中での活躍 ===
[[ジャミトフ・ハイマン]]大将と血判の契約書を交わして[[ティターンズ]]入りした。地球至上主義でエリート意識が高い軍人の集まりであるティターンズ内にあって、地球より遠く離れた木星でキャリアを積み、生え抜きの軍人でもないシロッコは、「木星帰りがっ!」という陰口を浴びるなどあまり歓迎された存在ではなかったが、他の幹部が失敗を重ねる中で、[[ドゴス・ギア]]での[[グラナダ]]の制圧等といった結果を出し続けて頭角を現し、やがて№2である[[バスク・オム]]に次ぐ組織の中心人物へと出世していく事になる。
[[グリプス戦役]]中に木星から地球圏へと帰還し、ティターンズの指導者である[[ジャミトフ・ハイマン]]大将と血判の契約書を交わす形でティターンズ入りしている。しかし、そのやや大仰とも言える姿勢から、組織のナンバー2である[[バスク・オム]]にはかえって怪しまれる事となり、ジャミトフからも何らかの目的があるのを見抜かれて危険視されるが、増長し始めたバスクへの牽制やシロッコの様な人物でも扱えるようにならなければならないという考えから、あえて泳がされる事となっている。
ティターンズ入りしてから早々に、宇宙での戦いへの介入を始めていくが、地球至上主義でエリート意識が高い軍人の集まりであるティターンズ内にあって、地球より遠く離れた木星でしかキャリアを積んでおらず、生え抜きの軍人でもなかったシロッコは、「木星帰りがっ!」という陰口を浴びる等あまり歓迎された存在ではなかった。しかし、他の幹部が失敗を重ねる中、独断行動ながらもアポロ作戦にて[[ドゴス・ギア]]での[[グラナダ]]制圧に成功する等、成果を出し続けて頭角を現していき、[[ジャマイカン・ダニンガン]]少佐が死亡した事もあって、バスクに次ぐ組織のナンバー3と言える人物へと順調に出世していく。
一方、[[ジオン公国]]の残党勢力である[[アクシズ]]が地球圏に帰還してからは、傀儡とは言え表向きには指導者となっている[[ミネバ・ラオ・ザビ]]の元へ自ら赴き忠誠の姿勢を見せる等、不穏な動きを見せ始めていく事になり、[[グワダン]]でジャミトフ、ハマーンとの会談が行われた際、遂には総帥ジャミトフを[[暗殺]]。ティターンズの実権を握ろうとしていたが、[[エゥーゴ]]との戦いが佳境に入り、更にはハマーン率いるアクシズの勢力までもが介入していた状況で指導者のジャミトフを暗殺してしまったのが裏目に出てしまい、シロッコを疑って従うはずの無いバスクの存在もあってティターンズの指揮系統は混乱してしまう。そして自らも[[ジ・O]]に搭乗してハマーンの[[キュベレイ]]と[[プレッシャー]]をぶつけあって対峙するが、周辺への注意が疎かになってしまった結果、カツの攻撃から自身を庇ったサラも死亡してしまう事態となった。
その後、レコアにバスクを始末させ<ref>劇場版では、ヤザンがバスクを始末している。</ref>、ようやく指揮系統を手中に収めた時には、メールシュトローム作戦を発動させたエゥーゴによって[[コロニーレーザー]]の「グリプス2」が奪取されてしまい、レコア、[[ヤザン・ゲーブル]]といった目に掛けた有力な手駒も次々と失ってしまう。巻き返しを図るべく、グリプス2へと向かいコロニーレーザーを発射不能に追い込もうとするも失敗。クワトロ、ハマーンの二人と互いの主張をぶつけ合った後、グリプス2のコロニーレーザーによってティターンズの艦隊大半を失ってしまう。
もはやエゥーゴに勝てないと悟り逃走を試みるも、最期は追撃してきた[[カミーユ・ビダン]]の乗る[[Ζガンダム]]のウェイブライダー形態による体当たりでジ・Oのコクピットもろとも機首に押し潰されて絶命。TV版では死の間際にカミーユへ思念を放ち、彼の精神を道連れにした。一方、劇場版でも同様に敗北して道連れにしようとしていたが、こちらではカミーユが穏やかに受け流す事を覚えていた結果、失敗に終わってしまい、最後は自らの木星時代からの船であったジュピトリスを巻き込む形で爆散している。
=== キャラクターの総評 ===
シロッコは自らの理想として、「'''女性による世界の統治'''」を掲げて、自らは傍観者に過ぎないと多くの人間に公言しており、後の宇宙戦国時代と評される宇宙世紀0152年では、シロッコと同じく木星帰りである[[フォンセ・カガチ]]が[[マリア・ピァ・アーモニア]]を擁立する形で「男性を中心とする社会こそが争いの源で、それを払拭すべく女系社会に回帰させる」という「マリア主義」が唱えられ、シロッコもこれに近い思想を広めようとしていた可能性が高い。
一方で自らを天才(世界の支配権を握る人間)と称した本音とも取れる言動との間に矛盾があり、劇中でも多くのキャラクターにその思想はただの建前にすぎないのではないかと推測されている。事実、自分の理想通りの優秀な女性の指導者だったハマーンに対しては、組織が違うとはいえ自分の思い通りには出来そうにない事から、「排除すべき存在」としたり、様々な暗躍をし権力を得ようとした背景から、本心は不明なものの'''「自らの意のままに働く女性を前に立て、自分は黒幕として裏から支配しつつ木星という僻地で持て余していた才能を存分に発揮する」'''というのが本当の目的であったのではないかと想像されている。
また、自らを慕う女性達に対しても、「表面的」には愛情を持っているかのように接しながら、サラにはグラナダでアーガマを始末する為だけに自らも命を落としかけない危険な爆破テロを実行させようとしたり、レコアに対してもバスクのコロニーへの毒ガス注入の命令を下された際に止めようともしなかった等、実際は自らの意のままに従ってくれる有益な駒として見ていたと思われる部分もあり、劇場版でのレコアの独り言やカツの魂のシロッコへの評価からも、その事を伺わせている。
しかし、優れた才能を持ち一見すれば完璧な人物に見えながらも、自らの価値観や美学に沿わない者は徹底的に認めないどころか、むしろ排除する事しか考えられなかったというある種の「幼い」とも言えるシロッコの本質は、多くの反感を招くだけとなり、結局の所それは自らが否定していた「重力に魂を引かれた者」と何ら変わりが無かった<ref>この点に関しては、自らが「ニュータイプのなり損ない」と見下し、自分の影響力を利用しようとしている者達を俗物と見なしながらもあえて利用していったシャアの方が「大人」として優れていたとも言える。</ref>。更に指導者であるジャミトフを暗殺して組織の実権を握ろうという早まった行動に出た結果、逆に裏目に出てしまう「失敗」を繰り返し、最後には自らの元にいた人間達の魂にまで見放されてしまう結果となったのは、皮肉すぎる結末だった。
== 登場作品と役柄 ==
== 登場作品と役柄 ==