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=== キャラクターの総評 ===
 
=== キャラクターの総評 ===
先述にもあるように決して無能ではなく、むしろ[[地球連邦軍]]においては良識的かつ有能な軍人なのだが、『0083』劇中においてはやる事なす事が大分裏目に出てしまっている。特に、元からアルビオンに搬入されてた1号機を使うのはともかく、[[コロニー落とし]]を阻止する為とはいえ「軍の最高機密兵器となる[[ガンダム試作3号機]]を強奪する」という守秘義務の大いなる逸脱は、軍法上では致命的であった。どころかむしろ、『アルビオン隊が友軍の行動を阻害した事』が阻止失敗や連邦艦隊壊滅の大きな一因となってしまっており、'''利敵行為・戦犯扱いされてもおかしくない'''(特に内通者かつ終盤に連邦軍へ味方したシーマを「私情で攻撃・撃墜」した事は戦略上一切のメリットが無く、最大の失態と言っても良い)。しかもそこまでしておいて、肝心のコロニー落としの阻止には失敗してしまったので、功罪相償うと言う訳にもいかない。
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先述にもあるように決して無能ではなく、むしろ[[地球連邦軍]]においては良識的かつ有能な軍人なのだが、『0083』劇中においてはやる事なす事が大分裏目に出てしまっている。
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このように、命令無視による度重なる無許可戦闘や軍法違反を繰り返した件に関しては、'''「艦を私物化している」'''と指摘されても反論は難しく、シナプスの極刑は「妥当な判決」という事になってしまうのである<ref>[[小説|小説版]]『0083』では「[[コウ・ウラキ|コウ]]の懲役1年は罪状から見れば軽過ぎると指摘されている反面、シナプスの判決は罪状通りの厳しいものとなった」と記述されており、ある種の妥当性が垣間見れる。ただし、同時にこの裁判の判決は当初より決められており、'''裁判は「茶番」であるとも明言されている'''ため、コウの罪状もシナプスに着せられているとの推察も可能である。</ref>。もちろんその上で、その「妥当な判決」が下された理由に上層部の政争が関わっている(コーウェンが失脚していなければ罪の減免もあり得た)事は間違いないと思われるが。
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だがそもそも危機意識の低い連邦軍の上層部からいろいろと押し付けられ、かつ彼も口にした軍閥政治に思いっきり巻き込まれた感は否めない。よく批判される試作2号機の奪還失敗も、アフリカ地帯の時点でクルーが愚痴る程に探索の負担をほぼ一手に担わされている。シナプス自身は自分達だけが出撃しているわけではないとフォローを入れているが、すぐパサロフ大尉から「全てコーウェン中将の息のかかった部隊」と愚痴が漏れたように、軍も事態を過小評価していたことは否めない。この時点で止めていられれば星の屑は間違いなく変に手を込ませることなく解決したはずであるので明らかにこの点は軍の怠慢。
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ワイアットとシーマ艦隊の密会を妨害したことも、内通関係にあるというのであればしっかり打診するなり遠ざければ良かっただけのこと(露見したくないなら、少なくともシーマ艦隊との会合前にアルビオンの接近には気づいていたので偶然招いた事態とは言い切れない)だし、この時点ではアルビオンがシーマ艦隊と交戦に入ったことを咎める要素はない。
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こうして見ると救援を志願したアルビオンに対するヘボンの叱責も幾分か身勝手さが垣間見えるというものである。
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ただ、一方で元からアルビオンに搬入されてた1号機を使うのはともかく、[[コロニー落とし]]を阻止する為とはいえ「軍の最高機密兵器となる[[ガンダム試作3号機]]を強奪する」という守秘義務の大いなる逸脱は、軍法上では致命的であった。どころかむしろ、『アルビオン隊が友軍の行動を阻害した事』が阻止失敗や連邦艦隊壊滅の大きな一因となってしまっており、'''利敵行為・戦犯扱いされてもおかしくない'''(特に内通者かつ終盤に連邦軍へ味方したシーマを「私情で攻撃・撃墜」した事は戦略上一切のメリットが無く、最大の失態と言っても良い)。しかもそこまでしておいて、肝心のコロニー落としの阻止には失敗してしまったので、功罪相償うと言う訳にもいかない。
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このように、物語前半は不運と軍からの責任の丸投げの被害者という形に終始している。が、物語後半では命令無視による度重なる無許可戦闘や軍法違反を繰り返した件に関しては、'''「艦を私物化している」'''と指摘されても反論は難しく、シナプスの極刑は「妥当な判決」という事になってしまうのである<ref>[[小説|小説版]]『0083』では「[[コウ・ウラキ|コウ]]の懲役1年は罪状から見れば軽過ぎると指摘されている反面、シナプスの判決は罪状通りの厳しいものとなった」と記述されており、ある種の妥当性が垣間見れる。ただし、同時にこの裁判の判決は当初より決められており、'''裁判は「茶番」であるとも明言されている'''ため、コウの罪状もシナプスに着せられているとの推察も可能である。</ref>。もちろんその上で、その「妥当な判決」が下された理由に上層部の政争が関わっている(コーウェンが失脚していなければ罪の減免もあり得た)事は間違いないと思われるが。
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ただし、「艦長であればその感情を抑えるのが仕事」という前提はあれど、アルビオンクルーのほとんどがシナプスの行動を批判せず、概ねその独断に同調していたこともまた事実である(つまりシナプスの命令ではあったが反発の形跡はないどころか自然に受け入れている)。最終盤におけるアルビオンは完全に家族的な関係ができあがっており、そういった中で家族の中核の一人であったサウス・バニング大尉を戦死させるに至った張本人と共闘せよという命令を受け入れづらいのもまた事実であり、それに対するフォローが一切ないというのもそれはそれで問題ではある。(ただこれは'''状況があそこまで差し迫っていなければまだ通る話レベルのこと'''だが)よって私物化と批判されている一方、部隊全体の感情としてシーマ艦隊との共闘を素直に受け入れるのも難しい状況だった。
    
== 登場作品と役柄 ==
 
== 登場作品と役柄 ==
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:第11話より。[[コウ・ウラキ|コウ]]を庇い、凶弾に倒れたルセットを悼んでの台詞。
 
:第11話より。[[コウ・ウラキ|コウ]]を庇い、凶弾に倒れたルセットを悼んでの台詞。
 
;「むぅぅ…これでは軍閥政治ではないか!」
 
;「むぅぅ…これでは軍閥政治ではないか!」
:第13話より。終盤、[[シーマ・ガラハウ|シーマ]]が連邦側に寝返った直後、[[バスク・オム]]との通信にて。バスクからは「貴様、歯向かうか」と言われるが、一応は命令に従っている。
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:第13話より。終盤、[[シーマ・ガラハウ|シーマ]]が連邦側に寝返った直後、[[バスク・オム]]との通信にて。バスクからは「貴様、歯向かうか」と言われて不敵に微笑み返すが、一応は命令に従っている。
 
:なお、アルビオン隊とシナプス自身もコーウェン派閥であり、'''軍閥政治に参加している側'''である。にもかかわらずこういった台詞を口にしてしまうような政治的センスの欠如が、劇中終盤における失態に繋がっている、と考える事もできるだろう。
 
:なお、アルビオン隊とシナプス自身もコーウェン派閥であり、'''軍閥政治に参加している側'''である。にもかかわらずこういった台詞を口にしてしまうような政治的センスの欠如が、劇中終盤における失態に繋がっている、と考える事もできるだろう。