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『ゲキ・ガンガー』が制作されたのが2096年で、『ナデシコ』本編は2196年以降の話である。にも関わらず、[[主人公]]の[[テンカワ・アキト]]と[[ダイゴウジ・ガイ]]がのめり込んでファンになっており、特に全話を[[ナデシコ]]艦内に持ち込んでいたガイの影響で、作中では序盤から頻繁に登場する。物語開始から100年前の古い作品なのですでに著作権フリーにでもなっているのか、作中では頻繁にフィギュアやシール、ゆるキャラのようなぬいぐるみが登場しており、劇場版では地球でもグッズが普通に売られている。
 
『ゲキ・ガンガー』が制作されたのが2096年で、『ナデシコ』本編は2196年以降の話である。にも関わらず、[[主人公]]の[[テンカワ・アキト]]と[[ダイゴウジ・ガイ]]がのめり込んでファンになっており、特に全話を[[ナデシコ]]艦内に持ち込んでいたガイの影響で、作中では序盤から頻繁に登場する。物語開始から100年前の古い作品なのですでに著作権フリーにでもなっているのか、作中では頻繁にフィギュアやシール、ゆるキャラのようなぬいぐるみが登場しており、劇場版では地球でもグッズが普通に売られている。
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[[木連]]においては、[[地球]]および[[火星]]からの放逐時に民間人が持ち出した『ゲキ・ガンガー3』以外に娯楽作品が無かったため、困窮した生活を送る人々の間に浸透し、時を経て「聖典」とまで呼ばれる程の影響力を持つようになった。木連のエリートである優人部隊は自身の「推し」(当時そんな言葉は無かったが)であるゲキガンチームのパイロットスーツを纏い、ゲキ・ガンガーに酷似した[[ジンシリーズ]]に乗る<ref>そのため、第16話『「僕達の戦争」がはじまる』では、九十九と月臣が会話するシーンが、彼らの推しであるケンとジョーにそっくりに描かれるという演出が挟まっている。</ref>。それどころか、木連に住む人々の思想形成にまで影響を及ぼしており、特にアニメ内の「勧善懲悪」主義が木連のタカ派軍人達に与えた影響は大きかった。木連軍人の代表・[[草壁春樹]]の政治思想や地球に対する偏見は基本的にこのアニメによって形成されたものである<ref>ちなみに、[[木連]]が[[劇中劇|ロボットアニメ作品]]『ゲキ・ガンガー3』を[[戦意高揚]]の道具(いわゆる、プロパガンダ)として使用した様に、'''現実世界においても第二次世界大戦期の国家がアニメーション作品([[童話]]や[[漫画]]も含む)を戦意高揚の道具として使用した例が存在している'''。</ref>。そのような点から言えば、『ゲキ・ガンガー3』は地球-木連間の戦争の遠因になっていると言えなくもないが、「良いも悪いもリモコン(で操縦する人間)次第」である[[鉄人28号]]の例がある様に、「本来は純粋な娯楽作品である『ゲキ・ガンガー3』を[[戦意高揚]]の道具として使用する人物およびその行為こそに問題がある」と言うべきであろう。
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[[木連]]においては、[[地球]]および[[火星]]からの放逐時に民間人が持ち出した『ゲキ・ガンガー3』以外に娯楽作品が無かったため、困窮した生活を送る人々の間に浸透し、時を経て「聖典」とまで呼ばれる程の影響力を持つようになった。木連のエリートである優人部隊は自身の「推し」(当時そんな言葉は無かったが)であるゲキガンチームのパイロットスーツを纏い、ゲキ・ガンガーに酷似した[[ジンシリーズ]]に乗る<ref>そのため、第16話『「僕達の戦争」がはじまる』では、九十九と月臣が会話するシーンが、彼らの推しであるケンとジョーそっくりに描かれるという演出が挟まっている。</ref>。それどころか、木連に住む人々の思想形成にまで影響を及ぼしており、特にアニメ内の「勧善懲悪」主義が木連のタカ派軍人達に与えた影響は大きかった。木連軍人の代表・[[草壁春樹]]の政治思想や地球に対する偏見は基本的にこのアニメによって形成されたものである<ref>ちなみに、[[木連]]が[[劇中劇|ロボットアニメ作品]]『ゲキ・ガンガー3』を[[戦意高揚]]の道具(いわゆる、プロパガンダ)として使用した様に、'''現実世界においても第二次世界大戦期の国家がアニメーション作品([[童話]]や[[漫画]]も含む)を戦意高揚の道具として使用した例が存在している'''。</ref>。そのような点から言えば、『ゲキ・ガンガー3』は地球-木連間の戦争の遠因になっていると言えなくもないが、「良いも悪いもリモコン(で操縦する人間)次第」である[[鉄人28号]]の例がある様に、「本来は純粋な娯楽作品である『ゲキ・ガンガー3』を[[戦意高揚]]の道具として使用する人物およびその行為こそに問題がある」と言うべきであろう。
    
上記のようなバックボーンのおかげで、『ゲキ・ガンガー』一辺倒に凝り固まった木連軍人の価値基準は容易には揺らがなかった。ところが、物語の最終局面における[[テンカワ・アキト|アキト]]から[[ミスマル・ユリカ|ユリカ]]への[[告白シーン|告白]]において、彼が語ったゲキ・ガンガーへの想いとその先へ踏み出すべきとする発言が若手将校の心を動かす切っ掛けとなり、その後の「熱血クーデター」に繋がることになる。
 
上記のようなバックボーンのおかげで、『ゲキ・ガンガー』一辺倒に凝り固まった木連軍人の価値基準は容易には揺らがなかった。ところが、物語の最終局面における[[テンカワ・アキト|アキト]]から[[ミスマル・ユリカ|ユリカ]]への[[告白シーン|告白]]において、彼が語ったゲキ・ガンガーへの想いとその先へ踏み出すべきとする発言が若手将校の心を動かす切っ掛けとなり、その後の「熱血クーデター」に繋がることになる。
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クーデターの成功後は、『ゲキ・ガンガー』を政治的な扇動に用いてきた草壁が失脚し、また木連に[[地球]]の文化が流入することになる。その結果、[[続編]]『[[劇場版 機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-]]』の頃までには、木連内部における『ゲキ・ガンガー』熱はかなり薄まったようである。
 
クーデターの成功後は、『ゲキ・ガンガー』を政治的な扇動に用いてきた草壁が失脚し、また木連に[[地球]]の文化が流入することになる。その結果、[[続編]]『[[劇場版 機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-]]』の頃までには、木連内部における『ゲキ・ガンガー』熱はかなり薄まったようである。
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なお、'''「『ゲキ・ガンガー』の[[世界観|世界]]では『[[機動戦艦ナデシコ]]』のアニメ作品が放映されている」という設定になっている模様'''。『ナデシコ』本編の第14話「『熱血アニメ』でいこう!」は正月放映にあわせた総集編(通常の放映枠が特番で使えず早朝放映となったため、見逃しても問題がないようにという配慮)になっているのだが、この回は通常のOP(とCM)が終わった後のAパート冒頭で、今度は「『ゲキ・ガンガー』のOP」が始まり、本編も「『ゲキ・ガンガー』の登場人物であるジュンペイが、『機動戦艦ナデシコ』を見ようとしたら総集編であることを嘆く」という設定で物語が始まるという、非常に手の込んだつくりになっている。また、同エピソードではキョアック星の王子アカラが'''『ナデシコ』に出てくる[[エステバリス]]のディストーションフィールド・アタックを参考にしてゲキ・ガンガーに攻撃してくる'''という話になっているが、これは『ナデシコ』に登場する木連がゲキ・ガンガーの機体を模倣してジンを作っていることの伏線とも取れる。『ゲキ・ガンガー』のOPはすべて1970年代をイメージした画風・フォントになっている。
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なお、'''「『ゲキ・ガンガー』の[[世界観|世界]]では『[[機動戦艦ナデシコ]]』のアニメ作品が放映されている」という設定になっている模様'''。『ナデシコ』本編の第14話「『熱血アニメ』でいこう!」は正月放映にあわせた総集編(通常の放映枠が特番で使えず早朝放映となったため、見逃しても問題がないようにという配慮)になっているのだが、この回は通常のOP(とCM)が終わった後のAパート冒頭で、今度は「『ゲキ・ガンガー』のOP」が始まり、本編も「『ゲキ・ガンガー』の登場人物であるジュンペイが、『機動戦艦ナデシコ』を見ようとしたら総集編であることを嘆く」という設定で物語が始まるという、非常に手の込んだつくりになっている。また、同エピソードでは「キョアック星の王子アカラが'''『ナデシコ』に出てくる[[エステバリス]]の[[ディストーションフィールド]]・アタックを参考にしてゲキ・ガンガーに攻撃してくる'''」という筋書きになっているが、これは前掲の通り、『ナデシコ』に登場する木連がゲキ・ガンガーの機体を模倣してジンを作っていることの伏線とも取れる。『ゲキ・ガンガー』のOPはすべて1970年代をイメージした画風・フォントになっている。
    
『ナデシコ』の作風は「一見明るいオタク的なロボットアニメだが、本質は暗くシビア」というものであり、「勧善懲悪」という分かりやすいテーマを掲げているスーパーロボット作品である『ゲキ・ガンガー3』は、必ずしも肯定的には描かれていない。「過去に死亡した仲間が復活する」「[[正義]]が悪を倒す事で、ハッピーエンドで完結する」という内容の最終回はその象徴的な話であり、「[[ダイゴウジ・ガイ|ガイ]]や[[白鳥九十九|白鳥]]が死亡し、決して戻ってこない」「[[木星蜥蜴]]は絶対悪ではなく、最終的には和平を結ぶ」という『ナデシコ』の話と真っ向から対立する。ただ、全否定もされておらず「あまりに非現実的だが、それに憧れる気持ちは間違っていない」と言う形で肯定されている。
 
『ナデシコ』の作風は「一見明るいオタク的なロボットアニメだが、本質は暗くシビア」というものであり、「勧善懲悪」という分かりやすいテーマを掲げているスーパーロボット作品である『ゲキ・ガンガー3』は、必ずしも肯定的には描かれていない。「過去に死亡した仲間が復活する」「[[正義]]が悪を倒す事で、ハッピーエンドで完結する」という内容の最終回はその象徴的な話であり、「[[ダイゴウジ・ガイ|ガイ]]や[[白鳥九十九|白鳥]]が死亡し、決して戻ってこない」「[[木星蜥蜴]]は絶対悪ではなく、最終的には和平を結ぶ」という『ナデシコ』の話と真っ向から対立する。ただ、全否定もされておらず「あまりに非現実的だが、それに憧れる気持ちは間違っていない」と言う形で肯定されている。
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