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ジオニック社が開発した[[ジオン公国軍]]の[[量産型]][[モビルスーツ]]。正式名称は「'''ザクII(ツー)'''」であり、主に「ザク」と呼ばれる機体は本機の事を指す。
 
ジオニック社が開発した[[ジオン公国軍]]の[[量産型]][[モビルスーツ]]。正式名称は「'''ザクII(ツー)'''」であり、主に「ザク」と呼ばれる機体は本機の事を指す。
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ジオン公国は[[地球連邦軍]]との開戦に備え、MS-05B「ザクI(いわゆる[[旧ザク]])」を開発したが、運動性や排熱効率、耐久性等に問題を残し、また局地戦を想定してオプション装備を施すことで様々な戦局に対応するためのベース機にするには拡張性に乏しいという欠点があった。また諜報機関より連邦側もMSの研究に着手している可能性があるという情報を得ており、連邦がMSあるいはそれに類する兵器を投入した際に起こりうる近接戦闘用の武器が乏しいという指摘もなされていた。そのためまず動力パイプを機体外へ露出させ、その事により運動性を向上させ、同時に稼働時間の延長なども実現した。それに伴い装甲も強化され、モノアイカバーの前面にあった支柱を取り除くことができ、結果的に視野の拡大にもつながった。また近接専用装備としてヒートホークの他、ショルダースパイクやシールドも装備され、接近戦にも対応できるようになった。
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ジオン公国は[[地球連邦軍]]との開戦に備え、MS-05B「ザクI(いわゆる[[旧ザク]])」を開発したが、運動性や排熱効率、耐久性等に問題を残し、また局地戦を想定してオプション装備を施すことで様々な戦局に対応するためのベース機にするには拡張性に乏しいという欠点があった。また諜報機関より連邦側もMSの研究に着手している可能性があるという情報を得ており、連邦がMSあるいはそれに類する兵器を投入した際に起こりうる近接戦闘用の武器が乏しいという指摘もなされていた。そのためまず動力パイプを機体外へ露出させて廃熱効率を強化し、その事により運動性の向上・稼働時間の延長なども実現した。動力パイプを露出させたことで機体内部に余裕ができたため装甲も強化され、それに伴いモノアイカバーの前面にあった支柱を取り除くことができ、結果的に視野の拡大にもつながった。また近接戦用装備としてヒートホークの他、ショルダースパイクやシールドも装備され、接近戦にも対応できるようになった。
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こうして開発されたのがザクIIの初期型であるC型である。C型は1年戦争初期の1週間戦争~ルウム戦役において旧態依然とした大鑑巨砲主義に陥っていた連邦に対し圧倒的な戦果を挙げるものの、直後に締結された[[南極条約]]にて[[核ミサイル|核兵器]]の使用が禁止された事により、新たに耐核用の装備を外したF型が開発されることとなった。この改良により機動性が大幅に向上するとともにある程度の地上戦闘も行えるようになり、更にさまざまなバリエーション機のベースとなった。その後戦場の中心が[[地球]]上に移ると共に、現場から更なる地上用に特化した機体が要求されるようになり、宙間戦闘用の装備を完全に取り外して地上戦用にしたJ型が開発された。
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こうして開発されたのがザク(II)の初期型であるC型である。C型は1年戦争初期の1週間戦争~ルウム戦役において旧態依然とした大鑑巨砲主義に陥っていた連邦に対し圧倒的な戦果を挙げるものの、直後に締結された[[南極条約]]にて[[核ミサイル|核兵器]]の使用が禁止された事により、新たに耐核用の装備を外したF型が開発されることとなった。この改良により機動性が大幅に向上するとともにある程度の地上戦闘も行えるようになり、更にさまざまなバリエーション機のベースとなった。その後戦場の中心が[[地球]]上に移ると共に、現場から更なる地上用に特化した機体が要求されるようになり、宙間戦闘用の装備を完全に取り外して地上専用にしたJ型が開発された。
    
ザクの装甲はガンダムの60mmバルカン砲で貫通させられる描写があるため「バルカンのような弱い武器でも余裕で貫通できてしまうほど貧弱」と勘違いされることが多いが、これは正確には「ガンダムのバルカンが弱い武器である」ということの方が間違い。ゲーム作品ではゲームバランスの都合上バルカンが弱武器扱いされることが多いことから広がった思い込みである。実際「ザクの装甲は連邦軍の装甲車両のバルカン砲程度なら弾き返せる」とする資料もあり、ガンダムのバルカンがそれより強かったというだけなのだ。
 
ザクの装甲はガンダムの60mmバルカン砲で貫通させられる描写があるため「バルカンのような弱い武器でも余裕で貫通できてしまうほど貧弱」と勘違いされることが多いが、これは正確には「ガンダムのバルカンが弱い武器である」ということの方が間違い。ゲーム作品ではゲームバランスの都合上バルカンが弱武器扱いされることが多いことから広がった思い込みである。実際「ザクの装甲は連邦軍の装甲車両のバルカン砲程度なら弾き返せる」とする資料もあり、ガンダムのバルカンがそれより強かったというだけなのだ。
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この為、ザクは汎用性が高いものの万能MSとは言い難く、その点に関しては[[ガンダム]]や[[ジム]]に一歩劣る機体である<ref>地球方面軍総司令として北米戦線で戦っていた[[ガルマ・ザビ]]はザクの地上運用に関しても「所詮は陸戦兵器の一つ」と慎重な姿勢であり、ガウやドップの航空戦力やマゼラアタック等の射程と安定性を重視した兵器構成を行っている。</ref>。
 
この為、ザクは汎用性が高いものの万能MSとは言い難く、その点に関しては[[ガンダム]]や[[ジム]]に一歩劣る機体である<ref>地球方面軍総司令として北米戦線で戦っていた[[ガルマ・ザビ]]はザクの地上運用に関しても「所詮は陸戦兵器の一つ」と慎重な姿勢であり、ガウやドップの航空戦力やマゼラアタック等の射程と安定性を重視した兵器構成を行っている。</ref>。
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その他にもザクIIは様々な環境に適応するために多数のバリエーション機体が開発されており、特にF型は全てのバリエーションの基となっている。
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その他にもザクは様々な環境に適応するために多数のバリエーション機体が開発されており、特にF型は全てのバリエーションの基となっている。
    
[[一年戦争]]終結後も[[ジオン軍]]の残党や連邦軍などによって運用されているものも多い。
 
[[一年戦争]]終結後も[[ジオン軍]]の残党や連邦軍などによって運用されているものも多い。
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そもそもにして[[モビルスーツ]]とは、[[ジオン公国]]が正面からの近代的物量戦争では[[地球連邦軍]]に勝てない事を悟り、造り出した兵器である。その思想の根幹は「優良種たる我々ならば、技術で持ってこれを克服できる」であり、この「物量で負けている分は技量で補えば良い」的思想は後の時代のジオン系[[MS]]にも連綿と受け継がれていく事になるのである。
 
そもそもにして[[モビルスーツ]]とは、[[ジオン公国]]が正面からの近代的物量戦争では[[地球連邦軍]]に勝てない事を悟り、造り出した兵器である。その思想の根幹は「優良種たる我々ならば、技術で持ってこれを克服できる」であり、この「物量で負けている分は技量で補えば良い」的思想は後の時代のジオン系[[MS]]にも連綿と受け継がれていく事になるのである。
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一方、ザクの汎用性の高さこそ優秀であったのは確かなのだが、ガンダムや[[ジム]]には無い大きな欠点もあった。それは「モビルスーツとしての完成度」にあり、ガンダムやジムがモビルスーツとの戦闘をあらかじめ想定した上で完成したのに対し、ザクはあくまでも「戦闘機や戦車、[[戦艦]]との戦闘」や「核兵器の運用」を想定した機体に過ぎず、正式採用されて大量生産をされても、モビルスーツ同士の戦闘を想定していなかったザクは、モビルスーツとしてはあくまでも「旧式機」や「実験機」の範囲を超えておらず、本当の意味での「完成機」までには至らなかった機体だったのである。しかし、一週間戦争やルウム戦域によって表向きは圧倒的有利な形で輝かしき勝利を掴んだ体験<ref>あくまでも「表向き」であり、実際は一週間戦争のブリティッシュ作戦中にて、[[コロニー落とし]]の作業に忙殺された事で戦闘機に撃墜された機体が後を絶たず、機体の容量不足解消の為に脱出装置も設計から削られた結果、「'''最も用意に時間とコストが掛かる熟練のパイロット達を一年戦争開戦の早期より大量に損失する'''」という悲惨な事態を招いている。</ref>を忘れられなかったジオン公国軍上層部は、[[南極条約]]の締結によって核兵器が使用出来なくなり、更には[[ドム]]を始めとする次世代機のロールアウトが完了して以降もザクの生産を停止させようとはせず、それどころか生産ラインや残された資源の限界さえも無視する形で[[高機動試験型ザク]]や[[高機動型ザク]]といった「ザク系統のモビルスーツの新規開発」という不必要なまでにザク系モビルスーツへ過度なまでの固執をしてしまう事になっており、'''そのバリエーション機の総数は実に50も軽く超えてしまっている'''。だが、結局それらも戦局を大きく覆すにまでは至っておらず、ただでさえジオン側は連邦に比べて国力が大きく不足していた事も重なった結果、「ザクの後継機でガンダムに匹敵する高性能機」と銘打たれた新世代機である[[ゲルググ]]の生産・実戦配備の大きな遅延だけでなく、その搭乗員に学徒兵を動員しなければならない程の兵力不足にも繋がり、最終的に「ジオン側の敗戦」で戦争は終結してしまった。まさにザクIIとは、'''良くも悪くも一年戦争時におけるジオン公国軍の現状を象徴する機体'''だったのである。
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一方、ザクの汎用性の高さこそ優秀であったのは確かなのだが、ガンダムや[[ジム]]には無い大きな欠点もあった。それは「モビルスーツとしての完成度」にあり、ガンダムやジムがモビルスーツとの戦闘をあらかじめ想定した上で完成したのに対し、ザクはあくまでも「戦闘機や戦車、[[戦艦]]との戦闘」や「核兵器の運用」を想定した機体に過ぎず、正式採用されて大量生産をされても、モビルスーツ同士の戦闘を想定していなかったザクは、モビルスーツとしてはあくまでも「旧式機」や「実験機」の範囲を超えておらず、本当の意味での「完成機」までには至らなかった機体だったのである。しかし、一週間戦争やルウム戦域によって表向きは圧倒的有利な形で輝かしき勝利を掴んだ体験<ref>あくまでも「表向き」であり、実際は一週間戦争のブリティッシュ作戦中にて、[[コロニー落とし]]の作業に忙殺された事で戦闘機に撃墜された機体が後を絶たず、機体の容量不足解消の為に脱出装置も設計から削られた結果、「'''最も用意に時間とコストが掛かる熟練のパイロット達を一年戦争開戦の早期より大量に損失する'''」という悲惨な事態を招いている。</ref>を忘れられなかったジオン公国軍上層部は、[[南極条約]]の締結によって核兵器が使用出来なくなり、更には[[ドム]]を始めとする次世代機のロールアウトが完了して以降もザクの生産を停止させようとはせず、それどころか生産ラインや残された資源の限界さえも無視する形で[[高機動試験型ザク]]や[[高機動型ザク]]といった「ザク系統のモビルスーツの新規開発」という不必要なまでにザク系モビルスーツへ過度なまでの固執をしてしまう事になっており、'''そのバリエーション機の総数は実に50も軽く超えてしまっている'''。だが、結局それらも戦局を大きく覆すにまでは至っておらず、ただでさえジオン側は連邦に比べて国力が大きく不足していた事も重なった結果、「ザクの後継機でガンダムに匹敵する高性能機」と銘打たれた新世代機である[[ゲルググ]]の生産・実戦配備の大きな遅延だけでなく、その搭乗員に学徒兵を動員しなければならない程の兵力不足にも繋がり、最終的に「ジオン側の敗戦」で戦争は終結してしまった。まさにザクとは、'''良くも悪くも一年戦争時におけるジオン公国軍の現状を象徴する機体'''だったのである。
    
「ザク」という機体は、一年戦争後も後のジオン系組織にとっての象徴(連邦に「ガンダム神話」があるように、ジオンにも「ザク[[神話]]」があると言える。メタフィクションな意味では尚更のこと)となり、特に残党組織の傾向として見られる「過去の栄光」としてしがみつく対象であったり、[[ネオ・ジオン]]の[[ザクIII]]や[[ギラ・ドーガ]]あるいは[[ギラ・ズール]]のコンセプトである「汎用的な高性能兵器」という意味合いであったりと、組織の懐具合や勢いに応じて様々な思いの込められている機体として語り継がれている。
 
「ザク」という機体は、一年戦争後も後のジオン系組織にとっての象徴(連邦に「ガンダム神話」があるように、ジオンにも「ザク[[神話]]」があると言える。メタフィクションな意味では尚更のこと)となり、特に残党組織の傾向として見られる「過去の栄光」としてしがみつく対象であったり、[[ネオ・ジオン]]の[[ザクIII]]や[[ギラ・ドーガ]]あるいは[[ギラ・ズール]]のコンセプトである「汎用的な高性能兵器」という意味合いであったりと、組織の懐具合や勢いに応じて様々な思いの込められている機体として語り継がれている。
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