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== クトゥルフ神話(Cthulhu Mythos) ==
   
パルプマガジン連載小説を元にした神話大系のひとつ。
 
パルプマガジン連載小説を元にした神話大系のひとつ。
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20世紀前半にアメリカ合衆国の作家、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトと彼の友人たちによって作り上げられた所謂創作神話で、一般的に[[神話]]と呼ばれているものとは根本的に性質が異なる。一般的な「神話」は(クトゥルフ神話のそれ以上に様々な概念・解釈が存在するため、一概には言い切れないが)往々にして歴史は古く神聖なものとされているが、クトゥルフ神話は大元を辿れば大衆小説家たちが1900年台初頭に発表したホラー[[小説]]に過ぎない。
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20世紀前半にアメリカ合衆国の作家、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトと彼の友人たちによって作り上げられた所謂創作神話で、一般的に[[神話]]と呼ばれているものとは根本的に性質が異なる。一般的な「神話」は(クトゥルフ神話のそれ以上に様々な概念・解釈が存在するため、一概には言い切れないが)往々にして歴史は古く神聖なものとされているが、クトゥルフ神話は大元を辿れば大衆小説家たちが1900年台初頭に発表したシェアワールド的なホラー[[小説]]に過ぎない。
    
太古の地球は旧支配者と呼ばれる異形の神々によって支配されており、その姿は常人には名状し難い物に見え不安や孤独、絶望などを煽らせる……と、されるなど全体的にスケールは宇宙規模でホラー色が非常に強い。
 
太古の地球は旧支配者と呼ばれる異形の神々によって支配されており、その姿は常人には名状し難い物に見え不安や孤独、絶望などを煽らせる……と、されるなど全体的にスケールは宇宙規模でホラー色が非常に強い。
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旧支配者の名前である「Cthulhu」は人間には発音できない音を[[英語]]っぽく表記したものという設定であり、音節文字であるカナ文字でどのように表記するかは翻訳者のセンス次第である。「クトゥルフ」以外でも「クトゥルー」「ク・リトル・リトル」「クルウルウ」などと訳されることがある。クトゥルフ神話を体系化したオーガスト・ダーレスは、口にするときは「クトゥルー」に近い発音をしていた模様。他に「発音不可能」と明言されているのはルルイエ(R'lyeh)。
 
旧支配者の名前である「Cthulhu」は人間には発音できない音を[[英語]]っぽく表記したものという設定であり、音節文字であるカナ文字でどのように表記するかは翻訳者のセンス次第である。「クトゥルフ」以外でも「クトゥルー」「ク・リトル・リトル」「クルウルウ」などと訳されることがある。クトゥルフ神話を体系化したオーガスト・ダーレスは、口にするときは「クトゥルー」に近い発音をしていた模様。他に「発音不可能」と明言されているのはルルイエ(R'lyeh)。
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'''クトゥルフ神話は作家毎に解釈が異なり、また後の作家によって付け加えられた概念や神格なども多いため「これが正しい」という定説は存在しない'''と言える。元々がラヴクラフトとその仲間たちが骨子を作り、そこに数えきれないほどの(それこそ有名作家によって書かれた世界的名作から、そこらの多感な年頃の学生がノートに書いた落書きまで)設定やエピソードが骨組みに粘土を貼り付けるが如く次々と付け加えられているため、その世界観は現在進行形で変化し続けていると言って良い。
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'''クトゥルフ神話は作家毎に解釈が異なり、また後の作家によって付け加えられた概念や神格なども多いため「これが正しい」という定説は存在しない'''と言える。元々がラヴクラフトとその仲間たちが骨子を作り、そこに数えきれないほどの(それこそ有名作家によって書かれた世界的名作から、そこらの多感な年頃の学生がノートに書いた落書きまで)設定やエピソードが骨組みに粘土を貼り付けるが如く次々と付け加えられているため、その世界観は現在進行形で変化し続けていると言って良い。ゆえに、以下の解説も「比較的良く聞かれる解釈」にすぎない事に留意されたし。
ゆえに、以下の解説も「比較的良く聞かれる解釈」にすぎない事に留意されたし。
      
=== クトゥルフ神話が取り入れられている作品 ===
 
=== クトゥルフ神話が取り入れられている作品 ===
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;クトゥルフ(Cthulhu)
 
;クトゥルフ(Cthulhu)
 
:「クトゥルー」「ク・リトル・リトル」とも呼ばれ、「九頭龍」と同一視されることも。
 
:「クトゥルー」「ク・リトル・リトル」とも呼ばれ、「九頭龍」と同一視されることも。
:海底都市「ルルイエ」に眠る旧支配者。タコのような触手を持ち、コウモリのような翼を持つ。強力なテレパシー能力を持ち、ルルイエが一時的に浮上した際には世界中に精神的ショックを及ぼすという。後に『クトゥルフ神話』と纏められる事になる創作神話大系の要素が初めて用いられた小説のタイトルが『Call of Cthulhu(クトゥルフの呼び声)』であったことが、この創作神話体系が『クトゥルフ神話』と呼ばれるようになった由来である。その名前から『クトゥルフ神話』の主神格のように思えるかもしれないが、実際は他の神格に比べてそこまで力があるというわけでもなく、唯一実際に登場したラヴクラフト作品である『クトゥルフの呼び声』では普通の人間がクトゥルフの頭部に全速力の船をぶつけることで撃退することができた(ただしその直後にあっさり復活しており、倒したというよりは「殺しても死なない」という描写に近い)。
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:海底都市「ルルイエ」に眠る旧支配者。タコのような触手を持ち、コウモリのような翼を持つ。強力なテレパシー能力を持ち、ルルイエが一時的に浮上した際には世界中に精神的ショックを及ぼすという。
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:後に『クトゥルフ神話』と纏められる事になる創作神話大系の要素が初めて用いられた小説のタイトルが『Call of Cthulhu(クトゥルフの呼び声)』であったことが、この創作神話体系が『クトゥルフ神話』と呼ばれるようになった由来である。その名前から『クトゥルフ神話』の主神格のように思えるかもしれないが、上述の通り神話体系の由来となったのは「登場作品」の方であり、クトゥルフ自体は他の神格に比べてそこまで力があるというわけでもなく、唯一実際に登場したラヴクラフト作品である『クトゥルフの呼び声』では普通の人間がクトゥルフの頭部に全速力の船をぶつけることで撃退することができた(ただしその直後にあっさり復活しており、倒したというよりは「殺しても死なない」という描写に近い)。
 
:*『[[機神咆吼デモンベイン]]』では[[クトゥルー]]が[[ブラックロッジ]]の要塞を依代として召喚される。[[UX]]ではマップ背景としてその姿を見せている。
 
:*『[[機神咆吼デモンベイン]]』では[[クトゥルー]]が[[ブラックロッジ]]の要塞を依代として召喚される。[[UX]]ではマップ背景としてその姿を見せている。
 
;ハスター(Hastur)
 
;ハスター(Hastur)
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=== 旧神(Elder Gods) ===
 
=== 旧神(Elder Gods) ===
外なる神々や旧支配者と敵対する存在で、人類に対しては比較的友好的とされる事もあれば、人類を顧みずに邪神と戦うだけの存在とされる事もある。ラブクラフトは名称だけを設定し、それは後にオーガスト・ダーレスによって「外なる神々(邪神)と対をなす善なる神々」と再定義され、[[デモンベイン]]の[[大十字九郎]]の元ネタであるブライアン・ラムレイの『タイタス・クロウ』シリーズでその再定義された概念が一気に広まった。作家によって細かい解釈に差異があり、海神ノーデンスや炎神ヴォルヴァドスといった地球古来の神々を旧神のカテゴリーに分類する作家もいる。<br>旧神の眷属「星の戦士」が、「M78という星雲のあるオリオン座からやって来た光線を放って巨大な化け物と戦う光の巨人」であるためか、'''[[アダマトロン|某光の巨人]]'''も旧神とする作家も……<br/>
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外なる神々や旧支配者と敵対する存在で、人類に対しては比較的友好的とされる事もあれば、人類を顧みずに邪神と戦うだけの存在とされる事もある。ラブクラフトは名称だけを設定し、それは後にオーガスト・ダーレスによって「外なる神々(邪神)と対をなす善なる神々」と再定義され、[[デモンベイン]]の[[大十字九郎]]の元ネタであるブライアン・ラムレイの『タイタス・クロウ』シリーズでその再定義された概念が一気に広まった。作家によって細かい解釈に差異があり、海神ノーデンスや炎神ヴォルヴァドスといった地球古来の神々を旧神のカテゴリーに分類する作家もいる。<br>旧神の眷属「星の戦士」が、「M78という星雲のあるオリオン座からやって来た光線を放って巨大な化け物と戦う光の巨人」であるためか、'''[[アダマトロン|某光の巨人]]'''も旧神とする作家も……
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ちなみに某光の巨人の制作元にクトゥルフ神話ファンがいて「星の戦士」を元ネタにした…なんて話は一切なく、そもそもあの光の巨人の故郷は'''元々はM87星雲という設定だったのが[[誤字|誤記]]でM78星雲になった'''という経緯があるため、M78星雲が被ったのは奇跡的な偶然の一致である。ちなみに、その光の巨人のシリーズ作品の中にも、クトゥルフ神話の要素が非常に強い作品が存在していたりする。
 
ちなみに某光の巨人の制作元にクトゥルフ神話ファンがいて「星の戦士」を元ネタにした…なんて話は一切なく、そもそもあの光の巨人の故郷は'''元々はM87星雲という設定だったのが[[誤字|誤記]]でM78星雲になった'''という経緯があるため、M78星雲が被ったのは奇跡的な偶然の一致である。ちなみに、その光の巨人のシリーズ作品の中にも、クトゥルフ神話の要素が非常に強い作品が存在していたりする。
 
:*『[[機神咆吼デモンベイン]]』では本編とは別の運命を辿った[[大十字九郎]]と[[アル・アジフ]]が旧神として登場している。
 
:*『[[機神咆吼デモンベイン]]』では本編とは別の運命を辿った[[大十字九郎]]と[[アル・アジフ]]が旧神として登場している。
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== 余談 ==
 
== 余談 ==
*神話に登場する邪神達は基本的に人間に太刀打ち出来る存在ではないのだが、日本では、いわゆるホラー物として邪神の恐怖に脅えるタイプの作品以外に'''邪神に匹敵するパワーを手に入れて、正面から粉砕する'''というタイプの作品も数多く生まれた(「デモンベイン」もその1つ)。その中にはアザトースですら滅ぼされた例もある。
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*神話に登場する邪神達は基本的に人間に太刀打ち出来る存在ではないのだが、日本では、いわゆるホラー物として邪神の恐怖に脅えるタイプの作品以外に'''邪神に匹敵するパワーを手に入れて、正面から粉砕する'''というタイプの作品も数多く生まれた(『デモンベイン』もその1つ)。その中にはアザトースですら滅ぼされた例もある。
**中には「這いよれ!ニャル子さん」のようなトンデモ異色作まで存在するほどである。
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**中には『這いよれ!ニャル子さん』のようなトンデモ異色作まで存在するほどである。
**とはいえ、海外でも邪神を正面からぶちのめすタイプの作品は書かれており、中には、アザトースを越える超邪神とでもいうべき存在をただの人間が食べてしまうという荒唐無稽な作品すらある。
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**こういった作品は原典作品群の好事家からは難色を示されることも多いが、実のところ海外でも邪神を正面からぶちのめすタイプの作品は書かれており、中には、アザトースを越える超邪神とでもいうべき存在をただの人間が食べてしまうという荒唐無稽な作品すらある。
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*誤解される事も多いが、H・P・ラヴクラフト、オーガスト・ダーレス、C・A・スミスを始めとする神話作品を執筆した作者の、'''著作全てが神話作品のシェアワールドという訳では無い'''。ただし、後年執筆された別作家の作品による後付けで、神話作品とは無関係だったホラーやファンタジー作品がクトゥルフ神話の世界観に組み込まれる事となった事例は比較的多い。
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**ドクター・ウェストの元ネタであるハーバード・ウェストが登場する一篇も、神話体系の地名などが出てくるものの、作風自体はコズミックホラーの類ではなくむしろ純粋なホラー小説の系統である。
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**特にクトゥルフ神話を題材としたTRPG界隈ではその傾向が顕著で、ラヴクラフトの作家活動以前に発表された著名作家のホラー小説までもが、シナリオで取り扱う手本としてルールブックで紹介されている。
 
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[[Category:資料]]
 
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