ヒュッケバインシリーズ

ヒュッケバインシリーズは、パーソナルトルーパーヒュッケバインに端を発する、「ヒュッケバイン」の名を冠する機動兵器の総称。量産型ヒュッケバインMk-IIが「マシンセル」によって自己進化したベルゲルミルも記述する。

概要編集

ヒュッケバインという名前は、第二次大戦末期にナチスドイツで開発されていた幻のジェット戦闘機Ta183Aの愛称「フッケバイン」のオマージュから来ている(英語風に発音するとヒュッケバイン)[1]。なお、Ta183Aのフッケバインという愛称自体はヴィルヘルム・ブッシュの児童文学『ハンス・フッケバイン』に登場する、『醜い脚』という意味を持つ悪戯好きのカラスの名前に由来する。OGシリーズではそこから転じて、「災いを招く鴉」…即ち「凶鳥」という二つ名がヒュッケバインにつけられているという設定となった。

この二つ名が、ヒュッケバイン008Rのブラックホールエンジン暴走事故の前に名付けられたのか、事故後にそう名付けられたのかは不明。最初から「凶鳥」の二つ名で呼ばれていたならば、「敵対する者にとって凶事を呼び込む存在」という意味合いが込められていたのだろう。逆に、事故後に名付けられた場合は、事故によって大勢の職員の命が失われたという事実を忘れないように、十字架の如く背負った名前という風に解釈できる。

また『αシリーズ』以降は、先述の事故も踏まえ、関わるモノを尽く「消滅」させ、機体自身もまた何らかの理由で表舞台から姿を消していたことから、「バニシング・トルーパー」という渾名も付されている。[2]当初は『αシリーズ』で先の事故で抹消されたMk-Iがこう呼ばれていたが、MK-IIはバルマー戦役で大破抹消、Mk-IIIはバルマー戦役後に封印[3]と、後継機もその渾名を受け継ぐ形となった。『OGシリーズ』でも封印戦争でガリルナガン一機を残して全機破壊されてしまい、その渾名からは逃れられなかった。

ゲシュペンストシリーズとは対照的に、機体コンセプトが二転三転しているのが特徴。Mk-IはEOTを用いて高機動と高火力を実現した高級機、MK-IIは危険性を孕むEOTを使わない(あくまで危険性の高いものを使わないだけで、解析済みのものは使用している)堅実な機体、Mk-IIIは「コアトルーパーシステム」によって様々な戦局に対応できる万能機となっている。機体コンセプトの変遷に伴ってか、機体の外見もシリーズを通してデザインが一定しない。その点においてもゲシュペンストシリーズとは対照的である。ハロウィン・プランなどで冷遇から巻き返したゲシュペンストシリーズと異なり、一部機体にフレームや技術が流用される以外はほとんど発展の動きがない、という部分も対照的。量産型Mk-IIは現在でも連邦軍の主力として長く運用されているが、Mk-Iはエンジンの危険性からマオ社に死蔵され、Mk-IIIは鋼龍戦隊で運用されているのみにとどまっていた。

そのためか、コンセプト的にほぼ完成したMk-III以後はほとんどシリーズの進展がなく、修羅の乱においてはMk-I・Mk-IIは性能不足による型落ちが否めなかった。そして封印戦争序盤、オーバーホール中に襲撃を受け、試作タイプはほぼ破壊されてしまった。なお、エクスバインに改修された009のほかに、『3号機』が現存していることが判明している。残存パーツは原型を残していたエクスバインの修復強化に流用され、アッシュとして生まれ変わることになる。

武装面に関しては高出力を応用した重力兵器を装備しているのが特徴。量産型ヒュッケバインMk-IIの系統を除き、全機が標準装備されている。

なお2006年から2016年の間、ほとんどの公式メディアでエクスバインを除くヒュッケバインシリーズのイラストの削除、あるいは他の機体への差し替え等が行われており、機体の画が登場しなくなっていた。詳細はヒュッケバイン問題を参照。

一覧編集

ヒュッケバイン
初出は『第4次』で、リアル系主人公の最終搭乗機として登場した。ゲシュペンストなどのデータを元にEOTを惜しみなく盛り込んだ機体。ビルトシュバインの運用データとゲシュペンストMk-IIの量産化データを組み込み、コストダウンと汎用性を求めて3機がロールアウトした。
008L
リン・マオがデフォルトのパイロット。ただし「OGシリーズ」でリンが正式参戦するのは『OG2』終盤のみなので、『OG1』ではルート次第でヴィレッタ・バディム、あるいは特に人物の指定なく自部隊が借り受けて運用され、『OG2』では一時的にレオナ・ガーシュタインに預けられるが、後にリンの手に戻っている。
また『X-Ω』に登場するシズキ・シズカワの搭乗機もこちらになっている。
008R
『第4次』に登場したヒュッケバインはこちらだと思われる(『第4次のヒュッケバインの型式番号は「PTX-08R」)。ヒュッケバインに「バニシング・トルーパー(=失われし騎兵)」という不名誉な呼び名を背負う原因となった、「ブラックホールエンジン暴走事故」を引き起こした機体。その時のパイロットはライディース・F・ブランシュタインであり、彼はこの事故で左腕を失った。
また『V』に登場するヴェルターブ・テックストの搭乗機もこちらになっている。
ヒュッケバイン009
ブラックホールエンジンではなく、通常型のエンジンを搭載しているヒュッケバイン。火力は低いが基本性能は上記2機と同等。この機体の運用データは、後にMk-IIやその量産型の開発に役立つ。
ヒュッケバインEX
通称「レッド」。部品を共有しているため外見こそヒュッケバインMk-IIと同じだが、設定上は008Lに大改修を施した機体である。
エクスバイン
009の改造機で、Mk-IIとMk-IIIの中間に位置する。Mk-IIIのAMパーツのフィッティングテストのため開発された。
封印戦争後、新型のプラズマ・ジェネレーター、APT-LINKシステムを搭載した2機の改良型が追加生産されている。
アッシュ
破壊されたエクスバインを、全損したヒュッケバインシリーズのパーツを寄せ集めて修繕した改造機。Mk-IIIのパーツが主に使われたためT-LINKシステムとウラヌス・システムを搭載している。
エグゼクスバイン
アッシュの強化改修機であり、シリーズ6番目の機体。トロニウム・エンジンを搭載し、AMサーバントやリッパー系兵装、Rシリーズのデータを応用した念動誘導兵器を全身に搭載している。さらに、Mk-Iの主兵装を強化したBHBキャノンを装備しており火力は十分だが、出力バランスが取れておらず、イングの念で強引に制御している状態。

ヒュッケバインMk-II編集

初出は『スーパーロボット大戦α』で、リアル系主人公の初期搭乗機として登場する。初代ヒュッケバインの暴走事故を教訓に、解析済みのEOTのみを搭載した堅実な機体となっており、「グラビコン・システム」というEOTを搭載している。

RTX-010-01
『α』のリアル系主人公が搭乗した機体。後に破壊され、パーソナルファイターが互換性のあったMk-IIIのボディと合体した。「OGシリーズ」ではブルックリン・ラックフィールドに与えられた。
RTX-010-02
OG1』に登場。リン・マオが、マオ社の社員全員の命と引き換えにコロニー統合軍に引き渡した。その後、ジーベル・ミステルが罠に用いるが破壊される。回収された部品はエルザム・V・ブランシュタインの手に渡った。
RTX-010-02T
別名「ヒュッケバインMk-II・トロンベ」。エルザムの手に渡ったパーツを元に、大幅なカスタマイズが施された機体。G・ウォールからG・テリトリーへと強化し、テスラ・ドライブを搭載、さらに分身能力まで備える。カラーリングは当然、黒・赤・金のいわゆるトロンベカラーである。
RTX-010-03
連邦軍の量産トライアルに提出された。『OG2nd』で一言だけ語られる「3号機」で、長らくその存在は謎に包まれていたが、『DD』にて新たに設定される形で登場。「ドライ」というコードネームに変更され、表向きには存在しない機体として扱われている。Mk-IIIのグラビコン・システムを移植しているため、武装運用に必要な出力が上がっている。シズキ・シズカワがテストパイロットとして活動している。

ヒュッケバインMk-III編集

初出は『スーパーロボット大戦α』で、リアル系主人公の後期搭乗機として登場する。機体のコンセプトは「小型化されたSRX」である。最大の特徴は換装パーツを装備する事により、様々な局面に対応可能な「コアトルーパーシステム」である。

RTX-011L
『α』の主人公機として使用されたのはこちら。「αシリーズ」ではその後、『第2次α』にてヴィレッタ・バディムの手に渡り、マルチトレースミサイルのコンテナをテスラ・ドライブに換装して運用された。『第3次α』ではマイ・コバヤシが一時的に搭乗している。
RTX-011R
『第2次α』でアラド・バランガが搭乗した。後にレーツェル・ファインシュメッカーに託され、トロンベ仕様にカスタマイズされた。『OG2』では最初からレーツェルに託されており、条件次第ではトロンベ仕様からこちらに戻って入手可能。
RTX-011RT
タイプRをトロンベ仕様にカスタマイズした機体。『第3次α』ではレーツェルの弟であるライディース・F・ブランシュタインが一時的に搭乗している。
タイプRとの分かりやすい違いは、テスラ・ドライブを標準装備して飛行可能になった代わりに、コアトルーパーシステムによる換装が使用不可能になっているという点。
ヒュッケバインガンナー
AMガンナーとのドッキング形態で、高機動砲撃戦を得意とする。
ヒュッケバインボクサー
AMボクサーとのドッキング形態で、近接格闘戦を得意とする。
ガーバインMk-III
Mk-IIIにガーリオンの頭部や肩部を移植し、偽装を施した機体。

AMパーツ編集

初出はαで、ヒュッケバインMk-III換装パーツとして登場。OGシリーズでは、AMガンナーは単独のユニットとして登場し、マップ内で合体する仕様に変更された。一方、AMボクサーは換装パーツのままで、インターミッションで換装して出撃させる。マップ内での取り外しは不可能。

AMガンナー
Mk-IIIの支援戦闘艇で、Mk-IIIとのドッキングにより、「ヒュッケバインガンナー」となる。
AMボクサー
元々はRWシリーズの2号機「R-SWORD」として開発されたものだったが、Mk-III用のAMパーツとして改修された経緯を持つ。MK-IIIとのドッキングにより、「ヒュッケバインボクサー」となる。
AMサーバント
開発計画が中断されていたAMパーツで、ゲーム中に直接は登場しない。『第3次α』で、ASソレアレスASアレグリアスに改造される際、ツグミがその設計思想を流用した。なお、本来はR-3の「ストライク・シールド」の流れを汲む、念動力者用のパーツと思われるが、エルマが電子制御する事によって、念動力者ではないセレーナが搭乗しても使用可能になっている。
ちなみに、OGシリーズではAMサーバントについては全く言及されていないが、この装備の流れを組むと思われるエグゼクスバインが登場している(この機体は遠隔操作装備に特化している)。

量産型ヒュッケバインMk-II編集

その名の通りヒュッケバインMk-IIの量産型である。初出は『α外伝』。コスト面の問題の為、EOTは使用していないが、テスラ・ドライブを標準装備している為、高い機動性と空中戦闘能力を持つ。

試作機とは別の形で派生しており、そのほとんどが別勢力によって手を加えたもの多い。また、重力兵器の類は高コストから搭載されてない。

αシリーズではV字アンテナとツインアイだったが、OGシリーズではアンテナは廃され、カメラアイもゴーグルタイプに改められ、いかにも「量産型」といった風情の外見になった。

サンドブラウン
ノーマルカラー。自軍に配備されるのはこれ。
ダークグレー
インスペクターが奪取し、量産化したタイプのもの。敵として登場する。
ブルー
新生教導隊がデータ採取用に使用したタイプのもの。スポット参戦時のみ使用可能。
スナイパーPT
OGクロニクル』に登場した、本機をベースにしたカスタム機。遠距離狙撃用に特化した改造が施されており、照準用スコープやスナイパーライフルを装備している。モーションデータにはオウカ・ナギサのものが使用されているようだ。
プファイルIII
量産型Mk-IIのカスタム機。正式名称は「量産型ヒュッケバインMk-II MHRDT3カスタム」。
ベルゲルミル編集

量産型MK-IIがマシンセルによって自己進化した姿である。OGシリーズでは、イーグレットシリーズの機体にゲイム・システムが搭載されている。

ウルズ機
イーグレットシリーズのオリジネイターである、イーグレット・ウルズの搭乗機。機体色は青(OGシリーズ)。
アンサズ機
イーグレット・アンサズの搭乗機。機体色は白(OGシリーズ)。α外伝とOGシリーズではウルズ機とアンサズ機のカラーが逆になっている。
スリサズ機
イーグレット・スリサズの搭乗機。機体色は赤。
量産型
イーグレットシリーズの生みの親である、イーグレット・フェフ博士やアギラ・セトメも搭乗した機体。機体色はゲームでは灰色、漫画『ロストチルドレン』に登場したシックス・スレイブを装備していないものは黒。

その他編集

ヒュッケバイン30
初出は『スーパーロボット大戦30』。本作の主人公機で、初代ヒュッケバインの外見にアッシュの意匠が組み込まれている機体。
ヒュッケバイン30th
ヒュッケバイン30を強化改修した後継機。

関連機体編集

ビルトファルケン
本シリーズと同じHフレームを使用。
ART-1
本シリーズの技術も使用。
デュラクシール
OGシリーズでは堅牢で柔軟性あるフレームと高出力のジェネレータでも負荷しないヒュッケバインシリーズのデータに注目、そのデータを参考にして設計。
ガリルナガン
ハイ・パーソナルトルーパーと呼ばれ、本シリーズのデータを基にした機体と思われていた。実際はゼ・バルマリィ帝国製の機動兵器を擬装のためヒュッケバイン似の外装にしただけであり、ヒュッケバインの技術はほぼ使われていない。
ゲシュペンストシリーズ
ビルトシュバイン
ゲシュペンストとヒュッケバインの2シリーズの中間に位置する。

脚注編集

  1. 宝島社『スーパーロボット大戦F完結編 戦略解説』55頁。
  2. 『α』では更に、「型式番号に「R」の付く機体に関わると良くないことが起こる」という噂がマオ社の末端社員にまで広まっていた。無論唯の噂で、それを聞いたアストナージ・メドッソは「それだと連邦軍のほとんどの機体が該当してしまう」と一笑に付している。
  3. その後の封印戦争や、続く銀河大戦で封印は解除されたが、戦後はやはり所在不明となっている。