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16 バイト除去 、 2021年6月17日 (木) 11:01
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===総評===
 
===総評===
モビルスーツの操縦技術、作戦指揮能力、政治手腕、カリスマ性とそれに対する演説は優れており、これらは『逆襲のシャア』を視聴すれば大よそ分かるのだが、そんなシャア・アズナブルの[[性格]]は、「理性」と「感情」が入り混じった「理想」と「実利」主義者であったと言える。
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多才な人間であることは間違いなく、モビルスーツの操縦技術、作戦指揮能力、政治手腕、カリスマ性とそれに対する演説は優れたものであり、これらは『逆襲のシャア』を視聴すれば大よそ分かる。そんなシャア・アズナブルの[[性格]]は、「理性」と「感情」が入り混じった「理想」と「実利」主義者であったと言える。
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『逆襲のシャア』において、シャアはアースノイドに対して強い不満を抱いているスウィート・ウォーター市民からの信頼を得ており、シャア自身も自分達のことしか考えていない地球連邦政府の高官達の傲慢を許せずに粛清する必要を感じていたが、同時に自分の味方であるネオ・ジオン派の人間達すらも結局は自らのカリスマを利用して覇権奪取に奔走し権力に執着するだけの俗物でしかない事実も把握していた。その為、ネオ・ジオンを指揮したシャアの軍事行動は、ただアースノイドを否定すればいいとしか考えていない傲慢なスペースノイド達とは異なり、「スペースノイド側だけに都合の良い『世直し』や『革命』」を考えていた訳ではなかった。シャアがアクシズ落としを行おうとしたのは、それによって荒廃した地球で生き残ったアースノイド達が宇宙へ上がらざるを得ないようにし、また自分達の不満の捌け口に近い形で地球を否定する事しか考えないスペースノイド達にも地球の大切さを思い出させる事で、地球の再生と人類の革新を、アースノイドやスペースノイドを問わない宇宙へと上がった全ての人類に賭けようとする為であった。
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『逆襲のシャア』において、シャアはアースノイドに対して強い不満を抱いているスウィート・ウォーター市民からの信頼を得ており、シャア自身も自分達のことしか考えていない地球連邦政府の高官達の傲慢を許せずに粛清する必要を感じていたが、同時に自分の味方であるネオ・ジオン派の人間達すら「結局は自らのカリスマを利用して、覇権奪取に奔走し権力に執着するだけの俗物でしかない」事実も把握していた。その為、ネオ・ジオンを指揮したシャアの軍事行動は、ただ『アースノイドを否定すればいい』としか考えていない傲慢なスペースノイド達とは異なり、「スペースノイド側だけに都合の良い『世直し』や『革命』」を考えていた訳ではなかった。シャアがアクシズ落としを行おうとしたのは、「それによって荒廃した地球で生き残ったアースノイド達が宇宙へ上がらざるを得ないようにし、また自分達の不満の捌け口に近い形で地球を否定する事しか考えないスペースノイド達にも地球の大切さを思い出させる事で、地球の再生と人類の革新を、アースノイドやスペースノイドを問わない宇宙へと上がった全ての人類に賭けようとする為」であった。
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一方、普段こそ理性一辺等で、冷静沈着を装っているが、長き間戦いに身を投じていたシャア・アズナブルの実情は、モビルスーツパイロットとしての「戦士」であるのも事実である。宿命のライバルであるアムロとの最後の対決では、以前の対面で'''「私はお前と違ってパイロットだけをやっている訳にはいかん!」'''と言っていながら'''「私は世直しなど考えてない」'''と矛盾した台詞を言い放っている事からも分かる通り、シャアは政治家を務めていながらも、その内側には純粋にモビルスーツのパイロットとしてアムロと互角に戦って勝ちたいうという思いも燻らせており、これに関しては戦士である事に最も生き甲斐を覚えていた彼にとって譲れない部分であった。つまり、アクシズ落としという所業は、自身の「理想」と「実利」を同時に叶える、シャア・アズナブルの人生の総決算でもあったのだった。
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一方、普段こそ理性一辺等で冷静沈着を装っているが、シャア・アズナブルの実情は、長き間戦いに身を投じていたモビルスーツパイロットとしての「戦士」であるのも事実である。宿命のライバルであるアムロとの最後の対決で、以前の対面で'''「私はお前と違ってパイロットだけをやっている訳にはいかん!」'''と言っていながら'''「私は世直しなど考えてない」'''と矛盾した台詞を言い放っている事からも分かる通り、政治家を務めていながらも『純粋にモビルスーツのパイロットとして、アムロと互角に戦って勝ちたい』という思いも燻らせており、「戦士」である事に最も生き甲斐を覚えていた彼にとって譲れない部分であった。つまり、アクシズ落としという所業は、自身の「理想」と「実利」を同時に叶える、シャア・アズナブルの人生の総決算でもあったのだった。
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とはいえ、宇宙世紀のガンダムワールドにおいて、シャアの行動が周りと世界を大きく振り回したのも事実で、シャアがガルマを殺してなければザビ家が崩壊せず、ジオンが負けてもスペースノイド達はまだマシな未来があったかもしれないし、ガルマがドズルの言う通りに覚醒していた可能性もあった。また、アクシズにおいてもハマーンに全責任を押し付けて逃げなければハマーンが大きく歪まず、スペースノイドを正しく導いていた可能性があった。更にグリプス戦役終結後にエゥーゴを見限ったりもしなければ、以降のエゥーゴ上層部の腐敗を抑え、後に連邦での地位を約束された後もスペースノイドの権利を認める方針へと軌道修正し、アースノイドとスペースノイドの間の隔たりを少しでも緩和出来た可能性もあったし、ジオンの残党達が過去の栄光を求めて無意味なテロ活動に走る事も抑えられたかもしれない。これらはあくまでも結果論に過ぎないのは確かであるが、それでもジオンの遺児というネームバリューを利用していたにも拘らずやった事に責任をもたなかった無責任な所が、かえって世界事情を泥沼の惨劇に発展させた事は否定できないだろう。
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とはいえ、シャアの行動が周りと世界を大きく振り回したのも事実で、
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・シャアが『ガルマを殺してなければ』ザビ家が崩壊せず、ジオンが負けてもスペースノイド達はまだマシな未来があったかもしれないし、ガルマがドズルの言う通りに覚醒していた可能性もあった。
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・アクシズにおいても『ハマーンに全責任を押し付けて逃げなければ』ハマーンが大きく歪まず、スペースノイドを正しく導いていた可能性があった。
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・グリプス戦役終結後に『エゥーゴを見限ったりもしなければ』、以降のエゥーゴ上層部の腐敗を抑え、後に連邦での地位を約束された後もスペースノイドの権利を認める方針へと軌道修正し、アースノイドとスペースノイドの間の隔たりを少しでも緩和出来た可能性もあった。ジオンの残党達が過去の栄光を求めて無意味なテロ活動に走る事も抑えられたかもしれない。
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これらはあくまでも結果論に過ぎないのは確かであるが、それでもジオンの遺児というネームバリューを利用していたにも拘らずやった事に責任をもたなかった無責任な所が、かえって世界事情を泥沼の惨劇に発展させた事は否定できないだろう。
    
パイロット、政治家、そしてニュータイプ、それぞれの面で非常に高い能力と才能を発揮しているシャアであるが、彼を象徴する最大の特徴として挙げられるのが、「優れたニュータイプでありながら、'''感性そのものは[[オールドタイプ]]でしかなかった'''」という「本質」である。それを示すかのように、分かり合おうという姿勢を見せたことはあまりなく、本人なりに足掻いている様子を見せる事もあったが、個人的な確執やララァの一件から最期の最期まで抜け出すことが出来なかった。
 
パイロット、政治家、そしてニュータイプ、それぞれの面で非常に高い能力と才能を発揮しているシャアであるが、彼を象徴する最大の特徴として挙げられるのが、「優れたニュータイプでありながら、'''感性そのものは[[オールドタイプ]]でしかなかった'''」という「本質」である。それを示すかのように、分かり合おうという姿勢を見せたことはあまりなく、本人なりに足掻いている様子を見せる事もあったが、個人的な確執やララァの一件から最期の最期まで抜け出すことが出来なかった。