ロボットアニメに限らず、作品の低迷(視聴率・セールス不振)に対し打開策を講じる事。
それまでの作風に良くも悪くも大きな変化をもたらすことになるため賛否両論を呼びやすく、テコ入れの成否は最終的な作品の評価を左右する一因にもなる。そしてテコ入れすら視聴者や読者に受け入れられなかった場合、打ち切りという結果が待つ。
ロボットアニメにおけるテコ入れの主なパターンは以下のものがある。
- 1.新メカ、新キャラクター投入
- 最も多いパターン。関連商品を販売するスポンサーからの要請など商業的理由によるものが大半を占め、後者に関しては作品そのものの雰囲気を変えてしまったケースも。
- 2.ストーリーの大幅変更
- それまでのストーリーの流れを放棄し、大幅にストーリーを変えてしまうパターン。1を行った事により結果時に2が起こるというケースも。
- 3.キャラクターの退場
- 1.2に関連。新キャラクターが登場すると、前のキャラクターが退場(フェードアウト)する。リアルタイムで継続して行うものが該当する。
- 4.スタッフ交代
- それまでのスタッフを更迭、新たなスタッフを投入するパターン。制作の都合上やむなくというケースもあり、上記3つのパターンに対し受動的なテコ入れとも言える。
- また、スタッフの交代そのものが上記の3パターンに繋がる場合も往々にしてある。特に作品の制作の中心に立つ立場である監督が交代すると、制作姿勢や作品そのものに対する理解の程度などが影響して作風や物語の方向性、キャラクターの扱いなどの面で多大な変化が生じ易い傾向にあり、交代の前後で評価の差が生じるケースが多い。(前期、後期で監督が代わってしまう場合等)
主なテコ入れ作品編集
- 勇者ライディーン
- 前半のオカルト路線が視聴者に受け入れられなかったことや放送局サイドのクレームを招くなどして、当初の監督であった富野喜幸(現・富野由悠季)が降板。替わって長浜忠夫が監督へ就任し、親子の絆を軸にした大河ドラマ路線に転換して人気回復。
- UFOロボ グレンダイザー
- 放送開始から1年経過という段階で主人公であるデューク・フリードの妹グレース・マリア・フリードが登場。
- 本来のヒロインである牧葉ひかる、恋愛イベント(らしきもの)が用意された兜甲児など、キャラクターのバランスを激変させることになる。
- 合身戦隊メカンダーロボ
- 当初、メカンダーロボ本体は「ロボットにコクピットがパイルダーオン」というギミックしか持たない(変形・合体機構非搭載の)ロボットであった。
- ところが、物語中盤で「ロボ本体に縮小・巨大化機構搭載」「ロボ本体を複数のパーツに分解してそれぞれ戦闘機と合体させ、戦闘時にロボパーツ分離・巨大化合体させる」というテコ入れが発生。明らかにスポンサー・ブルマァク主導のものであったが、この僅か2ヵ月後にブルマァクは倒産の憂き目に遭ってしまった。
- 機動戦士ガンダム
- 玩具強化案としてガンダムの支援メカ・Gファイターを投入するも、結局打ち切りへ。Gファイターのおかげで玩具の売れ行きが回復傾向をみせたので打ち切りを取りやめる意見も出たものの、既にストーリーの修正が利かない段階であったため延長されることはなかった。
- なお、後年の劇場版では「玩具的過ぎる」という理由で、Gファイターは不採用(代わりにコアブースターが登場)となった。
- 魔法のプリンセス ミンキーモモ
- 当初は52話完結の予定であったが玩具の売れ行きが良くないために一旦42話での終了が決定(後に4話分延長)[1]。
- その直後に番組とは直接関係のない玩具の販促というスポンサー側の都合で延長が決定し、第2部として仕切り直しが行われた。
- これらの経緯については本作の脚本・シリーズ構成を手掛けた首藤剛志による『WEBアニメスタイル』の連載コラム「シナリオえーだば創作術」が詳しい。
- 聖戦士ダンバイン
- 番組スポンサー「クローバー」が業績不振を打破すべく新規メカの登場を要請、その意向をくんで玩具然としたビルバインへの主役メカ変更を余儀なくされる。デザイン自体は湖川友謙によるものでアニメスタッフ側がまとめたものではあるが、登場予定のない機体を急遽登場させたためデザインを揉んでいる時間があまりなく、バイストン・ウェルの世界観とうまく統合できずにやむなく物語の舞台がバイストン・ウェルから地上へと変更されることになった。
- しかし、クローバーはビルバインの発売を待たず番組途中で倒産してしまう(金型は完成しており、スポンサーを引き継いだトミーから発売された)。
- 経緯が経緯だけに富野、湖川両名から心残りのある旨が語られているが、程よくメカメカしいビルバインは賛否両論ありながらも意外と視聴者人気が高く、プラモの売上も好調だったらしい。
- 蒼き流星SPTレイズナー
- 第2クール終了と同時に作中時間で3年が経過、所謂第2部に突入する。
- しかし、キャラクター・舞台設定などが当時大ヒット中の『北斗の拳』の影響下にあるのは否定できず、賛否両論を巻き起こすことになる。
- 機動戦士ガンダムΖΖ
- 序盤は『Ζ』の作風から一転してコミカルなムードで繰り広げられるも人気は低迷し続ける。そのため、本来のファンを引き戻すため徐々に殺伐としたストーリーへと移行していった。中盤におけるエルピー・プルの死は、こうした路線変更の象徴と言えなくもない。
- 機甲戦記ドラグナー
- 元々試行錯誤の強かった作品だが、中盤からゲストキャラクターデザインに芦田豊雄氏を迎え、グン・ジェム隊の登場を期に活劇要素が強まる。後半は突然SD化するメカや次回予告の掛け合いなど完全にギャグアニメ調に。
- 宇宙の騎士テッカマンブレードII
- 前作のノリとは大幅に違い、美少女キャラを前面に押し出した所謂「萌え」路線だったが、セールスが好調だったためか、全3巻の予定が全6巻となり、後半の3巻分は前作同様シリアスな作風となった。
- 機動武闘伝Gガンダム
- 序盤は渋みを残した作風や従来のマニアの反発などもあって不振だったが、中盤にて東方不敗マスター・アジアを登場を初めとするインパクト重視の路線に切り替えて若年層を取り込むことに成功。体勢を一気に立て直して、最終的に後のアナザーガンダムシリーズの礎を築くまでに至っている。
- 新機動戦記ガンダムW
- 前任監督であった池田成が中盤で降板。後任監督として高松信司(ただしノンクレジット)、絵コンテに渡辺信一郎・谷口悟朗といった面々を新規に招き、絵コンテ担当に毎回2人づつ起用という非常体制をとって難局を乗り切った。
- 一方、池田の介入・暴走が激しかったストーリー面は、シリーズ構成の隅沢克之が当初の案を復活させる形で立て直しを図った。
- 機動戦士ガンダム 第08MS小隊
- 前任監督であった神田武幸の急逝による交代。後任の飯田馬ノ介によって、ラブストーリー要素がより前面に推し出される事に。
- 真ゲッターロボ 世界最後の日
- 当初監督と発表されていた今川泰宏が降板(スタッフロールに表記もない)。川越淳が後任監督となる。視聴者からは、大幅な予算超過・スケジュール遅延が理由と推測されている。
- 蒼穹のファフナー
- 当初のシリーズ構成だった山野辺一記が降板、それまで文芸統括だったSF小説家の冲方丁が後任(シリーズ構成および脚本交代が翌日に起こってしまったため、次の話の脚本を深夜~午前中に仕上げるという地獄を見たそうだが)となる。
- 交代後、友情・愛情・家族愛といった関係性の高まり、それがフェストゥムによってあっさり打ち砕かれる様、そしてカタルシスを余すところなく描いた作劇は評価が高い。また、その後のドラマCD・ノベライズ・TVスペシャルといった展開の脚本を全て冲方が手がける事に繋がる。
- 天元突破グレンラガン
- 第5話の放映直前に作品管理体制が大幅に見直され、本作のプロデューサーの一人である赤井孝美が降板。これは、製作会社ガイナックスのある社員のSNS上での数々の問題発言(作品への不満を持つ視聴者を逆に攻撃、スタッフ同士の反目による晒し合い、裏番組の作品を汚す等)に対して赤井が同調するコメントをしたため、赤井の作品への責任意識が欠如しているとされたことが原因。
- 作品そのものは破綻せずに無事終了したものの、赤井は企画立ち上げ当初から5年に渡る期間をプロジェクトに関わってきた中心人物だったため、制作体制の変更で元々構想していたものとはどこか異なる作品になってしまっただろうとは推測されている。
- 健全ロボ ダイミダラー
- アニメ版ではなく原作漫画の方に該当。続編『ダイミダラーOGS』序盤は殺人ペンギンに蹂躙される街の人々を描くなど、アダルトゲームのような暴力的な描写が取り入れられストーリーもシリアス色が増したが、読者から不評だったらしく程なくして従来の路線へと回帰することとなった。作者のなかま亜咲もシリーズ最終巻である『OGS』4巻のあとがきにて「失敗だった」と振り返っている。
- このためか、一部では従来と同様の作風を保ちつつ王道路線で熱いオリジナル展開を描いたアニメ版の方を高く評価する声もある。
脚注編集
- ↑ 実質的な前期の最終話となった第46話は、その背景事情を受けて、打ち切りの原因となった玩具会社に対する皮肉が込められた内容となっている。