クラシック音楽
クラシック音楽と言う場合、ヨーロッパにおいて中世以降(場合によるが、6世紀頃に生まれた教会音楽以降からとすることが多い)に作曲された一連の曲群を指すのが一般的。
ロボットアニメにおいてもクラシック音楽が作中で用いられることがある。主にキャラクターの個性を強める目的で使われることが多いが、その曲の持つ背景を作品の設定と符合させ、象徴的に用いるような重要な使われ方をする場合もある。
本項ではクラシック音楽の音楽史的な流れを最低限追いつつ、ロボット作品で使われた楽曲を取り上げる。
音楽史編集
教会音楽・ルネサンス音楽編集
- 6世紀~16世紀初頭
- 6世紀末頃、それまで各地の教会で用いられていた礼拝用の聖歌が収集・整理されて聖歌としての統一的な体系を取るようになり、9世紀末頃から多声音楽として発展していった(それまでは単声であった)。この時代の音楽は宗教儀式において限定的に用いられるに過ぎないものであったが、14世紀~16世紀にかけてヨーロッパで興ったルネサンス運動・ルターの宗教改革の影響により、音楽の娯楽化(但し貴族・僧侶階級中心)・大衆化(賛美歌整備)が進んだ。同時に、楽器の改良に伴って本格的に器楽曲が作曲されるようになり、今日言うところのクラシック音楽の下地が固まることとなる。
バロック音楽編集
- 17世紀~18世紀初頭
- ヨーロッパの絶対王政を背景として、組曲型式の楽曲やオペラに代表される華やかで劇的な音楽が好まれるようになる。ルネサンス時代の均整の取れた音楽に対し、強弱(フォルテ/ピアノ)や楽器指定による音色変化などを用いた(前時代と比べて)自由な表現が特徴。楽曲に主題(ある特徴的な旋律)が設定され始めたのがこの時代で、特徴的な旋律が繰り返し演奏されるため前時代までの楽曲より耳に残りやすく、一般的には聞き易い音楽になったとされる。
- 代表的音楽家:ヨハン・パッヘルベル(1653~1706)、アントニオ・ヴィヴァルディ(1678~1741)、ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685~1750)、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685~1759)
楽曲 | 関連人物 | 備考 |
---|---|---|
「メサイア」より「ハレルヤ」「Worthy is the Lamb...Amen」 (ヘンデル) |
(特に無し) (新世紀エヴァンゲリオン) |
第22話「せめて、人間らしく」にて。 |
カノン (パッヘルベル) |
(特に無し) (新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 DEATH編) |
EDのスタッフロールにて。 |
無伴奏チェロ組曲第1番 (バッハ) |
碇シンジ (新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 DEATH編) |
タイトルロールにて。 |
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番より「ガヴォット」 (バッハ) |
(特に無し) (新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 DEATH編) |
劇中にて。 |
- 以上の楽曲(「Worthy is the Lamb...Amen」を除く)は、『エヴァンゲリオン』劇中で使用されたクラシック音楽その他をまとめたアルバム「エヴァンゲリオン交響楽 新日本フィルハーモニー交響楽団/東京アカデミッシェカペレ」のDisc2に収録されている(後述の第九はDisc1に収録)。
- シンジの特技はチェロ演奏であるが、得意な曲は上記の「無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調」ということになっているらしい。『劇場版DEATH編』(総集編的な内容のため、この名義ではスパロボ未参戦)では彼の特技を生かし、彼の仲間と弦楽四重奏を行うシーンから物語が始まる。なお、このシーンでは各キャラクターの顔は映っていない。シンジ以外の3名の声はアスカ、レイ、カヲルのものだが、設定的には彼らによく似た声の別人らしい。
- 葉月博士の音楽の趣味はクラシック。バロックにしか詳しくないらしい。
- 『無限のフロンティアEXCEED』の楽曲「Machine Soul~奇跡を呼ぶIMPACT POWER」において用いられている、どこかで聞いたことのある特徴的なメロディは上記「パッヘルベルのカノン」からの流用。
古典派音楽編集
- 18世紀~19世紀初頭
- 啓蒙思想の広がり等の背景による、調和と統一を重んじた合理的な音楽形式が特徴。和声的に作曲されており、前時代までの多声音楽に比べると全体的に単純・明瞭である。18世紀後半の市民革命の進展とも併せ、それまで教会や貴族の独占物であった芸術音楽が広く市民の間で広まることとなった。ソナタ形式(提示部・展開部・再現部の3部構成)の誕生もこの頃で、交響曲やピアノソナタなどの分野において、今日でも馴染み深い楽曲が数多く作曲されている。
- 代表的音楽家:フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809)、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)
楽曲 | 関連人物 | 備考 |
---|---|---|
交響曲第9番ニ短調 (ベートーヴェン) |
渚カヲル (新世紀エヴァンゲリオン) |
通称「第九」。クラシックの中でも随一の有名な曲であるが、 ロボットアニメで用いられたクラシックとしても恐らく最も有名。 作中では最も有名な第4楽章「歓喜の歌」の部分が用いられている。 |
第4楽章の歌詞はドイツの詩人・シラーの詩が基で、一部ベートーヴェン自身が改めたものが用いられている。 詩の解釈には諸説あるが、エヴァにおいては創造主への回帰に対する歓喜的な解釈を充てていると捉えた方が妥当。 |
ロマン派音楽編集
- 19世紀
- 18世紀における啓蒙思想による合理思想の行き過ぎの反動から、より美的な音楽を追求する傾向が強まる。音楽的な本質に大きく変わるところは無いが、型式の複雑化、或いは転調等を多用した幻想的・空想的な美の表現が特徴で、一部の作曲家が用いている「交響詩」という語句はこの点をよく表している。この時代には管楽器の改良に伴ってオーケストラも発展し、今日見られるような大人数の編成となった。
- 代表的音楽家:カール・マリア・フォン・ウェーバー(1786~1826)、ジョアキーノ・ロッシーニ(1792~1868)、フランツ・シューベルト(1797~1828)、フェリックス・メンデルスゾーン(1809~1847)、フレデリック・ショパン(1810~1849)、ロベルト・シューマン(1810~1856)、エクトル・ベルリオーズ(1803~1869)、フランツ・リスト(1811~1886)、リヒャルト・ワーグナー(1813~1883)、ジュゼッペ・ヴェルディ(1813~1901)、ヨハン・シュトラウス2世(1825~1899)、ヨハネス・ブラームス(1833~1897)
楽曲 | 関連人物 | 備考 |
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美しく青きドナウ (J・シュトラウス) |
レオナルド・メディチ・ブンドル (戦国魔神ゴーショーグン) |
ブンドル艦の初出撃時に流れる楽曲。 |
オペラ「ニーベルングの指環」より 「ワルキューレの騎行」 (ワーグナー) |
レオナルド・メディチ・ブンドル (戦国魔神ゴーショーグン) |
ブンドルが嫌っている曲。 (戦争映画の戦闘シーンに流された曲である為、彼の美学に反するらしい) |
幻想即興曲 (ショパン) |
レオナルド・メディチ・ブンドル (戦国魔神ゴーショーグン) |
劇場版『時の異邦人』において、ブンドル艦の戦闘後に彼が流す。 雰囲気とマッチしておりとても美しい。 |
- 「ワルキューレの騎行」は『F』及び『F完結編』においてブンドル艦のBGMに採用。
- 「美しく青きドナウ」は『第2次α』及び『第3次α』においてブンドル艦のBGMに採用。レーツェルの「Trombe!」に優先することで有名(ただしラスボス曲には優先度が劣り、三竦み状態)。
- 『機動戦士ガンダムSEED』及び『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場する兵器の武装には、しばしばワーグナーの楽曲に因んだ名称が採用されている。
- 余談だが、北欧神話をベースに物語が構築されている「ニーベルングの指輪」は、スパロボ出演作品でも採用されている各種用語が満載である。
作品名 | 作品との関係 |
---|---|
タンホイザー | ミネルバに搭載されている陽電子砲。よく間違われるが、主砲ではない。 |
ローエングリン | アークエンジェルに搭載されている陽電子砲。こちらも主砲ではない。 同作の登場人物「ゴットフリート」は同艦のエネルギー収束火線砲の名前になっている。ちなみにそちらが主砲。 |
トリスタンとイゾルデ | ミネルバの主砲となっているエネルギー収束火線砲(トリスタン)と副砲(イゾルデ) |
ニュルンベルクのマイスタージンガー | 『ラーゼフォン』第1話冒頭で功刀がこの曲を聴いている。 このシーンで音楽を聴いている人物は、『MX』ではタップに、『SC2』では葉月博士にそれぞれ差し替えられている。 |
ニーベルングの指輪 | ヴォータン(オーディン)、ブリュンヒルデ、ジークフリート、ファフナー、ラグナロク(神々の黄昏)、等。 詳細は北欧神話を参照。 |
パルジファル | ミネルバの地上用ミサイル(尚、パルジファルはローエングリンの父親)。 同作の登場人物「アムフォルタス」はセイバーガンダム搭載のビーム砲の名前に。 |
国民楽派編集
- 19世紀~20世紀
- 上記の市民革命に影響されて興った民族主義運動に関連して、これまで文化の中心地であった西ヨーロッパに対し主に東ヨーロッパやロシアで発展した独自の音楽群を指す。音楽的にはドイツ・オーストリアの管弦楽が源流と言えるが、次第に自国の民謡旋律やリズムを取り入れた楽曲が生まれるようになる。作品の展開も、主題にその国の歴史や伝説的事件を用いた劇的なものが多く、印象的な旋律を持った名曲が多く生まれた。
- 代表的音楽家:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840~1893)、ロシア五人組(バラキエフ、キュイ、ムソルグスキー、ボロディン、リムスキー=コルサコフ)、ベドルジハ・スメタナ(1824~1884)、アントニン・ドヴォルザーク(1841~1904)
楽曲 | 関連人物 | 備考 |
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オペラ「イーゴリ公」より 「韃靼人の踊り」 (ボロディン) |
如月久遠 (ラーゼフォン) |
久遠が原作でひんぱんに口ずさむ。 サントラにもカバー曲「La, la Maladie du Sommeil」が収録されている。 『MX』には彼女がこの曲を口ずさむDVEが数回存在する。 |
交響曲第9番「新世界より」 (ドヴォルザーク) |
次大帝プロイスト (ガイキングLOD) |
プロイストのテーマ曲として採用。スパロボで使われるのは第4楽章。 最終兵器「ドボルザーク」も勿論この曲の作曲家「ドヴォルザーク」よりの命名。 余談ながら、制作サイドは選曲にえらく手間取ったらしい。 |
- 「新世界より」は、『K』におけるプロイスト初登場時、また他のイベント時に流れる。戦闘曲で優先的に流れる。
近現代の音楽編集
- 19世紀後期~20世紀以降
- 代表的音楽家:グスタフ・マーラー(1860~1911)、クロード・ドビュッシー(1862~1918)、ジャン・シベリウス(1865~1957)、エリック・サティ(1866~1925)、アルノルト・シェーンベルク(1874~1951)、モーリス・ラヴェル(1875~1937)、バルトーク・べーラ(1881~1945)、イーゴリ・フョードロヴィチ・ストラヴィンスキー(1882~1971)、セルゲイ・セルゲーエヴィチ・プロコツィエフ(1891~1953)、ジョージ・ガーシュウィン(1898~1937)、アラム・イリイチ・ハチャトゥリアン(1903~1978)、ドミートリイ・ドミートリエヴィチ・ショスタコーヴィチ(1906~1975)
その他編集
楽曲 | 関連人物 | 備考 |
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旧友 (カール・タイケ) |
レオナルド・メディチ・ブンドル (戦国魔神ゴーショーグン) |
対サントス戦におけるドクーガ三将軍との共闘の際、 出陣にあたってブンドルが流した曲。 堂々とした曲風が敵味方共闘のシチュエーションを盛り上げる。 |
カール・タイケ(1864~1922) ドイツ人の軍楽家。行進曲が彼の没後評価されるようになり、特に「旧友」は有名。 運動会などでもよく流れるので日本でもお馴染み。 |
著作権的な問題編集
上記のようにクラシック音楽は100年以上前に作曲されたものがほとんどであるため、大半の楽曲は既に著作権は切れており、自由に利用可能と思われがちであるが、これは大きな誤解である。
確かに作曲家・作詞家の権利は死後50年で切れるのだが、演奏者・編曲者(アレンジャー)・それを販売しているレコード会社の権利はそれが収録されてから50年間は切れない。従って、テレビでオンエアする場合など、商業利用の際に楽曲を用いる際は特に、それらの権利者に十分配慮しなければならない。
『ガイキングLOD』のプロイストのテーマ曲は前述の通り「新世界より」であるが、この曲が使用可能であることが確定したのは同曲を流す予定の回のアフレコ前日という超土壇場であったとか。ダイナミックな曲風で使用可能な楽曲は中々数が少ないそうである。
参考:東映・ガイキングLODスタッフブログ(外部リンク)
スパロボメインテーマのオーケストラアレンジ編集
クラシック音楽と直接関係があるわけではないが、スパロボでは作品のメインテーマ曲をオーケストラ仕立てにアレンジしたものが最終面などの重要局面で使用されることが定番となっていた。
オーケストラアレンジが採用されたのは『第2次スーパーロボット大戦α』の最終面において、同作のメインテーマ「SKILL」のオーケストラアレンジ版がマップBGMとして用いられたのが初。原曲の「SKILL」に加えてこのオーケストラ版の出来も概ね好評であり、以後の作品でも定番化することとなった。
原曲 | 備考 | 採用作品 |
---|---|---|
SKILL | 『第2次α』メインテーマ | 第2次スーパーロボット大戦α 第3次スーパーロボット大戦α 終焉の銀河へ |
VICTORY | 『MX』メインテーマ | スーパーロボット大戦MX |
GONG | 『第3次α』メインテーマ | 第3次スーパーロボット大戦α 終焉の銀河へ |
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