フェザール・イゼルカント(Fezarl Ezelcant)
ヴェイガンの最高指導者。本国の国民や現場の兵士からは崇拝に近い尊敬を受けるカリスマ。第1部終盤にてギーラ・ゾイの口からその存在が語られ、第2部では目元を隠した姿で初登場、第3部でようやく全身の容姿が明らかとなる。妻のドレーネとの間に、キオに似ているロミという息子がいた。
第3部より約80年前(A.G.80年代頃)に「EXA-DB」に内包された技術データの一部を入手し、衰退しつつあったヴェイガンを地球連邦を凌駕する強国に育て上げた。彼は元々、地球連邦政府の火星移住計画における初期移民者であり、コールドスリープを繰り返して既に200年以上の時を生きている。だが、火星圏に蔓延する病「マーズレイ」に体を侵されており、投薬とコールドスリープによる延命措置で生き永らえているが、第3部の時点ではそれも限界を迎え、余命半年の身となっている。ヴェイガンにとって聖地とも言えるエデン(地球)から連邦を一掃し、国民を地球に帰還させる事を最終目標とする地球帰還計画「プロジェクト・エデン」を提唱し、その障壁となる連邦を排除するべく全面戦争を挑む。
しかし、本気で攻め込めばいつでも地球圏を制圧できる力を蓄えていながら、UE事件に始まる一連の戦いであえて隙のある作戦を実行し、敵に生き延びるチャンスを与えてきた。これにはプロジェクト・エデンの真の目的が関わっている。
人物
プロジェクト・エデンの件から知れるように内面には狂気を秘めているが、人望とカリスマ性は高く、メデルら幹部やゼハート、ザナルドと言った有能な軍人達、そしてヴェイガンの民達からは指導者として強く慕われている。
その反面、プロジェクト・エデンのため部下達を捨て駒にする、地球種という理由でコロニーの住民を皆殺しにする(極限状況に追い込むことで本質を露にするのが目的である)、地球側のXラウンダーであるユリンを人体実験に使用するなど、目的のためには徹底して手段を選ばない冷酷なリアリストでもある。
イゼルカント自身は自身の理想が狂っていることも、それにまい進する自分が外道であることも自覚しており、その上で人類がより良き未来を築くにはこれしかないと確信している。いわば、真の意味での「確信犯」と言うべき人物である。
自身もまた強力なXラウンダーであるが、この力については「人類の退化である」という持論がある。
プロジェクト・エデン
プロジェクト・エデンの正体は地球種でもヴェイガンでもなく、「人類」が存続するための篩い分けである。安寧に過ごす地球人類に祖国に蔓延する「死の恐怖」を戦いを通じて伝えるとともに、戦争という極限状況の中で優良な人間を選別し、種としての滅亡から人類を救うという真の目的が秘められている。
あえて成功する見込みのない作戦を敢行したり、敵にチャンスを与えたりといった不可解な戦略は、最終的な目的がヴェイガンの勝利ではないためである。
このように、内実を知った上で傍から見れば狂気の沙汰としか言いようのない計画を実行したのは、二つの理由がある。その一つは、息子のロミの死である。彼は幼い頃に火星圏に蔓延る死病「マーズレイ」で亡くなっている。その為、早逝したロミの生き写しであるキオを気に掛け、「セカンドムーン」に連行されてきた彼を客人として迎えるとともに、祖国の現状と自身の真意を伝えた(しかし半ば狂気に踏み入っていたのか、キオをロミと混同している節も見受けられた)。
もう一つの理由は、銀の杯条約以前の歴史を知ったことである。マーズレイに苦しむヴェイガンを救う手がかりを求めたイゼルカントは、EXA-DBのサブユニットをハッキング・解析した(これが後にシドの暴走の原因となる)。その結果、条約以前の地球圏は現在よりはるかに高い技術を持ちながら戦争の繰り返しであった→ヴェイガンの夢想する「エデン」とはかけ離れた地獄の時であったことを知り、人類全体に絶望したイゼルカントは、エデンがないのならば作り出すしかない、という考えに至り、優良種による種族の存続計画「プロジェクト・エデン」を開始したのである。
動向
フリット編では名前が語られるのみ。
アセム編では、トルディアの潜入任務に失敗し帰還したゼハートを一切咎めず、即座にノートラム攻略作戦に当たらせる、という軍の司令官にあるまじき行動を取っていた。これも戦局に決定打を与えず、作戦を失敗させることで泥沼化させるのが目的である。
そのノートラム攻略戦が失敗するや、今度は本命の第二作戦を発令、地球へ突入する要塞の破片に紛れてヴェイガンの部隊を地球に潜伏させる。作戦終盤、アセムを庇って大気圏に落ちたゼハートを回収し、コールドスリープにつかせた。
キオ編ではA.G.164年勇気の日、地球侵攻の本格化を宣言、世界を混乱に陥れる。AGE-3ごと鹵獲されたキオが「セカンドムーン」から脱走した際には、新型機ガンダムレギルスに自ら搭乗して立ち塞がる。高齢ながらパイロットとしての技量は恐ろしく高く、レギルスの性能の高さもあるとはいえ、キオのガンダムAGE-3とガンダムAGE-2ダークハウンドの2機のガンダムを圧倒する程であった。
戦闘後、作戦記録を見て戦略に疑問を覚え、プロジェクト・エデンの真意を詰問してきたゼハートを逆に言いくるめ、限界の近い自身に代わり指揮を執らせるべく、ヴェイガンの全権とガンダムレギルスを与えた。また、同時に強力なXラウンダーである自身の遺伝子を使ったクローン人間ゼラ・ギンスを生み出し、計画完遂に向けて仕上げの準備に入っていた。
第4部ではさらに病状が悪化しつつも、本拠地「セカンドムーン」を地球圏へ移動させ計画の仕上げに入る。元々は自身のクローンであるゼラ・ギンスを後継者にする予定であったが、自らの病状悪化により、幼少から能力を高く評価していたゼハートに「プロジェクト・エデン」の真相を話し、ヴェイガンの全権とガンダムレギルスを託す。
ラ・グラミス攻防戦時においては既にベッド上に寝たきりの状態であり、地球とヴェイガンが協力してヴェイガンギア・シドを倒しセカンドムーンを守ったことで、強引に選び出さなくとも人は変わっていけるという希望を見出し、キオへ地球の未来を託すことを思念で告げ、ドレーネに看取られながら息を引き取った。
登場作品と役柄
携帯機シリーズ
- スーパーロボット大戦BX
- 初登場作品。第31話(キオ救出ルート)ではガンダムレギルスに搭乗して自軍部隊と交戦する。本編でイゼルカントと戦えるのはこの話のみ。
- キャンペーンマップ「Brand new X」ではゼラのヴェイガンギア・シドより先に攻めてくるが、イゼルカントのレギルスを先に落とすとゼラは撤退するため若干楽になる。
パイロットステータス設定の傾向
能力値
ヴェイガンの元締めだけあって全ての能力が高水準。特に格闘・技量に長けるが、伸び率の問題でレベルが上がると射撃特化になる。補給上げでもしていない限りそんなことにはならないが。
特殊技能(特殊スキル)
人間関係
地球連邦
宇宙海賊ビシディアン
- キャプテン・アッシュ
- キオが脱走した際の戦闘において、彼のダークハウンドとキオのAGE-3を圧倒する。
ヴェイガン
- ドレーネ・イゼルカント
- 妻。ヴェイガンのファーストレディ。
- ロミ・イゼルカント
- 息子。死病「マーズレイ」で亡くなっている。髪の色以外はキオに瓜二つの容姿を持っている。
- ギーラ・ゾイ
- 第1部・フリット編に登場した、宇宙要塞アンバットの司令官。第1部では、彼の口から初めてイゼルカントの名が明かされた。SRW未登場。
- メデル・ザント
- 第2部・アセム編におけるヴェイガン幹部。移動要塞を中心とした地球制圧軍を任せる。SRW未登場。
- ゼハート・ガレット
- 彼の能力を幼少期から高く評価しており、総司令の職を授けるなど様々な面で彼を厚遇する。
- 彼に「プロジェクト・エデン」の真相を話し、ヴェイガンの全権とガンダムレギルスを託す。
- 『BX』では彼に自身の事を原作より懐疑的に見られており、弱者を見捨てる形となる「プロジェクト・エデン」の執行に内心反対していた。ゼハートの密命で法術士ニューに暗殺されそうになるが、ニューが暗殺を自分の意思で行わなかったため未遂に終わる。
- ザナルド・ベイハート
- 側近。しかし、イゼルカントやゼハートが時折見せる相手を追い詰めながら見逃すような行為を理解できず、キオを見逃したイゼルカントに対しては不満をぶつける等、内心では苛立ちを見せている。
- ディーン・アノン、ルウ・アノン
- ヴェイガンのコロニー「セカンドムーン」に住む兄妹。キオから彼女らへの薬を頼まれる。
- ゼラ・ギンス
- 自身のクローン。本来は彼を後継者にする予定であった。
他作品との人間関係
名台詞
スパロボシリーズの名台詞
- 「よいのだ……それがお前の出した答えであるならば……目指したものこそが真のエデンなのであろう……」
- BX第41話「君の中の英雄」にて、ヴェイガンフラグが成立している場合。Xラウンダーの感応を通じ、イゼルカントの意志に事実上背いたゼハートを許し、彼の求めるものこそがエデンであったのだと語る。
搭乗機体
- ガンダムレギルス
- 高齢ながらパイロットとして乗り込み、その高い技量でガンダムAGE-3とガンダムAGE-2ダークハウンドを圧倒した。