コーディネイター(Coordinator)とは、『機動戦士ガンダムSEED』シリーズに登場する用語。

概要

受精卵に遺伝子操作を加えられて誕生した人間(デザインヒューマン)を指す用語。コーディネイター同士の両親から生まれた人間も含む[1]

出生等における問題点

作中では通常の人間はナチュラルと呼ばれるが、彼等よりも身体能力や頭脳が優れており、病気に対する抵抗力も持ち合わせる。しかし、先天性の障害を抱えて出生する等、必ずしも万能というわけでもない[2]。また、ムウ・ラ・フラガ等、戦闘面においてコーディネイターに比肩する能力を持つナチュラルや、逆にコーディネイターでも能力的にナチュラルと大差が無い者も稀ながら存在する。その他、当然優れた資質を持っていたとしても、生活環境や当の本人がそれを伸ばす努力を怠る等の後天的理由によって、目の酷使による視力の低下や運動不足による肥満にもなりうる。

更に作中で言及された問題として「第三世代以降のコーディネイターの出生率が、遺伝子を改良した故の弊害によって急速に低下している」というものが有る。そのため、コーディネイターによる国家であるプラントにおいては「相性の良いコーディネイター同士しか結婚できない」という婚姻統制が敷かれている。このコーディネイターの出生率低下問題をめぐって、ナチュラルと交配[3]による回帰を唱えるシーゲル・クラインと遺伝子技術の進展による解決を唱えるパトリック・ザラが対立する事になり、また後にギルバート・デュランダルデスティニープランを提唱する事になる。

来歴 

技術のルーツは本編より遥か昔、C.E.元年以前の再構築戦争に遡る。同大戦が核兵器や化学兵器の使用によって人類の2割に化学汚染の爪痕を遺した結果、人類の健康な次世代があやぶまれたことから遺伝子治療技術が解禁されていく。一方で遺伝子操作技術は人間の特定の能力を伸ばす事も可能だったので、こうした中で一部の富裕層らは自らの子孫を極秘裏に遺伝子操作しようと画策する。

こうした流れの中で世間が知る限り最初のコーディネイター、すなわち「ファーストコーディネイター」として、科学者グループによってジョージ・グレンが誕生。彼はC.E.15年に自らがコーディネイターである事実を明かし、人類と新たに生まれるであろう新人類との架け橋という事を願い、調整者(=コーディネイター)という概念を唱えた。これが、世にいう「ジョージ・グレンの告白」である[4]

この告白の際にコーディネイターの製法を全世界に無償拡散したために技術は寡占されたものではなくなり、これをビジネスとするベンチャーの勃興によって先進国の人間ならば誰でも措置を受けられる程度にコストダウンしてしまう。地球は遺伝子操作の是非を巡り大混乱に陥ったが、翌年「人類の遺伝子改変に関する議定書」が採択。コーディネイターとしての出生は違法とされながらも、密かにコーディネイターは増え続けるという状態だった。C.E.30年頃にはパレスチナ公会議が原因で伝統的な宗教の権威が著しく失墜すると、「コーディネイター寛容論」が地球に蔓延、その余波と遺伝子操作のコストダウンも有ってコーディネイターは急増する事になり、C.E.45年には推定人口が1000万人を突破する。

しかし上記の経緯で生み出されたコーディネイターの成長に伴い、徐々に学業やスポーツなど各分野で人としての能力差が歴然と示され始めた。更にはコーディネイター同士の子供にも能力遺伝が確認されると徐々に地球で反コーディネイター感情が再燃。C.E.53年に起きた「ジョージ・グレン暗殺事件」に代表されるように、ブルーコスモス等のナチュラルによる反コーディネイターの機運が次第に高まっていき[5]、暗殺直後に発生したS2インフルエンザが「コーディネイターのジョージ・グレン暗殺の報復およびナチュラル殲滅作戦である」との噂がナチュラルの感情を決定的に悪化させる[6]。 さらに「トリノ議定書」採択が行われ、再び遺伝子操作は完全な違法扱いとなる。コーディネイターは、「プラント」をはじめとしたスペースコロニーとコーディネイターの居住を容認していたオーブ連合首長国のような一部でしか、大手を振って生活しにくくなり、地球に残った多数のコーディネイターも地球・プラント双方からの敵意と差別を受け息苦しい立場となり、結果的には第1次連合・プラント大戦の一因となってしまう[7]

また、逆にコーディネイターの中にもナチュラルを見下す者が多く存在しており、パナマ攻防戦においてはアラスカ戦の憎悪から抵抗力を失ったナチュラルの投降を一切認めず一方的に虐殺した一件や、パトリック・ザラが大量破壊兵器ジェネシスを用いてナチュラル殲滅を目論んだ一件、そしてパトリックに同調したザフト脱走兵がユニウスセブンの残骸を地球に落としブレイク・ザ・ワールドを引き起こした件等は、両者の埋まらぬ溝を如実に表している。

地球連合軍所属のコーディネイター 

コーディネイターとナチュラルが激しく争った第1次連合・プラント大戦において、ナチュラルが多数を占める地球連合軍に所属するコーディネイター兵士達は、優先的に生還率の低い作戦へ投じられ捨て駒同然の扱いを受けながらも、本来ならば同胞であるザフトに立ち向かい、戦果を挙げた。

第1次連合・プラント大戦終結後、彼らの活躍に驚愕した地球連合軍総司令部は「コーディネイター兵士の冷遇は誤りであった」と自己反省し、地球連合軍所属のコーディネイター兵士達に対して謝罪。更に当時の大西洋連邦大統領アーヴィングが彼らを第2次世界大戦中の日系人部隊に例え、「諸君らはザフトだけではなく、偏見とも戦った」と地球連合名誉勲章を全てのコーディネイター兵士達に贈った。これは大西洋連邦の方針転換と、反コーディネイター団体ブルーコスモスのシンパの軍高官が死亡した事もあり、地球連合はコーディネイター兵士の重用に舵を切ったのである。

だが、飽くまでも「地球在住のコーディネイターの待遇が改善した」のであって、地球連合とプラント両国の関係が改善した訳ではない。連合は「連合のコーディネイターとプラントのコーディネイターは別」と割り切っており、連合所属のコーディネイター兵士も「地球は故郷」「総意を僭称し、自分達の事を蔑ろにするプラント・ザフトは敵」と言い切っている[8]

外伝『SEED ECLIPCE』ではザフトに味方と誤認させ騙し討ちをさせられた挙句、味方からも敵と思われ襲撃されるなど理不尽な目に遭い続けるなどの詳細が語られており、さらに戦後もロクな補償が行われなかった事で不満を募らせた大西洋連邦所属のハーフコーディネイターたちがテロ組織を立ち上げるにまで至っている(上記のアーヴィングからの勲章授与が行われる前の時系列なのかは未だ不明。)

最後になるが、表記は「コーディネーター」ではなく「コーディネイター」なので、注意。

登場作品での設定

やはり原作と同様に、ナチュラルを見下したり憎んでいるコーディネイターが多いが、SRWの世界観では、「ナチュラル=地球に在住するコーデイネイターでは無い人間」という定義になっている節が有り、スペースノイドや火星木星居住者等はナチュラルと扱われていない事が多い。たとえば、『L』のストーリーで、血のバレンタインでナチュラルを憎んでいるザフト脱走兵のサトーは、ホワイトファングを結成したスペースノイドであるカーンズと地球排除を掲げた同志という間柄になっている。また、『W』のストーリーで、プラント最高評議会議員(後に議長)であるパトリック・ザラは、木星居住者の木連や、木連残党で結成された火星の後継者に、援助を行っている(その結果、地球にプラントを攻撃する理由を自分達で作る結果になったが…)。

αシリーズ』では、世間での混乱を防ぐ為にコーディネイターの存在は隠蔽されたものとなっており、地球連邦政府ティターンズの上層部、一部のスペースノイド、そしてブルーコスモスの支持者だけしかその存在は知らなかった。しかし、『第3次α』に発生した血のバレンタイン後のプラントが行った宣戦布告にて、初めて一般世間でもコーディネイターの存在が公になっている。なお、居住に関しては、L5宙域で存在を隠匿されているプラント、あるいは地球の中立国家であるオーブのみで認められている。

Zシリーズ』ではクロノ改革派による(宇宙世紀世界のニュータイプADWイノベイターのような)新人類を人為的に発生させるためのプロジェクトによって造られた存在であり、同時にいずれ生まれてくる新人類をクロノ保守派から守るための存在でもあった。クライン家を始めとするプラント創設時の重要な人物はクロノの息がかかった人間であり、彼等の一部がクロノ保守派=地球に住むナチュラルを潜在的に敵とみなしていたのにはここに理由があった。

V』においては『クロスアンジュ』に登場する古の民が世界を裏から操る黒幕を倒す為に生み出した存在で、ブルーコスモスやロゴスは黒幕の手先としてコーディネイターを殲滅しようとしていた。しかしコーディネーターのみならずナチュラルの争い、黒幕の手先のブルーコスモスやロゴスとの戦争も世界を裏から操る黒幕すら操る強大な存在の掌の上でしかなかった。 ちなみにクライン家は古の民の持っていた知識を受け継ぐ家系で、ストライクフリーダムガンダムも反抗の象徴であるビルキスをベースに開発されている。

特殊技能での実装

SRWでは特殊技能として主に任天堂携帯機の『J』『W』『K』にて採用され、据置機の『第3次α』「Zシリーズ」『V』では未採用となっている。また、携帯機シリーズでも『L』以降は仕様変更の結果これまで以上の猛威を振るうようになったSEED技能との兼ね合いやムウカガリらナチュラルとの差を埋める為か、未採用となった。

一定の気力を超える度に能力(格闘・射撃・技量・防御・命中・回避)が少しずつアップしていく。SEED所持者の場合、そちらの効果とも重複して更に能力値が上昇する。メインパイロットになれないキャラの場合は、コーディネイターである事を示す意味しか持たない。

スーパーロボット大戦J

気力 能力値
110~119 +2
120~129 +4
130~139 +6
140~149 +8
150 +10

スーパーロボット大戦W

『J』の時より基本効果が若干上がった。特殊技能の『気力限界突破』の習得で気力上限を170にすると、より能力値を伸ばせる。

気力 格闘・射撃・
防御・技量
命中・回避
110~119 +3 +5
120~129 +5 +8
130~139 +7 +10
140~149 +9 +13
150~159 +11 +15
160~169 +13 +18
170 +15 +20

スーパーロボット大戦K

気力 能力値
110~119 +3
120~129 +5
130~139 +7
140~149 +9
150~159 +11
160~169 +13
170 +15

主な所持者

『機動戦士ガンダムSEED』系のコーディネイター全般が所持。以下、特筆点の有るキャラクターを明記。

キラ・ヤマト
人工子宮によって、特に優れた遺伝子を持つ存在として生み出されたスーパーコーディネイター
ただしSRWでは、特殊技能としては通常のコーディネイターと同様に扱われている。「スーパー」たる所以は高水準の初期能力値とSEEDの存在で表現されているのだろう。
ラウ・ル・クルーゼ
原作設定上ではナチュラルの筈だが、『J』では設定ミスなのか、あるいはまだ「クルーゼはナチュラル」設定がちゃんと広まっていなかった為か、この技能が有る(『W』では未所持。ちなみにレイも『K』では未所持)。
イライジャ・キール
設定上ナチュラル並の能力しか無い筈なのだが、この技能はしっかり機能する。そのおかげか、原作同様凡庸な能力値とはいえ「ズバ抜けて使えないお荷物」キャラではなく、使おうと思えばそれなりに活躍させられる。
原作においても戦いの経験を経る事で成長していったため、それの再現と言えなくはない。
キャプテンG・G(ジョージ・グレン
本体は脳しかないとはいえ、流石にファーストコーディネイターだけあってしっかりこの技能を持っている…が、サブパイロットなので全く役に立たない。
リーアム・ガーフィールド
彼もサブパイロットのため効果は発揮されない。原作ではモビルスーツに乗る場面もあったのだが…。

関連用語

スーパーコーディネイター
人工子宮によってデザイン通りに生まれてきた「完全なるコーディネイター」。その唯一の成功例が、キラ・ヤマトである。
ナチュラル
コズミック・イラ世界観において、出生前に遺伝子操作を受けていない通常の人間の事を指す。
ハーフコーディネイター
ナチュラルとコーディネイターとの間に生まれた人間を指す。能力も継承するが、純粋なコーディネイター程では無い。もっとも、「コーディネイター」と付いているが、【遺伝子操作をしていない】という事で、種族としてはナチュラルになる。
しかし、基本的に地球連合・ザフトの双方からは亜人種と見做され、社会的に孤立する事が多い。特にザラ派のような思想を持つコーディネイター側からはナチュラルへの回帰を「ナチュラル帰り」として激しく敵視する風潮がある為、大半は地球側へ逃れる事が多い。
地球連合側としても貴重な戦力とした一方でナチュラル用のモビルスーツOSが開発された途端に用済みと看做し存在を疎む様になるなど総じて肩身の狭い存在と言える。
ブルーコスモス
反コーディネイター主義を旗印に掲げる過激な思想団体。
デザイナーベビー
遺伝子操作を受けた人物の総称。コーディネイターもまた、それに該当する。
ソキウス
連合によって作られた戦闘用コーディネイター。当初は対ザフトの貴重な戦力として重宝されていたが、ナチュラル用OSや生体CPUなどの開発に成功した後は離反される恐れも入れて用済みと見做され、新兵器の実験台にされるなどの殺処分や薬物投与による精神崩壊措置が行われた。
これを不服とした一部のソキウスも脱走しており、叢雲劾もこのソキウス(の試験体)の一人である。

他作品の関連用語

スペースノイド
宇宙世紀など他のガンダムシリーズにおけるスペースコロニー居住者の総称。
コーディネイターはスペースノイドのオマージュ的な面も含まれており、『MSV』のキャラクターであるレナ・イメリア(SRW未登場)が「宇宙人は大人しく宇宙へ帰りなさい!」と蔑称として宇宙人呼ばわりする場面も存在する。
古の民
クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』に登場する、旧世界の生き残りであるマナが扱えない人類。
V』ではエンブリヲに対抗する為の優れた能力を持つ者を生み出す目的で、彼等による遺伝子改造によって生まれた」とされている。

脚注

  1. なお、この場合は「第二世代コーディネイター」とも言う。例えば、アスラン・ザララクス・クライン等が第二世代コーディネイターにあたる。
  2. 『機動戦士ガンダムSEED』終盤における回想シーンによると、子供の遺伝子を操作したとしても、必ずしも「親の希望した通りの結果にならない」場合が有る模様。ちなみに、親のエゴが直截的に描かれている場面でもある。
  3. これに関連して、『機動戦士ガンダムSEED』シリーズでは「ハーフコーディネイター」というナチュラルとコーディネイターの間に産まれた者も少なからず存在する。今の所はエリカ・シモンズの息子であるリュウタ・シモンズ、外伝『機動戦士ガンダムSEED FRAME ASTRAYS』登場の地球連合軍所属のジスト・エルウェス、『機動戦士ガンダムSEED ECLIPSE』登場のヴァレンティーナ・ビノン(全てSRW未登場)等はハーフコーディネイターだと判明している。
  4. ここでいう新人類とは後のSEEDのこと。その後、キャプテンG・Gとして復活したジョージ・グレンの弁によれば「『コーディネイター』とは、遺伝子の調整をされた者に限った事ではない」と思い直している。コーディネイティッド(調整をされた者)ではなくコーディネイター(調整する者)なのはそういうことなのだろう。
  5. ただし、ブルーコスモスの実情はロゴスに参画するアズラエル財団が結成したロビイスト団体であり、その過激化も旧来の各種宗教過激派を取り込んだ所が大きかった。
  6. このS2インフルエンザ事件の作成者がコーディネイターとのウワサが真実だったのか、デマゴギーだったのかは明らかにされていない。ただし、流行の翌年C.E.55年10月にプラントのフェブラリウス市でワクチン開発に成功し、増産と地球への供与を開始したが、病気になりにくいため薬学がナチュラルより大幅に遅れているコーディネイターがあっさりワクチン開発に成功したため、ナチュラル達の間でこの疑念を更に煽ってしまったという。
  7. 裏設定ではプラントの他にもL4の中立地域に多数の中立コロニーが存在する。遺伝子を人為的に改造できるコーディネイターは出生の段階で宇宙産業に適した能力を得やすいため、宇宙開発に携わる人間も多く、そうした地域に点在している。また、C.E.世界観では火星圏への入植も完了しており、在住者はコーディネイターで占められている。
  8. グレートメカニック7月号SEED DESTINYメカニック特集番外編

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