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| キリスト教の聖典『新約聖書』の一つ『コロサイ人への手紙』1:16の「万物は、天にあるものも地にあるものも、見えるものも見えないものも、位(トロノス)も主権(キュリオテーテス)も、支配(アルケー)も権威(エクスーシア)も、みな御子にあって造られたからである。」という文章と、同じく『エペソ人への手紙』1:21の「彼を、すべての支配(アルケー)、権威(エクスーシア)、権力(デュナミス)、権勢(キュリオテーテス)の上におき、また、この世ばかりでなくきたるべき世においても唱えられる、あらゆる名の上におかれたのである。」という文章から、それぞれ座天使(トロノス)・主天使(キュリオテーテス)・権天使(アルケー)・能天使(エクスーシア)・力天使(デュナミス)と解釈されたと考えられている。そのため宗派によってはこれらを誤訳として存在を認めていない。 | | キリスト教の聖典『新約聖書』の一つ『コロサイ人への手紙』1:16の「万物は、天にあるものも地にあるものも、見えるものも見えないものも、位(トロノス)も主権(キュリオテーテス)も、支配(アルケー)も権威(エクスーシア)も、みな御子にあって造られたからである。」という文章と、同じく『エペソ人への手紙』1:21の「彼を、すべての支配(アルケー)、権威(エクスーシア)、権力(デュナミス)、権勢(キュリオテーテス)の上におき、また、この世ばかりでなくきたるべき世においても唱えられる、あらゆる名の上におかれたのである。」という文章から、それぞれ座天使(トロノス)・主天使(キュリオテーテス)・権天使(アルケー)・能天使(エクスーシア)・力天使(デュナミス)と解釈されたと考えられている。そのため宗派によってはこれらを誤訳として存在を認めていない。 |
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− | 新約聖書の原著は、概ねギリシア語で書かれているとされているので、これらの天使の名称もギリシア語由来である。訳し方の違いで呼び名が複数ある。
| + | 新約聖書の原著は、概ねギリシア語で書かれているとされているので、これらの天使の名称もギリシア語由来で、誕生経緯からか英訳した呼び名が用いられることもある。 |
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| === 上位三隊「父」 === | | === 上位三隊「父」 === |
− | ;熾天使(Seraphim) | + | ;熾天使(セラフィム:Seraphim) |
− | :名は「燃える」あるいは「炎のような」を意味し、人間に[[神]]の聖愛を伝える存在。人前に現れる時は、三対六枚の翼と四つの顔の姿で現れる。「熾(燃えている)」天使の名の由来は、その体が神への[[愛]]と情熱によって燃えているからである。 | + | :名は「燃える」あるいは「炎のような」を意味し、人間に[[神]]の聖愛を伝える存在。人前に現れる時は、三対六枚の翼と四つの顔の姿で現れる。「熾(燃えている)」天使の名の由来は、その体が神への[[愛]]と情熱によって燃えているからである。単数形は「セラフ」。ケルビムと共にヘブライ語の音写がそのまま使われている。 |
| :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[セラヴィーガンダム]]および[[セラフィムガンダム]]の名称由来となっている。 | | :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[セラヴィーガンダム]]および[[セラフィムガンダム]]の名称由来となっている。 |
− | ;智天使(Cherubim) | + | ;智天使(ケルビム:Cherubim) |
− | :名は「智慧」あるいは「仲裁する者」を意味し、四つの顔と四つの翼を持ち、その翼の下には人の手らしき物がある。その名や智慧を伝える役割から「智」天使と言われている。 | + | :名は「智慧」あるいは「仲裁する者」を意味し、四つの顔と四つの翼を持ち、その翼の下には人の手らしき物がある。その名や智慧を伝える役割から「智」天使と言われている。単数形は「ケルブ」。セラフィムと共にヘブライ語の音写がそのまま使われている。 |
| :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[ケルディムガンダム]]の名称由来となっている。 | | :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[ケルディムガンダム]]の名称由来となっている。 |
| :*『[[創聖のアクエリオン]]』および『[[アクエリオンEVOL (TV)|アクエリオンEVOL]]』の[[ケルビム兵 (兵器)|ケルビム兵]]の名称由来となっている。 | | :*『[[創聖のアクエリオン]]』および『[[アクエリオンEVOL (TV)|アクエリオンEVOL]]』の[[ケルビム兵 (兵器)|ケルビム兵]]の名称由来となっている。 |
− | ;座天使(Thrones/Ofanim/Galgalim) | + | ;座天使(スローネズ:Thrones/オファニム:Ofanim/ガルガリン:Galgalim) |
| :名は「玉座」あるいは「車輪」の意で、無数の眼が付いた燃え盛る車輪の姿で描かれる。唯一神たる主を運ぶ神の戦車をとされ、転じて「座」天使の由来となった。 | | :名は「玉座」あるいは「車輪」の意で、無数の眼が付いた燃え盛る車輪の姿で描かれる。唯一神たる主を運ぶ神の戦車をとされ、転じて「座」天使の由来となった。 |
| :これはユダヤ教の聖典『旧約聖書』の一つ『エゼキエル書』に登場する智天使と行動を共にする輪と同一視されたため。名称が複数あるのも同じ理由である。 | | :これはユダヤ教の聖典『旧約聖書』の一つ『エゼキエル書』に登場する智天使と行動を共にする輪と同一視されたため。名称が複数あるのも同じ理由である。 |
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| === 中位三隊「子」 === | | === 中位三隊「子」 === |
− | ;主天使(Dominions/Κυριοτητες) | + | ;主天使(ドミニオンズ:Dominions/キュリオテテス:Κυριοτητες) |
| :名は「統治」「支配」の意で、[[神]]の威光を世に知らしめる任を背負い、神の主権を広める事から「主」天使と呼ばれている。その一方で、人間への慈愛伝達をしたりもする。 | | :名は「統治」「支配」の意で、[[神]]の威光を世に知らしめる任を背負い、神の主権を広める事から「主」天使と呼ばれている。その一方で、人間への慈愛伝達をしたりもする。 |
| :*『[[機動戦士ガンダムSEED]]』の[[母艦]][[ドミニオン]]の名称由来となっている。 | | :*『[[機動戦士ガンダムSEED]]』の[[母艦]][[ドミニオン]]の名称由来となっている。 |
| :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[ガンダムキュリオス]]の名称由来となっている。 | | :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[ガンダムキュリオス]]の名称由来となっている。 |
− | ;力天使(Virtues/Δυναμεις) | + | ;力天使(ヴァーチューズ:Virtues/デュナメイス:Δυναμεις) |
− | :名は「高潔」「美徳」の意で、実現像としての奇跡を司り、それをもって英雄に勇気づける役割を持っている。「力」天使という表記は、難局に立たされた善人に、勇気づけて、力を引き出す存在から来ている。 | + | :名は「高潔」「美徳」の意で、実現像としての奇跡を司り、それをもって英雄に勇気づける役割を持っている。と言われるが原語であるギリシア語を鑑みるに「効力」「武勇」の意だと思われる。「力」天使という表記は、難局に立たされた善人に、勇気づけて、力を引き出す存在から来ている。 |
| :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[ガンダムヴァーチェ]]および[[ガンダムデュナメス]]の名称由来となっている。 | | :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[ガンダムヴァーチェ]]および[[ガンダムデュナメス]]の名称由来となっている。 |
| :*[[バンプレストオリジナル]]の異種生命体[[デュミナス]]([[デュナミス|デュナミス3]])の名称由来となっている。ただしデュミナス関連は全てギリシア語が用いられているため、ギリシア哲学としてのデュナミスが直接の由来と思われる。 | | :*[[バンプレストオリジナル]]の異種生命体[[デュミナス]]([[デュナミス|デュナミス3]])の名称由来となっている。ただしデュミナス関連は全てギリシア語が用いられているため、ギリシア哲学としてのデュナミスが直接の由来と思われる。 |
− | ;能天使(Powers/Εξουσιαι) | + | ;能天使(パワーズ:Powers/エクスシーアイ:Εξουσιαι) |
− | :名は「権限」の意で、天使の中で最も調和的な存在であり、万物の原理と同一化する性質とされ、これが「能」天使の由来となっている。 | + | :名は「権限」の意で、天使の中で最も調和的な存在であり、万物の原理と同一化する性質とされ、これが「能」天使の由来となっている。ギリシア語単数形は「エクスシーア:Εξουσία」。 |
| :地獄の悪魔達との戦いにおいて最前線に立つことが多く、それ故に悪魔との接触機会が多いなど、使命も過酷である。堕天使になったのもこの階級の天使が多い。 | | :地獄の悪魔達との戦いにおいて最前線に立つことが多く、それ故に悪魔との接触機会が多いなど、使命も過酷である。堕天使になったのもこの階級の天使が多い。 |
| :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[ガンダムエクシア]]の名称由来となっている。 | | :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[ガンダムエクシア]]の名称由来となっている。 |
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| === 下位三隊「聖霊」 === | | === 下位三隊「聖霊」 === |
− | ;権天使(Principalities/Αρχη) | + | ;権天使(プリンシパリティーズ:Principalities/アルケー:Αρχη) |
| :「権」天使の名が示すように、地上の国や大都市及び、その指導者を守る使命を帯びている。 | | :「権」天使の名が示すように、地上の国や大都市及び、その指導者を守る使命を帯びている。 |
| :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[アルケーガンダム]]の名称由来となっている。 | | :*『[[機動戦士ガンダム00]]』のMS[[アルケーガンダム]]の名称由来となっている。 |
− | ;大天使(Archangels) | + | ;大天使(アーケインジェルズ:Archangels) |
| :「使者の長」「卓越した使者」を意味する。ちなみに、「大」天使の名の由来は、天使の中でも特に偉大な天使への敬称から来ている。 | | :「使者の長」「卓越した使者」を意味する。ちなみに、「大」天使の名の由来は、天使の中でも特に偉大な天使への敬称から来ている。 |
| :ところが、偽ディオニュシオスは、人に直接啓示を与える大天使を人に近い存在だと考えたのか、下層第二位に組み込んだ。 | | :ところが、偽ディオニュシオスは、人に直接啓示を与える大天使を人に近い存在だと考えたのか、下層第二位に組み込んだ。 |
| + | :実は旧約聖書に大天使の記述はなく、新約聖書でも2回しかない。特定の天使が特定の重要性を帯びるようになり独自の個性と役割を発展させ、偉大な天使だと区別された結果である。 |
| :*『[[機動戦士ガンダムSEED]]』の[[母艦]][[アークエンジェル]]の名称由来となっている。 | | :*『[[機動戦士ガンダムSEED]]』の[[母艦]][[アークエンジェル]]の名称由来となっている。 |
− | ;天使(Angels) | + | ;天使(エインジェルズ:Angels) |
− | :天使の中で[[一般兵|兵卒]]に相当する存在。 | + | :天使の中で[[一般兵|兵卒]]に相当する存在。その原義は「伝令」。 |
| :*『[[THE ビッグオー]]』(『[[THE ビッグオー 2nd SEASON|2nd SEASON]]』)では登場人物[[エンジェル]]の名前元として使われている。 | | :*『[[THE ビッグオー]]』(『[[THE ビッグオー 2nd SEASON|2nd SEASON]]』)では登場人物[[エンジェル]]の名前元として使われている。 |
| :*『[[クロスアンジュ 天使と竜の輪舞]]』の[[アンジュ]]の名称由来となっている。 | | :*『[[クロスアンジュ 天使と竜の輪舞]]』の[[アンジュ]]の名称由来となっている。 |
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| == 悪魔の一覧 == | | == 悪魔の一覧 == |
| ;サタン(Satan) | | ;サタン(Satan) |
− | :ユダヤ教、キリスト教における「神の敵」にして、イスラム教における「人間の敵」である存在。いわゆる、悪魔の事を指す。[[ヘブライ語]]で「敵対者」という意味の単語「Satan」に由来する。アラビア語読みでは「シャイターン」と言う。 | + | :キリスト教における「神の敵」にして、ユダヤ教、イスラム教における「人間の敵」である存在。いわゆる、悪魔の事を指す。[[ヘブライ語]]で「敵対者」という意味の単語「Satan」に由来する。アラビア語読みでは「シャイターン」と言う。 |
− | :元々、サタンは上記の存在を指す一般名詞であったが、'''キリスト教では「[[神]]に反逆した堕天使ルシファーが、悪魔サタンである」と考えられている'''。 | + | :元々、サタンは上記の存在を指す一般名詞であったが、'''キリスト教では「[[神]]に反逆した堕天使ルシファーが、悪魔サタンである」と考えられている'''。逆にユダヤ教、イスラム教では神に従う者であり、神の許しを得て人間に害を加えているとされる。 |
| :サタンは楽園でアダムをそそのかして知恵の実を食べさせた蛇(通称「赤い竜」あるいは「黙示録の獣」)と同一視される。また、生命の樹を反転させた「邪悪の樹(クリフォト)」の第1セフィラ「無神論(バチカル)」を司る存在でもある。 | | :サタンは楽園でアダムをそそのかして知恵の実を食べさせた蛇(通称「赤い竜」あるいは「黙示録の獣」)と同一視される。また、生命の樹を反転させた「邪悪の樹(クリフォト)」の第1セフィラ「無神論(バチカル)」を司る存在でもある。 |
| :なお、サタンは、キリスト教における七つの大罪の一つ「憤怒」を司る。 | | :なお、サタンは、キリスト教における七つの大罪の一つ「憤怒」を司る。 |
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| == 余談 == | | == 余談 == |
| *概要に示す通り、このページで扱う悪魔は基本的にキリスト教に関連する(異教故に貶められた)存在だが、[[日本]]で「悪魔(トップクラスの魔)」と言えば古くは「マーラ」を指し示す。神やその部下と争う存在というより、ブッダの修行を様々な手で妨げようとしたエピソードが有名である。様々に習合が進んだ中世には、天皇のような[[貴族|貴種]]や名高い偉人が魔道・魔界に堕ちて[[魔法|異能]]に通じた天狗に変じた挙句、現世に災いをもたらす「大魔王」となって非常に畏れられた反面、高位神仏の一側面化して祀られるようにもなっている。 | | *概要に示す通り、このページで扱う悪魔は基本的にキリスト教に関連する(異教故に貶められた)存在だが、[[日本]]で「悪魔(トップクラスの魔)」と言えば古くは「マーラ」を指し示す。神やその部下と争う存在というより、ブッダの修行を様々な手で妨げようとしたエピソードが有名である。様々に習合が進んだ中世には、天皇のような[[貴族|貴種]]や名高い偉人が魔道・魔界に堕ちて[[魔法|異能]]に通じた天狗に変じた挙句、現世に災いをもたらす「大魔王」となって非常に畏れられた反面、高位神仏の一側面化して祀られるようにもなっている。 |
− | | + | *[[日本神話]]や民間信仰においては、暴威をふるったり悪事やタタリを働く存在はあるが、根源的な悪や、神々と人々の敵に位置付けられた存在は非常にマイナーで、悪魔に値する存在はいないと言っても差し支えない(強いて言えばケガレや災禍を象徴する「禍津日神」は近いが、厄除けの信仰対象にもなっており、人の良心につながる善神と解釈する学者もいる)。 |
− | *[[日本神話]]や民間信仰においては、暴威をふるったり悪事やタタリを働く存在はあるが、根源的な悪や、神々と人々の敵に位置付けられた存在は非常にマイナーで、悪魔に値する存在はいないと言っても差し支えない。(強いて言えばケガレや災禍を象徴する「禍津日神」は近いが、厄除けの信仰対象にもなっており、人の良心につながる善神と解釈する学者もいる。) | |
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| {{DEFAULTSORT:てんし あくま}} | | {{DEFAULTSORT:てんし あくま}} |
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