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また、モビルスーツのパイロットとしての能力や技術も非常に優秀であり、[[アナハイム・エレクトロニクス]]との裏取引で奪取した、[[サイコフレーム]]搭載機である真紅のMS[[シナンジュ]]を駆る。
 
また、モビルスーツのパイロットとしての能力や技術も非常に優秀であり、[[アナハイム・エレクトロニクス]]との裏取引で奪取した、[[サイコフレーム]]搭載機である真紅のMS[[シナンジュ]]を駆る。
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地球連邦の存続事態を脅かし得る程の強大な「力」を持った「[[ラプラスの箱]]」やその鍵を握る[[ユニコーンガンダム]]を巡り、[[バナージ・リンクス]]や[[ロンド・ベル]]と激突を繰り返す事になるが、箱の利用方針に関しては、[[ザビ家]]の遺児でシャアの忘れ形見とも言える[[オードリー・バーン]]([[ミネバ・ラオ・ザビ]])と対立している。
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地球連邦の存続事態を脅かし得る程の強大な「力」を持った「[[ラプラスの箱]]」やその鍵を握る[[ユニコーンガンダム]]を巡り、[[バナージ・リンクス]]や[[ロンド・ベル]]と激突を繰り返す事になる。
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箱の利用方針に関しては、[[ザビ家]]三男[[ドズル・ザビ]]の遺児であり、シャアとも縁深い[[オードリー・バーン]]([[ミネバ・ラオ・ザビ]])と対立している。
    
謎めいた言動の多い掴み所の無い人物で、時には味方にとっても理解しきれない部分を見せる事がある一方、シャア本人にしか知りえない独白や経験を知っている節を見せる事もある。しかしフロンタルはシャアを「敗北した人間」と冷たく見下すなど自身との同一性を否定しており、自身を「宇宙民の意志を受け入れる『器』」と称している。また、仮面で素顔を隠しているのも、フロンタル本人曰く「ファッションのようなもの」に過ぎないらしく、バナージの依頼であっさりと外したこともある。
 
謎めいた言動の多い掴み所の無い人物で、時には味方にとっても理解しきれない部分を見せる事がある一方、シャア本人にしか知りえない独白や経験を知っている節を見せる事もある。しかしフロンタルはシャアを「敗北した人間」と冷たく見下すなど自身との同一性を否定しており、自身を「宇宙民の意志を受け入れる『器』」と称している。また、仮面で素顔を隠しているのも、フロンタル本人曰く「ファッションのようなもの」に過ぎないらしく、バナージの依頼であっさりと外したこともある。
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人格的にどこか青臭さや未熟さを残したシャアと異なり遙かに強かな[[性格]]で、大人であるということを平然と武器にしてくる。いわば、シャアから人間的な部分を全て取り去った「赤い彗星という機械」、とも見られる。
 
人格的にどこか青臭さや未熟さを残したシャアと異なり遙かに強かな[[性格]]で、大人であるということを平然と武器にしてくる。いわば、シャアから人間的な部分を全て取り去った「赤い彗星という機械」、とも見られる。
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フロンタルの目的は、地球の経済活動が宇宙居住民の生産活動に依存している点を逆手に取り、宇宙で唯一自治権を有するジオン共和国主導の下で月と7つのサイドを中心として、地球を排除した経済圏を作り上げる「サイド共栄圏」の確立と、これによる地球連邦の孤立と衰退である。ラプラスの箱を求めるのも、サイド共栄圏構想を実現させるべく、「箱」を連邦政府との交渉材料にしてジオン共和国の自治権返還を延期させ、共栄圏実現までの時間稼ぎをするためであった。
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外伝作品『戦後の戦場』では、シナンジュの原型であるシナンジュ・スタイン強奪時における経緯が語られている。誰もフロンタルが戦う姿を見た事がなかった為に、当初はアンジェロや親衛隊からも本当に「赤い彗星の再来」と呼べる力を持っているのか疑念を抱かれていた。
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しかし、その理想を語る姿はバナージ曰く「他人事のような」どこか冷めた印象を与えており、また本物のシャアを実の父親の様に慕っているオードリー(ミネバ)からは、ネオ・ジオンの民達が望むならシャアを演じようとする姿勢に対し「空っぽな人間」とまで嫌悪され、サイド共栄圏構想についても、結局は強引にアースノイドとスペースノイドの立場を逆転させるだけで、人類の革新を願ったジオン・ズム・ダイクンの理想(ジオニズム)や、アクシズ落としという凶行に走ってでも人類を宇宙へ上げて地球から自立させようとしたシャアの思想(エレズム)とは程遠い物であると酷評されている。これは、フロンタル自身が「人類はどうやっても、もはや変わることはない」と諦観しているためであり、「人類はどんな手を使ってでもニュータイプにならねばならない」としたシャアの思想とは真反対である。そのため、「人は変われる、分かり合える」と叫び続けるバナージの理想を、「人類に叶いもしない希望を与える存在」として危険視している。
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そんな中、想定外の襲撃がありながらも<ref>この時、襲撃を行ったプロト・スタークジェガンに搭乗していた中央情報局のカルロス・クレイグ大尉は、[[ジオン公国軍#旧ジオン軍の残党|ジオン残党軍]]の起こしたテロによって妻子を失っており、連邦の上層部とアナハイムがUC計画の為の『敵』を欲して[[袖付き]]に新型モビルスーツを強奪に見せかけて譲渡する事実を知った事で、ダコタ・ウィンストンに協力を頼み、越権行為を承知の上で、新たに起ころうとしていた戦争を未然に防ぐべく取引をぶち壊しにしようとしていた。</ref>、赤く塗装された[[ギラ・ドーガ]]でジェガン隊を翻弄しつつ、予め立てられていた予定通りにクラップ級宇宙巡洋艦「ウンカイ」へと取り付き、シナンジュ・スタインを強奪。更にはウンカイとそれに同行していたクラップ級であるラーデルスの2隻を共に撃沈し、これによってフロンタルは「赤い彗星」としての信頼を得るに至り、特にアンジェロからは「棄民の王」として崇拝されるまでに至っている。
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その役回りや立ち位置は、他作品に散見される「シャアのコピー」ではなく、むしろその逆、シャアを演じることで彼の考えや理想と、逆説的にそのライバルたるアムロや自身の宿敵たるバナージをも全否定する、いわば「'''シャアの負の鏡像'''」でも言うべき存在。シャアは人類に絶望しつつもどこかで人の革新を諦めきれなかったのに対し、フロンタルは最初からそれらの可能性を完全に否定し「虚しいだけ」と断じる、虚無的といえるほどのリアリストであるという点で対照的である。また、シャアのアクシズ落としの動機の一つは「アムロと決着をつけたい」という私情であったが、フロンタルはこのような個人的動機を一切持っているようには見えず、「器は考えることはしません。注がれた人の総意に従って行動するだけ」と言い切る点でもまた対照的である
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=== その素性 ===
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その正体はジオン残党軍をひそかに支援していたジオン共和国のモナハン・バハロ国防大臣らが用意した'''(一年戦争時の)[[シャア・アズナブル]]を模して作り上げられた[[強化人間]]'''である。
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フロンタルの存在を一言で表現するなら「スペースノイドが理想として持つ『赤い彗星』像の体現」であり、本人もその理想に自らを合わせる形で振舞っている。
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“赤い彗星”という絶対的指導者を失った後の[[ネオ・ジオン]]残党が数だけの烏合の衆となり始めたことを危惧した「袖付き」のスポンサーたちは、シャアに代わるカリスマとして「シャアのそっくりさん」を作って送り込んだというわけである。しかしフロンタルがどのような手法でシャアに似せて作られたか、つまりクローンなのか他人を整形手術や精神操作で似せて作ったかについては明言されていない。いずれにしても彼は連邦側からの完全独立を画策していたバハロ国防大臣らの操り人形であり(自身を『器』と称しているのも、そういった立場を意識してかもしれない)、外見や雰囲気をシャアに似せているのもプロパガンダの手段に過ぎない。
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外伝作品『戦後の戦場』では、シナンジュの原型であるシナンジュ・スタイン強奪時における経緯が語られている。誰もフロンタルが戦う姿を見た事がなかった為に、当初はアンジェロや親衛隊からも本当に「赤い彗星の再来」と呼べる力を持っているのか疑念を抱かれていた。
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フロンタル、そして彼を用意したモハナンの目的は、地球の経済活動が宇宙居住民の生産活動に依存している点を逆手に取り、宇宙で唯一自治権を有するジオン共和国主導の下で月と7つのサイドを中心として、地球を排除した経済圏を作り上げる「サイド共栄圏」の確立と、これによる地球連邦の孤立と衰退である。ラプラスの箱を求めるのも、サイド共栄圏構想を実現させるべく、「箱」を連邦政府との交渉材料にしてジオン共和国の自治権返還を延期させ、共栄圏実現までの時間稼ぎをするためであった。
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そんな中、想定外の襲撃がありながらも<ref>この時、襲撃を行ったプロト・スタークジェガンに搭乗していた中央情報局のカルロス・クレイグ大尉は、[[ジオン公国軍#旧ジオン軍の残党|ジオン残党軍]]の起こしたテロによって妻子を失っており、連邦の上層部とアナハイムがUC計画の為の『敵』を欲して[[袖付き]]に新型モビルスーツを強奪に見せかけて譲渡する事実を知った事で、ダコタ・ウィンストンに協力を頼み、越権行為を承知の上で、新たに起ころうとしていた戦争を未然に防ぐべく取引をぶち壊しにしようとしていた。</ref>、赤く塗装された[[ギラ・ドーガ]]でジェガン隊を翻弄しつつ、予め立てられていた予定通りにクラップ級宇宙巡洋艦「ウンカイ」へと取り付き、シナンジュ・スタインを強奪。更にはウンカイとそれに同行していたクラップ級であるラーデルスの2隻を共に撃沈し、これによってフロンタルは「赤い彗星」としての信頼を得るに至り、特にアンジェロからは「棄民の王」として崇拝されるまでに至っている。
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しかし、その理想を語る姿はバナージ曰く「他人事のような」どこか冷めた印象を与えており、また本物のシャアを実の父親の様に慕っているオードリー(ミネバ)からは、ネオ・ジオンの民達が望むならシャアを演じようとする姿勢に対し「空っぽな人間」とまで嫌悪され、サイド共栄圏構想についても、結局は強引にアースノイドとスペースノイドの立場を逆転させるだけで、人類の革新を願ったジオン・ズム・ダイクンの理想(ジオニズム)や、アクシズ落としという凶行に走ってでも人類を宇宙へ上げて地球から自立させようとしたシャアの思想(エレズム)とは程遠い物であると酷評されている。これは、フロンタル自身が「人類はどうやっても、もはや変わることはない」と諦観しているためであり、「人類はどんな手を使ってでもニュータイプにならねばならない」としたシャアの思想とは真反対である。そのため、「人は変われる、分かり合える」と叫び続けるバナージの理想を、「人類に叶いもしない希望を与える存在」として危険視している。
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=== その素性 ===
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その役回りや立ち位置は、他作品に散見される「シャアのコピー」ではなく、むしろその逆、シャアを演じることで彼の考えや理想と、逆説的にそのライバルたるアムロや自身の宿敵たるバナージをも全否定する、いわば「'''シャアの負の鏡像'''」でも言うべき存在。シャアは人類に絶望しつつもどこかで人の革新を諦めきれなかったのに対し、フロンタルは最初からそれらの可能性を完全に否定し「虚しいだけ」と断じる、虚無的といえるほどのリアリストであるという点で対照的である。また、シャアのアクシズ落としの動機の一つは「アムロと決着をつけたい」という私情であったが、フロンタルはこのような個人的動機を一切持っているようには見えず、「器は考えることはしません。注がれた人の総意に従って行動するだけ」と言い切る点でもまた対照的である
原作小説版では、ジオン残党軍をひそかに支援していたジオン共和国のモナハン・バハロ国防大臣らが用意した'''(一年戦争時の)[[シャア・アズナブル]]を模して作り上げられた[[強化人間]]'''である。
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“赤い彗星”という絶対的指導者を失った後の[[ネオ・ジオン]]残党が数だけの烏合の衆となり始めたことを危惧した「袖付き」のスポンサーたちは、シャアに代わるカリスマとして「シャアのそっくりさん」を作って送り込んだというわけである。しかしフロンタルがどのような手法でシャアに似せて作られたか、つまりクローンなのか他人を整形手術や精神操作で似せて作ったかについては明言されていない。いずれにしても彼は連邦側からの完全独立を画策していたバハロ国防大臣らの操り人形であり(自身を『器』と称しているのも、そういった立場を意識してかもしれない)、外見や雰囲気をシャアに似せているのもプロパガンダの手段に過ぎない。
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フロンタルの存在を一言で表現するなら「スペースノイドが理想として持つ『赤い彗星』像の体現」であり、本人もその理想に自らを合わせる形で振舞っている。
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しかしフロンタルはシャア本人にしか知りえない独白や経験を知っていると思しき一面も見せており、当人は「アクシズ・ショックを経てもなお変わらなかった人類に絶望した、[[サイコフレーム]]に宿るシャアの意思がその模写である自らに宿ったゆえである」と語っている。どういった経緯でシャアの思念が宿ったのか、またそもそも彼の主張の真偽も判然としないが、宿っているとしてもそれはシャアの思念の一部分でしかなく、しかしフロンタルはその背景からシャアとは全くの別人でもない。[[バナージ・リンクス]]がフロンタルの中に見た「虚無」の正体がまさにこれで、肉体を動かしているのはフロンタルでありながら、その根幹にあるのはシャアという別の人間の記憶や経験、という不協和音である。
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フロンタルはシャア本人にしか知りえない独白や経験を知っていると思しき一面も見せており、当人は「アクシズ・ショックを経てもなお変わらなかった人類に絶望した、[[サイコフレーム]]に宿るシャアの意思がその模写である自らに宿ったゆえである」と語っている。どういった経緯でシャアの思念が宿ったのか、またそもそも彼の主張の真偽も判然としないが、宿っているとしてもそれはシャアの思念の一部分でしかなく、しかしフロンタルはその背景からシャアとは全くの別人でもない。[[バナージ・リンクス]]がフロンタルの中に見た「虚無」の正体がまさにこれで、肉体を動かしているのはフロンタルでありながら、その根幹にあるのはシャアという別の人間の記憶や経験、という不協和音である。
    
OVA版においては、特にEP7で小説版と違う人物像になっている。行動自体は小説版と大きく違わないが、意思は明確にシャアそのものであるような描写がされており、また器と自称しながらも彼自身の意思で行動しているようにも見える。最終決戦でもバナージを説得することにこだわった結果、対話によって敗北するという結末を迎える。また、劇場限定版BD付録の脚本では、器であるフロンタルに本物のシャアの残留思念の一部が宿ったと明言されている。
 
OVA版においては、特にEP7で小説版と違う人物像になっている。行動自体は小説版と大きく違わないが、意思は明確にシャアそのものであるような描写がされており、また器と自称しながらも彼自身の意思で行動しているようにも見える。最終決戦でもバナージを説得することにこだわった結果、対話によって敗北するという結末を迎える。また、劇場限定版BD付録の脚本では、器であるフロンタルに本物のシャアの残留思念の一部が宿ったと明言されている。
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なお、モナハン・バハロは登場せず、誰がフロンタルを作ったのか最後まで明らかにならないため、小説版の設定が残っているのかも不明であったが、後に外伝作品である『戦後の戦争』において、シナンジュ・スタインを奪取したフロンタルと[[アルベルト・ビスト]]との通信によるやり取りで、アルベルトからモナハンの名前が出ている為、原作と同様、フロンタルの裏にモナハンの存在があったのは確かなようである。
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OVA版ではモナハン・バハロは登場せず誰がフロンタルを作ったのかを、小説版とは異なり最後まで明らかにしなかったが、後に外伝作品である『戦後の戦争』において、シナンジュ・スタインを奪取したフロンタルと[[アルベルト・ビスト]]との通信によるやり取りで、アルベルトからモナハンの名前が出ている為、原作小説と同様、フロンタルを用意したのはジオン共和国のモナハンであったのは確かなようである。
    
=== 結末 ===
 
=== 結末 ===
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