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| 上記の「武者」「騎士」は大きな人気を得たが、物語性の強い世界観であるほどそこで活躍するキャラクターのデザインには世界観に根ざしたものがある程度求められるため、元の版権キャラクターのデザインを残さないといけないという制約上、「武者」「騎士」以外には成功例と言えるものはほとんどない。 | | 上記の「武者」「騎士」は大きな人気を得たが、物語性の強い世界観であるほどそこで活躍するキャラクターのデザインには世界観に根ざしたものがある程度求められるため、元の版権キャラクターのデザインを残さないといけないという制約上、「武者」「騎士」以外には成功例と言えるものはほとんどない。 |
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− | しかしこのやり方は従来の「リアル頭身からSD化させたキャラクター」でなく「元よりSD頭身として作られたオリジナルキャラクター」を玩具会社が売り出すための手法として注目された。その多くは「騎士」「武者」の路線を引き継いだ「ファンタジーRPG的世界観とSD体型のロボットを組み合わせた冒険もの」である。端緒となったのがタカラがリリースした『魔神英雄伝ワタル』で、他にも『魔導王グランゾート』『[[NG騎士ラムネ&40]]』『[[覇王大系リューナイト]]』『からくり剣豪伝ムサシロード』『RPG伝説ヘポイ』など様々なタイトルが1980年代後半~1990年代前半にかけて制作された。しかしそれらの作品はファンタジー世界観に起因する他作品との合わせづらさが問題なのか、スパロボへの参戦が極めてレアなケースとなっている。また、背景がファンタジー的でないものとしては『超特急ヒカリアン』『[[疾風!アイアンリーガー]]』などがあるが、これらも背景には比較的シリアスな設定が盛り込まれており、SD=コメディものというかつての図式から脱却していることが分かる。
| + | しかし方法論そのものは、従来の「リアル頭身からSD化させたキャラクター」でなく「元よりSD頭身として作られたオリジナルキャラクター」を玩具メーカーがそれぞれ売り出すための手段として注目された。その多くは「騎士」「武者」の路線に肖った「ファンタジーRPG的世界観とSD体型のロボットを組み合わせた冒険もの」である。端緒となったのがタカラによる『魔神英雄伝ワタル』で、他にも『魔導王グランゾート』『[[NG騎士ラムネ&40]]』『[[覇王大系リューナイト]]』『からくり剣豪伝ムサシロード』『RPG伝説ヘポイ』など様々なタイトルが1980年代後半~1990年代前半にかけて制作された。しかしそれらの作品はファンタジー世界観に起因する他作品との合わせづらさが問題なのか、スパロボへの参戦が極めてレアなケースとなっている。また、背景がファンタジー的でないものとしては『超特急ヒカリアン』『[[疾風!アイアンリーガー]]』などがあるが、これらも背景には比較的シリアスな設定が盛り込まれており、SD=コメディものというかつての図式から脱却していることが分かる。 |
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| === ブームの収束と浸透 === | | === ブームの収束と浸透 === |
− | 1990年代後半に入るとキャラクタービジネスとしてのSDの大ブームの熱は引くが、SDのデザインを好む需要は世代を超えて浸透した。
| + | 1990年代後半に入るとキャラクタービジネスとしてのSDのムーブメントは沈静化していくが、デザインとしてのSDの需要は世代を超えて浸透した。 |
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| 現在では、極端な低頭身で可愛らしさを強調したキャラクター自体は当時以上に増えている。地域振興キャラクターとして世間をにぎわせている「ゆるキャラ」のデザイン傾向はその典型例とも言える。 | | 現在では、極端な低頭身で可愛らしさを強調したキャラクター自体は当時以上に増えている。地域振興キャラクターとして世間をにぎわせている「ゆるキャラ」のデザイン傾向はその典型例とも言える。 |
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| == SDの世界観 == | | == SDの世界観 == |
− | SDガンダムが画期的とされた点として、SDキャラクターを「オリジナルから飛躍した独自のキャラクター」として確立させたことについては先に記したが、これを推進するために公式パロディとしてのギャグイラスト・漫画が製品のオマケとして用意され、『コミックボンボン』を中心に児童向け媒体で連載企画を行うタイアップも積極的に行われた。これらにより「SDキャラクターたちの性格」や「彼らがドタバタコメディを行う舞台」が掘り下げられていった。
| + | SDガンダムが画期的とされた点として、SDキャラクターを「オリジナルから飛躍した独自のキャラクター」として確立させたことについては先に記したが、これを推進するために公式パロディとしてのギャグイラスト・漫画が製品のオマケとして用意され、『コミックボンボン』を中心に児童向け媒体で連載企画を行うタイアップも積極的に行われた。これらにより「SDキャラクターたちの性格」や「彼らがドタバタコメディを行う舞台」が掘り下げられていった。SDガンダムは「人が乗り込むロボット」ではなく「擬人化された意思ある存在」として生き生きと描かれ、また物語として見せることで版権SDキャラクター玩具が本編に出てくるロボットとは異なる、独自のキャラクターであることが子供達にも理解させることを容易にした。 |
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− | それらの作品では、SDガンダムは「人が乗り込むロボットではなく、擬人化された意思ある存在」として生き生きと描かれていた。これを物語として見せられてしまえば、版権SDキャラクター玩具が本編に出てくるロボットとは異なる「独自のキャラクター」であることが子供達にも容易に理解されるものであった。
| + | その際用いられた、版権キャラクターに元ネタと無関係にキャラクター性をつける手法は、見た目が無機質なロボットや非人間的な怪獣・宇宙人のようなキャラクターには特に有効であった。これらは元ネタの外見からイメージできるキャラクター性が希薄であったため、その外見に対してどのような性格をつけても許容されるからである。SDブーム初期に商業化された版権SDキャラクターの多くにおいて、ロボットアニメか特撮が元ネタとして用いられているのはこういった部分に起因する<ref>しかしこの手法はファンの間でキャラクターと演者(役者・声優など)をシンクロさせる「中の人」という概念が生まれた90年代後半を境に次第に受け入れられなくなり、近年はSDガンダムなどにおいても原作パイロットのキャラをそのまま投影したキャラクター付けがなされている</ref>。 |
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− | その際用いられた、版権キャラクターに元ネタと無関係にキャラクター性をつける手法は、見た目が無機質なロボットや非人間的な怪獣・宇宙人のようなキャラクターには特に有用に働いた。これらは元ネタの外見からイメージできるキャラクター性が希薄であったため、その外見に対してどのような性格をつけても許容されるからである。SDブーム初期に商業化された版権SDキャラクターの多くにおいて、ロボットアニメか特撮が元ネタとして用いられているのはこういった部分に起因する(しかしこの手法はファンの間でキャラクターと演者(役者・声優など)をシンクロさせる「中の人」という概念が生まれた90年代後半を境に次第に受け入れられなくなり、近年はSDガンダムなどにおいても原作パイロットのキャラをそのまま投影したキャラクター付けがなされている)。
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| その後、SDキャラクターがコンテンツとして市民権を得てからも、「本編とは別の世界観」を漫画などで表現していくという手法は頻繁に用いられた。これは「武者ガンダム」「騎士ガンダム」のようなシリアスな背景世界を生み出すために特に効果的に使われ、その流れが「オリジナルのSDロボットアニメ」の誕生につながっていくのは上述したとおりである。 | | その後、SDキャラクターがコンテンツとして市民権を得てからも、「本編とは別の世界観」を漫画などで表現していくという手法は頻繁に用いられた。これは「武者ガンダム」「騎士ガンダム」のようなシリアスな背景世界を生み出すために特に効果的に使われ、その流れが「オリジナルのSDロボットアニメ」の誕生につながっていくのは上述したとおりである。 |
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| SD化は原作とは異なるキャラクター性を持たせることができる技法であるが、デザインやキャラ設定が原作とかけ離れすぎていた場合、最悪盗作や模倣と見られかねない。そのため、版権作品においてSD展開を行う場合はそのキャラクターの件関係でトラブルが起こらないように、慎重かつ厳重な版権管理が重要になる。SDというコンセプトそのものは浸透する一方で、版権作品のSD企画よりもオリジナルSDキャラを作る企画へと玩具市場の流れがシフトしたのも、この版権管理の難しさが背景にある。 | | SD化は原作とは異なるキャラクター性を持たせることができる技法であるが、デザインやキャラ設定が原作とかけ離れすぎていた場合、最悪盗作や模倣と見られかねない。そのため、版権作品においてSD展開を行う場合はそのキャラクターの件関係でトラブルが起こらないように、慎重かつ厳重な版権管理が重要になる。SDというコンセプトそのものは浸透する一方で、版権作品のSD企画よりもオリジナルSDキャラを作る企画へと玩具市場の流れがシフトしたのも、この版権管理の難しさが背景にある。 |
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− | 逆に、この部分に長けたメーカーがバンプレストである。バンプレストは「アミューズメント市場にキャラクタービジネスを行う」ために立ち上げられた企業で、様々な版権キャラクターをSD化してアミューズメントセンターでのみ手に入る特別な景品として御したことが、バンプレストの基本経営戦略のうちの一つを支えた。これらの経緯から、様々な版権を得たバンプレストが独自にゲームとして制作したのが、『[[コンパチヒーローシリーズ]]』と呼ばれる版権SDキャラクターによる作品群である。やがてそこから初代『[[スーパーロボット大戦]]』が誕生し、後に『[[スーパーロボット大戦シリーズ]]』として派生・独立していくこととなる。 | + | 逆に、この部分に長けたメーカーがバンプレストである。バンプレストは「アミューズメント市場にキャラクタービジネスを行う」ために立ち上げられた企業で、様々な版権キャラクターをSD化してアミューズメントセンターでのみ手に入る特別な景品として御したことが、バンプレストの基本経営戦略のうちの一つを支えた。これらの経緯から、様々な版権を得たバンプレストが独自にゲームとして制作したのが、『[[コンパチヒーローシリーズ]]』と呼ばれる版権SDキャラクターによる作品群である。やがてそこから初代『[[スーパーロボット大戦]]』が誕生し、今日まで続く『[[スーパーロボット大戦シリーズ]]』として派生・独立していくこととなる。 |
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| == スーパーロボット大戦シリーズにおけるSD == | | == スーパーロボット大戦シリーズにおけるSD == |
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| ;サイズ差の違和感の軽減 | | ;サイズ差の違和感の軽減 |
| :アニメ作品によってロボットの設定上の大きさは異なる。[[ダンバイン]]は7メートルだが、[[ダイターン3]]は120メートルである。そして、多くのロボットアニメ作品は主人公ロボが敵と戦っているとき、TV画面上に敵味方の両機が見切れずに映るように、敵メカや味方の他の機体が主人公ロボと似た大きさにしている。主人公より極端に巨大な敵や小さい敵と戦うのは、それだけで特別なシチュエーションとして扱われるのが普通である。 | | :アニメ作品によってロボットの設定上の大きさは異なる。[[ダンバイン]]は7メートルだが、[[ダイターン3]]は120メートルである。そして、多くのロボットアニメ作品は主人公ロボが敵と戦っているとき、TV画面上に敵味方の両機が見切れずに映るように、敵メカや味方の他の機体が主人公ロボと似た大きさにしている。主人公より極端に巨大な敵や小さい敵と戦うのは、それだけで特別なシチュエーションとして扱われるのが普通である。 |
− | :しかし、極端にサイズが違う主役ロボが共演するスパロボでは、極端にサイズが違う敵と戦うことは常に起こる。ダンバインがダイターン3と同程度の大きさの[[メガボーグ]]と戦うとき、ダンバインの全身が画面上に映るようなカメラ配置を意識した場合は敵は顔さえ映りきらない。逆に、ダイターン3がダンバインと同程度の大きさの[[オーラバトラー]]と戦うとき、ダイターン3の全身が映るようなカメラ配置を意識した場合は敵は点にしか見えなくなる。『[[スーパーロボット大戦Scramble Commander]]』シリーズはそのカメラ視点による見え方の差をあえてゲーム性に取り入れているが、このシリーズはスパロボの中でも変り種の扱いであり、スパロボを好む多くのロボットアニメファンは「戦闘シーンで、敵味方のロボットの全身が画面上で見れること」を望んでいる。 | + | :しかし、極端にサイズが違う主役ロボが共演するスパロボでは、極端にサイズが違う敵と戦うことは常に起こる。ダンバインがダイターン3と同程度の大きさの[[メガボーグ]]と戦うとき、ダンバインの全身が画面上に映るようなカメラ配置を意識した場合は敵は顔さえ映りきらない。逆に、ダイターン3がダンバインと同程度の大きさの[[オーラバトラー]]と戦うとき、ダイターン3の全身が映るようなカメラ配置を意識した場合は敵は点にしか見えなくなる。『[[スーパーロボット大戦Scramble Commander]]』シリーズはそのカメラ視点による描写の差をあえてゲーム性に取り入れているが、このシリーズはスパロボの中でも変り種の扱いであり、スパロボをプレイする多くのロボットアニメファンは「敵味方のロボットが全身像で戦闘する」ことを理想としている。 |
| :そうなると設定上のサイズを無視して、全ユニットを同じような大きさのグラフィックにした戦闘アニメーションを作るしかない。その「ウソ」の違和感を軽減するための方法論がSDというスタイルなのである。事実、SD化を廃してユニットを全てリアル頭身・同スケールで描いた『[[新スーパーロボット大戦]]』では、この違和感が今まで以上に顕在化しプレイヤーや開発者からの評価は芳しくなかった。 | | :そうなると設定上のサイズを無視して、全ユニットを同じような大きさのグラフィックにした戦闘アニメーションを作るしかない。その「ウソ」の違和感を軽減するための方法論がSDというスタイルなのである。事実、SD化を廃してユニットを全てリアル頭身・同スケールで描いた『[[新スーパーロボット大戦]]』では、この違和感が今まで以上に顕在化しプレイヤーや開発者からの評価は芳しくなかった。 |
| :なお、スパロボのSDデザインでは大きめのイメージを持つユニットは比較的大きめに、小さめのイメージを持つユニットは比較的小さめに描かれており、サイズ差による迫力みたいなものを伝えることも意識はされている。 | | :なお、スパロボのSDデザインでは大きめのイメージを持つユニットは比較的大きめに、小さめのイメージを持つユニットは比較的小さめに描かれており、サイズ差による迫力みたいなものを伝えることも意識はされている。 |
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| ;[[戦闘メカ ザブングル]]/[[聖戦士ダンバイン]]/[[重戦機エルガイム]]/[[機甲戦記ドラグナー]]<br/>[[蒼き流星SPTレイズナー]]/[[超時空要塞マクロス]]/[[機動警察パトレイバー]] | | ;[[戦闘メカ ザブングル]]/[[聖戦士ダンバイン]]/[[重戦機エルガイム]]/[[機甲戦記ドラグナー]]<br/>[[蒼き流星SPTレイズナー]]/[[超時空要塞マクロス]]/[[機動警察パトレイバー]] |
| :バンダイがメインスポンサーを務めたガンダムシリーズ以外の[[リアルロボット]]作品群で、SDガンダムと同様にカプセルトイの消しゴム人形などによるSD化コンテンツを展開。 | | :バンダイがメインスポンサーを務めたガンダムシリーズ以外の[[リアルロボット]]作品群で、SDガンダムと同様にカプセルトイの消しゴム人形などによるSD化コンテンツを展開。 |
− | :特に『マクロス』は再放送用にSD仕様のOPフィルムを新作したり、SD戦国伝のような「武者化」が行われるなど積極的なSDコンテンツが展開された。 | + | :特に『マクロス』は再放送の際にSD仕様のOPフィルムを新造したり、SD戦国伝のような「武者化」が行われるなど積極的なSDコンテンツが展開された。 |
| ;[[コードギアス 反逆のルルーシュ]] | | ;[[コードギアス 反逆のルルーシュ]] |
| :2007年発売のニンテンドーDS用ゲームにおいて登場メカがSD化されている。 | | :2007年発売のニンテンドーDS用ゲームにおいて登場メカがSD化されている。 |
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| + | == 脚注 == |
| + | <references /> |
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| == 関連項目 == | | == 関連項目 == |